XXI.婚約者がうちに泊まっていくそうです。
※注釈
・ばたんきゅ〜
アルルさん。
・アクティブラーニング
下記の課題解決型学習の思想に基づく学習方法。
授業を聞くだけの受動的学習ではなく、班ごとに話し合う等の能動的な学習を用いるものです。
教育業界では最近流行りの言葉。
ただし、現状でこれを上手く活用出来ているかと言うと…う〜ん…
詰め込み教育推奨派の筆者の様なおっさんにはよく分からないです…
・課題解決型学習
実際に経験する事を通じて学習する事。
要は、寺山修司氏の言葉を借りれば「書を捨てよ、町へ出よう」という事。(ちょっと違うけど)
アメリカのプラグマティズムの代表的哲学者、デューイが提唱しました。
もっと分かりやすい言葉で表現すると、「ゆとり教育」の基となった考え。
ゆとりも元々はそういう大義の下で行われた事だったのです。
教科書を読んでるだけじゃ、本当に大事なものは身に付かないよ、と。
結局、現在では批判されているゆとり教育ですが、批判側の主張は全て結果論でしかありません。
学力低下ばかり取り沙汰されますが、ゆとり教育とは本来それを覚悟の上で行われたものです。
大事なのは学力低下という目に見える結果などではなく、ゆとりで最終的に得られたものは何か、でしょう。
まあ、斯く言う筆者もゆとり世代ではないので、ゆとり教育反対派でしたが。
・神よ、皇帝フランツを守り給え
えーと、ドイツ帝国じゃない方の帝国の国歌ですよ!
目立たない方の帝国の国歌ですよ!
…あ、でも、神聖でもローマでもない某帝国の国歌でもあるから…ドイツでもあるなぁ…
まあ良いや、取り敢えずハプスブルク家(笑)の歌って事で!!
・サバト
魔女集会の事。
・シャンプー
シャンプーと聴くと、ペースト状のものを思い浮かべますが、大昔は粉状でした。
今では世界的に見ても綺麗好きで有名な日本人ですが、明治時代には花王が「せめて一週間に一度は髪を洗いませう!!」なんて広告を出していたくらい、元々日本人は髪を洗わなかったんですよ。(まあ、髪型のせいだけど)
「え!?陛下、婚約ってどういう事ですか?!」
「そのままの意味だ。この娘と婚約した。ナディアだ」
ソフィア医師は、えー…と複雑そうな表情でナディアをちらりと見る。
「気のせいかなぁ…何だか小さい様な気がします…」
いえ、実際小さいんだ。
その通り、小さいのだ。
「おねーちゃん、あのひとだれ?」
「ナディア、近付いては駄目よ。ビッチが感染るから」
「びっち?」
何と教育に悪い…
変な言葉を教えないでくれよ。
「ナディアちゃん、そんな言葉は覚えちゃ駄目ですよ」
「なんで?」
「汚い言葉だからです。女性が使ってはいけませんよ」
「じゃあ、なんでおねーちゃんはつかっていいの?」
「──それは…殿下だから…です…」
はい、ナーシャだからです。
「ねえ、もしかしておねーさんがあいじんさん?」
まさか、ナディアはその噂を知っていたのか…?
「違うわよ、ナディア。あれは愛人なんてものではないの、ただの雌豚よ」
「おねーさんはブタさんなの?」
「違いますよ。あ、それも真似してはいけませんからね!私はただの後宮専属医師です!所謂侍医ってヤツですよ」
「おいしゃさん?」
「はいっ!」
ナディアは暫し考え込むと、ポツンと一言、
「ナディア、おいしゃさんこわいからきらい」
と無表情で告げる。
「え…?お医者さん、嫌いなの…?」
「うん」
「どうして…?」
「おくすりニガいし。おちゅーしゃコワイし」
そんな…とソフィア医師はその場に膝をつく。
ばたんきゅ〜、である。
職業のせいで嫌われるとは、可哀想に。
ナーシャはそんな様子を見て、ざまあ見ろとにやにや笑っている。
妹が他人の不幸を喜ぶ様な人間に育ってしまって…兄としては悲しいです…
「まあ、そんなに嫌ってやるな。ソフィア医師はとても優しい人だぞ?」
「どれくらいですか?」
「…ん〜、少なくともナーシャよりは優しい」
「ほんとう?」
「ええ。自分で言うのもなんですが、少なくとも殿下よりは優しいです!」
ソフィア医師は第一印象の不利をカバーすべく、必死に猛アピール。
健気だ…
「じゃあ、おねーさんのことはなんてよべばいいかな?」
「何とでも呼んで下さい!」
「じゃあ、売女にしましょう」
「ばいた?」
「変な言葉を教えないで下さい!!駄目です!」
「じゃあどうすればいい?」
「じゃあ、無難にお姉ちゃんはどうですか?」
「却下っ!私と被る!!」
「じゃあ、ソフィアでいいや」
という事で、呼び捨てにするそうです。
まあ、身分的にナディアの方が圧倒的に上なので全く問題無いけど。
お姉ちゃんと呼ばれたかったらしいソフィア医師はちょっと残念そう。
「殿下ぁ〜お姉ちゃんの座は譲って下さい…」
「駄目よ。絶対に譲らないもん」
兎も角、ソフィア医師もナディアの事は取り敢えず認めてくれたので良しとしよう。
「ナーシャ、今日はナディアもいるのだし、教育に悪い事を言ったり、したりするんじゃないぞ」
「例えば?」
「自分で考えろ」
「主に毎晩の私と兄上の日課の事とかですかね?」
日課…?
そんなもの、あったか?
「仕方ありませんね。今夜の子作りは控えておきましょう」
「こづくり?おねーちゃん、なにそれ?」
「わーっ!ダメです、ダメです!ナディアちゃん、それはもう少し大きくなってから!ねっ?」
「いや、そもそもそんな事してないからな。事実を捻じ曲げるな」
勿論、妹と子作りなどしておりません!
✳︎
「──性教育です!」
「言い訳はそれだけか?」
「それだけです!」
ナーシャ、良い返事だ。
「私はちゃんと止めましたよ!」
「でも、止め切れてないではないか。それに何故君まで入って来るのだ?」
「陛下の安全を守るべく、仕方なく殿下に付いて来ました!」
仕方なく?嬉しそうにすら見えるが?
ソフィア医師め…止めるどころか自ら率先して浴室に侵入とは…職務怠慢だな。
「仕方なく…?本当に?」
「ええ、もうそれはそれは嫌々ながら、もう致し方ないという事で!」
じゃあ入るな。
「そしてナディア!…は仕方ないか。許す」
「何故ですか!?ナディアだけ許してもらえるなんてズルいです!」
「ナディアは何も分からず君達に連れてこられただけだ。よって無罪」
「異議あり!私もナディア同様状況的に仕方が無かっただけなので無罪だと思いますっ!」
「有罪!!」
弁護側の主張を却下します!
「でも、ナディアに性教育するために侵入したのに…」
「先ずそもそもその名目が間違っているのだ」
七歳児に性教育などいらん。
「そして、副メイド長!」
「はい?」
「何故ここにいる!?」
「何度も言わせないで下さい。私は陛下の監視役ですよ?」
「でも今はナーシャもいるぞ」
「そんな事は関係ありませんね。これが私の役目ですから」
融通が利かんな、お役所仕事め。
まあ、副メイド長は少なくとも服を着ているのでまだマシだが。
他の三人は湯気ではっきりとは見えないが、やはり全裸なのだから。
一緒に入る気満々ではないか。
今日は久し振りに風呂に(エレーナ副メイド長以外の)侵入を許してしまった。
私の聖域である風呂場に!
「では、副メイド長以外は出て行ってくれ給え」
「ナディアの将来を想うならば、教育の重要性はご理解頂けるはずですが?」
「ああ、確かに教育は重要だな。ただしっ、私の湯に乱入するのは教育でも何でもない!」
ただのセクシャルハラスメントである。
セクハラで訴えてやる!
「いえ、アクティブラーニングです!」
「悪いが、今は課題解決型学習を実践する時ではないと思うぞ?」
「兄上、それは違います。幼少期の経験は人生にとってかけがえないものなのです。経験は重要です!」
私の風呂に侵入する事で得られる経験とは…?
「それに、エレーナだけ残っても良いなんてズルいです!」
いや、君がそうするように命令したんだろう?
副メイド長はあくまで仕事だもん。
「私も、陛下の童貞をお守りすべくここに残っているだけですから!」
ソフィア医師も自分の正当性を主張して聞かない。
もう良いや…
ここは敵に明け渡すしかない。
戦略的撤退だ…!
転進!
逃げるんじゃない、目標を変えただけだ!
「じゃあ、女性同士で楽しんでいってくれ。私はもう出る」
「いえいえ、お構い無く。兄上も一緒にゆっくりすれば良いではありませんか」
どこにこの状況でゆっくり出来る男がいると言うのだ?
そんな男は余程面の皮が厚いかヤリチンDQN野郎かの二択だ!
「拒否だ!絶対拒否!」
彼女は私のこの反応など予想の範疇だったらしく、ふふふ、と意味深げに笑うと、
「でも、宜しいのですか?」
と、尋ねてくる。
「何がだ?」
「兄上がいない間にナディアと共謀しても宜しいのですね?ついでにソフィアも」
「共謀…?例えば…?」
「そうですねえ…今晩兄上を三人で縛り…」
「ストップ!駄目!それは駄目!」
縛り…の後に何を言うつもりだったかは知らんが、絶対に良からぬ事だ。
間違いない…神に誓って絶対にそうだ…!
神よ、皇帝フランツを守り給え…!!
「ね?ここにいた方が良いでしょう?」
悪魔め…
ここに彼女達を置いていけば、我が聖域がサバトになってしまう…!
出るに出られん…!
「まあ、そんなに睨まないで下さい。別に兄上に何か直接しようという訳ではありませんよ」
「では何をするつもりだ…?」
「特に何も。稀に偶然兄上の目の前で私があんな事やこんな事をしてしまうかもしれませんが、あくまでも偶然ですし、不可抗力ですから仕方ないですよね?」
あんな事やこんな事!?
一体何をするつもりなのだ!?
けしからんなっ!?
「仕方なくないぞ。事故の防止に努める努力義務が…」
「おっと失礼!」
彼女はわざとらしく躓いたフリをし、こちらにおっとっと、とよろめいてくる。
そして迷う事なく私の顔に胸を直撃させる。
寸分の狂いも無く、彼女の双丘は私の顔面を覆うかの様にぶつかってくる。
ジャストミートだ…我が国の砲兵連隊の諸君にも是非とも見倣ってもらいたい程の精密さ…
「ぐふっ!」
私は必死に彼女から距離を取り、態勢を立て直す。
しかし、妹が十分な時間を与えてくれる訳もなく、ぴょんっと跳び上がる事で水の抵抗を避けつつこちらに間合いを詰めてくる。
避けようとするも、間に合わない。
「兄上!!捕まえました!」
飛び込んで来る彼女を何とか受け止める事に成功。
またもや私の顔に胸が全力で押し付けられ、更に彼女は私の両手を動かせないように拘束。
「さあ、もう逃げられませんよ!今夜は外野も賑やかですし、絶好のチャンス!」
チャンス…!?何の?!
「兄上、今日こそキスから一段階グレードアップするのです!さあ、みんなにも見てもらいましょう、私が兄上によって女になる瞬間を!!」
一段階って何だ!?一段階ってどのくらい!?
…女になる瞬間って、おいちょっと待てぇ!
「待て!早まるな!」
「陛下っっ!!今私がお助け致します!」
そこに遅ればせながらソフィア医師が飛び入り参加。
自ら侵入に加担はしたものの、一応ちゃんと守ってはくれる様だ。
「ソフィア、邪魔しないで!あなたは大人しく他の男の上で腰でも振ってれば良いのよ!」
「その様な、はしたない事はしません!陛下の童貞は渡しません!私のものです!」
守ってくれるのは有り難いが…一言だけ言わせてもらうとね、私の童貞は誰のものでもないし、ましてやソフィア医師のものでもないのだよ?
ソフィア医師は私からナーシャを引き剥がすが、直ぐ様ナーシャも反撃を開始。
じゃばじゃばと湯の中で争い始める。
「すごい!こわいメイドさん、あれがドッグファイトってやつ!?」
「違います、正しくはキャットファイトです」
副メイド長は止めに行く素振りも見せず、呑気にナディアとお喋り。
今のところ、二人を止められるのは彼女だけなのだが…期待出来そうにない…
「ったく…私の入浴タイムが台無しだ…」
「心中お察しします。ご命令とあらば、私がお二方をここから追い出しますが?」
「え…?良いのか…?」
「代わりにネイディーン様と入浴を楽しんで頂く事が条件ですが。殿下に計画を勘付かれてしまった以上、方針転換です。陛下とネイディーン様が年齢の差を乗り越えて愛を育む可能性に賭けます」
何だ…その可能性は…
まあ、ナーシャよりはナディアの方が絶対にマシなのは確かだが。
取り敢えず、彼女は私とナーシャがくっ付かないのであれば誰でも良いらしい。
「良いだろう、ナディアと楽しくバスタイムだ。さっさと二人を追い出してくれ」
「御意」
彼女は服を着たままで、ぴょーんと湯に飛び込み、あっという間に二人の首根っこを掴んで出口の方へと引きずって行く。
飛び込み後、二人を無力化するのに要したのは僅か数秒。
もしや、ソフィア医師なんかよりもよっぽど強力なボディーガード要員なのでは…?
性格さえもう少しまともならばオファーを考えるところなのだが…
残念ながら今の私には彼女をボディーガードとして側に置くなんていう事は耐えられそうにない。
彼女がナーシャとソフィア医師を連れて出て行った事により、浴室には私とナディアだけになる。
完全に二人っ切りだ。
まあ、七歳女児と何か間違いが起こる事など無いだろうが。
「へーか、ナディアはいっしょにおふろにはいってもいいのですか?」
「ああ、ナディアは特別な」
「こんやくしましたもんね!ふうふなら、いっしょにおふろにはいるぐらいあたりまえですものね!」
いや、婚約者だからではなく、幼くて無害だからなのですが…
そういう事にしておくか…
「まあ…そうだな。それよりも、先ずは身体を洗っておいで」
「へーか、メイドはどこにいるのですか?」
「ん?メイド?普段から私の入浴中には、ここにはメイドだろうが何だろうが入る事を禁じているのだ。ここにはいないぞ」
「ナディア、じぶんでからだ、あらえないの…」
もしかして…
このお嬢さんは自分で身体を洗った事もないのか…?
「いつも侍女にやらせていたのか?」
「はい。あの…へーかがあらってください…」
でもそうか、当たり前か…
基本的にはナディアぐらいの大貴族の娘ともなれば、身の回りの殆どの事は他人にしてもらうのが当然。
私やナーシャがアクティブ過ぎて何でも自分でやってしまっている現状こそ例外なのである。
しかし、洗うって…私が?
それは絵面的に宜しくないのでは…?
実際には身体を洗ってあげてるだけなのに、何だか卑猥に見えてしまうヤツでは…?
「まさか、そこまでお嬢様だったとはな…」
「ごめんなさい…」
彼女はしょぼん、とうな垂れる。
いや、決して怒ってる訳でも呆れてる訳でもないのだよ?!
「分かった。ならば私が洗ってやろう。付いておいで」
「いいのですか?」
「他にやる者もいないしな」
洗い場に彼女を連れて行く。
「へーか…ナディア、ぜったいにじぶんであらえるようになるから、みすてないで…」
「見捨てる?何の話だ?それしきの事で大袈裟だな」
まあ期待しているよ、とだけ告げておく。
理由が何であれ、身の回りの事ぐらいちゃんと自分で出来るようになっておかないと駄目だからな。
大公一家は随分と甘やかして育てた様だから、私が心を鬼にして、多少厳しく接する事も必要だ。
「家に帰ってからも少しずつで良いから自分で出来る事を増やしていってごらん。慣れれば簡単だからな」
「はい!へーかにふさわしいつまとなるべく、がんばります!」
「うん…まあ、程々にな」
私にはナディアと結婚する気など全く無いのだが、ナディアは完全に結婚確定と思い込んでいる…
その事実が彼女の発言の隅々から感じ取られ、非常に辛い。
誰だって、自分の嘘を他人が信じ、ぬか喜びしているのを見れば罪悪感を感じずにはいられないのだ。
「さあ、先ずは髪からだ。そこに座り給え」
この浴室の一角は洗い場となっており、小さな湯船がもう一つある。
そこから湯を汲み、身体を洗うのに利用するのだ。
ナディアを椅子に座らせ、瓶から白い粉を少し取り出して手の平に載せる。
「ほら、見てごらん。こうして、シャンプーを泡立てるのだ」
シャンプーの粉に少しだけ水を加え、こねてやると、もくもくと泡立ってくる。
「へーか、おじょうずですね!」
「毎日やってるからな。それに、これくらい誰でも出来るぞ?」
泡立てるくらい、幼児にだって出来るはずなのだ。
ナディアだって出来ないはずがない。
きっと、やってみた事がないから勝手に出来ないと思い込んでいるだけだ。
「ナディアもやってみないか?きっと出来るぞ」
「ほんとうですか?」
「ああ、勿論だ」
私は自分の手の上のシャンプーを全て流し、もう一度瓶を取る。
「両手を出して。上に載せるぞ」
さらさらと粉が瓶から出てきて、彼女の手の平に収まる。
「じゃあ、水をかけるぞ…ほい」
桶から湯を掬い、ちょっとだけかける。
「後は、泡立てるだけだ」
「でも、こぼしてしまいますよ」
「零さない様にぱちんと両手を閉じて、両手を擦り合わせるんだ。そうすればあまり零れない」
彼女は言う通りにして、歓声を上げる。
「わあ、できた!アワアワです!」
「やってみると簡単だろ?こんな風に何にでもチャレンジしてごらん。きっと出来る事が増えていくはずだ」
「はい!つぎはりょうりもしてみたいです!」
「まあ、危ない事もあるかもしれんし、大人の監督下でな」
性に似合わず教育紛いのご高説を垂れてしまった。
その後も何事も無く髪と身体を洗い、再び湯に浸かる。
身体を洗う際も私の下半身はびくともしなかったので、私は少なくともそういう性癖ではないという確信は得られた。
やはり私はロリコンではない!
途中、(ナーシャが持ち込んだと思しき)卑猥な液体によってナディアが全身ヌルヌルになるとか、大変教育上宜しくない展開にもなったが、私の息子さんはほぼ反応しなかった。
ダカラボク、ロリコンジャナイヨ!
「へーか」
「ん?」
「こんなにひろいおふろに、いつもひとりではいってるんですか?」
「そうだ。まあ、普段は副メイド長があそこら辺に立って私を監視しているがな」
常に仁王立ちで私の入浴姿を彼女はじーっと観察しているのだ。
最初の頃は正直恥ずかしかったが、もう慣れた。
あれを女だと思ってはいけない。
「さびしくないのですか?」
寂しい?
まさか。
「全く寂しくなどないな。そもそも逆に一人になりたいのだから」
「ナディアはさびしいなあ。…こんなにひろいのにひとりぼっちは」
「そうか?」
「だから、ナディアがいるときは、いっしょにはいりましょうね」
「う、う〜ん…そうだな」
あれれ?
もしかして、七歳児に気を遣われてる?