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転生者は、赤を探す

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パルメさんが意味深な宣戦布告をしたその後。

平和な村の様子は一変し、クラウスさんもとい騎士団長から厳重警戒令が発令された。

内容としては至極単純で、契約の魔女パルメが行方をくらませているため必要以上に外を出歩いてはならないというもの。

そして絶対に彼女と契約を結んではならないというものだった。


「お嬢さんは不可抗力とはいえあの魔女と契約をしてしまった。申し訳ないがしばらくは家で待機してほしい。」


とても辛そうに顔を歪めるリチャードさんの言葉に頷き、私を迎えに来た父親に連れられてその場を去ったのは記憶に新しい。


「さぁワシらも帰ろう、アルフレッド。」


「…………。」


クラウスさんから招かれざる客の正体が契約の魔女だと伝えられたときのおじいさんの強張りと、パルメさんから何かを告げられたアルがおじいさんに支えられながら立ち去ったあの後ろ姿もだ。


アルの呆然とした表情に不穏な空気を感じ取ったが詳しく話も聞けず、それどころか迎えに来てくれたお礼も言えずに別れてしまった。


(おじいさんがいるから大丈夫だとは思うけど。)


この焦燥感は一体、なんなのだろうか。


しかしその疑問は晴れぬまま数日が経ち、というか晴らす云々以前に大きな問題が立ちはだかった。


「くぁああ!右手が疼くっ!!」


『レイちゃんガンバレー!』


パルメさんの野郎、私との契約を解かないまま姿を消しやがった。


正確には騒動が収まっていないからということなのだろうが、毎日厨二病紛いの台詞を言わなければならないという生き地獄に苦しめられる。

両親には心配をかけたくないため笑顔を振りまいているが、この右手がパルメさんの手を求めて仕方がない。

気がつけば窓に手をかけている自分がいて、この契約の強力さに慄いてしまう。


『ミーたちが代わりに手を繋いであげるヨ!』


『我慢してレイちゃん!ガンバレー!』


可愛い妖精たちが声をかけてくれると、不思議と少し衝動が安らぐから不思議だ。

先程下に降りた時父親が私の右手を凝視していたから、恐らくは妖精たちがそこに集っているのだろう。


「はぁ、このままだとなんにもできないよ。」


『アァ!レイちゃんが落ち込んでル!』


『あのパルメ許さナイ!』


『でもミーたちじゃ太刀打ちできないヨ…』


妖精たちの心配を受け、なんとか気持ちを奮い立たせる。

気合いを入れた私は妖精たちに声をかけた。


「この騒動を終わらせればいいんだ。パルメさんをどうにかしないと。」


『パルメはねちっこいカラ、きっとまたすぐに姿を現すと思うヨ!』


『でもレイちゃん1人じゃ一瞬でゴミのように処分されちゃうネ!』


「……正論だけどもっとオブラートに包んでくれないですかね。」


それにパルメさんを前にしたら謎の吸引力でさらに擦り傷だらけになってしまう可能性大だ。

下手に動けばクラウスさんやエミリーちゃんの足を引っ張りかねないので、慎重に動く必要がある。


「さてどうしたものか。」


『レイちゃんやめた方がいいヨ!!』


『ソウダヨ!アルも今それどころじゃないシ、大人しくしといた方がいいヨ!!』


「……やっぱりアル、何かあったの?」


『ウン。』


『ソレハモウ!』


そして妖精たちは普段と変わらない様子で、だが私にとって心臓を凍りつかせる発言をぶちかました。


『あれからズット魔力反応がブレブレなノ!精神状態が不安定デ、トーッテモ危険!』












◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇









気がつけば妖精たちの制止を振り切り、両親にも無断で窓から飛び出した。

どっかのスパイ映画さながらカーテンを伝って外へ出て、はやる気持ちで裸足のままアルの家を目指す。

数回コケそうになったが関係ない、呼吸を整える暇すら惜しんで荒く扉をノックした。

ゆっくりと開けられた扉の先に見えたのは、ガラスや食器類が散乱した荒れ果てたリビングと…


「ど、どうしたのおじいさん!」


痛々しく右腕を吊ったおじいさんの姿だった。


数日前には怪我なんてしていなかったのに、一体これはどういうことか。

曖昧に笑ったおじいさんは、私の質問に答えることなく優しく私の背中を押して言葉を続ける。


「レイちゃん……1人でここに来ては危ないじゃろう?ワシがお家まで送ろう。」


「待って、待ってよ!」


必死に身体を捻って再度部屋を確認するが、やはり気配すらしない。

信じられない気持ちを込めておじいさんの瞳を見つめると、彼は私の背中を押すことをやめて無言で見つめ返してくる。


私の脳内は今までにない危険信号を発しているが、不思議とそのままするりと言葉が口から飛び出した。


「なにがあったの?」


「……………。」


「どうして怪我してるの?白玉は?…アルは?」


「っ。」


「っおじいさん!!」


「レイちゃん……。」


煮え切らない様子のおじいさんに思わず声を荒げると、悲しそうに顔を歪めたおじいさんは脱力してその場に座り込んでしまう。


「いずれはアルフレッドに話さなければならないとは思っておったが…まさかあの契約の魔女が乗り込んで来ようとは思いもしなかったのじゃ…。」


「おじいさん?」


身を切り刻まれそうなほどの嫌な予感に身震いしながらも、おじいさんの背中をさすって先を促す。


「すまん、すまんのぉレイちゃん。意味が分からないとは思うが………あの子は今、危険な状態なのじゃ。とても君に会わせることなど出来ん。なにも聞かずにお家に戻っておくれ。ジジイの一生に一度のお願いじゃ。」


その言葉を告げたおじいさんの表情を見て、かつて生首を蹴り飛ばしていた少年の狂った笑い声が脳裏に蘇った。


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