超ショートショート「立体パズルの旅立ち」No61
ぴりぴりした風の吹く、冷たい秋の日。私は朝から家にこもって立体パズルを作っていた。
私はすっかり夢中になっていて、完成した頃にはもう夕方だった。
私は完成したそれを見つめながら、自分の仕事にすっかり満足して、とても浮かれていたのだ。
だからその時、夕日の傾きと共に窓から忍び込んだ赤い光が、私の小さな木製の蒸気機関車を照らして奇妙な光を放ったことにも、あまり気づかなかったのだ。
夕日に照らされた機関車は、おもむろに動き出した。
私はとても驚いて、咄嗟に動けなかった。私が背中を丸めて止めようとしたときには、もう後の祭りだった。
蒸気機関車は入れた覚えのない石炭をゴウゴウと、それから生まれた蒸気をシュッシュと放ちながら元気よく窓から外に飛び出していってしまった。
私はきっと、夕日の魔力をあなどっていたのだろう。
きっとあの機関車は、夕日の光が続く限り走り続けるだろう。夕日を追って走り回り、様々な生き物(多分、ネズミとかクワガタとか)を乗せながら、きっと世界中を旅するはずだ。
うまく作れたから、少なくとも故障はしないはず。
冷たい風が部屋中に吹き込んで、私は少し寂しくなる。
私は夕飯の支度をするために、ピリピリ痺れた足で立ち上がった。
お恥ずかしながら文章の仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、一生懸命1歩ずつ頑張りたいと思います。アドバイス等をどしどし下さると助かります。
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