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少年は、夢を見る

いつもありがとうございます!


気づけば10月ももう終わりですね……

早い!早すぎる!!


今後もよろしければブックマーク登録、評価、そして感想などお待ちしております^_^


「起きて。起きなさい。」


誰かに呼ばれている。

ふわふわとした感覚なまま薄目を開ければ、淡い光に包まれた人影がオレを見下ろす。

寝首を掻くわけでもなく、ただひたすら声をかけてくるだけ。

その声はどこかで聞いたことのあるものだったが、果たして誰だったか。

まだ活動を開始していない脳を起こすべく大きく寝返りを打つと、可笑しそうに笑い声が聞こえた。


「もう。いつもはもっとしゃきっと起きれるでしょう?」


「うるせぇ…」


「あ"?……そんなにゴロゴロしたいならお望み通り魔法で居眠りクソ虫に変えるわよ。」


そんなお願いはしていないし、そもそも居眠りクソ虫なんて知らない。

どことなくその発言に既視感を覚えながら再度寝返りを打ったその時、焦げ茶色の瞳と目があう。

そして慈しむように細められた眼差しを受けて、全身に衝撃が走った。


「さぁ起きなさい。アルフレッド。」


「……っ!か、」


飛び上がるように身体を起こした反動で心臓が痛い。

急いであたりを見回すが視界に映るのは面白味のない自室と。


「ど、どうしたんじゃアル?」


なぜかオレに手を伸ばしていたジジイのみ。


「………おいなんだよこの手は。」


「お前さんにしてはよく寝ているから、念のため生存確認を」


「張り倒すぞ。」


「よしよし!元気そうでなによりじゃ!」


そういえば昨日の夜の身体の怠さが嘘のように消え失せている。

そのことに安堵しつつも、己の単純さに思わず苦笑した。

熱を出した後の罪悪感と不甲斐なさに眠れないと思っていたのに、たった一枚の紙が安眠をもたらすなんてなんと女々しいことか。


「いやぁレイちゃんのお手紙のお陰じゃな!早いところハートを射止めんと!」


「っうるせぇわ!死ねジジイ!」


「ひさびさに直球じゃの!だがワシはこの手にひ孫を抱くまで死ぬ予定はない!!」


「まだ言ってんのかそれ!しつけぇよ!」


喚くジジイの鳩尾に一発かまして黙らせ、頭を数回掻き毟る。

まだ起きて数分だというのに、今日はやけに懐かしいことを思い出す。


「…そ、そういえばアル。夢でも見ていたのか?あんなに勢いよく飛び起きるなんて珍しいのぉ。」


「…あぁ。とんでもなく懐かしい夢を見た。」


「どんな夢じゃ?」


「忘れた。…おいジジイ、体調が悪いとかそういうことはねぇか?」


「?ワシは元気じゃよ?シラタマくんもリビングでご飯食べとるし。」


「ならいい。」


焦げ茶色の瞳であの声といえば間違いない。

まさか此の期に及んで母親の夢を見るなんて、一体どういうことなのだろうか。


(それにあの雰囲気はなにかを警告するような感じだった。)


だがジジイの病がぶり返したわけでもなく、シラタマがなにかやらかしたわけでもない。

あと気になるとすれば幼馴染だが。


「お母さんが夢に出てきて心配になった?……多分アルはまだまだ甘えたりないってことなんだよ。しょうがないなぁ、私が甘やかしてあげよう!!さぁ!どっからでもかかっておいで!!」


(め、面倒くせぇ。)


馬鹿正直にモブの安否確認をすれば確実にこう言ったやりとりが繰り広げられるに違いない。

両手を広げてオレへと詰め寄る光景が容易く想像出来た。

別にそれも悪くはないのだがオレと2人っきりで過ごせる場所を探していたと聞いただけでこの体たらくなので、変な甘やかせ方をされると死ぬ可能性がある。

つうか確実に心臓止まって死ぬ。


ああ、考えていたらあの憎たらしい顔が恋しくなってきた。


(とりあえず起きて様子だけ見に行くか。)


若干頬に熱が集まったが気にせず立ち上がる。

いつも通りあの馬鹿は12時ごろまで寝ているはずだと時計の針を見ると、愕然とした。


「…っはぁ!?12時半!?」


「そうじゃよ。おそようじゃおそよう。」


「早く起こせよクソジジイ!!ッチ、アイツもう起きてるじゃねぇか!」


急いで立ち上がりリビングへ向かおうとすると、ジジイがオレの手を掴む。

邪魔するなと伝えるため振り返ると、嫌に真剣な表情を浮かべたジジイと目が合う。


「アル、今日は家から出るんじゃない。」


「は?なんで?」


「ついさっき警告の笛が鳴ったんじゃ。レイちゃんのご両親も彼女を家から出さんじゃろう。今日は大人しくしとるんじゃ。」


警告の笛が鳴るということは、関所に厄介な野郎が来たということだ。

オレだって面倒ごとは御免だから普通は二つ返事で了承するのだが。


(なんだか嫌な予感がする。)


すると玄関を叩く音が聞こえシラタマが玄関を開ける音が聞こえてきた。

相手はなにかやけに焦っているが、これもまた非常に聞き覚えがある。

すぐにジジイと一緒に玄関へ向かうと、そこには取り乱した様子のモブの父親の姿があった。


「ど、どうしたんじゃ!?警告の笛が鳴ったのに外に出てはいかん!」


「ご、ごめんなさい!でもレイちゃんはここに来ていないですか!?」


「モブ?」


「今日は早起きしたから6歳記念にお手伝いするって言って買い物に行ってくれたのに、戻ってこないんです!買い物袋は妖精たちが持って帰って来てくれたからアルくんのところに避難しているかと思ったのですが…」


「ネェさん来てないっすよ?」


「あぁ!じゃあやっぱりまだ村の方に!なんてことだ!!」


「っ一人で行くのは危険じゃ。ワシも行こう。」


チラリと外を見れば妖精たちがオレを手招きしている。

ということは十中八九、巻き込まれてやがるなアイツ。

面倒ごとホイホイにも程があるだろ。


急いで部屋へと戻り、素振り用の木刀を手に持つとジジイにバレないようシラタマへと声をかける。


「お前はあの2人の側にいろ。もし何かあれば蛇になってもいい。必ず守れ。」


「………っす。」


その返事を聞いた後に転送魔法を使おうと魔力を込めると、目敏く気がついたジジイが目を見開く。


「アルフレッド!!どこに行くつもりじゃ!」


「とにかく関所にいないか確認してくる。そこにいなけりゃとりあえずは安心だろうが。」


「それはそうじゃが…待てアルフレッド!!」


「待たねぇよ。」


ジジイの制止を振り払い、オレは一瞬で姿を消した。


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