転生者たちと、小さな村の最終関門
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もう気がつけば2月ですね…早すぎ!
今月もゆったりではありますがストーリーを進めていきますので、今後もよろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!
横たわったまま数秒瞬きして、状況を理解しようと考えを巡らせた。
突き刺さる視線、こちらを見たまま中腰になってフリーズしているアル。
この気まずい雰囲気を打開するべく、寝っ転がったまま満面の笑みを浮かべて高らかに告げる。
「てってれー!!無傷ですっ!!」
「………。」
途端に恥ずかしくなった。
何だその目は。
こっちだって寝起きだっての。
盛大に船漕いで地面に倒れた衝撃で目覚めてみたら、みんなから注目されてたなんてどんな辱めだよ。
いい歳しててってれーとか言っちゃうくらい動揺したよ最悪。
誰も何も反応しないことに若干涙目になりながら膝を引き寄せ丸くなり、自分の世界へと閉じこもる。
すると我に返ったアルが慌てて丸くなった私の身体を起こしてくれた。
それでも顔を上げたくなくて、膝に埋めたまま縮こまる。
「おい。」
「確かに地面に頭を叩きつけるほど船を漕いだ、それは認めよう。でもてってれーとか普段から言ってるわけじゃないから。そんな痛い子じゃないから。グスッ…!若さ故の過ちだから……!!いやもうそんな若くないけど!!」
「まだ6歳のくせに何言ってんだ。それと頭をぶつけたのは…その…」
言いにくそうに言葉を区切るアルに絶望し、さらに頭を膝にめり込ませる。
「はは……そうだよ、笑って頂戴よ。盛大に船を漕いだ挙句、肩を貸してくれた幼馴染からずり落ちて悪目立ち、最後には痛い子満載の台詞を吐く。おいおい、意味わかんなすぎて余裕で引くって…嫌われなかったら奇跡ぐらいの悲惨さで視界が歪む。」
「はぁ?馬鹿じゃねぇの。」
盛大に呆れたように言葉を発したアルはさらりと言い放つ。
「お前を嫌いになるわけねぇだろ。」
ドキッとした。
「わぁお!攻めるねー番犬くん!」
聞こえてきた明るい声色に我に返り振り返ると、ニコニコしながらこちらを見る天使…違った女神……でもなくてエミリーちゃんが立っていた。
そしてその横にはムスッとした表情のリリーちゃんと、真顔のマリーちゃん。
可愛い3人組からの視線にアルが元気な舌打ちを繰り出すと、エミリーちゃんはわざと肩を竦める。
「どういう組み合わせだ。」
「ふふ、さっきそこで仲良くなったんだー!リリーちゃんたち、モブちゃんを探してたんだって!」
「そうだよレイ!!アタシらを置いて行くなんて酷いじゃないか!!ソイツはレイを狙ってるんだよ!?危険だから離れて!」
「は、はぁあ!?ふざけんなクソピンク!!ぶっ殺すぞ!」
「ふん!やってやるさ!アンタなんてこの大剣の錆にしてやる!」
「リリー、落ち着いて?ね?」
「あーもう!!ネェさん離してよ!あの赤豆、レイにこくは」
「何言ってんだテメェはぁああ!!」
バタバタと足を動かすリリーちゃんをマリーちゃんが脇に担ぐ。
絶叫しながら顔を真っ赤にしたアルは血走った目で私に詰め寄る。
「別にそんなつもりはねぇから!髪とか撫でるのも、ちょ、ちょ、ちょっと寄りかかったのもテメェがちょうどいい位置に頭をよこすからなんとなくでやっただけだ!勘違いすんなよ!?いいな!?」
「う、うん?」
必死に言葉を発し、慌てて私に弁明するアルの勢いに少し冷静になる。
なだめているとリリーちゃんが頬を膨らませたまま、アルに向かってさらに爆弾を投下した。
「アタシだったら気持ちを伝えてくれない奴なんてあり得ない!論外!」
「あ、その気持ちは分かるなー!言ってくれないと分からないもんね?」
「お!さっすがエミリー!女心分かってるね!」
キャッキャと盛り上がる女子グループにアルは絶望したように呟く。
「あり得ない……」
アルが落ち込んでる!?
いとしのエミリーちゃんに賛同され、お世辞にも素直とは言えないアルはショックを受けてしまったようだ。
ここはと気合を入れて、アルの頬に手を添える。
「アルは確かに素直じゃないけどさ、だからこそさっきみたいな言葉を言われたら女子はドキッとするから!さぁ自信持ってエミリーちゃんに」
「さっき?」
不思議そうに首を傾げるアルに、先ほどの言葉を思い出しニヤケながら告げる。
「うん!さっき、お前を嫌いになるわけねぇって言ってくれたでしょう?すっごい嬉しかったしドキドキした!そんなこと言って守ってくれるイケメンなんて、それこそ好きにならないわけないって!」
私の言葉を聞いたアルはポカンと口を開けて私を凝視する。
盲点だったというところか、まだまだ初々しい。
「ち、ちなみにだけどよ。」
「うん?」
「お、お前は、その……どう思った…?」
段々と小声になっていくアルに親指を立ててにこやかに笑いかける。
「アルが生まれてきてくれたことを神に感謝した。」
「なんか違ぇ!」
悔しそうに叫びながら崩れ落ちるアルに手を伸ばすと、村全体が揺れるような衝撃が私たちを襲った。
空に引っ張られるような違和感によろけると、アルがすぐに私の手を引いて身体を支える。
クラウスさんもすぐにエミリーちゃんを支え、聖剣を地面に突き刺し空を睨みつける。
「結界が引っ張られてるのか。」
その彼の呟きと同時にクラウスさんの腰元に付けられた魔法石が煌めき、聞き覚えのある男性の声が響き渡った。
「隊長ぉおお!」
キッドさんだ。
クラウスさんが短く答えると、動揺したようにキッドさんが言葉を続ける。
「ま、魔物が!!村を!村を引き寄せています!!」
「そうか、魔物の数は?」
「うぇ!?え、えっと……い、一体?とにかく単騎です!」
「そうか、それは有難い。」
クラウスさんがアルを見つめるとアルは一度頷く。
納得したように頷き返したクラウスさんが指を鳴らすと、違和感が収まり脱力する。
「大丈夫か。」
「う、うん。でも何が?」
遠くの木々は未だに引っ張られるように靡いており、異常事態であることは間違いない。
不安になってアルを見つめると、安心させるように私の髪を撫でる。
「心配すんな、魔物と殺し合いの時間になっただけだ。」
「不穏すぎる!」
ムーンさんとダンテさんも汗を拭い立ち上がると、クラウスさんは聖剣を地面から引き抜き告げる。
「絶好の機会だ。単騎のうちに潰すぞ。」
「「はっ!!」」
「そっちの武器の準備は頼む。」
「任せてください隊長!!」
「アルフレッド、転送魔法を。」
「あぁ。」
同じく立ち上がったアルは座り込んだままの私に視線を向け、呟く。
「オレはこれから最後の仕事を片付けに行くが、どうする?」
「え…」
「まさか連れて行くつもりか?」
眉をひそめたクラウスさんはアルに声をかけるが、アルは振り返らず私を見つめる。
「エセ聖女の家の中で大人しくしてるならそれでもいい。」
私は自分が雑魚であることを重々承知してる。
着いて行っても邪魔にしかならない。
そう思って口を開くが、真っ直ぐ見つめてくる金色の瞳に言葉を飲み込んだ。
「モブ。」
「い、一緒に行きます!!」
思わず勢いよく返事をすると、アルは分かっていたかのようにニヤリと微笑む。
「そうこなくっちゃ。」
アルの声に賛同するようにエミリーちゃんも手を挙げる。
「エミリーも行く!」
「エミリー様、それは」
「お爺様がいるから村のみんなは大丈夫。それにこのまま村の結界が剥がれたらお爺様の力だけじゃ難しくなるよね。だったら、エミリーが直しに行くよ。」
「………分かりました。」
「アタシたちだってやるよ!!」
大剣を構えたリリーちゃんとマリーちゃんも大きく頷く。
「だったら丁度いい。この結界ごと転送してやらぁ!」
全員の身体が浮かび上がり、グニャリと視界が歪む。
その中でも目立つ赤に縋り付くと、力強く抱きしめられた。
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◇新兵、ムーン&ダンテが仲間に加わった。
◇女盗賊一派、リリー&マリーが仲間に加わった。
◇未来の聖女、エミリーが仲間に加わった。
◇聖剣使い、クラウス・バートンが仲間に加わった。
◇〇〇〇〇、レイ・モブロードが仲間に加わった。