少年の、一つの可能性
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時は少し遡り、濃ゆい霧の中。
アルフレッド・フォスフォールは1人、頭を悩ませていた。
真っ暗な視界に比例するように自身の心も黒く塗りつぶされていく感覚。
苛立ちを抑えようと手のひらに灯をともす魔力を込めるが、うんともすんとも反応がない。
ねっとりと首を絞められているような圧迫感は、1人で思い出の丘に閉じこもった時を思い出させる。
この息苦しさで埋もれてしまいそうな暗闇と、外と遮断された孤独空間。
不安に押しつぶされそうになり固く目を閉じると、お次に脳裏に蘇ってきたのは結界に突撃して弾き飛ばされる幼馴染の姿だった。
(い、嫌な予感が…)
その予感は残念ながら的中し、芋づる式にモブに甘えるという自身の情けなさまで思い出してしまった。
しかもご丁寧に髪の毛の柔らかさや頬の暖かさまで、バッチリと。
「………オレは変態か!!!!」
思わず頭を抱え絶叫する。
脳細胞、活動停止。
さらには自身を落ち着かせるため何度も深呼吸をしたことで、まさかの息苦しさが解消されるという事実。
しかも強制的に脳が活動停止したことで冷静さを取り戻し、ジメジメとした気持ちが一蹴された。
アイツの面を思い出して少しやる気が……出ないこともない。
「……ちげぇ、そう、たまたまだ。別にあの能天気な面にい、い、癒されたりとか、そういうんじゃねぇし。考えすぎるのもよくねぇから一度どうでもいいことを考えただけで…あ?なんの言い訳だクソが!!死ね!!!」
誰に言うわけでもない言い訳を零し、一人で頷き納得して、ついに自分にキレた。
もう疲れが限界まで達しているためか若干壊れてきているのかもしれない。
しかしここで立ち止まっている時間もない。
あのモブはゴブリン以下の雑魚で魔法陣すら見ることができないため、この霧も見えていない可能性が高い。(当たり)
それだと自ら危険に首を突っ込んでいると考えといた方がいいだろう。(当たり)
というよりも、もう変なことをして半泣き状態の予感しかしない。(大当たり)
早くあの珍獣を捕獲しなければ。
何か効率のいい方法はないかと考えていると、視界の端に何かを捉えた。
この暗闇で何を、と不思議に思ったがどうしても見間違いとは思えず同じ場所を凝視する。
すると今度は存在を主張するように、白い光がポワッと小さく点滅した。
呼ばれている気がするがどうする。
面倒なことに巻き込まれそうな匂いがプンプンしてとんでもなく行きたくない。
だが思考を巡らせて数秒、脱出できる可能性にかけて近づいてみることにした。
改めて確認すると、それは白と青が混ざった煌びやかな色合いの光で神聖さを感じる。
そしてさらに顔を近づけると、光の正体がくっきりと姿を現した。
(剣?)
今まで見た武器とは明らかに格が違う。
そういえば田舎兵の1人が武器を調達していたと聞いていたし、これもそのうちのひとつなのかもしれない。
(誰かのだとしても非常事態だし、窃盗にはなんねぇだろ。)
そんな軽い気持ちで剣を抜いた。
「い"っっっっ!?!?」
手にした箇所から突き刺すような痛みが全身に駆け巡る。
あまりの衝撃に思わず放り投げると剣は眩い光を発しながらどこかに突き刺さり、あたり一面の霧を一瞬で払った。
「な、なんだ今の…」
自分の掌からはジュワッと湯気が上がっている。
軽く火傷をしたようだが、ひと通り治癒魔法をかければ特に問題はないぐらいのもので安心した。
「皮膚が溶ける魔法でもかけてあんのか?気持ち悪りぃ武器だな。」
「まさか……アルフレッドが?」
「あ?」
声をかけられた真横に視線をやると、驚いたようにこちらを見つめるクラウスの姿があった。
無視をしたかったがそのように表情を変えることが珍しいため、一応確認する。
「相変わらず言葉が足りねぇよ。何の話だ。」
「これだ。」
クラウスが腰に差してあった鞘をオレに見せる。
しかし鞘のみで刀身が見当たらない。
「は?いつものオンボロは?」
「あそこだ。」
言われた通りに視線をやると、地面に突き刺さっている剣を示していた。
確かに先程までは圧倒的な存在感だったのに、今ではいつも通りのただの中古品に見える。
確認のため再度クラウスに無言で問いかけると、静かに頷いて肯定した。
「手は?なんともないのか?」
「まぁ確かに痛みはあったが……治癒魔法をかければ別に。お前アレにどんな呪文かけてやがる。趣味悪りぃぞ。」
大きく目を見開いた後に顎に手を当てたクラウスは、こちらの質問に答えることはなく納得するように何度も頷く。
とうとう頭が逝ってしまったらしい。
放っておいてモブを捕まえにいこうとクラウスから意識を逸らすと、地面を一定の間隔で揺らす音と魔物の気配に気がついた。
「っと、早いところ決着つけねぇと流石にやばそうだな。」
「そうか。やはり思った通りだ。」
「まだやってんのかよ!!……しかもなんだその笑顔気持ち悪りぃ。」
「すまない。少し、いや結構嬉しくてな。そうかそうか。」
「今非常事態なの分かってんのか。殴るぞ。」
「なにをしてるアルフレッド。団体が到着する前に済ませよう。」
「テメェ本当いつかぶん殴ってやっからな!!」
そして周囲に視線を巡らせたその直後、モブのすぐ目の前に魔物が立ちはだかっている光景を見たオレは無意識に地面に突き刺さった剣へ手を伸ばした。
聖剣の雷を受けゆっくりと倒れるアルファの身体の大部分が、黒い塵となって天へと昇っていく。
オレを見る黒い瞳は驚きで見開かれ、口元は魚のようにパクパクと意味もなく動いていた。
悪く思うなよ、ソイツに近づいたお前の自業自得だ。
それでも往生際が悪くまだモブに手を出そうと動きを見せたことで、トドメの意味を込めて風魔法で遠くの瓦礫まで叩きつける。
「よし、結構飛んだな。」
これだけ距離があれば、コイツには手を出せないだろう。
「危ないでしょうが!!!」
バカ言え、今安全になったんだよ。
そんなことを言ってもなにも見えていないであろうモブには意味はない。
大人しく肩を竦めてとぼけてみせた。