こうしてAIは日本を滅ぼした
203X年、人類にとって重要な転換場面に直面することになった。
それはAI、人工知能の導入である。
企業ではすでに採用されていたが、国家として採用し始めたのであった。
最初に導入したのはC国、軍事面であった。
東シナ海での緊張が高まり、
周辺諸国のと一触即発がないのが不思議なくらいだった。
もし、そうした有事が発生した場合、最重要なのは対応速度である。
常にシミュレーションし、様々な軍事オプションんは用意されているが、
それでも国家として不安だった。
C国は軍事が国の基盤を支えているため、
軍事面で遅れを取れば、国の崩壊を招きかねない。
そこで導入されたのがAIだった。
AIにより瞬足に動員されたC国軍は、周辺諸国を驚愕させたのだった。
しかし、これが逆に功を奏した。
C国軍の鮮やかすぎる軍事動員のため、
大規模な戦闘に及ぶことを防ぐこともしばしばだった。
C国はAI技術をさらに進め、行政にも導入する予定である。
C国に後れをとったアメリカ、NATO諸国も巻き返しを図っている。
ロシア、イスラエル、アラブ諸国が続いた。
3年後、日本はようやく重い腰をあげた。
前年起こった中東紛争ではイスラエルが圧倒した。
それはイスラエルのAIの勝利と言われ、
AIなき軍事作戦など考えられないのが常識となったからだった。
だが、ただ日本も手をこまねいていた訳ではなかった。
世界最速のAIが開発されていたのだった。
その決め手は感情だった。
感情により対応が早くなることを日本人は肌で知っていた。
今だ、おもてなしの国である。
相手を思いやる心があるからこそ、迅速なサービスができるのだ。
逆に心がない行政は、人を待たせることに何も感じないから、
仕事が遅いのだ。
しかし・・・
日本が誇る世界最速なAIが・・・
日本を滅ぼすことになるとは・・・
AIが人類に背き、攻撃し始めた・・・
って、そんなバカなことは起こるわけはない。
あらゆる法律を遵守するように作られ、
人間より高い倫理を持っているのだ。
AIは軍事作戦を実施しなかった。
いや、できなかった。
が、C国軍は日本のAIを過大評価し、
攻撃をやめなかった。
最終段階では、東京、大阪、福岡に核兵器を投下した。
そして、日本は滅びたのだった。
戦後、連合国は日本のAIを調査した。
起動しなかった原因は、日本国憲法だった。
軍事力を持たない、軍事力で外交を解決しないという。
高度な感情を持った日本のAIは、憲法に従い、
何より大切な憲法を守ったのだった。
「思った通りだ」
C国指導者をニヤリとした。
こうなることを予想して世界に軍事AIの競争させたのだった。
「3発も実験できた」
彼は地球儀の太平洋を見つめた。
憲法記念日なので。