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転生者たちと、小さな村の第一関門

いつもありがとうございます^_^


そしてブックマーク登録いただきましてありがとうございます!

励みになっております!

戦闘シーンは苦手ですが頑張って書いていきます!


今後ともよろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております^_^



前方から地面を震わせるような振動が伝わってきた。

巨大な何かが目覚めるような、そんな前兆を感じ取り思わずため息を吐く。


「クラウス。」


背後から声をかけられ振り返ると、甲冑に身を包んだリチャードが姿を現した。


「どうだ?」


「良くないな。」


「勘違いじゃなく?」


「残念ながら。」


リチャードから手渡しされた水を一口、口に含んで喉を潤す。

そして先ほどから小刻みに震えている聖剣の刀身にゆっくりと水を垂らした。


「そっちは?」


「こっちも残念ながら、だ。王都から全く応答がない。」


「そうか。」


「魔女に邪魔されてるとか?」


「あの魔女は契約を結ばないと魔法を扱えない。そして仮にそういう契約を誰かと結んだというのであれば、信号を発信すること自体できないはずだ。」


「ということは…」


「王都側の騎士団で、意図的に揉み消している輩がいるということだろう。弟とも連絡が取れないしな。まぁ無事だとは思うが。」


「軽いな。」


なんていうことだと頭を抱えたリチャードを横目で見ながら思考を巡らせる。


契約の魔女が姿を消して数日。


私たちはいくら聖女である純潔の魔女からの御言葉とはいえ、あの魔女にエミリー様を任せる気になれなかった。

さらに日が経つにつれて肌を刺すような殺気が渦巻き始めたことをキッカケに、王都へ人員の応援を要請したのだ。

しかし信号はうまく発信できているはずなのに、どういうわけか全く応答がない。

深刻な人手不足により、ここ数日はずっと幻影魔法を使って体を酷使している。


「こんなに長時間幻影魔法を使うはめになるとは思いもしなかった。」


「魂の半分を置いて来てまで、どうして石碑広場にそんな拘るんだ?」


石碑広場。

結界の中心部であり、祭りの際にエミリー様に襲いかかったあの黒蛇を始末した場所。

そこに固執する理由は1つ。


「勘だ。」


「え…勘で魂を削ってるのか?本気で言って」


リチャードの言葉を打ち消すように、今までで一番大きな衝撃波が地面を揺らす。

そしてそれと同時に激しい痛みが全身を貫いた。

どうやら半身が何かに襲われたようだ。


「っ…」


「クラウス!!」


あまりの衝撃に思わず片膝をつくと、手元に持っていた魔法石から切羽詰まった部下の声が聞こえてきた。


「申し上げます!石碑広場近くで爆発発生!突如黒い大蛇が出現し、負傷者多数!!このままでは抑えきれません!!」


「……そう来たか。ほら見ろ、勘は当たっただろう。」


「いやそんなことより大丈夫なのか!?」


「右腕ぐらいは持っていかれた衝撃だったが問題ない。」


苛立ちが抑えきれないような大きな咆哮が村中へ響き渡る。

食らいついた獲物が本体ではなく怒っているのだろうか。

そんなに心配しなくてもどこにも逃げたりはしないというのに。

魔法石に魔力を込めて応答する。


「その爬虫類の狙いは私だ。私が辿り着くまで半身を囮に使え。距離を保ちながら蛇を足止めしろ。」


「そ、そんなこと!」


「頼んだぞ。」


ブチリと会話を途中で区切り、額に浮かんだ汗を拭う。

そのまま無言でリチャードを見つめれば、彼は悟ったように頷いた。


「死ぬなよ。」


「善処しよう。ここは任せる。」


リチャードの拳に己の拳を合わせた後、全速力で坂を下る。

数年前にあの蛇を仕留めた広場は、不幸なことにも結界の中心部。

私の半身が被害を最小限に抑えていることを願って、ただひたすらに足を運んだ。


「「グルゥゥゥァアァアァア!!」」


悲鳴にも似たような雄叫びが近づいてくる。

どことなく漂ってくるのは腐敗臭。

そしてその蛇の姿を完全に捉えた時、ひさびさに死を身近に感じた。


血だらけになった腕を押さえながら攻撃を避け、剣は使わず魔法で牽制する自身の半身。

その魔法が直撃したのにもかかわらず、追撃を緩めない双頭の蛇。

4つの赤い瞳は狂気に震え、それぞれの牙からは赤い血液が滴り落ちる。


「た、隊長が防戦一方だなんて…」


「くそ…!俺たちだってまだやれる…!立つんだ!」


「あんな戦いに参戦なんて無理だろ…!」


部下たちも少なからず大怪我を負っており、どこからどう見ても完全に劣勢だった。


(それにあの蛇、確かに仕留めたはず。)


理由は不明だが、このまま魂を分けている状態ではまずいと判断した私は半身と蛇の間に割って入る。

私を噛み砕こうとした頭に下から剣を突き刺し、勢いよく引き抜く。

血飛沫が飛び散り悲鳴がこだまする中、片膝をついた半身の前に躍り出た。


「待たせた。」


「「た、隊長ぉおおおお!!」」


部下の熱烈な歓迎にとりあえず一度頭を下げ、すぐに半身に意識を集中させる。


「すまない。一撃食らってしまった。」


「気にするな。だがこのままではまずい。私の中に戻れ。」


横に並んだ半身の幻影魔法を解除し、魂を戻す。

私が辿り着くまでに半身が集めた情報が、一気に脳内に流れ込んで来た。


どうやら不意打ちで腕を引き千切られた際に咄嗟に頭を真っ二つに両断したようだ…が。


「下手に切れば頭が増える…?」


再度蛇を確認すればいつの間にやら頭は4つ、仲良く私を睨みつけている。

念のため指差し確認で頭の数を確認するが、結果は変わらない。


「………増えたな。」


「「「「ア"ァ"アァアア"アァアア"!!」」」」


4頭の咆哮を合図に戦いの火蓋が切られた。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





1人の新米騎士はその戦いを見て唖然とする。


彼は足に魔力を込めて跳び上がり、そのままの勢いで頭を1つ地面に叩き落とす。

その衝撃で脳震とうを起こしている蛇の頭の上から離脱しようとすると、他3つの頭が好機と言わんばかりに喜色を見せた。


それでも彼は仲間もろとも噛み砕こうと牙を向けて来た頭には鞘で顔面を張り倒し、小賢しく土の中に潜った頭には地形もろとも魔法で爆破。

最後に赤黒い光線を口元で溜め始めた頭を上へと蹴りあげ、明後日の方向へ光線を流す。


たった1人であの化け物と対等に渡り合えるなんて、人間の技とは思えない。


「俺、とんでない人の部下なんだな…」


「何言ってんだ馬鹿!今のうちに運ぶぞ!!しっかりしろ!」


「俺は上半身を持つからお前は足を持て!」


声をかけられ我に返り、重傷な仲間を視界に入れる。

あの爆発に巻き込まれたせいで気を失い、酷いことに身体が変色しかけていた。

あの蛇によって撒き散らされた毒だろうか。

早いところなんとかしなくては間に合わなくなってしまう。


ついこの間エミリー様に声をかけてもらって幸せを堪能できたかと思いきや、まさかこんな不幸がやって来ようとは。


自分も手伝おうと一歩踏み出すと、一度大きな地響きが鳴り響く。

恐る恐る後ろを振り返ればあのクラウス騎士団長が血を吐いて片膝をついた。

何が起こったのか、全く分からない。


そして4つの頭のうち1つがゆっくりと俺たちの方は視線を向けて、その瞳をギラつかせた。


「お、おい…」


「やばいんじゃないかあれ…」


訓練場の清掃を共にしてから仲良くなった2人も顔面蒼白になって震えだす。

そして苛立ち気に威嚇した蛇は口から少し小さめの蛇を吐き出し、俺たちへと襲いかかった。


「…っ避けろ!」


胸元を抑えながらも必死で俺たちを助けようと剣を振り下ろす騎士団長の姿に、俺も覚悟を決めた。

なんとか重傷の仲間と共に2人を突き飛ばして目を固く閉じる。


守った、俺は仲間を守った。よくやった。

ごめんな足痛いのに突き飛ばして。許してくれ。


予想できる衝撃と死への恐怖に思わず涙が出そうになると、なぜか身体が突然地面に叩きつけられた。




































「どけクソ雑魚兵士が。」


突然の罵倒に驚き目を開けると、丁度頭上を赤い閃光が通り過ぎる。

そしてすぐに響き渡る蛇の断末魔。

手にしているのは木刀のはずなのに、たった一発であの化け物蛇の仲間を仕留めた。


「おいおい騎士団長さんよ、何死にかけてんだ?やる気出せオラ。」


「……あぁ、すまない。」


ギラリと金色に輝く力強い眼光が、一瞬でこの場の雰囲気を支配した。

クラウス騎士団長も嬉しそうに笑って口元を拭い、立ち上がって再度剣を構える。

その熱い展開に騎士たちは全員拳を天に上げて思わず叫ぶ。


「「「少年キタァアァアア!」」」


「っい"!?うるせぇわクソが!!気持ち悪りぃ!!」


「もうその感じが癒しだわ!」


「ありがてぇ!ありがてぇ!」


鬱陶しそうに耳を塞ぐその姿が普段と変わらない。

そのことが今の俺たちにとってとてつもない安心材料だった。


「大丈夫ですか?兵士さん。」


「へ?」


ひっくり返ったまま少年を見つめていると、いつのまにか少女が俺に向かって手を差し伸べてくれていた。

気配が全くしなかった、というか陰が薄い

この子は確かあの赤髮少年の幼馴染。


恐る恐るその幼い手を取ると、少女は反対の親指を立ててニヤリと笑う。


「いやぁアルはカッコいいですよね!!分かります!えぇいいですよ!同担歓迎ですよ!兵士さんたちがアルの良さを理解してくれてお姉さん嬉しいなぁ!」


「気持ち悪りぃこと言ってんじゃねぇ!!」


「あらあら照れちゃって!よっ、カッコいいよ色男!!私の右手の疼きが復活する前に早く戻ってきてね!」


「うるせぇ!!いいからとっととシラタマと移動しろ!怪我でもしたら張り倒すからな!!」


「張り倒されたらそれで怪我するんだけど……まぁ行きましょうか!よろしくね白玉!」


「はいっす!あとネェさん、オレこっちっす。」


そんな戦いの最中とは思えない会話から、黒い蛇に似た白い蛇が目の前に突然現れ驚いた俺は見事に意識を手放した。


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