LVI.避け難き大戦。
※注釈
・BT-7S
まだまだ戦車の装甲がゲキ薄で、未熟だった時代のソ◯製軽戦車BT-7がモデル。
…と言うか、モロパクリ。
装甲がゲキ薄過ぎてヤバいですよ、この戦車。
何と、某島国のチハたん♡よりも薄い!(その分速いけど)
散々装甲が薄いだとか、主砲が豆鉄砲だとか、ノロいとかトロいとか、可愛いとか、チハたん萌え萌えとか言われたチハたんよりも雑魚いのです…!
チハたんの全面装甲が二十五ミリなのに対し、BT-7は十五〜二十ミリ。
更に、主砲もチハたんより雑魚い!(コンセプトが違うとか時代が違うとか言われればそれまでですが)
まあ、一概に比較出来るものでもありませんが…雑魚いです。
そうか、当たらなければどうという事はない…!そういう事なのですねっ?(残念ながら当たる)
7SのSは高速走行型のSです。(ロ◯ア語のскороходнуюをアルファベットに直すとskorokhodnujuだから)
もう十分に速い軽戦車を更に早くしてどーすんだ、それなら装甲強化しろよ、という感じですが、そこは突っ込んではいけません。
本作では電撃戦のために、先頭に立って凸るぜ!装甲薄いけど!後続は追い付いてこれないけど!
日本語流に厨二臭く言えば「BT-7中戦車高機動型」です!
高機動型…良い響きですね…
ちなみに、作中でベートゥシュカと呼んでるのは、チハをチハたんと呼ぶのと似た様なものです。
・T-34V
みんな大好きT-34がモデル。
そしてこれもモロパクリ。
34VのVはVictoryのVです。
はい、要するにテキトーネーミングでございます。
動きが比較的遅いので、歩兵さん達と仲良く前進します。でもチハたんと違って可愛くない…
日本語流に言えば「T-34中戦車決戦仕様」です!
Victoryを決戦仕様と訳しちゃうとか、我ながらお茶目なクソ意訳ですw
本作では勝手にテーヴェーとか呼んでますね。
34の要素はどこにいったのやら、と。
テーヴェーの方が言いやすいから34(トリーッツァチチトゥーリィ)は省略です。
本当は我が愛しのカーヴェちゃんを登場させたかったのですが、ストーリー的にそっちは諦め、コイツで我慢する事にしました。
やっぱ赤軍と言えば重装甲高火力のKVでしょ!…という筆者と同じ考えだった方々には謝罪します。(ISを想像した人はラーゲリ送りです)
仕方ないですね。
だって、ブリッツクリークするんだもんね。
カーヴェなんて使ってられるかよ!ってね。
最初期のドイチュ先輩みたいに機動性重視でいかないとね。
個人的には突撃砲とかも出したいのですが、と言うか出したくて出したくてもう堪らないのですが、それをやっちゃうと最早ロ◯アではなく第三帝国になってしまうので自重しております。
そういったものに関してはもしかしたらフォーアツァイトの兵器として出す…かも…
パンターとかティーガーとかねぇ…
ドイチュ先輩の装甲がカクカクした戦車は堪らんです、はい。
※コラム 〜戦車の装甲とシールドについて〜
ちなみに、設定資料集をご覧になった方はお気付きになったかもしれません。
「この世界にはシールドなるSF要素が存在するのでしょう?それなのに装甲がどーのこーのっておかしくない?」
…と。
その通りです、その通りなのです。
軍艦にはほぼ装甲を施していないのだから、同様に戦車もシールドに防御を委ねれば良いじゃないか、と。
しかしこれには少し事情があります。
それはすなわち、シールドの小型化に伴う性能低下です。
戦車のシールド事情は軍艦ではなく、航空機のものと似ています。
車体にシールドジェネレーターを積もうとすると、どうしても小型化の必要性があり、防御性能もそれに伴って頼りないものになってしまう訳です。
更に厄介なのは、シールドジェネレーター本体ではなくそれを設置すべき車内の環境。
シールドは強力な電磁波を放ち、特にシールドジェネレーター本体付近はγ線が飛び交います。(という設定)
そしてそれは強力なものであればある程顕著になっていきますので、ぎゅうぎゅう詰めの戦車内では悪夢の様な存在。
そのため、戦車のシールド多用は倫理的にタブーなのです。
また、純軍事的観点でも、戦車が装甲を施す事には意義があります。
シールドは、敵弾を防ぐ際にエネルギーを消費する他、シールドそのものの展開維持にも エネルギーを要します。
そのため、常時シールドを展開していてもへっちゃらな軍艦とは違い(軍艦は極端にシールド無しでは防御が薄いので、基本的には戦闘時以外にもシールドを常時展開している。ただし全開ではなく、普段は能力の一割程度のものですが)、持っていけるエネルギー量が少ない戦車は、必要な時以外はシールドの展開を避けています。
しかし海上と違って陸では急な接敵なんて日常茶飯事ですから、その時に防御力ゼロ…なんて事じゃ困るのです。
以上が、この世界に於ける戦車装甲の存在意義です。
まあ、どちらにせよ軽中重の如何に関わらずシールドジェネレーター自体は積んでおりますがね。
そのため、この世界に於ける戦車は我々の世界のもの以上に強力で、戦車不要論なんざとは無縁です。
その分魔導砲も強力なので釣り合いが取れているのですが、歩兵からすればとんでもない話でしょうね。
戦車も強い、砲火も凄まじい、そのくせ歩兵の銃はショボい、未だに軍刀やら銃剣やらが現役…というか大活躍…
塹壕を掘っても塹壕ごと砲弾で抉られるし、私がこの世界で歩兵として従軍させられたなら発狂しますね(笑)
主人公のニコライが修行中ですが、またまた「Meanwhile プラトーク」をお送りしております。
〜六月十六日 (父殺害より六十七日目)〜
「多忙な中、今宵もお集まり頂き感謝する。計画が順調に進んでいるのも、全ては諸君の尽力の賜物だ。全軍の管理を担う立場として諸君にはいつも頭が上がらない。本当にありがとう」
広い広い部屋の真ん中には、巨大なテーブルがどかんと置かれている。
そしてそのテーブルには白いテーブルクロスがかけられ、豪華な料理が並び、美味しそうな匂いが漂っている。
そしてそのテーブルを囲む様にして十二人の男達が座っていた。
皆軍服を着ていて、立派な髭を生やしていたり、やたらと勲章を付けていたり、腰にサーベルを下げていたりと、軍人である事が一目で分かる。
そしてそのテーブルの所謂お誕生日席に座る男、弱冠二十三歳のプラトーク帝国軍総司令官、ピョートル・フロスティアーラヴィチ・ヴィートゲンシュテインはただ一人起立し、深々と頭を下げていた。
「閣下、頭をお上げ下さい。我々はプラトーク軍人として当然の義務を果たしているだけの事です。あなたが頭を上げる必要など全く無いのです」
頭はツルツルなのにおヒゲが凄まじく立派なとある男がヴィートゲンシュテインに対して、諌める様にそう発言する。
「そうですぞ、中将殿の仰る通りです。偉大なる皇帝陛下の軍のトップたる総司令官の頭は、そう易々と下げて良いものではありませぬ」
同調する様に、もう一人の男がそう言う。
「ありがとう。私の様な若造に軍が管理出来るのも諸君のお陰だ。本当に、感謝の言葉しかない」
「ご謙遜を。閣下は優れたお人じゃ。このヴラーンゲリ、たとい盲目ジジイと呼ばれても、人を見る目だけは衰えてはおりませぬぞ。この身に賭けて、閣下が十分に立派な総司令官である事は間違いないと断言致します」
ヴラーンゲリなる人物(彼は海軍大将である)は恭しくそう語る。
「先先代の英雄であるヴラーンゲリ海軍大将にそう言ってもらえると、この身には過ぎた言葉ではあるが非常に有り難い。ご期待に添えるようこれからも職務に邁進していく所存だ。では、本題に移ろうと思うが宜しいか?」
一同、無言で頷く。
「今回お集まり頂いたのは他でも無い…コルチャーク少将の提案を受けてのものだ。そうだな、少将?」
「Да、仰る通りであります。自走砲担当、砲兵科の小官と致しましては是非とも自走砲の製造を取り止める事をお許し頂きたく、この話し合いの場を提供して頂いたものであります」
「少将、正気かね?自走砲を造るな、とは…砲兵の主張とは思えんな」
皆の顔に困惑の色が混じる。
集まった軍人達の困惑も当然の事で、砲兵であるコルチャーク少将の立場からすれば、これは本来有り得ない主張である。
敢えて自分達砲兵の活躍の機会を手放す馬鹿がどこにいると言うのか?
それを平気で実行しようとする彼の事を誰もが信じられない、といった心持ちで見ていた。
「驚くのも無理はありません。実際、小官にとっても苦渋の決断でありました。しかし、偉大なる祖国のため、果ては皇帝陛下のためを思えばこそ、矮小なるこの感情を切り捨て、この様なご提案をさせて頂くに至ったのです」
「そう決断するに至った理由をお聞かせ願いたい」
「はっ。それは単純な話、我々砲兵の存在意義が著しく低下したからであります。本来我々は足が遅く、動きのゆっくりとした戦線でこそ真価を発揮する兵科であります。しかし今回の連邦侵攻ではこちらは高速で移動する必要があり、それ故に我々砲兵は自走砲という名の足を提供して頂く事になっておりました。しかしながら、それは爆撃機が存在しない前提でのものであります。グレビッチなる戦闘機は聞き及ぶところによれば、爆撃機の様に非常に高い対地攻撃能力を持つとの事。なれば、砲兵はお役御免であります。自走砲に回す予定のリソースは全て戦車に譲ります」
「やはりグレビッチの件が影響してか…」
ヴィートゲンシュテインは何とも言えぬ表情を浮かべてそう呟く。
「幸い、BT-7Sの製造を優先した事により自走砲の製造の方は左程進んでおりません。宜しければ、泣く泣く諦めたT-34V製造にそのリソースを配分すべきかと」
本来は軽戦車だけでなく中戦車も製造したかったのだが、リソースの関係上諦めざるを得なかったのである。
確かに自走砲の製造を中止すれば中戦車を造れる。
だが、本当に自走砲は不要なのか…?
「少将、貴殿が言う様に本当にグレビッチで自走砲の役割を果たせるのかね?」
「それは間違いありません。それどころか、砲兵などよりもよっぽど優れております。部隊の展開速度が桁違いでありますし、砲撃よりも爆撃の方が精密であります。戦車の突破路を生み出すという目的のためには爆撃の方が良いと愚考致します。どうせ正面戦闘は避けて敵首都を叩く作戦でありますから、どう考えてもグレビッチの方が優秀であります」
「では、砲兵は戦争の間何をするのだ?のんびり茶でも啜っておくのか?」
「それに関しては、戦車兵の方々のお世話になろうかと。どうやら、調査によれば戦車兵の砲撃技術は非常に稚拙であるとか」
「仕方あるまい…戦車兵とは名ばかり、元騎兵だ」
騎兵科の廃止に伴い、元騎兵達は今では戦車兵となっていた。
当然ながら戦車に関してはまだまだ素人だし、操縦は兎も角、砲撃については話にならない。
ちなみに、戦闘機パイロット達は元翼騎兵である。
「ですから、戦車の操縦や指揮、その他諸々に関しては戦車兵に任せるとして、砲手については我々にお任せ頂きたい。それで十分に我々砲兵も活躍出来るかと思うのですが、如何でしょうか?」
「ふむ…成る程。しかし、そうなると本当にグレビッチ頼みになってしまいますな。それならばいっその事、テーヴェーではなくグレビッチを増産すべきかと思うのですが」
「それも仰る通りではありますが、小官と致しましてはやはりT-34Vの製造にリソースを回すべきだと述べさせて頂く所存であります」
「何故かな?」
「BT戦車の最大の特徴はその速度にありますれば、後続を置いていってでも前進を続ける事が求められます。例え歩兵を機械化・自動車化しようともBT戦車はかなり先行する事必至であります。ならば、BT戦車に置き去りにされた他兵科は誰が守るのでありますか?爆撃では突破の足掛かりを生む事は出来ても敵の殲滅には至りません。つまり、突破成功後も敵の残兵は歩兵で対処せねばなりません。その時に戦車が存在しないのでは苦戦は確実であります。なれば、歩兵戦車としてT-34Vを用意すべきだとは思いませんか?迅速に後続をBT戦車に追い付かせるにはT-34Vが最適であると小官は愚考するのみであります!」
「説得力のある主張だ。それで、他に意見のあるものは?」
「総司令官閣下のご意見をお聞かせ下さい」
「私か?私も概ね少将の主張には賛成だ。非常に優れた意見だと思う。ただし、多少の修正は必要だとは思うがな」
「それはどの様な?」
「少将は自走砲を完全に生産停止にする心積もりの様だが、それは些かやり過ぎだと思うのだ。やはり戦車では代用出来ない自走砲ならではの利点があるし、自走砲の方が大口径の砲を載せられる事を考えれば、中戦車も確かに必要ではあるが自走砲を捨てるのは余りに勿体無い。私個人の意見としては、BT-7Sと自走砲各種の生産を少し抑え、その分でT-34Vを造るべきだと考える」
一人の男が立ち上がる。
「戦車兵代表として、私の方からも意見を」
「どうぞ」
「私もヴィートゲンシュテイン閣下に賛成です。もし仮にグレビッチに高精度な爆撃が可能なのであれば、ですが…仮にそうとすればベートゥシュカの台数は減らしても構わないかと思います。既存の生産計画での台数は、敵突破時にかなりの損害を前提としております。ですが、グレビッチが的確な援護をしてくれるならばベートゥシュカの損害は抑えられ、もう少し台数を減らしても良いかと。まあ、グレビッチとパイロットの爆撃能力次第ではありますので、パイロットの練度が一定水準を満たす見込みがあるならばその様にすれば良いかと。自走砲に関しては砲兵屋が減らしてくれと言うのだから、私としてはとやかく言うつもりはありません」
「有り難う。貴重な意見を感謝する。では、これを受けて陸軍航空隊の見解を聞きたい」
「では陸軍航空隊を代表してこの私、ストラヴィンスキーがお答えさせて頂きますぞ」
彼はおほんっと咳払い一つ、威厳に満ちた様子で語り始める。
「結論から言えば、かなりのレベルまでパイロットの練度を高める事が可能ですじゃ。元々グレビッチは巴戦の様な高度な戦闘は想定しておりませぬ故、爆撃訓練に時間を割けば十分に可能ですな」
「ほう、それは頼もしい。では、信じて良いのだな?」
「勿論です、閣下。ですからBT戦車に関しては安心して生産量を削減して下され」
「分かった。では機甲科も異論が無い様だし、軽戦車の生産量を抑える事については決定としよう。自走砲に関してもだ。どちらも細かい調整はこの後関係者同士で話し合う事とする。何か異議申し立てのある者は?」
全員黙ったままだ。
「宜しい。では、本来の目的はこれで達成したな。しかしまだ帰してはやれないぞ、今日はもう一つ議題がある」
「それは?」
「その後の計画だ」
一同、表情を変える。
皆一斉に険しい顔となり、眉間にシワを寄せる。
「やはり衝突は避けられませぬか…」
「ああ、残念だが。フォーアツァイトと協力する以上、どうしてもな」
「やはりどう考えてもメーヴェと同盟三国、アウグーリ共和国の参戦は避けられまい。他にもフォーアツァイト帝国の近隣諸国は一斉にこの機に乗じて参戦すると思われる。これは外交努力などでは避けられない事だ」
数日前に届いたフォーアツァイト帝国の外交官からの連絡により、プラトークとフォーアツァイトの秘密同盟締結が確認された。
元々はプラトークの野心からエクテラミュジーク=セドゥイゾント連邦に侵攻する、というだけのものであったが、フォーアツァイトを巻き込んだ事で事情は変わる。
フォーアツァイトは周囲に多くの敵を持つ軍事国家である。
大昔から、周囲の国々に攻め込んでは領土を獲得し、また攻め込む…という侵略行為を繰り返してきた。
そしてそれは今でも変わらず、周囲の国家が団結し抵抗しているからこそ最近では侵略の「し」の字も見せないが、やはり常に絶えず領土的野心を露わにしているのである。
それだけに非常に敵が多い。
そして此度の戦でプラトークとフォーアツァイトが結託して連邦を攻めたら…周囲の国々はどう思うだろうか。
恐らく、フォーアツァイトだけでも厄介なのにプラトークまでもが敵に回った、と判断するに違いない。
彼等にとって連邦は他人事ではない。
明日は我が身、とばかりに身震いし、凄まじい恐怖心に襲われるだろう。
では、耐え切れない程の恐怖に晒された人間はどの様な行動に出るか?
答えは簡単、恐怖の根を掘り返しにやって来る。
しつこい雑草は根元からぶっこ抜いてやる、と。
事態が手遅れになる前に手を打とうと、フォーアツァイトとプラトークに攻撃を仕掛けるだろう。
つまり、プラトークはフォーアツァイトと手を組んだは良いが、そのせいで敵国がわんさかハッピーセットで付いてきてしまうのである。
元々、連邦の同盟国のいくつかの国かは敵に回るだろうと予測していたプラトークだったが、その予想を遥かに上回る数の敵が現れてしまう。
このままでは、プラトークとフォーアツァイトの二国で世界中を敵に回す羽目になってしまう。
「何か策は無いのですか?」
「策か…あちらとて国家の命運が掛かっておるのだ、どの様な策を以ってそれを懐柔せよと?」
「あとは出来る限り中立的な立場の国々を敵に回さない様にする、ともすれば味方に引き込む、それが無理でもせめて中立を保ってもらう…それぐらいの事しか出来ませんな」
「それでも、それだけは避けねばならない。世界中を敵に回す事になれば、最悪国が滅ぶのだ。世界大戦…それだけは避けねば…」