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転生者は、抱きしめる

いつもありがとうございます^_^


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ピンボールのようにバウンドして地面に叩きつけられる。

草原に着地しているため痛みはないが、衝撃が強くて脳が震えた。

それでも髪の毛についた葉っぱを落としながら、私はゆっくりと立ち上がった。

この作業、実に今ので16回目。


「もうやめろ。」


ふと気づくと丘の上にいたはずのアルは、すぐ目の前で座り込んで私を見つめているではないか。

驚きとともに条件反射でアルを捕まえようとすると、あと数センチのところで見事に弾き飛ばされた。


「…同じこと何回もやりやがってこの単細胞が!!オレの心臓潰す気か!!」


「うーんそんなつもりはないんだけど。」


「お前の無意味な突撃だけを永遠と見せつけられるこっちの身にもなれ!って準備すんな!!そのうち死ぬぞ本当に!!」


「じゃあ中に入れて。」


完全に参った様子でこちらを見ている彼に親指を立ててにこやかに微笑む。


「言っとくけど入れてくれるまでやめないからね!」


「笑顔で言うことじゃねぇ!!」


何度も何度も弾き飛ばされ、疲れが溜まった私はアルと同じように座り込む。

すると深くため息を吐いたアルが鋭くこちらを睨みつけた。


「ほっとけって言ってんのが分からねぇのかよ。」


「うん。」


「この野郎……」


「ごめんね。」


「謝るならやるな。」


「無理。」


意味がわからないというように顔を歪めるアルに思わず苦笑する。


「その顔、全然分かってないでしょう。」


「さっぱりだ。脳味噌腐ってんじゃねぇの。」


「辛辣すぎる…。」


よっこいしょと6歳児が言ってはいけない掛け声をかけながら胡座をかき、アルを見つめた。


「私にとっては意味があるの。さっきも言ったけど、アルと一緒にいたいからね。」


「ただそのためにあんな馬鹿みてぇに突進してきたのか?」


「そうだよ。私は魔法は使えないし、馬鹿だからあれしか思いつかない。」


「どうしてそこまで。」


「本当に分からないの?」


何を言っているんだと目を丸めるアルに、深く深くため息を吐く。

今までの環境がそうさせたのだろうか?

それにしたって彼は自分に自信がなさ過ぎる。

仕方がない、一から説明をしてあげようと背筋を正した。


「アルは私にとって無条件で信用できる人だよ。どんな時も助けてくれるし、頼れるし。いつも感謝してる。」


「な、なんだよ。」


「そんな癒しを提供してくれるアルには、私も何か返してあげたいと思うわけですよ。」


「…は?」


完璧について来れてないアルに微笑むと、大きく伸びをして言葉を続ける。


「だから、私もアルにとって気が抜ける相手になれたらいいなーって思って。そしたらお互い側にいるだけで癒されるって最高最強。」


「……。」


「嬉しいこととか、辛いこととか、くだらないこととか話し合って…互いの背中を押しあえたらいいと思わない?それに1人で悩んで解決することってそうあることじゃないと思うから。これ、経験談ね。」


前世の、経験談だけど。


ゆっくりとアルの頬へ手のひらを近づける。

どんなに力を込めてもやはり結界に阻まれており触れることはできないが、それでも想いが伝わればと手を伸ばす。


「もちろんなんでも話してくれたら嬉しいけど、言いたくないなら別にいいよ。ずっと側にいるから、手伝えることがあったら声をかけてくれればそれでいい。」


「なんだよそれ…なんでそんなに受け止めようとしてくれんだよ。」


「大切な人の力になりたいのは当然でしょう。」


「っそんな価値、オレにはねぇ。」


震えた声で呟くその姿から、アルの凍え切った心に触れた気がした。

1人は寂しい。悲しい。

その心を暖めるにはどうすればいいか。

普段と変わらない声のトーンでアルに話しかける。


「ねぇ。」


「なんだよ。」


「お菓子パーティーでもしない?」


その言葉に一瞬肩をビクつかせたアルは脱力したように言葉を発した。


「……今の流れでどうしてそうなる。」


「アルが変なこと言うからお説教も兼ねて。それに実は前々から計画してたんだよ。」


「お説教って…オレが怖くねぇのか。」


「その話題何回目ですかお兄さん。私を害さないいい人ランキングナンバーワンのアルがなに言ってんの。」


「そんな奇妙なもんにオレを載せんじゃねぇ。…ジジイだってビビってたんだぞ。」


「それは君たちが大喧嘩したからでしょう。破片とかすごかったよ本当。あとで一緒に謝りに行こうね。」


彼に向かって伸ばしていた手のひらは、いつのまにか冷え切ったアルの頬へと届いていた。

私がそのまま頬を撫でると、怯えるように身体を震わせる。


「アル、大丈夫だよ。なんともないよ。」


「…本当か。」


「うん。」


「痛くねぇか。」


「全然。それよりもアルのすべすべな肌が羨ましい。」


「呆れてねぇか。」


「むしろ私の方が今の発言でアルに呆れられてもおかしくないと思う。」


そっと私の手に自分の手を重ねたアルは、もういつも通りの綺麗な金色の瞳だった。


「側にいてくれんのか。」


「私でよければ。」


「モブ。」


「なに?」


「…………っ。」


大丈夫、分かってるよ。

まだまだ自分の気持ちを口に出せないアルに向かって優しく微笑む。


「お菓子パーティー、いつにしようか。」


「………勝手に決めとけ。」


不器用に笑ったアルの笑顔を見て、衝動に任せて彼を強く抱きしめた。


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