転生者の動揺と、少年の葛藤
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ありがたやありがたや…
そんなこんなでツンギレアクセル全開で参ります笑
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椅子にもたれかかるように座りながら、なんとなく窓の外を眺める。
我が家近くの木の枝にどうやら小鳥が巣を作るようだ。
ピィピィと鳴きながら互いに励まし合いながら枝を集め、未来の我が子のための巣を手作りで組んで行く様子を見て思わず呟く。
「これがいわゆるおしどり夫婦。」
「ピィピピィ」
「おおっとごめんごめん。遠慮しないで続けて続けて。」
「ピピピ」
仲睦まじく2匹で助け合いそして時には毛繕いをしあう姿を微笑ましく眺めながら、昨日から続くこの嫌な予感に私は悩まされ続けていた。
気を紛らわせようにも今日は妖精の夜渡り当日。
妖精たちと会話はおろか今回はお手伝いすることすら叶わない。
お茶をがぶ飲みしながら両親との今朝のやりとりを思い返す。
「え、留守番?なんで?」
朝早く両親に叩き起こされたかと思えば、重装備に着替え目つきを鋭くさせた両親が大げさに頷く。
「妖精たちが例年になく荒ぶっているからね。妖精の夜渡りの前のお香は僕たちで置いてくるよ。危ないからレイちゃんはお留守番だ。」
「え?そんなに?」
「このままだと牧場自体が燃えてなくなるぐらいの勢いよ。」
「気をつけて行ってらっしゃい。」
誕生日前日なのに放っとかれるなんて、寂しいじゃないかこのヤロー。
瞳をギラつかせた両親の背中を見送った私は二度寝をする気にもなれず、ただひたすら時間を持て余していた。
「やることなくて寂しいわ…」
「ピピピ」
「君たちが羨ましいよ鳥ちゃんたち。」
私も意味はないがノリで枝でも集めてくるかと腰をあげ、おもむろに玄関の扉を開ける。
田舎ではあるが念のため鍵を閉めようと振り返ると、ドアの真横で何かを呟きながら我が幼馴染が頭を抱えてしゃがみ込んでいた。
え?なにやってるの?
そして珍しく私に気がついていないようだ。
声をかけようかと思ったが考え事を邪魔するのもよろしくないだろう…ちょっと面白そうだし。
静かにアルの横に座って呟きを盗み聞く。
「ッチ!あのクソジジイども覚えてやがれ…」
苛立ちげに頭を掻き毟るアルは項垂れながらも続ける。
「そもそも焚きつけんなら具体的な案を…そこが一番分からねぇんだろうが…!」
(おおキレてるキレてる。)
独り言を零しながら青筋を浮かべる様子が面白いが、何かを深く思い悩んでいるようだ。
そして私の家の前でしゃがみ込んでいるということは…今度こそ私に相談をしに来たのでは?
これはいい時間潰し……間違えた、お手伝いが出来そうだと瞳を輝かせた私はアルの頬を突きながら声をかける。
「なになに?なにが分からないの?」
「あ"!?んなもんアイツの誘い方に決まって!?」
ぷにっとアルの柔らかい頬に人差し指を突き刺したまま、その衝撃発言に固まる。
アルも私がいることにようやく気づき、だんだんと顔を青白くさせた。
おいおい待て待て聞いちゃったぞ!?
「お、おま…い、いつから…」
お構いなくアルの両肩を掴むと鼻息荒く問い詰める。
「ふっふっふっ!あのクソジジイどもの辺りからバッチリと!!」
「……あぁ、そっからか。」
ふぅと安心したように息を吐いたアルを揺さぶりながら興奮が収まらないうちに怒涛にまくし立てる。
「それよりそれよりなんですか!悩み事かな少年!!ふふん水臭いじゃないの!その話を詳しく!」
「っうるせぇ!出直すからこっち来んな!」
「え!?なんで!?なんで出直すの!?ちょうど寂しくて死にそうだったんだって!一緒に居てお願いしますなんでも手伝いますから!!」
そんな私の想いに答えるように、帰ろうとしていたアルは錆びついたオモチャのようにゆっくりこちらに振り向いた。
好機と見た私は彼が逃げないようにしがみつき、好奇心を滲ませたままニヤリと微笑む。
「さぁさぁ!!遠慮せずに!」
青白い顔を引きつらせたアルの額から、一筋の汗が流れ落ちた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はいはいどうぞ!粗茶ですが!」
冷えたお茶を満面の笑みで差し出す。
一方アルは何故か緊張した面持ちで背筋を伸ばし、お茶を無言で睨みつけている。
おやおや緊張しているのか?
だが安心したまえ。なにも心配いらない。
刺激しないように警戒が解けるまで本題には入らず、しばらく経った後に彼が肩の力を抜いてお茶を口に含んだタイミングを見計らって問いかけた。
「それで誘い方って!?どこかデートに!?」
「ゴフッ!!」
漫画のように吹き出し盛大にむせる。
「ゴホッゴホッ!!」
「お、おお…」
涙目になりながらこちらを鋭く睨みつけるアルに苦笑し、謝罪の意を示すように背中を軽くさする。
「ハァ…ハァ…テメェふざけんなよ…!!」
「ごめんごめん。…で?どうなの?」
「………」
ボフッと顔面から湯気が立ち昇り、視線を凄まじい勢いで逸らす様子に確信する。
どうやら私が余計なことをしなくても、彼は彼なりに行動をしようとしていたようだ。
目覚ましいアルの成長ぶりに感動と少しの胸の痛みを感じる。
……ん?なぜに痛み?
少しの違和感を振り切るように左右に頭を振ったあと、気を取り直して早口で言葉を続ける。
「ねーいいじゃん!どこに行くのか教えてよ!村の中っていうと行けるところ限られてるからさ、そこを私もリチャードさんに聞きたかったわけで!」
「うるせぇ!…ってちょっと待て。なんであのクソ筋肉野郎が出て来んだよ。」
「え?(アルとエミリーちゃんが)2人っきりで過ごせるデート場所を教えてもらおうと思ってたの。なんか詳しそうじゃない?」
「……は?」
「でもまさかアルから行動を……ってどうしたの?」
今までに見たことがないほど顔を赤らめ、硬直する姿に言葉を区切る。
すると途端に椅子から立ち上がったアルは無言で玄関の方へ歩き出す。
心配になり後ろをついて行くと外に出た途端、アルの真上から修行僧が浴びるような大量の水が降り注いだ。
「え!?あれ!?また!?なにやってるの!?」
「冷えろ冷えろ冷えろ冷えろ冷えろ冷えろ冷えろ冷えろ冷えろ……!!」
「確かに冷えるかもしれないけども!?やめなよ大洪水だよ!?」
やめさせるために近寄ろうとすると、彼は赤面のまま右手をこちらに突き出し私の動きを制止する。
「見んなこっち来んなクソモブなんなんだお前本当にオレの事殺す気か調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
「息吸って息!深呼吸して!」
「こっちはいっぱいいっぱいだっつの!それなのになにがデ、デ、デートだクソが!!だあああああああああああああ!!」
「もう水はダメだって!風邪引くってお兄さん!」
「うるせぇ!!なにもかも全部お前のせいだろうが!!」
「ぜ、全部!?ごめんって!だって大切なアルの」
「っ!だからそれをやめろ!!クッソ!!!あぁもう責任とれ!!」
最後まで言葉を言わせてもらえないまま。
胸元を強く握りしめたかと思えば、髪の毛からポタポタと水滴が落ちるほどのずぶ濡れの状態で大股で近づいてくる。
(あーあ、またぺつアルになってる。)
そんな私の失礼な考えなど露知らず、アルは勢いそのままに私の頬に口付けた。
口付けた?なんで?
「…え?」
「今日の夜!!寝たら殺す!!じゃあな!」
「は、はい?」
なにが起こった?
呆然と口付けられた頬を押さえたまま、転送魔法を使って姿を消したアルを見送った。