転生者は、今後の方針を決める
積み上げた座布団に座り、膝を思いっきり叩き注目を集める。
「それでは第2回、緊急会議を開きます。」
『ヒューヒュー!』
『キンキューカイギー!』
「静粛に願います。」
「あ"あ"!?なんも喋ってねぇじゃねえか!……つうかそんな座布団積み上げんな。降りろ。ガキかお前は。」
「少なくともまだ4歳だよ。心配してくれてありがとう。」
「してねーよ!!勘違いすんな!」
前回より少し賑やかになった会議。
議題はもちろん、今後のことについてだ。
「それでは妖精代表、ゴルゴンの肝の獲得にはどれほど時間がかかりますか。」
『ハーイ!今はゴルゴン達は睡眠期間だからあんまり取れないと思うヨ!多分1ヶ月くらいカナー?』
『ちなみにエマの病気が進行してるカラ、これがラストチャンスになると思うヨ!』
「…そんなに進んでるの?お母さんの病状。」
『進んでるネーしょうがないネー。』
なるほど、悠長にしている時間はあんまりないわけだ。
「おい…お前の母さん、具合でも悪いのかよ。」
「うん?ああうんそうなんだよね。石病っていうやつなんだけど…」
『アルのおじいちゃんと同じ病気だよネ!』
「そうそう同じ…って……え?」
おいなんだよと私に聞いてくるアル。
あまりの衝撃に頭がついていかない。
「アルのおじいさん、具合悪いの?」
「……なんでそんなこと聞いてくんだよ。」
「妖精さんが言ってた。」
「いらねぇことをペラペラと!!全部捕まえて売りさばいてやろうか!」
『ヒャー!オッカナイ!』
アルが1人で飛び回っている姿を尻目に考える。
(もしかしてあのポーションをおじいさんのために使おうとしてたのかも…)
あれで助けられるかもと思ったのに、私が探してるのを知って返してくれたのだ。
私の頭も優しく撫でてくれたおじいさん。出会ったのは一昨日だが、知ってしまった以上、放っておくという選択肢はなくなった。
(互いに平和な生活を営むためにも、助けられるのであれば…)
「ねぇ妖精さん。そのおじいさんの病状はどのくらいなの。」
「おい!」
『ウーン、もっと近くで見てみないとワカラナイけど、タブン2週間くらいでアウトー!』
『しかもあのおじいさんはもっと重たい症状ダカラ、もっともっと素材がイルヨ!』
なんてこった。2週間だと…?
しかも素材がもっといるなんて。
これはやばい、時間がない。すぐにでも行動に移さねば。
「おいどうした。」
顎に手を置き動かなくなった私を見て、1人跳躍をやめ近づいてくる。
「コイツらになに言われたか知らねぇが、お前には関係ねぇよ。大人しくお前の母さんの薬を」
「関係ない……わけないでしょう?」
アルの肩に手を置き、真剣に訴える。
思わず力が入るが気にしていられるか。
「いい?アル。私はあのおじいさんとは2日ぐらいの付き合いだけど、優しい人だなって思ってる。まだまだたくさんお話したいし、夢だったお隣さん同士でバーベキューとかしてみたい。」
「……あ?バーベキューってなん」
「いいから聞いて。私はねワガママなんだよ。何より家族と平和に暮らしたいの。特にお母さんなんてお隣さんができて嬉しそうだったから、私はそれを守りたい。なにか出来ることがあるなら、諦めたくないの。オーケー?」
「……………」
「そしてアル。妖精さんたち曰く……おじいさんにはあんまり時間がない。」
「……っ。」
「アルは、おじいさんともっと一緒に居たくないの?」
お前、やっぱりうるせぇな。
そう言ったアルの声が心なしか少し震えていた気がしたので、頭をヨシヨシ撫でたら無言ではたき落とされた。痛い。
「そこまで言うならなにか策があるんだろうな?」
「私は魔力のカケラも持ってない凡人。だけど、ご心配なく。力強い味方がここにいる。…………さぁ!妖精さん!お願いがあります!」
『ハーイ!!ナニー?』
「全ての素材入手を手伝って!むしろ、持ってるのがあれば頂戴!!2週間以内に!」
「図々しいやつだなお前!!」
「もちろん!手伝ってくれた暁には!君たちの住処をより豪華にするよう、父親に掛け合うことをお約束しましょう!」
『ホントー!?』
「私が嘘をついたことがありますか!」
『ナイー!レイちゃん最高ー!』
「分かればよろしい、では散開!」
『アイアイサー!』
アルが周りをキョロキョロ見回し、ため息を吐く。もうツッコむことにも疲れたようだ。
「ほんとに出て行きやがった。………信用できんのかよ妖精を。」
「もちろん、あの子たちは私の自慢の家族だからね。それに見てよこの妖精の粉の量。なんだかんだ頼られて嬉しいんだ。かわいい奴らめ。」
「そうかよ……お前ほんとになんなんだ…」
「一般人。」
「一般人が妖精を使いっ走りになんかしねぇよ!!」
彼らはきっと私たちのために全力を尽くしてくれるだろう。だが彼らに甘えすぎるのも良くない。
「さてアル。記念すべき初お仕事だよ。」
「はっ……なにすんだよ。」
「私たちも出来る限り材料を集めなくちゃ……そのためにも村に行かないとね。ということで両親の説得を手伝って。……あ、でもお父さんが面倒だな。やっぱり可能であれば1人で説得してきて。」
「ほんと他人をこき使うなお前!!」