転生者と、黒ローブの女②
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関所内にある待合室。
そこのふかふかのソファに座るパルメさんと私はクラウスさんの訪れを待つ。
先程は自分の愚かさを呪って少し落ち込んだものの、あのダニーとの交戦を乗り切った私にとってこんなことは些細なことだ。
早々に自己嫌悪をやめ、生き残るため手を繋ぐことに専念している。
パルメさんが約束した通り私にはなんの被害もない。
そしてどこにも確証はないのに、私の直感は彼女が契約を必ず守ることをよく知っている。
その余裕からか今では置いてある目の前のお菓子をかけて、親指相撲をしてしまうほどだ。
「あらぁレイちゃん強いわぁ。また負けちゃったぁ。」
「こう見えても親指相撲には自信があるんですよ。というわけでこのお菓子は私が総取りしますね。」
「容赦ないわねぇ。でもいいわよぉ、約束は守るわぁ。」
ほらね、絶対破らない。
若干のドヤ顔を決めていると大きな音を立ててリチャードさんが部屋へと入ってくる。
そして私たちの様子を見て、盛大に顔をしかめた。
「まさかとは思うがこの状況で指相撲とかしてないよな?」
「もぐもぐ…あんまりにも騎士様が遅いから退屈なのよぉ。そうよねぇレイちゃん?」
「ぼっふべばふばふぼ。」
「ほらぁ、レイちゃんもそう言ってるわぁ。」
「お嬢ちゃん肝座り過ぎ!!隣にいるの結構タチの悪い魔女だから!もっと緊張感持ってくれ頼む!見ている俺の方が心臓が痛い!!」
「酷いわぁ…大丈夫よぉ、約束を破らなければなぁんにも怖くないわぁ。ただ可愛いお手てを繋いでるだけでいいのよぉ?こんなに平和な約束はないでしょぉ?」
「そうですよ。過ぎたことを後悔しても意味ないですから。それにパルメさんは契約を破らなければ私の安全を保証してくれてますし、この際死ななければもうなんでもいいです。」
「あらあらぁレイちゃん男前ねぇ。素敵よぉ。」
「お、幼い子の発言とは思えない…。」
頭を抱えてしまったリチャードさんに申し訳なく思いつつも、総取りしたお菓子を片手でポシェットに入れながら問いかける。
「それでどうなりましたか?」
「あ、あぁ。そろそろエミリー様を連れて到着するだろう。表に出てくれ。」
「やったわぁレイちゃん。アナタが居てくれたおかげねぇ。適当に選んだんだけどぉ、思った以上に円滑に進んで助かっちゃったぁ。」
「適当ってパルメさん……。」
「だっていいところに居たんだものぉ。呑気なレイちゃんが悪いのよぉ?」
この四面楚歌の状況で鼻歌を歌うパルメさんには言われたくない。
そんな言葉を飲み込んでリチャードさんの後ろを歩いて行くと、前方に大きな人だかりが見える。
そこには聖剣エクスカリバーを携えたクラウスさんと、明らかに具合がよろしくない様子のエミリーちゃんの姿があった。
そしてエミリーちゃんとクラウスさんの姿を捉えたパルメさんは体を震わせながら呟く。
「見つけたわぁ……あぁ……本当にそっくりなのねぇ……」
私と手を繋いでいることを忘れてしまっているのか、今までとは比べものにならないほどの握力で握りしめられる。
「パ、パルメさん…痛い…」
「あぁ…あぁ…あの子があそこにいるのよぉ。感動しちゃうわぁ。早く挨拶をしに行かなくちゃぁ。」
そう呟いて熱に浮かされたかのようにフラフラとよろけながら2人に近づいたパルメさんは仰々しくエミリーちゃんにこうべを垂れる。
「アナタがそうなのねぇ…会いたかったわぁ。本当に会いたかったわぁ。この時をどれだけ待ち望んだことかぁ。」
狂気染みたその様子にエミリーちゃんは一歩後ろに下がりクラウスさんの背中へと隠れる。
「アナタ誰なの?エミリー知らない。」
「……下がれ。それ以上近づくな。」
「エミラァ、エミラァ…あぁ……なんて素晴らしいのぉ。」
クラウスさんが警戒するように刀を構えたのに気にせず突き進むパルメさん。
いや気にせずというよりは、エミリーちゃん以外見えていないとでもいうべきか。
殺気を込めるようにクラウスさんが目を細めたのを合図に、私は思わず全体重を後ろへかけてパルメさんの動きを止める。
「止まって!!」
「……?」
「私の友達のエミリーちゃんを怖がらせないでください。」
「……どういうことぉ?オトモダチィ?」
パルメさんは苛立ちを滲ませながら私を引き寄せた。
「エミラにオトモダチはいないわぁ。アナタの勘違いよぉレイちゃん。間違いなのよぉ。」
「パルメさん違います。貴方の前にいるその女神はエミラとかいう人ではなく、エミリーちゃんです。そしてエミリーちゃんは私の友達です。」
パルメさんをしっかりと見つめて告げると、数秒沈黙した彼女は不気味に八重歯を覗かせて低く呟いた。
「……………そうねぇ、確かにぃ、まだ、エミリーちゃんね。」
パルメさんの含みある言葉に違和感を覚えながら、強く握られる手の痛みに顔をしかめる。
「おかげで役目を思い出せたわぁ。ありがとぉレイちゃん。」
「っ!!お嬢ちゃん!!」
「……え。」
リチャードさんが焦ったように声をかけてくる声を聞きながら、振り払われた自分の手を呆然と見つめる。
「でも水を差さすのは良くないわよぉ。お仕置きねぇ。」