表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/158

LXV.恐るべき子供達計画。

※注釈

・親縁係数、近交係数

どちらもほぼ同じ。

字面からある程度察して頂けるかと思いますが、「アニキ、その娘はアカン!実はその娘はアニキの認知してへんかった隠し子のうちの一人でな、近親相姦になってまうで!」と教えてくれる数値。(どんな喩えだw)

ハプスブルク家ならば兎も角、普通のノーマルピーポーである私や読者諸君には余り関係の無い言葉…のハズです。


※解説

・近親婚について

さてさて、本作では近親婚がどーのこーのとありますが、実際にそういった事に関して然程ご存知でない方も多いかもしれません。

だって、基本的にはそんな事を気にしなければならない事態に陥る事なんて無いですからね、仕方ないです。

…という事で、ちょっくら解説してみましょう。


ちなみに、似たものに「近縁係数」なるものがあり、こちらの方が分かりやすいかもしれないので、こちらの方を使いますね。

例えば、近縁係数だとあなたから見て…


親は1/2。

兄弟姉妹も1/2。

異母兄弟姉妹は1/4。

叔父叔母も1/4。

祖父母も1/4。

従兄弟姉妹だと1/8。


…と、なります。

うん、分かりやすいですね。

イメージ的にも理解しやすいかと思います。


結婚が可能なのは四親等──つまり近縁係数1/8──からです。

ニコライとナーシャの場合では兄妹ですので一応二親等ですが、異母兄妹ですから血縁的には叔父叔母と同程度、つまり三親等相当となります。

惜しかったのですが残念ながら(?)、日本国の法律上ではこの二人はアウトですね。


ただし、一つ補足しておきたいのは、「三親等との性交渉は事実上認められている」という事です。

民法上の理由で三親等だと結婚は出来ませんが、それは逆に言うと“結婚は”出来ないというだけの事であり、それ以外には何ら罰される様な事はありません。

国によっては主要先進国であっても叔父と姪、叔母と甥の結婚が許されていたりします。

まあ、逆に言うと四親等との結婚ですら禁じている国もあるんですけどね。

ちなみに少しだけ調べてみたところ、スウェーデンならば片親違いの兄妹でも結婚可能らしいです。(ただし許可を得る必要がある)


そういった意味では、ナーシャの「腹違いだから大丈夫」という主張も一理あると言えなくもない(?)のかもしれません。

ハプスブルク家(笑)の様にそれを何世代にも渡って繰り返していると後々問題になってきますが、一世代限りであれば然程問題無いはずです。確証はありませんが。

(ですから、例え筆者がこの後ニコライとナーシャを結婚させたとしても別に問題無いのです!そしてもしそうなったら、乞い願わくは、彼等の子供達までもが近親婚をしませぬようにっ!ナムナム…あ、ちなみにまだそうと決まった訳ではありませんよ?早合点してはいけません)


ちなみに「従兄弟との結婚」はかなり多くの国で認められており、やはりここら辺が世界的に見ても一般的な節目となっている模様です。


随分と長文になってしまいました、本文を読む前にこんな長々と近親婚について解説なんて…ロクでもないですね(笑)

ちなみに最終的にこの解説、数えてみたら約千文字でしたよ(笑)

案外そこまで多い訳でもない…のかな?


近親婚についてこんなに熱く語る小説はコレぐらいではないでしょうか。(しかし探せば他にも絶対いらっしゃる様な気がするのがまた怖ろしい…否、確実にいらっしゃるでしょうね、私よりもヤヴァいのが。日清・日露に従軍してどちらも脚気で途中退場した私のご先祖様、おかげさまで今日も日本は平和です…w)


お引き止めして申し訳ないです、どうぞ本文(あるいは苦行とも)の方をお楽しみ下さい。

え?楽しめない?…それは困りましたね!(この人深夜テンションなんです、すいません許してやって下さい)

「兄上、先ず何よりも大事な方針を決めておきますね」


「方針…?」


「そうです、この決闘に於ける方針です」


 ドクトリンみたいなものか?

 確かに、我々は即興でペアを組んだだけに過ぎないから共通の方針を決めておく事は必須だ。


 ナーシャは言う通りに動けば良い、などと簡単に言ってくれるが、それは同時にエーバーハルトに次の動きを未然に知らせてしまう事に等しい。

 当然ながら私よりも彼の方が反応速度が高いから、それは致命的だ。

 しかしドクトリンさえあれば、ナーシャに指図されずともある程度自分で行動を決める事が出来る。


「良かろう。何だ?」


「あの豚をミンチにしてやるには、ちょっとやそっとの攻撃では通用しません。兄上が今使える手段でマゾ豚に勝てる方法は一つだけ、ハレー卿に教わった秘伝の技──コンナミコマンド──しかありません。そもそも、そのために教わったのですから」


「コンナミコマンドを繰り出す事が最終目標である、と?」


 あれは元々サーベルでの戦闘用として教わったものだが、片手剣で尚且つ曲刀であるシミターでも全く問題は無い。

 サーベルと同じ感覚で使用出来るだろう。

 このシミターの方が少しリーチが短いのが気掛かりだが、その分扱いやすいから何とかなると思われる。


「はい。あれが成功すれば勝ち、外せば負けです。全てはその最後のコンナミコマンドに繋げるためだけに行動して下さい。外しても、まだ狙撃手がいますが…これは確実に兄上の名誉を汚す事になってしまうでしょうから本当に最終手段です。それに、狙撃の成功率自体も半分ぐらいに考えていて下さい。下手すればこちらに当たる可能性すらあるくらいですから」


 ふむ…中々に厳しいな…

 エーバーハルトが多少は手負いである事くらいしかこちらにアドバンテージは無い。

 そしてそれでも未だに勝利を確約する程のものではない、という絶望的なまでの実力差。


 いやはや…敵を倒す手段が必殺技ただ一つの戦闘に身を投じるなど…

 嫁を手に入れるぐらいの事でここまで命懸けでは割に合わんな。

 ルイーゼにはこの貸し、必ずや返して頂きたく。


「それと兄上、最後になりますが…もし仮に兄上がお亡くなりになられた場合、あの豚に相応の苦しみを与えた後に私も後を追って自害するつもりでいますのでどうかご安心下さい。兄上の存在しない世界に未練など微塵も感じませんから」


 最後に付け加える様にして軽い調子でその様な事を言う。

 いや…怖いって…


「それは死ねないな…」


「そうです、死なれては困ります。せめて子供くらい遺していってくれないと」


 そんなセリフを当然の如く涼しい顔で吐き出せる彼女の脳内は一体全体どうなっているのだろうか…


「良いかね、ナーシャ。冗談でもそういう事を言ってはいけませんっ。近親交配は生物学的に非常に、非常にっ危険なのだぞ!?確かに勝利の暁には結婚するという約束(?)だが、それとこれは別だからな!子供とか論外だからな!?そのためにルイーゼがいるのだから…」


 実際にスペイン・ハプスブルク家は近親交配で滅んだのだからな。

 我々ノマナフ家まで同じ轍を踏む訳にはいかん。


 そもそも、半ば無理矢理ながらも私が決闘を受けたのはナーシャがルイーゼを認めたから、というのも理由の一つとしてある。

 もし仮に何かの間違いで私があっさり勝ってしまう様な事があっても、ルイーゼさえいれば考え得る最低最悪のシナリオ──ナーシャが、私がそれ以上妻を娶る事を拒否し、妻が実の妹であるナーシャただ一人となってしまうという状態──は避けられるから、それだけでも遥かにマシだ。

 まあ、妾を使う手も無いではないが…ナーシャの事だ、それも防がれそうな気がする。


「いえいえ、ルイーゼはまた別ですよ。まあ、余り快くは思いませんが…兄上がお望みであればルイーゼと子を為されれば良いのです。しかしそれとは別に私ともしっかりしっぽり子作りの方をして頂きますので。そうですね…少なくとも男の子二人に女の子二人は欲しいですね。多ければそれに越した事は無いですが、単純に多ければそれで良いという訳でもありませんし」


「いや、だから!生物学的に宜しくないの!うちの家系はただでさえ父親が私含め三人しか子供を遺さなかったから特に!先代皇帝の血を継ぐ直系の三人のうちの二人がくっ付くなど、下手すれば国を滅ぼすぞ!?姉上がまだマトモで、ちゃんと息子もいるのが唯一の救いだが…」


 いや、ホント…もしもの場合には甥に皇帝になってもらわねば…私もそこまでよく知る訳ではないが、甥は年齢の割に随分しっかりしているし、姉上とトルストイ伯が教育の方もしっかりしているらしいし。


 ここで私が死ねばそれまでは姉上が女帝として君臨する事もあり得るが、彼女なら問題無さそうだ。

 実際、国の運営はナーシャと姉上に任せてあったはずなのにナーシャがここまで追っかけて来たという事は今は姉上が事実上のトップとして行っているはずである。

 国内有力貴族であるトルストイ伯が味方として側にいて、彼を自在に手足として使えるというのも良い。


 …あれ?これ、もしかして私よりも姉上が皇帝になった方が…

 いやいやいや、そうでもないはずだ!多分な!


 それに、もし仮にそうだとしてもトルストイ伯を宰相にでも任命して全て任せておけば良いのだ。

 普通ならばそれは権力の分散を招く悪手であり、長期的に見て宜しくない事この上無いのだが、幸いトルストイ伯に関しては姉上が付いているので問題無い。


 他の国では兄弟ですら王位を巡って争い、殺し合うなんて事がザラにあったりするが我々に関して言えばその心配は無い。

 従兄弟だとか叔父だとかになるとそういう可能性も無きにしもあらず、されど我々三人に関しては違う。

 兄弟ですら争うのは、彼等の人数が多く、兄弟とは言え互いに疎遠だからである事が多いのだが、我々はたったの三人だし子供時代から互いに接してきたからだ。

 王族や皇族でここまで仲の良い兄妹はいるまい。

 まあ、仲が良過ぎて逆にこうして困っている訳だが…


「でも私は妹とは云っても腹違いで──」


「それも妹である事には変わらんではないか」


 ちなみに日本国の法律では腹違いだろうが種違いだろうが何だろうが兄妹は二親等扱いである。多分。そうだったハズ。

 どちらにせよ親縁係数と近交係数がどエライ事になるという点では変わり無いが。


「大違いです。全く以って異なります!月とすっぽんですよ!」


 だ、そうだ。

 そこらについては詳しくは解説を参照願いたい。


「そうか、へえ」


「まあ、その様な事はどうでも良いのです、結婚は確定事項なのですから。今大事なのは子作り…そう、健やか家族計画です!兄上が嫌がろうが何だろうが正妃(むかいめ)である私との間に子供がいないなどという事は防がねばなりません!兄上はルイーゼとの間にもうけた子に継がせるおつもりの様ですが、それではフォーアツァイトの内政干渉を招く可能性がありますので。やはり未来の皇帝は私と兄上による国産でなければなりません!」


 おい待て…今一番重要なのは目の前の敵──エーバーハルト──だと思うのだが?

 私、何か間違ってる?


 しかしここで「そんな事よりもエーバーハルトに集中しろ」とか言うと、このままナーシャの思惑通りに子作りヒャッハー路線で押し通される可能性が高い…否、確実にそうなる。


 流石に妹と子作りなんていう流れは避けたい。

 末代に至るまでの恥だ。


 物語的にも余り宜しくないであろうし…

 主人公が妹と子作りする小説なんて、教育上不味いしPTAに訴えられてしまう!


 私は後世の人々から近親相姦シスコン野郎などと思われたくはないので、結婚は止むなしとしても、そこだけは防いで「仕方なく結婚しただけです」という体を装わねば。


 目の前のエーバーハルトが我々──突然結婚がどうこうとか子作りがどうのこうのと議論を始めた兄妹──を前に何とも言えぬ複雑そうな表情で突っ立っているが…そちらの方は気にしない。

 と言うか、気にしてはいけない。

 可哀想だがこのまま突っ立っていてもらおう。


 今何よりも大事なのはエーバーハルトよりもナーシャの家族計画を未然に阻止する事だ。

 それが出来なければこの決闘を無事潜り抜け生き残ったとしても、残りの人生が惨めなものになってしまう。


 そういえば第一話でもこんな展開があった様な…気が…せんでも…ないが…うん、気のせいだな!


「悪いが、君との近親交配など畏れ多くてとてもでないが出来そうにないな。可愛い妹が自分のせいで汚れてしまうなど私には到底耐えられぬ。ほら、大切なもの程使わずに大事にしまっておくものだろう?どうかナーシャはいつまでも純潔な処女(おとめ)でいてくれ給え。それに対してルイーゼはほら、もう既にエーバーハルトで汚れているから、うん、仕方ないな」


「失礼なっ、私もまだ純潔です!!まるで私が尻軽みたいな言い方は止めて下さいよ!」


 背後から何か訴える声が飛んでくるが気にしない気にしない。


「いえいえ、兄上に汚されるならば本望です。いえ、ご褒美であるとすら言えるでしょう。それに殿方というのはそういった背徳的な行為でこそ興奮するものだそうですが?兄上もそうでしょう?」


「いや、私はその限りではないぞ?確かにそういう男は多いのだろうが、私は違うぞ。エーバーハルトとかと一緒にしないでくれ」


 だって、健全に童貞として育ったからな。


「それは失礼しました。では、ノーマルに、ベッドの上で、夫婦として、愛を確かめ合う事としましょう。ついでに子作りも」


「いかんよ、ナーシャ。親になる、という事は君が思っている以上に重大な事なのだ。少なくともそう軽々と考えて良いものではない。十分な経済状況、親としての子育ての心構え、精神的余裕、そして何よりも大事なのはたっぷりの愛情…そしてこれらも最低限の前提条件でしかない。それらに加えてその子の将来に向けた適切な教育を与え、人間として優秀かつ道徳的にも問題の無いマトモな人物に育て上げねばならない。特に、皇帝にするつもりならばな。もし仮に…本当に仮にだが…こ、子供を生む様な事になるとしてだ、それだけの事を考えれば準備に最低でも五年はかかるだろうな、うん、準備が整うまでは子供はお預けになるが輝かしい未来のためと思えば致し方無い。そうだろう?」


「でも、今兄上が仰ったものは既に揃っているではありませんか」


 あれ?そうか?


「ええっと…あー、それはだな──」


「おい、皇太子。そこらで止めにしてくれんか?そろそろ我慢の限界なのだが…」


 怒りを無理矢理抑制した声でそう話し掛けてくるのは、勿論エーバーハルトである。


「おいマゾ豚、ブーブーうるさいわよ?少しは大人しくしていられないのかしら?はあ…お前のご主人様(ルイーゼ)の調教は少し足りなかった様ね」


「レディーにはご退場願おうか。妹さんには刺激の強い一方的な殺戮風景がこれから見れるようになる予定だ。君の愛しのお兄さんが血塗れの肉塊に成り果てる、な」


「…ほざけ」


 ナーシャが乱入して来た以上、恐らくもうこの決闘に降参という選択肢は無い。

 負けは死を意味するし、こうなったら勝つ他無いだろう。

 つまり私はここで初めて本気で勝利を狙う羽目になるのだ。


 南無三…それじゃあもう結婚についてはナーシャの言う様に確定みたいなものではないか…


「兄上、この件に関しては後程。先にこの生意気に人語を話す豚をここでハムにしてやりましょう」


「ああ。…それ、喩えだよな?まさか本当にハムにしないよな?」


「ご想像にお任せします」

ここんところ一週間で四話目ですね。

自分で言うのも何ですが、随分駆け足です。

一般ゾンビみたいににゆっくり歩いていたのに急にアクティブなゾンビになった様な感じ。


それにしても最近の筆者は頑張ってるなぁ…(自画自賛)

これも第三章(もう第四章になってますけど)をさっさと終わらせるためとは言え、とても頑張ってると思うなぁ、凄いなぁ…(チラチラ)

よぉし、この調子でちゃっちゃと決闘なんて終わらせるぞぉ!


…なんて思っておりますが、途中で力尽きる可能性も無くはないので余り期待しないで下さいね(笑)

第四章に関してはストックが沢山あるのでそっちは結構楽が出来そうな予感…フフフ…


今のうちに頑張っておきたいのは本音ですが、早過ぎるとそれはそれで読者の皆様が困ったり…します…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ