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転生者は、未来の聖女と魔女に会いに行く

いつもありがとうございます!


またブックマーク登録いただきありがとうございます!!

大変!励みに!なっております!!


これが今年最後の更新になります。

当初の目標より多くの方に読んでいただけて、本当に幸せな一年でした!

来年も続けて更新していきますので、今後ともよろしくお願いします^_^


「本当に貴方は不思議な子だ。」


背後からかけられた言葉に振り返ると、少し回復した様子のクラウスさんがムーンさんに支えられながら私を見つめている。


「え?花を手向けただけですよ?」


「あぁ。キミにとってはただそれだけのことかもしれないが、私たちには出来ない。」


「そんな大げさな…」


「あの魔物は間違いなく幸せ者だろう。」


嬉しそうに微笑むクラウスさんに首を傾げるが、クラウスさんの言う通り白玉の先輩が少しでも穏やかに眠りについてくれたらと願うばかりである。


「しかし残念ながら残すは契約の魔女…というわけではなさそうだな。」


「はい。シラタマの話ではここに魔物の大群が向かっているそうです。」


「猶予は?」


「あと一日、あるかないかと聞いております。さらに女盗賊一派の話では、王都とこの村を結ぶ唯一の出入り口を塞がれたと…応援は絶望的です。」


「……テオか。」


「え?」


「いや今はどうでもいい。」


立ち上がったクラウスさんは未だにふらついているが、綺麗な蒼色の瞳で遠くを見つめ力強く言葉を発した。


「どちらにせよ私たちの仕事を全うするだけだ。状況を把握したい、お前たちが知っていることを教えてくれ。」


「「はい!」」


ムーンさんたちがクラウスさんにこれまでの経緯を話しているのを眺めていると、チリチリと右腕の疼きが再発してきた。

申し訳ないが待っていられない、私は先に行動させてもらおう。


ゆっくりと後ろへ下がろうとすると、アルに頭を鷲掴みにされて身動きが取れなくなった。


「な、なにしてるの?」


「お前こそどこ行くつもりだクソモブ。オレの側にいろって言っただろ。まさか…忘れてんじゃねぇだろうな…?」


「痛い痛い!頭蓋骨が割れる!!」


「あ、また!おい!レイになにするんだ!」


「テメェには関係ねぇわクソピンク!!さっさと消えろ!」


「嫌だね!レイはアタシの家族だ!魔物も使役してる凄い女なんだぞ!」


あ、それちょっと待って。


案の定反応を見せたアルはゆっくりとリリーちゃんに視線を向け、低い声で問いかける。


「どういう意味だ。」


「レイが命令をしたら白い蛇がすぐに情報収集に向かったんだ!それに今偉そうに説明している兵士たちだって、レイが声をかけたからあんなにまとまって行動できてるんだ!凄いだろ!私のレイ!」


「テメェのじゃねぇがいいことを聞いたな。蛇に命令、ねぇ?へぇ?一緒に行動するようにオレはお願いしたつもりだったんだが…」


「あ、あはは。だ、だって情報は大事…だし……」


私を責めるように見つめる眼差しに、冷や汗が止まらない。

ごめん白玉、弁解できないかも。

そしてリリーちゃんはキラキラと瞳を輝かせて爆弾を投下した。


「それにレイは情けなーい男どもの代わりに契約の魔女ってやつに会って話をつけてくるって宣言したんだよ!!」


「っはぁあああ!?んだとこのクソモブが!!」


はいアウトー。


確実に血管が数本切れたアルはついに鬼の形相で私を睨みつけた。


「オレがやるって言ってんだろうが!なんで1番危ねぇ役所を引き受けてんだよ!!」


「す、すいません…」


「平穏な暮らしをしたいとか抜かすわりに毎度毎度面倒ごとに飛び込んでいきやがって!!」


「そうだよね…アルが側にいてくれると思ったら安心しちゃってつい……」


「は、はぁ!?べ、別に……だぁああああ!!クソが!爆ぜろ!」


爆ぜろとか言うわりには私の頭を乱暴に撫でるのは何故だ。


「これだとただのご褒美なんだけど…」


「ぐっっ……!!」


「やっぱり恩人は強いね?」


「っっっうるせぇ!!」


すまん、マリーちゃん。

あんまり煽らないであげて。

顔を真っ赤にするほど怒ってるから。

あとで倍返しされるかもしれないから。


視線で訴えるがマリーちゃんはどこ吹く風。

そんな中クラウスさんがアルに声をかけてきた。


「アルフレッド、すまないが彼らに結界の補強の仕方を教えてやってくれないか。」


「はぁ!?なんでオレが!?テメェがやれ!」


「魔力操作は私より得意だろう?それにコツが分かっている者が教えた方が、より強固な結界となり安全が確保されるからな。私はリチャードと合流してエミリー様を迎えに行グボォ。」


「「た、隊長ぉおおおお!!」」


流れるように吐血したクラウスさんは地面に倒れこんだ。


「無理しないでください隊長!」


「ポーションの効果が発揮されるまでまだ時間がかかるんですよ!」


その様子を引き気味に見ていたアルはため息を吐きながら数回頭を掻く。


「待ってろ。」


「うん。」


私へと一言かけたアルは倒れたクラウスさんへと駆け寄り声をかけた。


「それじゃ動けねぇだろうが。部下に面倒かけさせんじゃねぇよ。」


「だが私は騎士としてエミリー様をお守りせねば。」


「今テメェが動いても邪魔なだけだ。」


「………。」


「なんだそのムカつく目は。男がウルウルさせんな気持ち悪りぃ。」


あの雨に濡れた子犬のように寂しそうな眼差しを気持ち悪いと一蹴するアルが凄い。

だが確かに、この状態のクラウスさんをパルメさんがいるかもしれないところへ送るのは反対だ。


そこで私は疼く右手を抑えながらアルの背中へとダイブする。

突然飛び乗って来た私に驚きながらもすぐに背負う体勢を整えたアルは、流石としか言いようがない。


「あっぶねぇ…」


「よ、おんぶの匠。」


「お前な!!」


苛立ちげにこちらに視線を向けたアルはさておき、クラウスさんを安心させるようにアルの背中から顔を出して微笑んだ。


「クラウスさん、このまま私とアルでエミリーちゃんに会いに行ってきます。ついでにパルメさんともお話しして来ますね。」


「しかし」


「このあと魔物の大群が攻めてくるんですよ?クラウスさんにはその時に嫌という程働いてもらわうことになると思うので、今のうちに休憩を取っておいてください。」


「だが…」


顔を歪めるクラウスさんはいまだに不安そうだ。

ふむ、社畜だから休むのが苦手なのか。

そこで私はアルの肩にかけていた手を彼の首元に回す。

一瞬で身体を固めたアルだが気にせずに彼の頬と自分の頬が触れてしまいそうなほど密着し、得意げにクラウスさんへと言葉をかけた。


「ちょっとちょっと、私は確かに雑魚ですがクラウスさんの仲間のこのアルは最強ですよ?ご存知ですよね?」


「それはそうだが…」


「仲間を信じるのも大切ですよ。1人で出来ることなんて限られてるんですから。ね?アル?」


横目で同意を求めるとアルは顔を真っ赤にして狼狽えており、思わず首を傾げた。


「………お、お前のいう通りだとは思う。」


「えっと、うん。顔赤くない?」


「だ、そ、いや…」


茹で蛸のように首元まで真っ赤になったアルは視線を右往左往させ、とても小さな声で呟く。


「か、顔がちけぇって……」


「え?」


「クソ…なんなんだよ……勘弁してくれ…」


いつもの勢いはどこにいったのか、プルプルと小動物のように身体を震わせ一向にこちらを見ようとしないアルに萌えしか感じない。


なんだなんだ、恥ずかしいのか?

自分はいきなりほっぺチューとかしてくるくせに。


ニヤニヤが抑えきれず、さらに顔を近づけて互いの頬をくっつけると面白いぐらいに身体が跳ねた。

触れた頬はかなり熱く、冷えた私にはちょうどいい。

試しに一度そのまま頬をすりすりしてみると、ぎこちなくアルからもお返しがきた。


見たか人類よ。

これが可愛いの権化だ。


「ふふふ!どうですかクラウスさん!!私の幼馴染は尊いでしょう!?こんなアルが訪ねてきたら流石のパルメさんも陥落せざるを得ない!!新種の兵器ですよこれは!私たちの勝ちですね!!」


「……そうだな。なんか考えるのも億劫になってきた。」


「敵が身内にいるってこういう意味か。」


「もういい、末永くそうしててくれ。」


クラウスさんを含めた兵士さんたちは降参するように遠い目をして思い思いに呟く。

すると恥ずかしそうに小さく舌打ちをしたアルは、顔を赤くしたまま片手で私の身体を支え、もう片方を空に向けた。


「っいいかクソ田舎兵!!結界の補強の仕方を教えてやる!!だからその変な目でこっち見んな!!」


「「あー、うん。お願いします。」」


少しアルが手に力を込めると、兵士さんたちは真剣に空を見上げた。

私も見上げてみるけど綺麗な青空が広がっているだけである。


「こんな風に結界は…1番守りてぇもんを想像して魔力を込めるのが手っ取り早い。人でも物でもなんでも、近くにあるなら側に置いておけ。その方が安定感が生まれるからな。」


「…今のアルフレッドみたいに?」


「うるせぇ茶化すな雑魚兵が!!いいからあとはテメェらでやれ!!オレたちはもう行くからな!」


ムーンさんがニヤニヤしながら問いかけた内容に噛みついたアルは、私を背中におぶったまま足早に歩き出す。


「ちょっと!アタシらを置いていくなー!」


「リリー、これは空気を読んだ方がいいね?今は我慢しようね?」


「どういう事なのネェさん!」


リリーちゃんが私を追いかけようと暴れているのを何故かマリーちゃんが抑えている。

若干可哀想になってアルに耳打ちをする。


「ねぇ、リリーちゃんも連れて行ってあげない?なんか涙目だし。」


「…………………オレは」


久方ぶりに視線をこちらに向けたアルは、少し拗ねたように呟く。


「お前と2人がいい。」


「………………そ、そっか。」


「お前は?」


「えっ……と、うん。2人がいいかも。」


「かも?」


「いや、その、2人がいい……デス。」


なんか恥ずかしくなって小さめに呟くと、アルは嬉しそうに目を細めた後に私をおぶりなおした。


「行くぞ。」


「うん。」























「立派になったな。アルフレッド。赤飯でも炊くか。」


「「隊長が嬉しそうな顔してる!?」」


「ってちょっと!?置いて行かれちゃったよ!ネェさんの馬鹿!!」


「うーん……まぁ、うん。しょうがないよリリー?」


ここまでお読みいただきありがとうございます!


年明けからはいよいよパルメさんとの直接対決となりますね。


果たして軍配はどちらに上がるのか!?

来年こそアルは想いを伝えられるのか!?

レイちゃんは前世の記憶を思い出せるのか!?

話数は何話まで続くのか!?


というようなゆるい感じで、ぜひ来年もよろしくお願いいたします^_^

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― 新着の感想 ―
[良い点] アルが成長してるぅー! 2人がいいって素直に伝えられるようになって…っ! クラウスさんや兵士一同が見守っちゃうのがわかるわ〜 ほんとモブちゃんの言う通り、アルは可愛いの権化!キュンキュン…
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