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召喚労働者はじめました  作者: 広科雲
14/59

14 異世界人管理局

 異世界人管理局は多忙であった。

 二日前・7月11日の夜に起きたゴブリンによる畑での略奪および傷害事件、昨日12日の薬草採取班との遭遇戦と、大きな問題が発生している。

 この問題に対し異世界人管理局は野外作業警護班の人員を増やす決定をした。総務部広報課在籍のパーザ・ルーチンは、決定に従い作業依頼書の変更を行う。この時点で、パーザは不安を抱えていた。そしてそれは現実となる。

 翌朝、パーザは受付台に立った。

「昨日の薬草採取作業にてゴブリンを負傷させたとはいえ、まだ周辺にいる確率は高く、非常に危険な状態です。よって、警護班を2名増員いたします。」

 居並ぶ召喚労働者サモン・ワーカーたちに伝え、募集をかける。しかし、候補者は一人として出なかった。

 いくつかの原因がある。

 そもそも、レベル3以上の召喚労働者の数が必要作業に対して少なく、慢性的に人手不足であった。これは、依頼者が経験者を望むからである。さらにレベル3以上の『仕事のできる』人間は指名がかかる率もあがり、危険な警護作業などしなくとも仕事には困らないので当人も受けようとはしない。加えて、レベル3になると同時に勇者候補生として訓練所に入所する者もおり、しばらくは仕事自体からも離れてしまう。そして出てくると同時に民間ギルドに流れる者もいる。管理局の仕事に旨味がないからだ。

 次に、警護の仕事に不安を覚える者が多い。訓練所を出たところで実戦経験はない。未知の生物相手にまともに戦える神経など、普通の人間が持ち合わせているわけがないのだ。異世界人の勇者候補といえば聞こえはいいが、実際に関わるとわかる。彼らも一市民でしかないのだと。ランボ・マクレーのような召喚当時からの戦士など、ごくごく稀な存在だった。そんな小市民に実際のゴブリン被害を見たあとで警護に行ってくれと頼んだところで、腰が引けるのは当然だ。むしろ今まで定番で警護をしていた者が、今回のことに怖気づいて辞めなかったほうが驚きだった。

 結局、他の仕事が埋まっても警護班の増員だけは決まらなかった。

「大丈夫でしょうか」

 後輩のベル・カーマンが先輩を見る。パーザにもわかるわけがない。もしかすると運よくゴブリンは消えており、問題なく仕事をやり遂げて帰ってくるかもしれない。

「課長に報告しますか?」

 もう一人の後輩、ツァーレ・モッラも不安そうな表情を隠そうともしない。

「わたしがする」

 パーザは残された二枚の依頼書を手に、三階の総務部に向かった。

 総務部広報課課長は、彼女の報告を不満げに聞いた。それは人員確保ができなかったことへの憤りではなく、面倒くさい話を振られたからだ。

「埋まらなかった? そういう日もある。気にすることはない」

 課長は耳を貸そうとせず、自分に与えられた書類に眼を通した。

「……それなら、部長に伺ってきます」

 苛立ちを抑え、彼女は課長に背を向けた。

「待ちたまえっ。部長に話すまでもない。この件は終わったんだ。ご苦労さん。自分の仕事に戻りたまえ」

 課長はパーザの手から依頼書を奪い取り、破り捨てた。

「……失礼します」

 パーザは拳を握って退出した。相変わらずの事なかれ主義、お役所仕事だ。彼女は配属されたときから変わらない管理局の体制に怒りを覚える。そしてそれに呑まれていった自分にも腹立たしさがあった。

「何度、転属を希望したかっ。こんないい加減な仕事が許されていいのか訴えてきたかっ。だからみんないなくなるのよっ。信用させずに捨てられるのよっ。わかりなさいよ、ホントに……!」

 パーザは一階事務所の扉を叩き開け、自分のデスクで新たな書類を作成した。

「パ、パーザさん……?」

 ベルが恐るおそる先輩の様子を窺う。

「急ぎじゃないなら後にして」

 ベルを見もせずに作業を続行する。後輩は脅えて引き下がった。

 「ちょっと出てきます」パーザは作ったばかりの書類を手に、立ち上がった。

「どこへ行くんですか?」

「……知らない方がいいわよ」

 パーザは異世界人管理局を出て行った。

「どうしよう、課長に報せた方がいいかな?」

 ベルは後輩のツァーレにオロオロしながら問いかけた。

 ツァーレはしばし考え、「パーザさんのお考えを信じましょう」と微笑んだ。

「え、大丈夫かな」

「わかりません。ですが、わたしはパーザさんが好きですから」

「それ、理由にならないと思うな……」

 ベルの言葉に、ツァーレはただ光の神(シャイネ)の印を切った。

 パーザは怒りを原動力に、外区8番街へ踏み込んだ。南門に通じる大通りからは外れており、治安がよいとはいえないエリアである。

 当然、身なりのいい若い女性は、すぐに目が付けられた。朝から行き場のない若い男が二人、彼女の背後に忍び寄った。

「おねぇさ~ん」

 猫なで声で呼び止められ、パーザは振り返る。と、いきなり背後から抱きつかれ、動けなくなった。

「放しなさい! 管理局の者よ!」

「管理局……? だからなに? オレたち、市民権もない無法者だぜ? 官憲の威光なんざ効かないねぇ」

 男たちは笑う。

 パーザの苛立ちは限界を超えた。その怒りをぶつけるように、勢いをつけて後頭部を男の鼻に喰らわせた。

 男は激痛に悶え、彼女を放す。

「こいつ……!」

 もう一人がナイフを取り出した。だが、パーザは怯まない。スカートの革ベルトを抜き、地面を叩いた。

「ケダモノが!」

 彼女は憎しみさえ込めて吐き捨てた。さすがの男たちも、尋常じゃない女に怯んだ。

「やれやれ、凶暴さに磨きかけてどうすんですか」

 両者の間に鉄鎧の男が割り込んだ。

「……ブルーさんですか。お久しぶりですね」

「いやもう戦闘モードを解除してくださいよ。久しぶりってカンジがしないんで」

 ブルーは苦笑した。数年ぶりに遇った管理局の受付嬢は昔よりも尖りすぎて、さすがにちょっと怖かった。

「ブルーさん、あんたの知り合いかい?」

「ああ、ずいぶん世話になった人だ。この人に手を出したらギルド・メンバー(ウチの連中)も黙ってないぞ。今後は気をつけろよ」

 男たちは低頭し、非礼を詫びて下がっていった。

「外区も変わらないわね。どこもかしこも、まったく……」

「そんなグチを言いに来たんですか?」

「いいえ、別件です。ギルドまで案内してください」

「はぁ」

 ブルーは意外な答えに驚いた。パーザ・ルーチンは民間異世界人組合ギルドが嫌いであったはずだ。それが何の用であろうか。まさか――

「嫌いが過ぎて、壊滅させにいくわけじゃないですよね?」

 「なにを言ってるんです、あなた?」今度はパーザが疑問符を浮かべた。

「ちょっとしたお願いがあるんです」

「お願いねぇ……」

 ブルーは詮索せず、彼女をギルドへ案内した。

 彼女の姿を眼にすると、ギルド所属の召喚労働者サモン・ワーカーたちは驚いた。しかもギルドでも古参のブルーが先導をしている。これは不吉な予感がすると、誰もが思った。

「失礼致します。わたしはパーザ・ルーチン。異世界人管理局から来ました」

 ブルーが開けた扉を潜り、パーザが挨拶する。視線が一気に彼女に突き刺さり、唾を飲む者もいる。

「ここは管理局の人間が来るところじゃない。とっとと帰りな」

 カウンターで酒瓶を拭いている壮年男性が言い放つ。

 しかし、パーザは引き下がらない。まっすぐ彼のほうへと歩いていく。

「あなたがギルド・マスターですね。初めまして」

「オレはあんたにも管理局にも義理はない。痛い目にあう前に帰るんだな」

 男は彼女を見もしなかった。黙々と酒瓶を拭いている。

 パーザは退かない。手にしていた二枚の書類をカウンターに並べた。

「なんだ、そりゃ……?」

 初めて男は興味をもった。同じ文面が記された、二枚の紙を流し読む。

「見ての通り、作業依頼書です。時間は8時から14時。場所は西の森。内容は薬草採取作業班の護衛。人数は五名。うち三名はすでに確定済み。報酬は税抜き30銀貨シグル。以上です」

 彼女は一息で言い切り、ふぅと息を吐いた。

 途端、ギルド内は爆笑に包まれた。

「たった30銀貨? なんだそりゃ」

「相変わらず管理局は労働者ワーカーから巻き上げてんのか」

「採取に護衛がいるかよ! 自分で戦えよ!」

「こんな仕事も埋まらないわけ? もうあそこ終わりだろ」

 口々に出る嘲笑をパーザは無視した。何を言われようと関係はない。目的は一つだけだ。

「聞いたろ、ねーさん。全員、やる気はない。帰りな」

 マスターが依頼書を押し返した。

「……お願いします」

 彼女は頭を下げた。

「無駄だって言ってるだろ。やるもやらないもこいつら次第なんだからよ」

「お願いします、手を貸してください」

「わからねー人だな。こんな金じゃ、こいつらは動かねんだよ。だいたいにしてな、護衛なんぞ集めても無駄骨になるかもしれねーだろ? なにも起きなきゃ金の払い損だ。管理局員ならむしろ金が浮いたって喜ぶとこだぜ。あんたがそこまで頭を下げる理由がわからねーな」

 パーザはギルド・マスターに頭を下げたまま反論した。

「わたしには請けた仕事を完遂させる責任があります。でもそれ以上に、わたしには彼らを守る義務があります。大丈夫かもだとか、何とかなるだろうで済ませるわけにはいかない。無駄であろうがなかろうが、わたしは自分ができる精一杯を持って彼らを助けます。彼らが無事仕事を終え、帰ってくるまでがわたしの仕事なのだから」

 ギルドを包んでいた笑い声は消えていた。

 ギルド・マスターは酒瓶を棚に戻し、給仕の一人に言った。

「これ貼っとけ」

 給仕はうなずき、二枚の作業依頼書を持って掲示板に貼り付けた。

「ありがとうございます」

「やるヤツがいるかまでは責任もてねーぞ」

「はい、けっこうです」

 パーザは微笑んだ。

「いらない心配だけどな」

 ブルーが貼ったばかりの依頼書を取った。

「そのとおり」

 もう一枚も破り取られる。だぶついた白い服の少女だった。

「ブルーさん……。それと、ピィさんだったかしら」

「ピィちゃん」

「ああ、やはりピィさんですね。ありがとうございます」

 パーザは懐かしさに和んだ。

「なんでぇ、行く気があったならとっとと持ってきゃいいじゃねーか」

 マスターが鼻を鳴らした。

「いちおうギルドの中だからな。マスターの顔を立てないわけにはいかないだろ」

「それこそ余計な世話だ。やりたいようにやれ。それがオレたちだろうが」

「今度からそうする。……ピィ、行くぞ」

「ピィちゃん……」

「その呼び方はイヤだっつってんだろ!」

 二人は自分たちの商売道具を担ぎ、扉を開けた。

「ほら、パーザさん、行くぜ。ここにはもう用はないだろ」

「ええ」

 パーザは凛としてギルドを出て行った。

「やっぱいいなぁ、パーザさん。相変わらずカッコイイや」

 ギルドの一人が言った。

「なんだよ、さっきさんざん嫌味いってたくせに」

「あれはマスターの方針だからしょうがねーだろ。管理局の人間にはとりあえずナンクセ付けろって」

「ああ、そうだそうだ。そりゃマスターが悪いな」

「なんだ、おまえら。オレのせいにする気か?」

 ギルド・マスターが二人を睨む。

「実際そうだから仕方ない」

「女をいじめろとは教えてねーぞ」

「あの人、あれくらいじゃ折れないっすよ。話きいたらマスターもきっと惚れるっす」

「聞かねーでも充分だ」

 マスターは新しい酒瓶を取り、磨きはじめた。

「しかし、結局はブルーがいいとこ持っていっただけだな」

「まったくだ、今夜はヤツの金で飲むぞ」

「ていうか、今からはじめようぜ。どうせあいつ、金を持て余してるしな。知ってるか? 使い道がねーからって魔術師協会までいって高い金払って魔法覚えてきてんだぜ?」

 ギルドでは朝から酒盛りが始まる。ここでは日常だった。

「ただいま」

 険のとれた顔で戻ったパーザ・ルーチンを、ベルとツァーレが出迎えた。

「お帰りなさい、大丈夫でしたか?」

「なにが? 何も問題はないわよ」

 パーザはデスクにつき、書類の決裁を始めた。

 ベルとツァーレは笑顔を浮かべ、先輩にお茶を入れ、仕事を手伝った。

 これが彼女たちの日常である。


 異世界人管理局は、ギザギ十八紀じゅうはちき15年1月に開局した国営施設である。

 前年のギザギ十八紀14年7月に起きたサイセイ砦を巡る戦争のさいに、老魔術師のドネが異世界から戦士を召喚したところから歴史は始まる。

 この召喚がうまく機能したため、ギザギ国は更なる勇者を求めて異世界召喚を推奨した。そのさい、ドネ老師を長官とした異世界召喚庁という国家機関が設立され、その下で直接に異世界人を管理する専門部署として異世界人管理局が生まれる。

 管理局は当初、召喚庁のある王都オースムにあったが、ドネの一番弟子クロ・ネアが二代目長官に就任したさいにナンタンへと移された。これはドネの時代とは異なる召喚方法が使われるようになったためである。

 ドネの召喚は、強制召喚とも言うべきものだった。彼のメガネに適う勇者を無理やりギザギ国へ連れて来るのだ。それはハイリスク・ハイリターンで、被召喚者が友好的であるなしを判別することなく呼び出すのである。そのため、召喚を不服として暴れる者もおり、クロッサー事件では王都守備兵が40名以上死んでいる。反面、友好的であれば、一人一個師団と形容される勇者の誕生もあった。

 周知のとおり、ドネは無理な召喚術の行使により体を壊し、長官就任から4年で死去した。このドネの異世界召喚期間を、第一次召喚期という。

 続く第二次召喚期は、ドネの術を改良した召喚術が使われた。ネア式と呼ばれるそれは、召喚対象を探索するさい、いくつかの条件が与えられるようになった。これにより、少なくとも召喚時からの敵対者はいなくなった。さらには数が欲しいと望む国王の命で、対象の能力が緩和される。勇者ではなくとも、近似値勇者でも認められるようになったのだ。

 だが、数は増えたが玉石混淆ぎょくせきこんこうである。勇者が召喚されればよし、もし近似値勇者であればどうすべきか、召喚庁では議論が繰り返された。

 結果、『使えるように鍛え上げる』こととなる。それがそれまであまり活躍のなかった異世界人管理局の仕事とされた。また、勇者ではない準危険人物と目される(・・・・)異世界人を王都から離す目的も合わせて、管理局はサウス領ナンタンの町へと移設された。なお余談ではあるが、当時のサウス領主はドネの実兄であり、その絡みもあってサウス領が選定された。

 第二次召喚期は8年ほど続く。

 この間に呼び出された勇者でもっとも有名なのが、今なお現役で最前線に立つランボ・マクレーである。彼は第二次召喚期でも末期に召喚され、最後の英雄とまで言われている。実際、彼以降に勇者として讃えられた者はおらず、惜しい候補者は幾人もいたが大成はしなかった。有名な『放浪の英雄』バルも一般人から見れば充分に勇者だが、国からは役立たずの烙印を押されている。自由奔放ゆえに、国益になんら寄与しないからである。

 この第一次、第二次召喚期の勇者たちには一つの共通点がある。肉体変換が行われていないのだ。彼らは元の体を維持したまま、現在もマルマの地で生き続けている。

 第三次召喚期の召喚労働者サモン・ワーカーの最大の特徴は、この肉体変換である。

 肉体変換の主目的がマルマ世界に馴染むことであるのは、アリアドが語ったとおりである。マルマ住人にとっては問題のない病気でも、異世界人には致死原因となりかねない。二次以前の召喚労働者の死亡原因1位が細菌やウィルスによる病死であるのも事実だった。それを回避するために開発されたのが疑似体である。これに更なる便利機能をつけたのは、むしろ必然であったろう。国王をはじめとする多くの重鎮が異世界人を畏怖の対象としている。動向を逐一監視するためのステータス・サークルや、必要以上の重税はこうした恐怖に対する防衛作用といえる。

 これはアリアド式と呼ばれる異世界召喚術の欠点を補う上でも必要な処置とされた。

 アリアド式はいわば質より量、ヘタな鉄砲かず撃ちゃ当たる方式だ。つまり、ほぼ使い物にならない勇者候補生ばかりが召喚されるのだ。

 そんな役に立たない方式が採用されているのには、もちろん理由がある。アリアドに言わせれば「12年やって200名程度しか集まらないならもう無理、ぜったい無理、とにかく無理でしょ!?」となる。それでも三代目長官として業務は続けねばならず、苦肉の策で能力度外視の異世界入居希望者大量採用方式を取らざるを得なかった。結果的には召喚術自体の負担は軽く、毎日の業務にも支障はきたさずにすむようになったが。

 しかしこうなると玉石混淆どころではない。99.99%の石と、0.01%の玉である。となれば、石を宝石までとは言わないが、漬物石くらいには使わねば資源の無駄となる。それが今の異世界人管理局のゆとり制度へと段階的につながっていく。

 これも余談ではあるが、第二次召喚期以前の召喚労働者には三次以降では当たり前となっている就労レベルがない。ステータス・サークルすらないからだ。管理上、これを重く見た異世界召喚庁幹部――アリアド以外――は、彼らに対し代用のステータス・カードを渡している。レベルは50から始まっており、以後の活躍に応じてレベルが上がっていく。が、筆頭ともいえるランボ・マクレーは受け取ったカードをどこかに投げ、一度も使ったことがない。そのため、彼のレベルは50で止まっていた。彼だけではなく、同世代は全員、そんなカードを無視して生活している。


 7月13日12時56分、七人の小さな勇者が異世界人管理局に帰還した。服や鎧は泥だらけの破損だらけ、貸した槍はへし折れ、鎚矛メイスには落としきれなかった赤黒い血液が残っている。それでも彼らの顔からは清々しささえ滲んでいた。

「オラァ、戻ったぜー!」

 マルがエントランス・ホールで威勢よく叫ぶ。中にいた数名が驚いて彼らに注目した。

 その中に、受付三人娘がいる。ツァーレは印を切り、ベルは深く安堵の吐息を漏らし、パーザは穏やかに微笑んだ後、目の前にいる召喚労働者の報酬計算に戻った。

 ベル・カーマンが席を離れ、彼らのもとへ近づいた。

「無事でよかったです。でもその様子では、何かありましたか?」

「はい、またゴブリンが出ました」

 コーヘイの返事に、ベルだけではなくパーザも反応した。

 コーヘイはパーザのいる受付台に進み、「ありがとうございました」と深く頭を下げた。

 その場にいた同業者が察して半歩退いた。

「あなたのおかげで命拾いしました。本当に感謝いたします」

「仕事ですから」

 パーザはいつもの固い口調のままだった。が、わずかに赤面していて、自分でも気付いて書類に眼を向ける振りでうつむいた。

 ショウたちも彼女の前で口々に礼を述べる。

「仕事ですからっ。騒がないでくださいっ」

 パーザはもう、顔が上げられなかった。

「でも、この槍の破損はどうしましょう?」

 ベルは武器の貸し出しリストを取り出して、どうしたものか悩んだ。

「まずは報告書を書いてもらいなさい。それから保険か弁償か判断します」

 パーザは下を向いたまま、ベルに指示した。

「はい。では皆さん、二階の第一会議室で報告書作成をお願いします」

「またかよ、めんどくせー。誰か一人書けばいいんじゃねーの?」

「ダメです。全員、書いてください。きのうも言いましたが、人のものを写してはダメですよ」

 マルの愚痴が階段を上って消えていく。

「あんなに感謝して……。よかったですね、パーザさん」

 見えなくなったパーティーから、ツァーレは隣席の彼女へと視線を移した。パーザはかわらず書類決済に集中していた。

「仕事だって言ってるでしょ。まったく……」

 パーザは力強く決済済みの判を押した。


 弁当を食べながら報告書を書き上げたショウとシーナは、最後まで唸っているマルをおいて管理局を出た。「裏切り者」「薄情者」とオニギリに噛み付く黒髪の少年に、「がんばれ」と笑って流す。

「いいの、あれ?」

「いいだろ、別に。待ちたいなら待ってもいいけど」

「いやー、いちおう訊いただけだし」

 シーナは笑って手を振った。

「じゃ、まずは服をそろえるかな。シーナは外套がいとうをどこで買った? 管理局?」

「ううん、市場をぶらついてたとき見つけた。今もあるかなぁ」

「この世界、大量生産とかなさそうだからな」

「だよね。行ってみるしかないよね」

 二人は市場に向けて歩き出した。途中、アカリとアキトシが勤めるパン屋の前を通る。木窓から覗いてみると接客に勤しむアカリがいた。

「彼女、意外と真面目に働くんだね」

「オレもそれに驚いた」

 二人して失礼な感想を漏らしながらパン屋を離れた。

 雑談をしながら歩いているかぎり、ショウはシーナに違和感を覚えなかった。ゴブリンとの死闘時の取り乱した彼女の姿はない。

「知り合いの服屋に行ってみる? 古着だけど」

「うんっ。仕事用だからどうせすぐボロになるし」

 シーナは笑って応えた。

 ショウは市場でケリーの荷馬車を探した。彼がこの地ではじめて服を買った古着屋だ。そのときは先輩召喚労働者のカッセの紹介で、割引までしてもらった。

 彼の店の場所は決まっているのか、以前と同じところにいた。

「ケリーさん」

「ん? よぉ、坊主か」

 ケリーはショウの顔を覚えていた。ただ、名前までは出てこなかった。

「今日は買い物で来ました。外套ってあります?」

「いくつか持ってきてるぞ。そっちのお譲ちゃんもいるのかい?」

「はい」

 シーナが明朗に返事をした。

 「ちょっと待ってろ」と荷馬車の木箱に顔を突っ込み、探しはじめた。

「おまえもあれっきり倉庫に来ないな。カッセといい、薄情者め」

 ケリーが三割の非難を込めて言った。

「すいません、オレも野外作業の定番に入っちゃって……」

「カーッ、本当に冷たいヤツらだ」

 ケリーは文句を言いつつ笑った。その手に、数着の外套が抱えられている。

「サイズはわからん。合わせてみてくれ」

 置かれた外套をつかみ上げた。濃い青色で、フードはない。ポンチョではなく、首の止め具で固定するタイプだ。纏ってみると意外に重かった。

「そいつは少し重めだが、そのぶん保温性は高いし、撥水性もいい。冬向きだな」

 ケリーが解説した。ショウは聞き流していたが、シーナは冬ってあるんだ、と思った。今は7月だが、日本と違い過ごしやすい陽気が続いている。もちろん、日本とは違う世界なのだから7月イコール『夏』ではないだろう。しかし、季節すら感じさせない日々は、『そもそも季節が存在しないのでは』と思い込ませるに充分であった。実際には夏も冬もある。ただ、二人が召喚された時期がよかっただけだ。

 次のを手に取り、具合を確かめる。こちらは薄紫で、フード付きの滑らかな薄手の生地だった。ただサイズが小さい気がする。

「それは女性用だ。坊主には合わんよ」

 シーナとともにとっかえひっかえ試す。どれも一長一短といったかんじだ。

 最終的に二人が選んだのは、ショウが灰色の首止め型外套、シーナが女性用と言われた薄紫の物だった。

 さらに二人は半袖と長袖シャツを一着ずつ追加した。

 会計を済ませ、商品を受け取る。

「そういや、あのピンクの嬢ちゃんはどうした? あの子もあれっきりだな」

 ケリーは世間話のつもりで訊いたのだが、ショウの顔が沈んだのを見てとり顔を曇らせた。

「……どうした、訊いちゃマズかったか?」

「いえ、ぜんぜん。彼女にとってはとてもいいことだったんです。アイリは元の世界に帰りました。ケリーさんの倉庫で仕事を認めてもらえて嬉しかったって言ってましたよ」

「そうか。元気でいればそれでいいさ」

「はい。あのときもらった服も、自分で直して友達にプレゼントしていきました。二着を一着にまとめて、刺繍を入れて、すごく綺麗になりましたよ。この服もあのときにもらった物です。アイリが大穴にパッチをあててくれたんです」

 ショウは腕を広げて見せた。腹部に青いパッチがされている。ワンポイントのようで、元のデザインかと思わせる。採取に出かけた時の服はゴブリンの血で染まったので捨ててしまった。考えてみれば、これ以外の着替えは今、買った分しかない。さらにもう一着くらい買っておいてもいいかもしれない。

「うちの縫製工場で働いてくれりゃよかったのにな。その腕なら大歓迎だったのによ」

 ケリーは残念そうな顔をした。それがショウには嬉しい。

「おじさん、もう一着買っていくよ。ちょっと厚めのがほしいんだけど、ある?」

「いくらでもあるさ。ちょっと待ってな」

 ショウは穏やかな顔でケリーの作業を眺めた。

 買い物が終わると、二人は屋台で買い食いをしながら管理局へ戻った。

 道すがら、シーナがためらいつつ訊いた。

「アイリって、インフィニ3に出てたアイリみたいなカッコしてたあの子?」

 シーナは記憶を辿る。彼女のそばには男の子がいた。それがショウであったのは、今の今まで気がつかなかった。アイリが寝ぼけて大声を出したとき、「あるある」と笑ったのを覚えている。ショウのほうは、その女の子が自分とは気がついていないようだ。わざわざ言うことでもないのでシーナは触れなかった。

「うん、そう」

「あの子、可愛かったなー。ホントにアイリそっくりで。帰ったんだ、あの子」

「日本でがんばるって。ここでがんばる気持ちになったって」

「すごいなー。わたしには無理だわ」

「オレもそうだよ。だから今もここにいるわけだし」

 ショウは苦笑いした。

「でも、帰りたいと思える場所があるっていいよね。わたしにはないから」

 シーナの声のトーンが落ちた。いつもとは違う声。ゴブリンとの戦いが終わって、安心しきって泣いたときとも違う声。

「……つまんない話なんだけどさ、聴いてもらっていい? こっちにきたとき吹っ切ったと思ってたのに、また思い出しちゃって、ちょっと参ってるんだ」

「いいけど、たぶん何もできないよ」

「いいよ。ただのグチだし。つまんないし。イラつかせるかもしんないし」

 シーナはショウの手を取って、第二防壁に連れて行った。壁側は民家の裏手になるので、滅多に人が来ない。

「わたしの悩みなんて、ちっちゃいことだと思うんだ。ホントにちっちゃくて、なんで悩んでるんだ馬鹿って言われちゃうくらいの」

 彼女は必死に自分を守ろうとしているとショウは感じた。卑下することで、どうにか自分を保ちたいのだ。そして否定してもらいたいのだろう。

 ショウはわかったうえで否定しなかった。

「そのちっちゃい悩みって?」

「ストレートだねー。……うん、あのね、わたし日本ではすっごいデブなの」

「……は?」

 ショウはポカーンとした。

「しかもブスなの。今の容姿と181度違う」

 彼女は薄く笑った。ショウにはそのプラス1度が、本気で話すべきか冗談ですますべきかを悩ませている気がした。

「あのさ、ちゃんと聴くから」

 ショウが真剣にうながすと、シーナは空笑いをやめた。

「……ごめんね、自分から振っておいて。うん。ちゃんと話す。わたしがデブでブスなのは本当。名前も亀子かめことかありえないのも本当。未熟児で生まれてさ、長生きするようにっておばあちゃんが付けたらしいんだけど、ホントやめてって思う」

「わかる。オレも似たようなもんだ」

 ショウこと日比野小吉には身に染みている。

 シーナは実感のこもる同意に、少しだけ微笑んだ。

「もうわかると思うけどさ、そんなだから鈍亀ドンガメとか言われて馬鹿にされてきた。でもさ、名前もそうだけど、太ったのだって仕方ないじゃん。家族みんなそんなだし、子供ときからたくさん食べろって言われて、子供だから遠慮も考えもないし、食べまくってたらデブになってて。顔だって遺伝じゃない。どうしろっていうのよ」

 目の前のシーナからは想像もできない。これが彼女の理想なのだとよくわかる。

「でも、痩せるのはできたんじゃ――」

 シーナがキッと睨んだ。ショウはそれ以上いえなかった。

「……そうなんだよね。わかってる。でもわたしは意思も弱ければ根性もなかった。悔しくても見返す努力をしなかった。ただ周りを恨んで、妬んで、自分を殴りつけたくなるくらい甘えた人間だったと思う」

 シーナはいったん言葉を切った。

「その日も学校でさんざん馬鹿にされて、でも家族にも言えなくて、何もなかったように家族とご飯を食べていたの。わたしの大好きな唐揚げが並んでいて、どんどん食べなってお母さんが言って、わたしは笑って食べた。ホント、馬鹿みたいに何事もないように。でも、一番情けなかったのは、食べるのをやめなかったこと。その一個をやめればいいのに、わたしは喜んで食べている。おいしいって食べている。それに気づいたとき、すごい自己嫌悪が襲ってきた。同時に、いじめていた人たちの顔が浮かんだ。さっきのゴブリンみたいに人を笑い者にして喜ぶ、あの顔そっくりだった。そして、わたしが家族に見せている作った笑顔と、彼女たちの人をさげすむ笑顔のどっちがマシなんだろうって思った。どっちも同じだった。同じくらいみじめで、捻じ曲がったものだと思った。わたしはもう自分がイヤになって、突然涙が溢れ、大声で泣き叫んだ。わけがわからなくなってベランダに走って、空に向かって気が狂ったように喚いた。ぜんぶ壊れてしまえって願って、誰かどうにかしてってすがって、でも何も起きなくて、両親が押さえつけようとするのを暴れて抵抗して。……そして、わたしは死んだの。マンションから落ちて」

「死んだ!?」

「正確には死ぬはずだった。アリアドさんが拾い上げてくれなかったら」

「ああ……」

 ショウはホッとした。

「絶望するわたしを見つけて、どうせ死ぬならこっちでがんばってみませんかって、人の弱みに付け込むようなキャッチに乗って、わたしはここに来たの」

「ハハ……」

「でもわたしはそれで救われた。こうして理想の姿でいられる。……だけどさ、やっぱりこの姿はニセモノなんだよ。努力もせずに得られた結果なの。その証拠に、わたしの中身は変わっていない。ゴブリンにショウとコーヘイがやられかけたとき、わたしはまた、誰かにすがるしかできなかった。その場にいない誰かに助けを求め、絶望するしかなかった。わたしはあのころからぜんぜん変わらない。変われない。それがすごく、気持ち悪い……」

 シーナは我慢できず、涙をこぼした。

 ショウには気のきいた言葉をかけることも、行動もできなかった。少年は大きな悩みを抱えた経験がない。理解もできないし、はっきりといえば何がダメなのかもわからない。シーナの本来の体が太っているのが間違いなのだろうか、容姿が美しくないからダメなのか、名前が格好悪いのが原因なのか、たぶんどれも正解でも不正解でもないと思う。

 けれどシーナの変わりたいと願う気持ちはわかる。ショウがこの場にいるのも根は同じだからだ。

 だからこそ余計にかける言葉が見つからない。彼は今の自分に対して、同調して慰めて欲しいとか、否定して励まして欲しいとは思っていない。ただいつか自分を省みて、自分が好きになれていればいいなと思うだけである。

「……まぁ、いろんな人がいるよな」

 少年は無意識につぶやいていた。

「え……?」

「あ、いや、思いついた言葉が出ただけで、深い意味はないから」

 慌てて否定するも、吐いた言葉は飲み込めない。

「それがキミの結論なの?」

「いや、結論とかじゃなくて、感想というか……」

 さすがにマズイと感じ、フォローを探すが出てこない。出てくるくらいなら、そんなセリフをはじめから吐きはしないのだ。

「………………」

 恨めしく睨むシーナに、ショウはバツの悪い顔をする。

 その顔が、シーナには微妙に面白かった。

「……うん、いいよ。聴いてくれるだけでいいっていったの、わたしだしね。少しスッキリした。それに結局は自分がどうしたいかだから、他人ひとに答えを求めるのは間違いだよね」

 シーナは目元を拭った。

「聴いてくれてありがと。よかったよ、キミで。これからもよろしく。……じゃあ、帰ろっか。考えてみると、まだ報酬をもらってなかったね」

 晴れやかに微笑み、彼女はいつもの彼女に戻った。

 ショウが安心したのは、彼女が普段どおりになったことよりも、よくわからない悩み相談から解放された点が大きい。

「そうだった。討伐報酬もまだだ」

「今夜もご馳走、よろしく~」

「最近よく思うんだけど、なんかぜんぜんお金が溜まらないんだよな。けっこういい仕事してるはずなんだけど」

「キミがいいヤツだってことだよ、うんっ」

「完全サイフ扱いな、オレ」

 シーナはまた笑い、ショウの手を取って歩きはじめた。少女はこの世界で冒険を続けていく。探していた、誰かと共に。


 二人が管理局に戻ると、意外な光景が広がっていた。

「いいか、ゴブリンてのは身長が低い。それは自分より小さいから弱いとイコールじゃないんだ。小さいからこその強みがあって――」

 ブルーがエントランス・ホールの片隅を占領し、10名ほどの召喚労働者サモン・ワーカー相手に講義を行っている。

 反対の壁側ではピィが魔術の実演をしていた。「これが基本の魔法弾」と淡く光る魔法の弾丸を、どこで集めたのかわからない廃材に撃ち込んで破壊した。ギャラリーが拍手をしている。

「なんだ、この状況?」

 忙しく二つの会場を見比べると、マルを発見した。襟首をつかんで問いただす。

 マルは経緯を話した。その間もブルーから眼を離さない。

 20分ほど前、マルはようやく報告書を書き上げ、ついでに報酬をもらおうと受付に並んでいた。

 そこへブルーとピィが報酬を受け取りにやってきた。

 一種異様な二人に皆がビビり、道をあけると、二人はパーザの前に依頼書とゴブリンの指を8セット積みあげた。

 その光景に周囲が沸く。

 パーザは「お疲れ様です」と淡々と仕事をし、報酬を払う。ここでもなぜかギャラリーが沸いた。

「ついでに少し森を探っておいた。気になる点があるんだが、報告はここでいいか?」

「報告書をお願いします」

 このやりとりでもその他大勢が「おおー」と漏らしていた。

 そこにマルが声をかけた。

「なぁ、暇なら話を聞かせてくんないか? どうすりゃゴブリンと渡り合えるか知りてーんだよ」

「ああ? オレが暇そうに見えるか?」

「すんげー見える。頼むよ。足をひっぱりたくねーんだ」

 マルの真剣な眼に、ブルーは折れた。

「……しょうがねぇな。少しだけなら付き合ってやる」

 ブルーは舌打ちしながら、エントランス・ホールの片隅に腰を落ち着けた。

 話を聞いていた周囲の召喚労働者サモン・ワーカーたちが、マルとともに彼の前に座り込む。彼らにしてみれば本物のゴブリン殺しから話を聞けるのは存外の機会だ。なにせ彼らのほとんどがゴブリンと戦うどころか、見たことすらない。

「ピィは帰る」

 彼女はステータス・サークルに書き込まれた報酬を確認し、ブルーに告げた。彼が「お疲れ」と応えたところで、若い女性召喚労働者(サモン・ワーカー)たちが彼女を囲んだ。

「あの、ゴールド・サークルって初めて見ました!」

 就労レベル20以上のステータス・サークルは背景が金色なので、ゴールド・サークルや、黄金級ゴールド・クラスとも呼ばれる。50以上の『勇者クラス』になると七色だ。

「魔術師なんですよね? よければ魔法を見せてもらえませんか!」

「お願いします! わたしたち、まだ魔法って見たことないんです!」

 ピィは無表情だが、態度はわかりやすくオロオロした。

「「お願いします!」」

 重ねて詰め寄られ、ピィは「わかった」とブルーとは反対の隅に陣取った。

「壊れてもいいもの並べて」

 ピィの指示に、女性たちは「はい!」と壊れてもよい何かを探しに走った。

 そしてこの状況となる。

「パーザさん、あれ、いいんですか? ブルーさんもピィさんもギルドの人ですよ」

 ショウが最年長受付嬢に作業依頼書を渡しつつ訊いた。

「……たまには先達の話を聞くのもいいでしょう。みなさんの勉強にもなります。それにギルドにいるからと言って、管理局の登録が消えたわけではありません」

「あ、そうか」

 パーザの答えにショウは納得した。となれば、彼の講義に混ざりたい。

 パーザはウズウズしている少年をカウンター越しに見る。フゥと一つ息がこぼれた。

「はい、今回の報酬です。お疲れ様でした」

「どうもありがとうございます!」

 晴れやかな顔でお礼を言い、ショウはブルーの講義会場に走った。

「あー、わたしまだー」

 いっしょに来た仲間のシーナが呼びかけるが、彼は聞いてはいないようだ。パーザはまた息を吐き、そして微笑んだ。

「マル、ちょっと来い」

 ブルーに名指しされ、マルは彼の前に立った。「みんなに見えるようにな」と位置を直されるのはご愛嬌だ。

 ブルーとマルが並ぶ。青髪の青年は「んー」と唸り、マルの頭を押し付けた。

「おまえはゴブリン役だ。もう少し縮め」

 観客から笑いが起きる。

 マルは不満顔だが、不平も漏らさず膝を曲げて猫背気味になった。

「いいか、普通のゴブリンは身長がだいたい100から120センチ。これくらいだ。ヘッドやロードになるとガタイもよくなるが、それは今回おいておけ」

 ブルーは腰の刃渡り15センチほどのナイフを鞘ごとマルに渡した。「そのまま手を突き出せ」と指示した。

「こいつの腕の長さを考慮して、ゴブリンの好む刃渡り30センチほどの短剣を持ったときのリーチだ。まぁ、だいたいオレの足の長さくらいだな」

 そこでまた笑い。

「さっきも言ったが、背が低いのは戦闘において絶対の不利じゃねぇ。オレたちからすると、常に下にいる相手と戦うことになる。これが意外と攻撃しにくい。たとえば殴るにしても振り下ろす形となる。こんなの普通、訓練しない。だから体幹が悪いとバランスを崩しやすく、隙が生まれる」

 ブルーが打ち下ろしのパンチを実演する。彼は鍛えているので、そうそう崩れない。試しにマルにもやらせてみると、彼は拳の勢いに誘われるように体がよろめいた。

「だから武器を使うわけだが、こういう剣の場合――」

 と、腰の長剣を抜く。磨きぬかれた真剣に観客がどよめく。

「振り下ろすか、薙ぎ払う。だがこれも、重さがあるから動作が大きくなり、すばやいゴブリンには当たりにくい。……いっとくが、オレなら当たるからな」

 上段からの袈裟掛けに振り、床のギリギリでとめた。その速さと風斬り音に、またも驚嘆の声。

「ここで反対の立場からも観てもらう。……マル、さっきみたいに屈んでオレを見ろ」

「うっす、先生」

 マルはブルーに心酔しているのか、気持ち悪いほど素直だった。

「気持ち悪い呼び方すんな。で、何が見える?」

「何って、ブルーさんの体」

「具体的にどう見えるかってんだよ」

「具体的って言われても……。腹?」

「おう、そうだな。おまえの正面はオレの腹だな。で?」

「ちょっと視線を下げると腿。見上げると遠いけど喉」

「そうだ。それがゴブリンの視界だ。その視界で、おまえならオレのどこを攻撃する?」

「腹っすかね。正面だし。次に腿とか足が狙いやすそうっす」

「ゴブリンもそう考える。リーチや打撃力がなくとも、人間の弱点がつけるんだよ。腹には骨がなく、一刺しで殺せる内臓が詰まっている。腿を狙えば相手の機動力は落ち、そのあとはやりたい放題だ」

 ブルーの解説にショウは身震いした。大腿部を刺された記憶が蘇り、とっさに押さえた。すでにそこに傷はないが、記憶には刻まれており、おそらく忘れることはないだろう。

「まぁ、それは戦闘に慣れたゴブリンの行動だ。それにゴブリンは基本、バカだから自分が有利だと勘違いするとすぐに舐めたプレイ(ナメプ)をはじめる。踊ったり、笑ったりな。で、いたぶるように攻撃したり、飛び込んできたりする」

 ショウはうなずいた。実際にその行動を目の当たりにしている。

「さて、敵の行動、自分ができる選択肢がわかったところで、どう戦うのがいいかを考えるとしよう。マル、おまえならどうする?」

「オレ? ……今日、またゴブリンに遇ったら短剣で正面から戦ってやろうと思ってたんだけど、その暇もなかったな。けど、先生みたいにデカくもないし、リーチもないから、普通に剣で戦えばいいんじゃないか?」

「それはおまえに剣の技術があればだろ? ゴブリンはおまえよりも戦い慣れしてるぞ」

「じゃー、槍で間合いを取る」

「それも技術あってこそだ。槍は間合いで有利な武器だが、懐に入られるとキツイ。それも技があれば対抗できるが、初心者にはそんなものない。だから槍を使うにも一人ではなく、複数、できれば三人以上で一匹相手が理想だ」

「ゴブリンごときに?」

「そのごときに叩きのめされたんだろうが。だが、そんな有利な状況はまず作れないから、隙の少ない攻撃方法を考える」

 そう言って、ブルーは手近にあった木製の椅子を取り、マルに渡した。

「それがゴブリンだとする。……マル、放り投げろ」

「え?」

「襲ってくるゴブリンの役だよ。弧を描くように投げろ」

 マルは両手で椅子を持ち、下投げで放った。

 落ちて近づいてくる椅子をめがけ、ブルーは右足を振りぬく。

 椅子が大破した。

「ブルーさん、弁償!」

 爆音にパーザが気付き、立ち上がって抗議した。ブルーは笑ってごまかそうとしたが、「あとで払います……」と頭を下げた。

「――とまぁ、ゴブリンのように低い弾道で攻撃してくる相手には、蹴りが有効だ。リーチも負けないし、威力もある。靴さえ頑丈であれば、盾代わりにもなる」

「いや、それはちょっと特殊すぎませんか?」

 さすがにショウもツッコむ。実戦で見てはいたが、それもブルーの経験があってこそだろう。

「だが、当たらない武器攻撃より、使い慣れた体での攻撃のほうがよっぽどマシだ。ま、どうしても武器を使いたいなら、蹴りと同じように下方から上方(アッパー・スイング)で振り回すことだな。足元からの攻撃には慣れていないヤツが多い。当たらなくても威嚇になれば上々だ」

「どんなものでもいいんですか?」

「当たりゃ何でもいいさ。が、あえて初心者に勧めるなら、剣よりも鎚矛メイスなんかの打撃武器だな」

「メイス……ですか?」

 受講者の一人が半信半疑で聞き返した。それは効果のほどよりも、見た目の問題のようだった。メイスは格好悪いと思っているのだ。

「打撃武器ってのは切れ味は関係ないから、使い過ぎて形が変わったり、血糊が付いてもたいして支障はないし、どこが当たっても一定のダメージがいく」

「じゃあ、ショウの選択は合ってたのか……」

 マルが面白くなさそうに言う。

「武器の選択はな。だが使い方がなってなかった。初心者が狙って武器を使ってもそう当たるもんじゃない。いっそガキのチャンバラのように振りましたほうがいい。ゴブリンは超一流の戦士じゃない。振り回してくる相手の隙をうまくつくなんぞできやしない。ショウはやられてわかっているだろうが、攻められっぱなしになるとまず何もできないと思っちまうんだ。そんな自己暗示にかかって本当に動けなくなる。で、さらに攻められる。悪循環に陥るわけだ。これが逆なら、ゴブリンだってビビッたはずだ」

 ショウは何度もうなずいた。そのとおりだった。攻められて手の出しようもなくなり、あげく刺された。どうせ刺されるなら一撃でも出せばよかったのかもしれない――

「――ていうか、観てたんですか!?」

「ああ、遠目にな。無様な戦いしてるのがいるなと思っていちおう急いだんだが、間に合わずにおまえは刺されてた」

「……そうですか」

 ショウはモヤモヤしたが、結果的に助けられているので強く言えない。

「初心者はな、とにかくあがけ。とまったら死ぬと思え。一分でも一秒でも時間が稼げれば、もしかすると道が開けるかもしれない。今回こいつらが助かったのは、ない知恵絞って無力なりにあがいたからだ。それは無様でも評価に値する」

 まばらな拍手が起きたが、イマイチ喜べないショウたちである。

「生き残るために攻撃は必要だが、守りはもっと重要だ。守りが十全であれば攻める気概にもなる。だから装備を整えろ。オレだってこの鉄靴がなきゃ、ゴブリンを蹴り殺したりはできない。生身の足を敵に向けるなんて怖くてできねーよ。おまえたちも身を守る技術がないなら装備で補え。篭手があれば手の怪我を考えなくて済むだけじゃなく、相手を思いっきり殴ることができる。兜があれば頭部のダメージを抑えられるし、頭突きも強力だ。盾は問答無用で持っていけ。いいか、相手の攻撃に耐えられれば反撃にも転じられる。相手の攻めを崩すためにも、防具を軽く見るな」

 「はい!」と返事がこだまする。

「……だからといって全身鋼鉄鎧フル・プレートとかはやめろよ? あんなの着てまともに動ける初心者はいない。初心者はまず脚と心臓と頭を守るのが優先だ。どこもやられると即死級だからな」

「脚もですか?」

 受講者の一人が挙手して訊いた。

「脚がなきゃ歩けないだろ。さっきも言ったが、機動力がなくなった時点で詰むんだ。それに野外を歩くと、どこに鋭利な石や毒蛇がいるかわからない。踏み抜いたり、噛まれたりするのは見えない足元だ。注意するだけじゃ防げない脅威から守るのが装備なんだよ」

 ショウは建設現場の監督が似たような話をしていたのを思い出した。

「あのさー、けっきょくオレら初心者は、ゴブリン相手にどうすりゃ1対1(タイマン)で勝てんの?」

 マルが結論を求める。攻撃の大切さ、防具の重要さ、ゴブリンの習性などはわかったが、具体策が出ていない。まさか蹴りが正解ではないだろう。

「勝てるわけねーだろ。相手は小さくても戦士レベル1以上だぞ。戦士レベル0がどうしたら勝てるんだよ」

「「えー!!!」」

 一同総ツッコミである。聞いていないふうを装っていたパーザまで思わず立ち上がっていた。

「なんだ、タイマンで勝つ気でいたのか?」

「たりめーだろ! その話を聞きたいんじゃねーか!」

「そうか。じゃ、遠くから攻撃しろ。弓でも石でもいい。近づいたら負けだ」

「いや、それはわかるけどよ、今日みたいな状況にだってなるだろ?」

 マルが食い下がる。ショウにも気持ちはよくわかる。

「タイマンはあきらめろ。ゴブリンだって基本は数で押してくる。本気でタイマンでは戦わねぇ。だからこちらも複数人で一匹にあたるしかない。あとはもう、手段を選ばないか」

「たとえば?」

「コショウを詰めた袋をぶつける。巻きビシをばら撒く。犬を連れて行く――」

「犬? 犬に弱いんですか?」

「バカ、犬は陸上最強だぞ。勇敢で素早く、ナチュラルに戦闘力が高い。さらには仲間想いだ。ビビる初心者よりよっぽど頼りになる。気配に敏感だから、先手も打てるしな」

「カワイイしねー」

 シーナの感想は無視された。

「あとはそう、ビビらず立ち向かえってとこだな。ビビッたら負ける。鉄則だ」

「精神論で終わりかよ……」

 マルがガックリと肩を落とした。

「ああ? 何か不満か? こっちは貴重な時間さいてんだぞ。しかも椅子代まで取られて」

「それはあんたが悪いんだろ。ただの『オレ強ェー』ヤロウじゃないか」

 マルの中でブルーは「先生」から「あんた」に格下げされていた。

「クソガキ、そこまで言うんだ、覚悟はあるな?」

 ブルーは大人げなくマルを睨んだ。

「あ? 覚悟があるから頭下げて頼んだんだろうがっ」

「よーし、よく言った。裏庭来い、テメェが今、どれだけの器か体に教えてやる」

「おう、望むとこだよ」

 それこそまさにマルの望むところであったろう。もとより理論よりも実体験のほうが彼にとっては身になる。

 ブルーとマルが睨みあいながら外へ出て行くと、ギャラリーもあとを追う。

「い、いいんですか、パーザさん!」

 ベル・カーマンがさすがに心配して先輩に訴えた。

「大丈夫でしょう。彼は単純だけど、馬鹿ではないわ。加減はするはず」

「ですが……」

「ベル、あなたが見てきて。危なくなったらとめるように」

「わ、わたしにできるわけないじゃないですかぁ」

 ベルは涙目になった。もともと暴力的なことは苦手である。

「ピィが行くよ」

 いつの間にかカウンター越しにいたピィが、パーザに告げた。

「よろしくお願いするわ、ピィさん」

「ピィちゃん」

「ピィさん」

 「……」ピィはあきらめて外へ出て行った。

「それじゃ、仕事に戻りましょうか。薬草採取班の報告書、持ってきてくれるかしら?」

「あ、はい、すぐに」

 ベルは事務所へ取りに行った。

 パーザは書類を待つ間、急に静かになったエントランス・ホールを見渡す。いつもの風景がとても寂しく感じた。

 その後、マルとブルーは殴り合った。一方的に負けたにもかかわらず、黒髪の少年は腫れた顔に笑みを浮かべ、ご機嫌だった。

 ブルーの方は殴り、蹴り疲れたが、こちらも満足していた。昔こうして仲間たちと鍛えあった時代を思い出していた。マルがへばると、ギャラリーからも参加希望者が現れ、いつの間にか百人組手の様相を呈してきた。ブルーは挑戦者を拒まなかった。全員がまるで相手にならなかったが、やる気のある人間は好きなのでつい本気で取り組んでいた。

 その後はブルーによる体術のレクチャーが始まり、一人でもできる訓練方法は低レベル者たちに瞬く間に広まり、翌日には早朝と夕方の日課となるほどだった。

 ここでいくつかの小エピソードが発生する。

 怪我人が続出した裏庭・百人組手の治療のため、ツァーレ・モッラは魔力を枯渇するほど治癒魔法を使い、その後、熱を出して寝込んだ。

 怪我から回復したマルはブルーを再び『先生』と呼び、接待と称して酒場に繰り出した。ついていったその他の召喚労働者たちからも次々と感謝の酌をされ、飲み過ぎてご機嫌になったブルーは勢いで全員分の料金を払った。これにより、ゴブリン討伐で稼いだ金は1銅貨も残らなかった。

 そして、ギルドでブルーの帰りを待っていた『たかり集団』は、戻らぬブルーのせいで自腹を切るハメとなった。

 なお、折れた短槍は無事、保険認定された。


 ブルーたちが宴会に興じているころ、異世界人管理局・二階の第一会議室では緊急の局員会議が開かれていた。

 参加者は異世界人管理局・局長、総務部・部長、総務部総務課・課長、総務部広報課・課長、人事部・部長、人事部入国管理課・課長、人事部安全保障課・課長、経理部・部長、経理部経理課・課長、それに総務部広報課所属のパーザ・ルーチンである。

 こうした異世界人管理局の上層部、ほぼ全員が揃っての会議は年に数回もない。あったとしても簡単な業務連絡の交換だけで、全員が顔をこわばらせる事態は今までなかった。

「この情報、どこまで信じられるのだね?」

 総務部長のカダスが配られた資料を投げた。詰問を受けているのはパーザ・ルーチンである。

「報告者の召喚労働者サモン・ワーカーブルー氏はいたずらにこのような報告をするような者ではありません。信頼できます」

「しかし、管理局を離れ、ギルドに移ってから五年以上顔も出さなかった者だろう? いくら黄金級ゴールド・クラスといえど、君の人物評価だけではねぇ……」

 人事部長がブルーの資料を眺める。能力に不足はないが、しょせんギルドに染まった者である。ギルドの嫌がらせとも考えられる。

「そもそも、なぜ今になって彼は管理局に顔を出したのかね? しかも今日付けの仕事までしている。これはどうした風の吹き回しだ」

 総務部長が直近の部下、広報課長を睨む。課長はうつむいたまま汗を拭っていた。

 代わってパーザが報告する。

「本日、野外作業において深刻な人員不足が認められ、私個人の裁量でブルー氏、およびピィ氏に依頼いたしました。その際の事件につきましては別紙のとおりです。その後、両氏は独断で周辺地域を偵察、その報告書がこれです」

「君個人の一存で、ギルドの人間に頼ったというわけかね?」

「はい」

「自分が何をしたか、わかっているのだろうね?」

「はい。処分なさるのであればご随意に。ですが、わたしは職務を最優先に考え、遂行したまでです。この判断が間違いであるとおっしゃるのなら、相応の代案を提示し、召喚労働者サモン・ワーカー全員から賛同を得ていただきたい」

 パーザは全身の力を込めて一喝した。代案はともかく、どんな良策であれ全員からの賛同などは得られるものではない。そうとわかっていて無茶な要求をするのがパーザ・ルーチンという女性であった。

 居並ぶ上司たちは、もっとも格下で年少の女性に圧倒された。

「……ン、まぁ、その件を置くとしよう。問題は、この情報が正しいとしたとき、どうするかだ」

 総務部長は見たくもない資料を睨んだ。

「まずは正式に、管理局として偵察任務を実行したらどうですか? ギルドの人間の言葉を鵜呑みにはできないでしょう」

 安全保障課長が意見を述べた。

「フム、そうだな。サイセイからも注意が喚起されていることだし、調査は必要か……」

 総務部長はひげをなでた。

「調査と言っても人員が足りないのでは? 危険な任務となりますが、実戦に耐えうる人材が揃うのでしょうか? まさかまた、ギルドの連中に頭を下げるおつもりですか?」

 総務課長が新たな問題を提起した。

「馬鹿なことを。偵察くらいなら誰でもできるだろう。戦うわけではないのだからな」

 総務部長が鼻を鳴らす。

「ですが、いざというときの実戦部隊が少ないのも確かですなぁ。高レベル者は軒並みギルドへ移り、さらにはこのところ新人数も減少傾向。いずれは通常業務にも差し障りがでそうですな」

 高齢の人事部長が召喚労働者のレベル分布グラフを見ながら、のんびりと言った。

「そんなのは長官に言えっ。あの女が――!」

 総務部長は言いかけて口をつぐんだ。局長が聞いているのをつい忘れていたのだ。局長は滅多なことでは発言をしないので存在が薄れていた。しかしその権力は異世界召喚庁ナンバー3である。迂闊な発言は自分の首を絞める。

「……では、どうすればいいと思うのだ?」

「とりあえずの処置でよろしければ」

「なんだね?」

 総務部長は役職としては同格の人事部長に横柄だった。昼行灯ひるあんどんと陰口を叩かれる人事部長は、そんな些末なことは気にもしない。

「では、僭越ながら意見を述べさせていただきます」

 人事部長は相変わらずののんびりとした口調で語った。それは、彼の言葉とは思えないほど大胆な提案であった。

「使えぬ召喚労働者ワーカーを使えるようにするのです。それも管理局から逃れられぬように、蜜をたっぷりと混ぜ、辛味を薄めて」

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