転生者たちと、小さな村の第一関門②
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真面目な話が進んでいきますが、ところどころでイチャイチャさせてみせる!(変な使命感
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「え!?気絶しちゃったんだけど!?しっかりして兵士さん!」
「あーあ、やっちゃったっスネ。ネェさんの顔が怖かったんじゃないっスカ?」
「うっそ本気で!?微笑んだだけなのに!?大の大人を気絶させる笑みってなに!?私どんな顔してるの!?ちょっと気になるからだれか鏡貸し」
「は・や・く・い・け。」
目の前で兵士さんが気絶してしまった衝撃でパニックになっていると、こちらに飛んできたアルに勢いよく頬を引っ張られた。
「なに楽しそうにおしゃべりしてんだ?おかしいなぁおい。なんで1番簡単に死にそうなお前が緊張感皆無なんだろうなぁ?あぁそうか、喧嘩売ってんのか?」
「ひっ…い、痛い…ご、ごめ……」
「オレは計画通り動けって言ってんだよ…分かるな?分かったらとっとと、怪我しねぇうちに移動しろさもねぇとこの駄肉引き千切るぞ!!」
「痛いぃいいい!もう千切れそうだから堪忍して!!」
「うるせぇ馬鹿!テメェもだシラタマ!そもそもはお前の姿にその情けねぇソイツが気を失ったんだろうが!面倒ごと増やしがってクソが燃やすぞ!!」
「ネェさんとの扱いの差に驚きを隠せないっス。」
「あ"!?んなこと言ってる暇があんならさっさとそこの田舎兵を…」
片手をバキバキと鳴らしながら威嚇していたアルは、途端に目の色を変えて私を勢いよく引き寄せた。
たたらを踏みながらアルに抱き止められると、凄まじい爆風とともにさっきまで私が居た場所に人が突っ込んでくる。
「うぇえ!?ク、クラウスさん!!」
「ッチ、おい危ねぇじゃねぇか。この馬鹿が怪我したらどうしてくれんだテメェぶっ殺すぞ。」
私の幼馴染が辛辣すぎる。
ただそんなことを突っ込んでいられないほど、立ち上がったクラウスさんには明らかに血の気がない。
フラフラになりながらも彼は柔らかく笑って言葉を続けた。
「すまない。なかなか相手が元気いっぱいで手間取ってしまってな。」
「す、すみません1人で任せっきりにしてしまって。」
「問題ない。顔が見れただけで力が湧いてきた。私のことは気にせず避難してくれゴホッ!」
「いやダメでしょそれ!?すっごい吐血してますよね!?」
「これは……あぁ、そうだ。今朝飲んだトマトジュース的ななにかだ。」
「そんなので騙せると思ってるなら本気で病院行った方がいいですよ!?うまい言い訳思いついたみたいな得意げな顔やめてくれません!?」
「ダメか。」
「なぜいけると思ったんですか!?」
「「「ギャァアァアア!!」」」
耳を塞ぎたくなるような咆哮が響き渡るとアルが私を自身の背に隠し、手に力を込めて何かを放った。
一瞬で燃え上がる炎に唖然としていると、アルは大きな声で叫んだ。
「シラタマ!」
「はいっス!準備万端ッス!」
その言葉に頷いたアルはこちらを振り向き、まっすぐ私を見て呟いた。
「やれるなモブ。」
「う、うん。」
「よし。……モブ。」
燃え上がる炎に照らされたアルに向かって微笑むと、彼は顔を寄せて先ほどまでつねっていた私の頬に軽く口付けをした。
「へ、」
「分かってるな。終わったら、オレの隣に戻ってこい。待ってる。」
トン、と優しく肩を押されるとアルと距離が開く。
思わず手を伸ばそうとすると、アルは木刀を構えながら呟いた。
「シラタマ。」
「はいっス。」
私の視界は一瞬にして真っ黒になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
クラウスさんのところへ向かう前日の夜、私たちはある計画を立てていた。
「まず先輩とやらとの闘いになった場合、田舎兵どもはクソほど役に立たねぇ。邪魔だ。」
「邪魔ってお兄さん…」
「実力差がありすぎるし、そもそもオレとクラウスがいりゃ充分。」
「うっそなにそれかっこよすぎ!」
「っ、うるせぇ!話聞け!」
照れたように顔を赤らめたアルの頭を撫でくり回すと、調子にのるなと脳天にチョップを食らった。
ジンジンと響く脳内に少し顔を俯かせると、ため息を吐いたアルがさりげなく私の頭を撫でてくれながら話を続ける。
「それよりアイツらには魔物の大群に備えて準備してくれた方が遥かにいい。ということでシラタマ、余計な場所にいる兵士どもを1人残らず運んで関所に送り返して準備させろ。」
「え…何人いるっすかそれ。しかもオレが説明したところで言うこと聞くとは思えないっすけど。」
「方法は任せる。説得なら…しょうがねぇ。モブを連れてけ。」
「ぐぇ!?私!?」
途端に名前が挙がったことに顔を勢いよくあげると、なんとでもないという風にアルは言葉を続けた。
「馬鹿で単細胞で救いようもねぇぐらい雑魚だが、コイツの話なら聞くだろ。」
「まぁ確かにそうっすね。」
圧倒的に貶されてる感がすごいけど、雑魚という点については事実でなにも言い返せない。
「いいかモブ、シラタマと行動して兵士どもを説得して準備させろ。それがお前の仕事だ。」
「わ、分かった。その後は?」
「側にいろ。オレが守る。」
一切躊躇わず、そして強調したように告げられたその言葉に、少し頬が熱を持ったのは言うまでもない。
「ぐへっ。」
奇妙な声とともに地面に弾き出された。
勢いよく飛び出したため怪我をするかと思ったが、なにかの粘液が私の身体に纏わり付いてくれていたお陰で助かった。
突然の出来事に視線を左右に彷徨わせると、この場所が関所であることが分かる。
関所警備に残っていた兵士さんたちが唖然と私たちを見つめていた。
横を見れば私と同じように粘液まみれになった兵士さんたちが転がっている。
「アー……流石にこの量の人間を蓄えると胃がムカムカするっス。溶けてないといいんすケド。」
「ちょ、ちょっとまさか方法って…」
「?ネェさんたちを飲み込んで運んできたッス。流石にこの人数を運ぶには飲み込むしかないっすからネ。」
まさか飲み込むなんて。
じゃあこの粘液は、白玉の胃液やら唾液やらのものということか。
その結論にたどり着いた時、思わず粘液の塊を遠くに投げた。
「きっっっったな!!」
「守ってあげたのにそりゃないっすヨ!あーもうそんなコトより、早くコイツら治療したほうがいいっス!」
確かに。
唖然としている兵士さんたちにお仲間が怪我をしていることを告げると、彼らはすぐに行動を開始した。
治療にドタバタと忙しなく人が行き交う中、魔物の大群について伝えなければと話を聞いてくれそうな兵士さんを探す。
「あ、あの」
「ごめんな嬢ちゃん!あとで家まで送ってあげるから心配すんな!」
「そうじゃなくて」
「おいそっちの怪我人の状態はどうだ!?」
話なんて聞いてくれる状況じゃなくてワロタ。
そして響き渡る獣の咆哮に気持ちが急かされる。
「アルとクラウスさん、大丈夫かな。」
「旦那は問題ないと思うっすけど、あの兄さんは微妙っすね。何故かは分からないっすが、毒耐性が究極に低かったっす。」
「そうなの?」
「はいっす。いつも付け入る隙なんてないぐらい完璧なのに…きっとあの契約の魔女が先輩が殺しやすいようになんかしたっす。」
「じゃあ白玉だけでも早く戻った方が」
「はぁ!?なに言ってるんすかネェさん!ネェさんを置いて行ったら旦那に殺されるっすよ!」
「え、そんな馬鹿な」
「本気っすよ…!旦那の目から発せられる殺気が物語ってるっす!!」
あまりの白玉の熱弁ぶりになんだか可哀想になってきた。
だったら早く戻らなくては。
そう思い視線を巡らせると、ふと先ほど目の前で気絶してしまった兵士さんが身体を起こしている姿が目に入った。
仲の良さそうな2人が嬉しそうに彼に抱きついている。
あの人たちなら聞いてもらえるかもしれない。
「あのすみません!」
「あ、あの時の」
話の途中で粘液まみれの兵士さんたちの手をまとめて握る。
驚いたようにこちらを見た彼らに全力で頭を下げて告げた。
「協力してください!!」
「「「はい?」」」