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LII.そこはやっぱりお約束。

※注釈

・カリギュラ効果

「押すなよ!?絶対に押すなよ!?」とか言われた時のあなたの気持ちの事。

やるなと言われるとやりたくなる。

だって、人間だもの。

ちなみにこのカリギュラとは、ローマ皇帝のお名前が由来です。

しかし筆者は塩野七生氏の某有名書籍を読んでおりましたので、“カリギュラ効果”ではなく“カリグラ効果”とついつい言ってしまいますね。

ネットで検索をかけると、“カリギュラ効果”と書かれたものは沢山出てきますが、“カリグラ効果”と書かれたものは見つかりません。

別に、カリグラ効果と言っても良いのでは?何故にカリギュラ限定…?

そんな疑問が湧き出てきて、調べてみると、成る程、納得致しました。

正確には、「カリグラ帝が由来の言葉」ではなく、「カリグラ帝をモデルにした映画の名前が由来の言葉」だったのですね。

勉強不足でした。


・神話の神

ローマだったかギリシャだったか忘れましたが、女の子がお外でお昼寝しているうちに野外でこっそりピーする神話がありました。

マルス…だったかな…?


・パーフェクトな大戦略

筆者は大戦略シリーズが好き。

でも、クソゲーだった…

クソゲーだったのです…

「アリサ、やりなさい」


 副メイド長が背中を押す。

 彼女は躊躇いつつ、手を背中に遣る。


 そもそも、彼女はあれ程私に、脱ぐぞ脱ぐぞ、と脅してきていたくせに未だに服を着ている。

 メイド服は背中の方に紐があって、それを(ほど)かねば脱げない。

 普段はしているポニーテールを先程解いてしまったため、長い髪が邪魔をしている様である。


「手伝いましょうか?」


「ダ、ダメ!自分でする!」


 しゅるるるる、と紐が解けると、ばさり、と彼女は思い切って服を一気に脱いでしまう。

 その後は下着である。

 こちらも、さっきまでの躊躇いは何だったのか、と思ってしまう程に思い切りが良い。

 彼女はぐっと目を瞑り、えいやっと上も下も脱いだ。


 ぽよんっと可愛らしい果実が二つ、勢い良く中から顔を出す。


「おお…頑張ったな…」


「裸になれただけでもアリサだと思えば及第点ですね」


「恥ずかしい…」


 彼女はうずくまって胸を両手で隠してしまうも、恥じらいがグッドである。

 うちの女性陣には無い()()()()

 本来あるべきそれが、唯一まともに機能しているのがこのアリサという少女。


 メイド服は露出度が低いので普段分かりにくいが、アリサの身体つきは非常に扇情的であった。

 大人しい顔して、その下にはこの様なものを隠していたか…


 適度な大きさの胸。

 大きくはない、されど小さくもない…というこの絶妙なサイズ感。

 ギリギリ手の平に収まるぐらいの大きさである。

 …否、他の連中(ルイーゼ等々)が大き過ぎるだけで、十分大きいと言える。

 この完璧なバランス、所謂(いわゆる)ところの美乳である。


 そしてスラリとして、流れる様な美しい身体のライン。

 スタイルが良い、というのとはまた少し違うのだが、細くて綺麗な身体をしている。

 私個人の見解としては、もう少し肉付きの良い方が好ましいとは思うが、それはまた男という立場から見た場合に於ける意見であって、中立の立場から見た場合、素晴らしいの一言で形容するしかないのが彼女のこの肉体である。


 普段から、大人しく、それでいてドジっ娘、とどめにメイド、という童貞()に怒涛の連撃を浴びせ掛けてくるアリサが、更に今回「私、脱いだら凄いのよ」を証明してくれる、という…

 それも、恥じらいもセットにして、である。


 嗚呼、今こそカリギュラ効果の本領発揮だ、とばかりに、アリサの恥じらう姿を見ていると何だか無性にいたずらしてやりたくなってしまう。

 赤面し、少し羞恥からか涙目になっている彼女は、紛れもなくサディスティック同盟の諸君にとっては格好の獲物である。


 私の奥底に眠る加虐性癖が目覚めようとしている…!

 今は縛られているけども!


「どうです、陛下?」


「どう、とは?」


(たぎ)ってきたのではありませんか?」


「うん…まあ…そこそこ、な…」


 そこそこどころかシコシk…おっと…


「それは良かった。どうぞ、遠慮なくアリサを…」


 ぴたり、と副メイド長の言葉はそこで途切れる。

 ニンマリした怪しい笑顔も打って変わり、普段の様な厳しい表情へと瞬時に変化する。


「どうした…?」


「陛下、そこを動かないで下さいね」


 動くなも何も、最初から縛られていて動けないのだが。


「アリサも、そこでじっとしていてね」


 アリサの方も、何も言わずとも羞恥が限界にまで達し、ロクに動けない状態なのだが。


 彼女は、姿勢を少し低くして、ゆっくりとドアの方へと歩く。

 一歩ずつ、そろりそろりと。

 ドアの前にまで辿り着くと、彼女はぴたりと止まる。


「…陛下、お尋ねしたい事がございます」


「何だ?」


「三十秒程でアリサに種付けは可能でしょうか?」


「三十秒…?」


 三十秒で種付けをせよ、と?

 三十秒…そうか、三十秒…


 何を言い出すかと思えば三十秒で事を済ませよ、と。

 無茶を言うものだ…


 無理だな…どんな早漏でもチェリーでも三十秒は無理だな。

 神話の神でもなければ無理だな。

 少なくとも私には無理だ。


「無理だ」


 そう正直に答える。


「そうですか…」


 彼女は深い溜め息を一つ吐くと、今度は窓辺へと向かう。

 そしてがちゃん、と窓を開け、窓枠に足を引っ掛け…


「何をする気だ…?」


 ここは最上階。

 落ちれば死ぬ事間違い無しの高さである。

 急にどうしたというのか?


 新鮮な空気が窓から流れ込んで来る。

 副メイド長の髪がそれを受けてばさばさと揺れる。


「陛下、私の見立てでは恐らく約十秒後にご理解頂けるかと。では」


 彼女は右手でちょっとした軽い敬礼をし、そのままぴょんっと飛び降りる。

 まさか、飛び降り自殺とかではないだろうが…


「おい、アリサ!良いのか!?飛び降りて行ったぞ?!」


「何故でしょうね?まあ、エレーナさんだし、大丈夫で…」


 アリサがそう言い終わらないうちに、バァーンと物凄い音と共に、ドアが吹っ飛ぶ。

 吹き飛んだドアは、そのまま壁へと一直線に突っ込んで行き、粉々になる。


「な…!?」


 本来そこにドアがあったはずの場所に、代わりに立っていたのは…ナーシャだった。


 こういう事か…

 こういう事だったのか…

 副メイド長は危険を察知し、一足お先にトンズラしたのか…!


「な、ナーシャ…?」


 右手にはどこから持ってきたのか、短めの槍。

 左手には、巨大な(なた)を持っている。

 …殺る気満々ってか!?


 そして、その顔は…笑顔。

 半分引き攣った、笑顔。


 嗚呼、怒っている…!

 非常に怒っている…!

 アリサは裸だし、これは最悪死人が出る…!


「兄上…ここで何を?」


「えっと…」


 どう言い訳すれば良いものか。

 さっぱり分からん。

 もう言い逃れなど不可能であろう。


 アリサは決定的瞬間をナーシャに目撃された事で、蛇に睨まれた蛙の如く、硬直。

 頼りの副メイド長は逃亡。

 私はご存知の通りお縄を頂戴している。


 詰んだ。

 王手、チェックメイト。

 もうこうなれば全ての抵抗の試みは無意味だ。


 最後の手段、それに全てを賭ける他あるまい。


「兄上が縛られていますね…それは何故です?」


「副メイド長が!」


「リサが裸なのは?」


「副メイド長が!」


「リサの部屋なのにエレーナ?」


「副メイド長が!」


「そもそも何故ここに?」


「副メイド長が!」


「副メイド長が、何ですか?」


「副メイド長が!」


「で、まさか…リサと行為に及んではないですよね?まさかね?有り得ませんよね?」


「副…じゃなくて、ヤってません!」


 脳死状態で副メイド長を連呼し、全てを彼女になすり付ける。

 これぞ真の生存戦略!

 見たか、我がパーフェクトな大戦略を!


「本当に?」


「ヤってません!」


「兄上をこの世で一番愛しているのは?」


「勿論我が妹!」


「つまり…?」


「ナーシャ!」


「兄上がこの世で一番愛しているのは?」


「勿論妹!妹大好き!」


 ふーん、とナーシャは(いぶか)しげに私を見る。


 流石に無理があるのは承知だが、では逆にどうせよと?

 この状況ではこうする他あるまい。


「この件は…どうしましょうか…エレーナを捕まえてみないと真相は分かりませんね…」


「そうだろう…!?ここは一旦不問としてだな…」


「あ、でも、リサを拷問すれば簡単に情報を…」


「きゃああああ!!死ぬ!死んじゃう!!」


 アリサは恐怖のあまり、鼻水ダラダラで泣き叫ぶ。


 彼女は私の記憶違いでなければ、毎回似た様な状況に陥っている気がする。

 可哀想に…


「あら、ほんの冗談なのに」


 それを尻目に小声でそう呟くナーシャ…

 冗談に聞こえないからこそアリサもこの様な反応をするのだが。


「止めてやれ、怯えているだろう?」


「まあ、兄上がそう言うのであれば仰せのままに。しかし、兄上の目の前で裸体を見せつけ、誘惑するとは…リサ、身の程を弁えていない様ね?」


「い、いえ…それは…」


 ガクガクブルブルと盛大に震えながらも、アリサはちらりちらりとこちらに目を遣り、私に助けを求める。


「安心せよ。アリサの貧相な身体程度では誘惑どころか三時のおやつにもならぬわ」


 と、フォローを入れてやる。

 しかし、これが不味かった。


「へぇ〜、成る程成る程〜…アリサの様な貧相な身体では全く以って問題外である、と?」


 ナーシャの笑顔が一瞬にして固まる。

 顔の表情筋が悲鳴を上げるレベルで笑顔を維持しつつ、ピクピクと頬が痙攣しているのが分かる。


 嗚呼…やってしまった…

 地雷を踏んだ…


「そうですものね〜兄上は豊満な身体が大好きですものね〜?例えば、ルイーゼとか」


「は、はは…そ、そんな事もないぞ…」


「いえいえ、分かっていますよ。兄上は巨乳が大好きですものね。リサや私の様な小さいのでは満足出来ませんものね?」


 い、いかん…!


 ナーシャは歳相応に胸があるし、平均から見れば十分に大きい方である。

 だが、周りが化け物揃いの巨乳揃いの驚異のラインナップであるため、少々そういった事にネガティブな感情を抱いているらしい。


 そして私はそれを刺激してしまった…!

 怒ってる、怒ってるよ…


「リサでも駄目ならば、もっと貧相な私の身体はどうなのでしょうね?」


「い、いやぁ…それはだね、ナーシャはまだまだこれからだし…年齢のせいではないか?」


 我が妹の身体はまだ少し幼さが残る。

 まだまだ成長途上なのだ。

 その時点でこれだけ大きな胸をお持ちでいらっしゃるのだから、心配する必要など無いと思うのだが…


「兄上、お忘れですか?私とリサはほぼ同年代なのですよ?歳など言い訳になりません!」


「それは…アリサが老けているからだろう」


「失礼な!“大人びている”と言って下さいっ!」


 アリサがプンスカ怒る。

 さっきまでブルブル震えていたくせに、自分への中傷と思しき言葉に対しては敏感に反応する様だ。


 …それはそうと、彼女はいつになったら服を着るのだ?

 彼女は現在全裸。

 こうやって普通に会話しつつ、あんなところやこんなところが我が両眼にダイレクトアタックをかましてくる。

 見えてますよ、アリサさん!


 最初の恥じらいは何処(いずこ)へ?


「アリサ」


「はい?」


「服を着ろ」


 故に私は優しく彼女にそう諭すのであった。



 ✳︎



「兄上、私との特訓から逃げて、リサとイチャイチャSMプレイとは…よっぽど元気があり余っていらっしゃるのですね」


「いやいや、滅相も無い」


「あ!兄上、次はアレが食べたいです」


 ナーシャが食卓に並ぶ豪勢な料理の数々の中から一皿選び、指差す。


「はいはい…アリサ、あの肉料理だ。うちのお姫様は肉料理がお好きらしい」


 実際、ナーシャが肉料理を指差したのはこれで五回目である。


 私はそれをアリサに取って来させ、彼女から受け取る。


 アリサの手はプルプルと震えていて、どことなく顔が赤い。

 何やら俯向きがちで、内股でちょこちょこと歩いている。


 それもそのはず、現在の彼女はナーシャにより、ノーパンミニスカ状態なのである。

 …ノーパンミニスカ状態なのである。(大事な事なので二回言いました)


「ど、どうぞ…」


 彼女は私に皿を手渡すや否や、短いスカートを押さえながら逃げる様に後ろに退がる。


 ナーシャはその様子を尻目に見ると、さも満足気にフンっと鼻を鳴らす。


 彼女は現在、私の膝の上という、普段のナディアポジションを独占している。

 まるで木に掴まるコアラの如く、私に向き合う様にしてべったりだ。

 そして私に“あーん”を強要したり、「美味しいですよ」とか何だとか言って、私に料理を口移ししてきたり、もう口実すらも無く突然かなりディープなキスをしてきたり、それはもう色々とやってくるだ。


 そしてそれを横からただ黙って見つめる使用人達。

 もう慣れてしまっているプラートークの使用人ならば兎も角、フォーアツァイトの使用人達はどう思うだろうか…

 兄妹で乳繰り合っているのを見て、複雑な心境にならずにはいられまい。


「ナーシャ、野菜も食べろよ。ナディアですら好き嫌いしないというのに…全く…」


「だって私、肉食ですから」


 ええ、その通りですとも。


 胸部からソロソロと南下を続け、私の下腹部へと迫ろうとするナーシャのいやらしい手を払い除け、ナイフで小さく肉を切り分け、フォークでぐさりと刺し、ナーシャの口にそれを放り込んでフィニッシュ。


 モシュモシュと美味しそうに頬張る彼女の、口元に付いたソースをテーブルナプキンで拭き取り、彼女が食べている隙に自分の分も口に放り込む。


「うむ…添えてあるジャガイモと一緒に食べるとこれまた美味いぞ」


「そうですか。じゃあ私も次はジャガイモとお肉、一緒に食べます」


 ナーシャが私の首元に頰を擦り付けるのを意識しないようにして、私はジャガイモと肉を彼女の口に放る。


「おお、本当ですね!美味!嗚呼…この味を兄上と共有したい…」


「もうその手は食わんぞ。どうせ口移ししたいだけだろう?」


「ええ、まあ」


 図星だったらしい。


「あ、ところで…特訓の件ですが…」


「明日はやるってか…?確か、水中で不埒な事をするだけだろう?」


「いえ、どうやら兄上は私との特訓は嫌らしいので、仕方無く、予定は繰り上げで明日から正式な特訓を始めます」


「ああ、あの三宝剣の一人とやら…か」


「そうです。兄上はサーベルを使われますが、あのマゾ男(エーバーハルト)刺突剣(レイピア)を使うそうですよ。ですから、それ専用の特訓をするんですって」


 気が乗らないなぁ…

 だが、それで練習をせずに本番に臨み、決闘中にエーバーハルトに殺されでもすれば、冗談では済まない。

 我が身の安全のためにも、特訓は渋々だがやる他ない。


「特訓して、必ずや勝って下さいね」


「まあ、やるだけやってみよう…」

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