転生者は、突撃する
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やはり自分は悪魔だったのだと思い知らされた。
もうなにも視界に入れたくなくて、固く固く瞳閉じる。
ジジイの話を聞いて「やっぱり」と納得する冷静な自分と、「嘘だ」と泣き叫ぶ自分が交互に顔を出す。
魔力を生きている限り吸い尽くされるなど、身体中の血液を垂れ流しにしていることと同義。
一体どれほどの苦痛が伴うかなんて、魔法を他人に教えられるほどの実力を持つ母親なら分からないはずがない。
死ぬまで解放されない呪いを抱え、母親は死んでいった。
この事実をどう消化すればいいのか分からない。
落ち着かなければ。
感情を制御しなければ。
これ以上なにも壊したくない。
言い聞かせるように頭を抱えるとこちらを覗き込むような人の気配を感じる。
ゆっくりと目を開くと自分と同じ背丈の黒い影がこちらを見てニタリと微笑んだ。
嘘つくなよ。
オレはずっと我慢してるんだ。
どうせ生きてる限り誰も幸せにならないんだから、いっそのこと全部壊してまっさらにしちまおうぜ。
壊せ壊せ壊せ壊せ。
思考が黒く塗りつぶされていくその瞬間、チリッと辺りの防御魔法になにかが引っかかった。
そのなにかが異様に気になってふらりと視線を向けると。
「え、ちょ、あ、あれ?なんで?嘘でしょ?」
結界を無理やり通ろうとしたのが祟り、無様にも身体が途中で抜けなくなってしまった幼馴染が目に入った。
いや、正確には結界があることに気づかずに突っ込んだせいでこうなったのだろう。
こちらから見れば上半身が結界に埋もれているのが分かるが、アイツはこちらに来ようと若干屈んだだけで動けなくなったように感じた筈だ。
焦ったようにブラブラと宙で手足をばたつかせたかと思えば、オレの視線に気づき期待するように動きを止める。
なぜここにいるのかという疑問よりも、捕まえたという感覚の方が強かった。
さながら獲物を捕まえた時のような高揚感に、思わず身震いをする。
「「…………………。」」
長い沈黙とともにオレに助けるつもりがないこと(呆気にとられているともいう)を悟ったモブが、焦ったように視線を揺らす。
そして瞳を潤ませ大きく息を吸い込んだのを合図に、オレと黒い影は無意識に両耳塞いだ。
「こんな時に大変申し訳ございません!!お手を貸してもらえませんか!?なにとぞぉおおお!」
あいからわずうるせぇな。
手始めにアイツから壊すのもありだと思うぜ?
勝手に結界に引っかかって泣き叫ぶ馬鹿を見てその黒い影は愉快そうに呟く。
それだけはあってはならない、が。
一瞬でもその光景を想像してしまった自分に、ほとほと嫌気が差した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
見事なまでの醜態を晒すことで私の心は崩壊寸前。
まさかこの期に及んで黒歴史を更新していくことになるとは思わなかった。
「ね、ねぇ?アル?アルくーん?聞いてる?」
先ほどからずっと声をかけているのに、肝心のアルは私をじっと見つめたまま一言も発しない。
その金色の瞳は心なしか少し濁っているように見える。
なるほど、確かに相当堪える出来事があったようだ。
それでも何かにとても怯えていたように見えた先ほどよりはマシだと思い、めげずに声をかける。
「あのー…この誰得怪奇現象をなんとかしてもらえませんかね?いやほんとわざとじゃないんです。せっかく一人で静かに悩んでいたところ申し訳ないんですが、ほんとたまたまなんです。」
「………たまたまで結界に突っかかる馬鹿はお前ぐらいだ。」
喋った!!
アルがひたすらに低い声で言葉を発して若干寒気がしたが、そんなのどうでも良い。
返事をしてくれたのが嬉しくてニコニコしていると、苛立ち気に舌打ちをされる。
「今はお前と構ってる気分じゃねぇんだよ。帰れ。」
「動けないから無理。」
「じゃあ手伝ってやるから帰れ。」
「手伝ってほしいけど帰らないよ。大丈夫、邪魔しないで大人しくしてるから。」
「現在進行形で邪魔してんのは誰だ。目障りだから消えろ。」
おお、心なしかいつもより毒がある気がする。
それでも以前アルと喧嘩した時のようにならないよう、自分の気持ちは正直に伝えようと口を開く。
「でも私はアルと一緒に居たいから帰らな」
「黙れ!!!」
アルの怒声に反応するように身体が急に後ろへと弾き飛ばされた。
お陰様で結界とやらから抜け出すことは出来たようだが、盛大に尻餅をつく。
「……出ていってくれ。今、何するかわかんねぇんだよ。」
頼む。
アルは私から逃げるように視線を背け、頭を抱えた。
何をするか分からないから出て行け?
おいおい本気で言ってるかい少年よ。
その様子を見て即座に自分のやるべきことをまとめると、ズボンを捲し上げ準備体操を始めた。
「……何やってんだ。」
「アル、そんなこと言われて素直に帰る人間だと思ってるの?」
私の言葉に不安そうに顔を歪めた彼に微笑んで距離を取る。
いい道筋を選んで一度頷くと、地に手をつけてクラウチングスタートの姿勢を構えた。
「おいまさか…」
「このレイ・モブロードを舐めすぎだっての!!!」
一気に体重をかけ、全力で走りだす。
焦ったように言葉を発するアルだが、止まる気はさらさらなかった。
先ほどよりスピードがあるから、また弾き飛ばされでもしたらひとたまりもない。
それでも既に裸足でここまで来ている時点でボロボロだから今更なこと。
そんな悲しい顔をしているアルを放っておく選択肢なんて、間違いに決まってる。
「そーんなよく分からん見えない結界なんかでこの私を追い払えるわけないでしょう!このおバカさんめ!!害虫並みのしぶとさを見せてやんよ!!」
「言い方もっとなんかねぇのか!ってそこは!」
盛大なアルのツッコミを受けた瞬間、何かを踏み抜いた感覚とともに浮かび上がる自身の身体。
私の名前を叫ぶアルの声を聞きながら、来るべき衝撃に備えた。