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転生者は、身震いする


いつもありがとうございます!!


また評価いただきましてありがとうございます!

励みになっておりますーー!


今後も更新していきますので、よろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!


関所にある訓練場。

その清掃を任された3人の兵士たちが遠巻きに成り行きを見守るのはある3人組の動向である。


1人は45度の完璧なお辞儀を披露する少女。

1人はそんな少女を仁王立ちで睨みつける赤髪少年。

そしてもう1人は苦笑しながら間を取り持ついい歳したおっさん。


「……なにやってんのあれ。」


「いつものじゃれあいだろう?」


「いいなぁ…俺も幼馴染欲しい…」


「……ならなんでリチャードさんまで巻き込まれてるんだ?」


互いに顔を見合わせ再度場違いなおっさんの姿を見て首を傾げると、鈴の音のような澄んだ声が聞こえてきた。


「ねぇなんの話?」


「「「え、エミリー様!!」」」


後ろから声をかけて来たのは保護対象である聖女様の生まれ変わり、エミリー様。

幼いながらもその光輝く美しさに目眩がする。

可愛らしい大きな瞳を瞬かせる少女に背筋を正し、敬礼する。


「し、失礼いたしました!いらっしゃることも気づかず…!」


「ううん!エミリーが勝手に来ただけだもの!それよりどうしたの?どうしてモブちゃんがお辞儀してるの?」


「い、いや詳しくは分からないのですが…」


「ふーんそうなんだ。クラウスは?」


「騎士団長なら自室かと思われます!ご、ご案内しましょうか?」


その言葉に数秒考えたエミリーは眩しい笑顔を見せて言葉を続ける。


「大丈夫。リチャードに連れてってもらうことにする。ありがとうね。」


「「「え、エミリー様!素敵!」」」


緑色の髪をなびかせながらあの3人組の方向へ走る後ろ姿を見ながら、2人の兵士はうっとりと微笑む。


「お綺麗だなぁ…エミリー様。」


「あぁ。今日はいいことありそうだな…って、おいどうした?」


そのうちの1人はじっとエミリーの後ろ姿を眺め、首を傾げる。


「いや……()()()()にエミリー様が外に出てるって初めてじゃないか?」


「そうかぁ?」


「気のせいじゃね?それより掃除の続きをしないと。団長がまたシュンとするぞ?」


「たまに子犬みたいな顔するもんな。あの顔であの表情は分かってやってるよ。」


「お、おう。」


その違和感が何を示すのか、彼らには知る由もない。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








なんてこった。


休憩スペースの机に突っ伏して一瞬でバレてしまった自分を呪う。

すると怒りが収まった様子のアルがうつ伏した私の頭を叩き、声をかけて来る。


「項垂れんな。その机あんまり綺麗じゃねぇぞ。」


「ねぇ、なんであそこに隠れてるのが分かったの?本当に一瞬でバレたよね?」


「あ?………いやあんな分かりやすいところにいたら誰だって気づくっつの。」


「えぇ?そんなに?へこむわぁ…」


「いやいやアルフレッドがお嬢ちゃん専用の騎士だからだよ。主人の位置をすぐに把握できるなんて、まだ稽古を始めて日が浅いのに騎士としての素質があるんだなぁ…。」


「はぁ!?て、適当なことぬかしてんじゃねぇよ!!埋めるぞ!!」


「はいお嬢ちゃん。冷たいジュースでもどうぞ。」


「無視すんじゃねぇ!!」


自らの才能のなさに落ち込んでいて話を聞いてなかったが、目の前に甘いジュースを差し出してくれるリチャードさんに感激した。


思わず両手でリチャードさんの手に触れ、全身で感謝の意を示す。


「くぅっ!優しいリチャードさん素敵!素敵おじさま!!」


「それは光栄だな。」


「っ!!ふざけんなクソ単細胞ゴリラが焼却してやらぁ死にらせ!!」


「なんで!?」


「がっはっはっ!ジュースをあげるのもダメか!」


私とリチャードさんの間に無理やり割り込んで来たアルは、訝しげに私を見つめ問いかける。


「そういえばお前何しに来たんだよ。今日は関係ねぇだろ。」


「ん!?え、えっと…それは…」


「?」


思わず不思議そうにこちらを見るリチャードさんを凝視すると、なにかを察したアルが青筋を浮かべながらこちらに近づいて来る。


「なに隠してやがる。」


「いやいや特には隠してないよ!?」


「嘘つけ!!じゃあなんで今コイツを見た!」


「それは……」


見つかってしまった以上隠し通すのは困難だろう。

むしろアルに伝えてともに計画を練った方がいいのかもしれないが、昔のように焦ったアルが一帯を洪水にしてしまう可能性も拭えない。


さてどうしたものかと考え込んだ数秒の沈黙がさらに苛立ちを助長させたのか、アルは一度大きく舌打ちをして威嚇するように手の内から爆発音を連発させた。


「言いたくなきゃいい。……だがクソ筋肉!テメェはダメだ!木っ端微塵にしてやる!!」


「…俺はなにも知らないぞ?」


バチバチと手のひらを発火させながら明らかに殺す気満々でリチャードさんに詰め寄るアルに、両手を広げて行く手を阻む。


「なにしてんの!?」


「オレの知らねぇところでクソモブにちょっかい出してんなら問答無用で燃やす。」


「どういう発想!?リチャードさんには相談したかっただけだよ!」


「あ"!?そんなゴリラになにを相談すんだよ!!役に立たねぇだろうが!」


「役に立たない…」


「あぁ!リチャードさんが落ち込んだ!」


「知るか!!」


ショックを受けたように軽く俯くリチャードさんの様子に、これ以上はと腹を括ったその時。


「みんなおはよう。」


「「エミリーちゃん/様!?」」


(やばいよ!2人揃っちゃったよ!)


今は会いたくなかった絶世の美女到来。


2つに結んだ髪の毛を下ろし少しウェーブがかった髪をなびかせて歩いてくるエミリーちゃんに慌てるが、いつもと違う雰囲気に違和感を覚える。

その違和感は、髪型だけではないような。


するとリチャードさんがすぐにエミリーちゃんに近づき、大きな声で叫んだ。


「どうしたのですかエミリー様!!」


「今日はワタシがクラウスに会いに来たの。聞きたいことがあって。」


「……っ要件があるなら私から伝えておきます。すぐにご自宅へ」


「嫌。今すぐクラウスのところに連れて行って。」


「……かしこまりました。」


緊張した面持ちで膝をつくリチャードさんの様子もおかしい。

そして()()()()()()()()()をアルに近づけてはならない。

この直感は、絶対に間違ってはいない。


「おいモブ?」


気づけばアルの姿を隠すように立ち、不思議そうに瞬きをする彼女を見つめる。


「貴方、誰なの?」


「っ、お嬢ちゃん!」


その言葉に驚いたように目を見開いた彼女は、私を止めるように声をあげたリチャードさんを片手で制し一度くすりと笑って小さく呟く。


()()()()()()()だよ?レイちゃん。」


『その時が来るまでカンニングはしちゃダメだヨ!レイちゃん!』


彼女が発した言葉に被せるように、脳内で聞き覚えのある声が木霊する。

しかもその台詞、以前もどこかで聞いたような。


「行こうリチャード。」


脳内をぐるぐるとかき乱される感覚に顔をしかめたのをしっかりと確認した彼女は、くるりと後ろを向いてそのまま関所内を目指す。


「………今日はもう帰りなさい。明日は妖精の夜渡りだから牧場も大変だろう。相談についてはまた今度話を聞くから。」


リチャードさんは私の頭を数回撫で、アルに目配せをして彼女の後を追う。


「なんだアイツ。」


「後をつけてみる。」


「は?何言ってんだお前。」


なぜかは分からないが私には分かる。

アレはエミリーちゃんではない。

エミリーちゃんの身体を使ってやってきた、ナニカである。


「今のはエミリーちゃんじゃない。」


私の様子を見て心配そうに眉を寄せたアルは、静かに手を握り優しく引き寄せた。


「すげぇ顔だぞ。ちょっと休め。」


「平気だよ。」


「何処が平気なんだよバカ。無理をしねぇって約束、忘れたとは言わせねぇぞ。」


「うっ……でもきっとエミリーちゃんだって何かに巻き込まれて」


「そんなに心配ならオレが見てくる。」


「ダメ!!」


それだけは絶対にダメ。

震えながらアルの手を握りしめると、それに合わせて彼も強く握り返す。


「何をそんなに怯えてんのか知らねぇが、どうせお前みたいな鳥頭には理解できねぇから考えるのはやめとけ。」


「ひ、ひどい…」


「それに後をつけなくても、便()()()()をあのババアからもらっただろ?あのクソアマの弱みを握るにはいい機会だ。覗き見てやろうぜ。」


アルに軽く抱きしめられるように腕を回され、身体が宙に浮く感覚に瞳を閉じる。


甦る光景は一度もこちらを振り返らず歩く彼女の姿。

あの後ろ姿に聖者の片鱗を見たというのに、なぜこんなにも不安になるのだろうか。


更なる嵐の予感に、思わず身を震わせた。



ここまでお読みいただきありがとうございます!


そろそろレイちゃんも6歳となる時期がやって参りました。

5歳にはダニーと対峙しましたが、6歳でも色々大変なことが起こる予定です笑笑


モブなのに大変だねレイちゃん!頑張って!(他人事


今後もよろしくお願いいたします^_^

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