転生者は、お泊まりする③
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白玉の言葉に思わず自分の顔を片手で覆い隠した。
「先輩って……」
……誰だっけ。
目つきを鋭くさせたアルの様子から、私の味方ではないのだろうが全く思い出せない。
なんかすごい聞いたことあるんだけど全然思い出せない。
それでも私の動揺した様子を見て勘違いした白玉は、同意するように大きく頷く。
「オレですら信じられないっすよ。」
「間違いねぇんだろうな。」
その口ぶりから村に住んでいる人ではないことは分かるが…そもそも蘇らせたって単語がおかしくない?死んでるってこと?ホラー路線に行くってこと?全部幽霊のせいってことなの?そういうことなの?
最初の一歩で躓き脳内がしっちゃかめっちゃかになった私は、完全に置物と化した。
その一方でアルは普段より低いトーンで白玉へと声をかける。
「詳しく話せ。」
「はいっす。最初に気づいたのは同類の匂いっす。だから新しい部下をメディサマが送ってきたんだと思ったっす。」
ちょっと待て。
メディサマって誰。
新たな謎を放り込んで来るのやめて。
会話に割り込んで発狂したくなったが、隣のアルの重苦しい雰囲気のお陰でそんなことも出来そうにない。
もはや知ったかぶりをかまして話を聞くほかなかった。
「それでオレの前から姿を消したわけか。」
「人間に仕えているなんてメディサマに報告されたら間違いなく殺されるっすから。命は惜しいじゃないっすか。でも匂いは濃くなるのに一向にソイツがオレに会いに来なかったんで…」
ふふんと得意げに胸を張った白玉は堂々と言い放つ。
「直接メディサマに聞いてみたっす!!」
「は?」
「え?」
アルと白玉が互いの顔を凝視しフリーズする。
私もなぜ2人がフリーズしたか分からないためとりあえずフリーズする。
しばらくの沈黙の後一度咳払いをしたアルは慎重に、しかしどこか焦った様子で白玉へ再度言葉をぶつける。
「ソイツに一体、何を聞いたんだ…?」
「メディサマ、誰か新しい部下を派遣しましたかって聞いてみたっす。」
「へぇ…で?」
「どうしてそんなこと聞くのよって殺気を向けられたっす…それで、契約の魔女が村に来たからメディサマが抹消するために動いたんだと思ったっすって言ってやったっす!ほらメディサマってあの魔女のこと相当嫌ってるっす!だからオレがいるのも関係なく、裏から村ごと壊滅させようとしてもおかしくないなって思って!だから念のために本人に聞いてみたっす!!」
「…………。」
今の白玉の話で分かったことは2つ。
1つ、メディサマという人物は白玉よりも偉い魔物でパルメさんを嫌っているということ。
「一応聞くが、その話をメディサマとやらにしたのはいつだ。」
「3日前っす!!」
「じゃあテメェが魔物の大群がこっちに近づいてきているのを感じ取ったのはいつだ。」
「………3日前っす?」
そしてもう1つは、白玉はやらかしたということ。
その結論にたどり着いたその瞬間、アルは赤毛を逆立てながら白玉に殺気を向けた。
「確実にそのメディサマとやらがあの魔女潰すために魔物の大群を送ってきてるじゃねぇか!!!戦犯はテメェだこのクソ蛇!!」
「え!?いや!?あ、あれ!?」
「村を壊滅させるぐらいあの魔女を殺してぇ奴に居場所教えんじゃねぇよ!!」
「で、でも!そのあとに、メディサマじゃないならあの魔女が先輩を蘇らせたっすね。メディサマにも出来ないことが出来るなんて厄介っすね。なんでもないっす。ってちゃんと言ったっすよ!?」
「語るに落ちるのもいい加減にしろ!あの黒蛇がいねぇこともバラしてるじゃねぇか!!しかも出来ないことが出来るって…なに火に油注いでんだ!!煽りの天才かお前は!」
あ、そうか。先輩ってあのクラウスさんに殺された小さい黒蛇のことか。
アルのおかげでスッキリすることができた私は満足気に顔を上げると、タイミングを見計らったように右頬をアルにつねられる。
「テメェもなにスッキリした表情してんだ?あ"?ようやく思い出したか?」
「ヤ、ヤダナー。忘レテナンカナイデスヨ。」
「うるせぇ。バレバレだっつの。はぁぁ……やる事が多すぎる。片方は騙されて面倒な契約を結んでるわ、片方はいらねぇ喧嘩を吹っかけてるわ……あー胃が痛ぇ……。」
眉を寄せて深くため息を吐く姿に申し訳なさしか感じない。
こんな幼い(同じ歳だけど)アルに過重労働を強いてしまうなんて。
「ごめんね。好きなだけつねっていって。」
「……これに懲りたらもっと警戒心持てよ。」
私の言葉に呆れたように続けたアルは、つねるのをやめて頬に優しく触れた。
そして猛省している白玉を一瞥するとさらに言葉を続ける。
「飼い蛇をちゃんと見てなかったオレも悪い。あのクソ真面目もいるんだ、なんとかなんだろ。」
「だ、旦那ぁ…!ごめんなさいっす!悪気はなかったっす!」
「抱きつくな!!…もう余計なことすんじゃねぇぞ。いいか?次やったら土に埋めて肥料にしてやっからな。」
「はいっす!!」
なんだかんだいって仲良しの2人を見て心がほっこりしていると、リビングのドアが開きおじいさんが戻ってきた。
「お風呂の用意ができたぞい!ん?なんじゃなんじゃ?3人で固まって?ワシも仲間に入れておくれ!」
「来んな暑苦しい!!ほらモブ、先に入ってこい!」
「いいの?ありが…」
ここでふと思い至った。
もし友達の家にお泊まりしたら、ぜひやってみたかったこと。
繋いでいた手を引っ張ると、期待に満ち溢れた私の目を見て警戒するようにアルが身体を逸らす。
「……おい、手離せ。」
「せっかくなら一緒にはい」
「ふっっっっざけたこと言ってねぇで行ってこいクソが!!!!!」
顔を真っ赤にしたアルに転送魔法を使われ、気がつけば誰もいない脱衣所に1人呆然と立っていた。
ま、そうだね。ダメだと思ったよ。
アルと離れたことでジクジクと疼きだした右手が大暴れしないうちに、気にせずお風呂に入ることにした。
その後普段通りにお風呂から戻ってきたレイ・モブロードに、問答無用で手刀を入れるアルフレッド・フォスフォールの姿があったとか。