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転生者たちと、最終関門への下準備

いつもありがとうございます!!


またブックマーク登録いただきましてありがとうございます!

いよいよ魔物の襲来!!…ですがなんとなく緊張感がないと感じるのは私だけ?


今後もよろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!


DANGERの文字が赤く点滅する。

音楽もこちらを急かすような…焦らせるようなものへと変わり静かに手汗を拭いた。


完全に戦法を間違えた。


男の子のような見かけの魔物が黒い羽根が舞い上がらせると補助魔法が全て打ち消されるし、女性型の魔物が攻撃してくると仲間たちの体力が面白いぐらいにゴリゴリと削れ、あっという間に戦闘不能。


あぁそうか、二体同時に相手をしちゃいけない奴なんだ。

だからさっき、囮を出すかどうかの選択肢があったのか。


「また何回もコンティニューするはめに」


「モブッ!」


「はい!?」


切羽詰まった声に思わず返事をすると、アルが私の顔を覗き込んでいるところだった。


「あ、あれ?」


私、何してたんだっけ。


急いで辺りを見回すとクラウスさん率いる兵士さんたちが到着した後のようで、その場は目まぐるしく忙しくなっていた。


倒れていたリチャードさんはエミリーちゃんの家に担ぎ運ばれ、気を失ったパルメさんはグルグルに縛られて兵士さんたちに何処かに連れていかれ。

そしてダンテさんを先頭におじいさんから幼い子供まで、兵士さんたちの誘導に従いエミリーちゃんの大きな家に入っていく。


呆然とその流れを見ていると、舌打ちをしたアルが私の頬を掴み視線を合わせた。


「え、いや、えっと…?」


「無言になったかと思えば意味わかんねぇことブツブツ言い出しやがって体調悪いのかなんなのかどうし」


「だ、大丈夫大丈夫!」


息継ぎ、瞬きをせず怒涛に話し続けるアルに制止をかけ深くため息を吐く。

アルを愛でていたところまでは記憶があったのにと首を傾げると、少しだけ眉を寄せた彼は冷や汗で私の顔に張り付いてしまった髪を払ってくれた。


「すげぇ汗だぞ。」


「な、なんだろうね?」


いよいよ頭がおかしくなったかと頭を抱えるが、よく考えてほしい…この6歳に降りかかる怒涛のストレスラッシュを。

多分その精神的ストレスでよく分からないものが見えたんだ。きっとそうだ。


「はは…もしかしたら思った以上に疲れてたのかな?」


引き攣る頬に気がつかないふりをして笑い飛ばすと、無言だったアルがそっと私の頭に手を置き優しく撫でる。

そのリズムが心地よくて思わず瞼を閉じた。


「ってそうはいかん。」


「ッチ、寝ろ。」


「こんな大変な時に寝れないって。」


「今は落ち着いてる。」


「兵士さんたちは寝てないのに私だけ寝れないよ。」


数秒無言になったアルは撫でていた私の頭を無理やり引き寄せて、自身の肩に着地させた。


「な、なにしてるの?」


「寝るぞ。」


「うん、アルは頑張ったからね。寝て体力を回復させた方がいいと思うよ。私は離れ」


「残念だったな、こうしねぇとオレは寝られねぇんだよ。」


「嘘おっしゃい。」


何時ぞやと比べて高さに硬さ、そして安定度合いが桁外れに改善されおり快適だ。

しかも人肌が、温い。

そのせいで引っ込めたはずの疲れが様子を伺うように頭角を表す。


「くっ…寝心地最高か…」


「そりゃどーも。」


私の抵抗力が見事にゴリゴリと削られる。

でもこうしている間に魔物が攻めて来たらどうしよう。


さっきの光景みたいに、みんなが動かなくなったら、どうしよう。


半分白目になりながらも目を開けようと必死になるが、眠りに誘われるように髪を梳かされる。


「なんでそういうことするの。」


「暇つぶし。」


「そんな暇つぶしがあってたまるものか。」


笑いを堪えるようにアルの身体が揺れ、つられて私も思わず吹き出した。

そして同時に馬鹿みたいに大きな欠伸を1つ。


「やっとか。」


「…怖い夢見たらどうしよう。」


アルは撫でるのをやめ、代わりに優しく言葉を紡いだ。


「そん時は迎えに行ってやるよ。」


「夢の中だよ?」


「余裕。」


「へへ……さすが…。」


力強い言葉に背中を押され、深い眠りへと落ちていった。























「寝た…か。」


スゥスゥと寝息を立てて自分に寄りかかるモブを見つめて呟く。


突然動かなくなった幼馴染は、魂がどこかに行ってしまったようで恐怖を覚えた。

気がつくと、そのまま消えてなくなってしまわないように自身の方へ引き寄せていた。


なんて恥ずかしいことをしているんだ。

それでも安心したような表情に間違ってないのだと悟り、早まる心臓には気がつかないフリをしてもう一度彼女の頭を撫でた。


(旦那。)


「っ!?」


悲鳴をあげそうになってなんとか耐える。

ここで起こしてしまうわけにはいけない。

バクバクと鳴り響く胸元を撫でて呼吸を整え、気を取り直してシラタマに応答する。


(なんだよ。というよりお前、なんでモブから離れてやがる。)


(そ、それはネェさんに言われて。仕方なく魔物の様子を見にきたっす。とにかくなかなかマズいっすよ。魔物の大群を引き連れていたのがアルファとベータだったっす。)


(あ?誰だそいつら。)


(魔王軍幹部の眷属っす。)


魔王軍幹部、眷属。

伸びきった袖を振り回しながら腹立つ笑顔でこちらを挑発するダニーの姿が思い浮かび、静かに拳を握る。


(眷属っていうことは魔王軍幹部ではないってことか。)


(そうっす。立場的にはオレと一緒っす。戦闘力で言えばオレの方が上なはずっすけど、アイツらはガンマサマの眷属っすからね。二体まとめて襲いに来たら厳しいっす。オレや旦那や兄さんみたいなチカラがある奴はそれ以外を守りながら戦うのは不利っす。)


チラリとモブへ視線を向ければ、気持ちよさそうに寝ている。

悪夢から守ると、迎えに行ってやると約束したのだ。

落ちていた髪を彼女の耳にかけながら、シラタマに声をかける。


(話は通じる相手か?)


(………聞いてくれるとは思うっすけど、絶対襲撃はやめないっす。)


(魔女を引き渡すと言ってもか。)


(アルファが出てくるってことは、ガンマサマの指示っす。皆殺しにしろってお達しがあるはずっすよ。)


なら仕方ない。

こちらも皆殺しにするつもりで戦わなければ。


(シラタマ。)


(…申し訳ないっすけど、時間稼ぎなら一体っす。)


(充分だ。もっと相手の情報を寄越せ。)


(ぐぇえ…。)


シラタマからアルファとベータという名前の魔物の特徴を一通り聞き、頷く。


(分かった。他の奴にも伝えとく。お前は喧嘩売る前に雑魚を痺れ毒で動けなくしとけ。数が多いと面倒だからな。)


(あーあ、とんでもないっすよ本当に。)


(それともうひとつ。)


(まだなんかあるっすか?)


(危険だと判断したらすぐに撤退しろ。死ぬことだけは許さねぇ。)


(っ!!くぅううう!任せてほしいっすよ!)


とびっきり明るい声で返事をしたシラタマは早速行動を開始したのか、反応がなくなった。

上手くいくかは分からないが、やるしかない。

決意を固めて今一度モブに視線を向けた。


「はっ、締まりのねぇ顔で寝やがって…悪夢なんて縁がなさそうだな。」


幸せそうに眠るモブに安心し、近くの木に寄りかからせようと身体をゆっくり動かすと悲しそうに眉をひそめた。


(な、なんだその顔。寄りかかればどこでも眠れるだろ。)


それでもなんとなく、本当になんとなく自身の肩に頭を戻してやると嬉しそうに頬を綻ばせた。


………だからって別にどうというわけはないのだが!!!


そんな思考回路とは裏腹に心臓の鼓動が全身に響き渡る。

無意識に自身の頭をモブの頭に軽く乗せた。

少し重さが加わったことでモブがモゾモゾと擦り寄るように態勢を変えた様子に、形容しがたい感情が顔を出す。

打ち震える心に比例して頬が熱を持った。


(いやいやいやいやいやもう近くにいる必要はねぇわけだしそもそもこんなことやってる暇はねぇしこれ以上やると自分の首を絞めそうだからやめと……って別に深い意味はねぇけど!!)


雑念を払いのけるように叱責し、勢いよく顔を上げると熱を持っていた頬が一瞬で冷える。


クラウスとその取り巻きの兵士たちが全員、なんとも言えない表情でこちらを見つめていた。


そういえばここ、外じゃねぇか。


「疑問があるんだが。」


クラウスを見つめれば、奴は気持ち悪いほどの満面の笑みで告げた。


「この村に教会を建てるとすると、いくらかかるのだろう。というより私が建てた方が早いのか?」


「知るか!!」


「職人に任せた方がいいですよ隊長。金なら俺たちの給料も使ってください。」


「ひと段落ついたら神父の資格でも取ろうかなー。」


聖女様(エミリーさま)がいるんだから、必要ないだろ?」


「それもそうか!」


見られてた。

絶対に一連の流れを見られてた。


「テメェらいい加減に…!!」


「「「あ。」」」


「ごふっ!!」


羞恥に耐えられずコイツらを燃やそうと力を込めると、爆睡していたモブが肩からずり落ちて奇声をあげた。


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