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第一話。優しい世界と悲壮な女神。だけど薬草汁は勘弁な。 その1

自己評価=詰め込みすぎたなぁ。

「ち、ちょっと。休憩させてくれないか?」

 あれからけっこう歩いた。とはいえ、まだ日は高い。

 店を出てちょっとしたら、魔法石なる物を買いに行っていた

 犬耳娘と擦れ違った。

 

 サラちゃんからでかけて来る旨を聞いて、

 いってらっしゃいと、犬耳娘はサラちゃんの頭を撫でていた。

 完全にマスコットだなサラちゃん、

 

 俺をかつげるほどの怪力持ちなのに。

 

 

「わかりましたです。後半分ぐらいですから、

がんばってです」

「サンキュー。まさか同じ町の中で、

こんだけ歩くとは思わなかった」

 

 手近なベンチに腰掛ける。柔らかな日差しは春の物だ。

 どうやら季節の廻りは同じみたいだな。ほっこりまったり、

 まぶたがどんどん重くなr っ!

 

「わっ?」

「あぶねえあぶねえ。あやうく意識がもってかれるとこだった」

 

「どっどうしたですふとももたたいたりしてっ?」

 サラちゃん、両手を胸の前でギューってしながら、

 目をすごい速度でぱちぱちやってるな。

 

「わるかった。ちょっと睡魔を撃退してたんだ」

「そ、そぉゆぅことだったです」

 ふぅ、と安堵の表情と溜息。予想以上にびっくりされて、

 こっちが驚いたぞ。

 

 

「しっかし、この町。車の通りけっこう激しいんだな」

 車って言っても馬車だけど。

 

「いろんなお店があるです。だからいろんな人たちが

行ったり来たりしてるです」

「なるほどな。世界の中心、なんだっけ ここ」

 

「はいです。あっ、ごくろうさまです~」

 突如、サラちゃんが空に向かってそう言った。

「ん?」

 気になってそっちを見たら。

 

「えっ?」

 とんでもない物が、空を横切って行った。

 

 

「な、なあサラちゃん。今のって……」

「はいです。急ぎのお届け物やお手紙を届ける郵便屋さんです」

 

「あ、そうなんだ。じゃなくてだな」

「ふぇ?」

 俺の驚きが不思議らしく、かわいらしく目をしばたかせている。

 

「今の、どう見ても……どーみても、ドラゴンだったんだけど」

 そう。今俺達の頭上を横切ったのは、

 人が背中に乗った小さなドラゴンだったのだ。

 

 ライダーさんの方が赤い服を着ていた。

 赤はすなわち郵便ポストの色だ。

 

 赤が郵便関係で使われてる。共通点があってなんだか嬉しくなる。

 

「そうですよ?」

 なにが不思議なんです? とでも言いたげに、

 首を小さく左にかしげた。

 

「いやー、生のドラゴンが見られるとは思わなかったんだよ」

「ほえ? あのぅ。それじゃあもしかして、

おにいさんの世界には、ドラゴンさんはいないです?」

 

 世界。どうやらサラちゃん、あの喧騒の中で俺とオッサンの

 ひそひそ話を聞き取っていたらしい。

 

「ああ、亜人と同じく、ドラゴンも物語の中だけの存在なんだ」

「そうなんです」

 心底感心した様子で、サラちゃんはそう相槌する。

 

「おにいさんの世界って、どんな感じなんです?」

「うーん。そうだなぁ。違いを上げるとすれば……」

 サラちゃん。なんだかすごく期待した目で、こっちを見ている。

 

 いやー。そんなに期待するようなもんじゃないんだけどなぁ。

 

 

「まず、魔法がない」

「えっ?」

 

「そのかわりに……えーっと。うん、そうだな。

魔法を精霊や神様の力じゃなくて、

人間の頭だけで作って使ってる」

 

 すなわち、これは科学の事だ。この世界の魔法が

 どういう方式で発動してるのかは、さっぱりわからない。

 だからファンタジー作品の多くを参考に表現してみた。

 

「すごいです。そんなことができるですかっ!」

 サラちゃん、目をキラッキラさせている。よっぽどのことなんだろう。

 どうやら魔法体形については、そう遠くはないようだ。

 

 となるとあの魔法石は、属性魔力の電池みたいなものなんだろうか?

 

 

「できてるんだなーこれが。改めてファンタジーな言い換えしたら、

すげーことやってるって感じるぞ我が世界」

「後は、後はどんなことがあるです?」

 

「うー。移動手段も、その人力魔法の応用だな。

それで鉄の箱を、さっきのドラゴン張りの速度で走らせたり」

「うんうん」

 

「たとえば「海を隔てたような遠距離の相手と話ができたり」

「うんうんっ」

 

「後は夜になっても昼間みたいに明るいまんまだったりな。

うーん、この辺にしとくかな。上げてくと限がないし」

 

「すごいですっ、すごいですっおにいさんの世界っ!」

 

「ただな」

「ふぇ?」

 

「こっちにしかないことは、魔法やドラゴン以外にもいっぱいあるんだ」

「なんです?」

 俺の静かになった声色に、不安を覚えたのか

 心配そうに覗き込んで来た。

 

 

「こっちは、空気が綺麗でさ。空の色も濃い。

空がビルや電線に邪魔されてなくって、見てるだけで

気持ちがいいんだ。

 

暮らしてる人たちもすごく優しい。時間に追われてないし」

 

 こっちに放り出されてから大して経ってないけど、

 よくもまあ我ながらこんなに違いが列挙できてるもんだ。

 

 隣の芝生は、って奴かな?

 

 

「おにいさんの世界は、すごいけど 寂しそうです」

 サラちゃん、繭をハの字にしている。

 言葉と表情がいっしょなんだな。

 

 うん、やっぱちびっこは素直が一番だぜ。

 

 

「そう……かもな。っと、わるいなしめっぽい話になっちゃって」

 言葉終わりに立ち上がる。

「あ、いえ。もう、大丈夫です?」

 

「おう、休憩できた。さて、

女神さまのところに行くとしますか」

「はいです」

 

 力強く頷くサラちゃん。

 俺達は、再び運命の大車輪なる場所への路を進む。

 お散歩再開である。

 

 

「そういやさ」

「なんです?」

「うん。サラちゃんって、サラなにって言うんだ?

サラちゃんサラちゃん言われてるのは聞いてたけど」

 

「ブレットです。サラ・ブレット」

 一つ頷いてから、そう返って来た。

「そうなのか。なんか、馬みたいだな」

 

「むぅ。みんな初めて名前聞くとそおゆうです。なんでです?」」

 こっちに首だけ向けて、むっとした顔で聞いて来るサラちゃん。

 

「だって。サラブレットだもん なぁ?」

 誰に同意を求めているのか、自分でもわからない。

 

「馬はサラブレッドなのになぁ」

 聞くからに納得できないと言う抗議の息交じり。

 独り言のように言って、サラちゃんは歩き出した。

 

 そんな様子に、俺は我慢できず吹き出してしまい、

 「なんです?」と、またサラちゃんの不満そうな顔を見ることになった。

 

「いや、わるい。譲れないんだな、そこは」

「はいです。わたしたちはブレット家です。

あちらさんはサラブレッドです、意味が違うですよ」

 

「重要なんだな、その違い」

「そうです」

「それぞれ、こだわりってのはあるもんだな」

 なんか、感慨深いな。

 

 

「ところで」

 足を止めたサラちゃんは、「おにいさんはなんて名前なんです?」と

 体ごとこっちを向いて質問して来た。

 

「ん、ああ。そっか、言ってなかったっけな。

俺は明斗。神尾明斗かみおあくとだ。

アクトでいいぜ」

 

 せっかくのファンタジー世界だ。

 上の名前じゃなく、下の名前で呼ばれたい。

 ちょっとてれくさいけどな。

 

「わかりました、アクトさんですね。改めまして、よろしくです」

 ペコリ、とサラちゃんは深く頭を下げた。

 

 

***

 

 

「ここです」

「や……やっとついたのか~」

 のびをしながら言う俺。

 

 あれからまたしばし。正直足が棒だ。

 のようではない、最早棒である。

 

 太陽は西に傾き始めている。思った以上に、時間がかかったみたいだ。

 まあ、原因は俺が辺りをキョロキョロしながら歩いてたからなんだけど。

 

 俺のペースに合わせてくれてたようで、サラちゃんは

 ちょいちょい止まりながら歩いていた。

 

 

 目の前には、なにやらガコンガコンと規則的な、

 機械を連想するような音を立てる建物が聳えている。

 

 建物が大きいわけじゃない。でもなんていうか、

 圧倒されるような空気を放って感じる。

 

 これが、神様ってものの存在感なんだろうか?

 

 

「いきますです」

「あ、ああ」

 生唾を飲む。急に緊張感が

 プレッシャーになって襲い掛かって来たっ。

 

「女神さま~?」

「か……軽いな」

「ほら、アクトさんも呼ぶです」

「え? ああ、そうだな。よし……せーの」

 緊張感に負けないように、勢いをつけてっ。

 

「おーい、あぐにゃーん!」

 なんだ、構える必要なかったな。

 

「アクトさん。流石にそれは……」

 サラちゃんに苦笑されてしまった。

 が、こっちの言い分も聞いてほしい。

 

「しょうがないだろ。アグニャなんとか、

覚えきれないんだから……舌かみそうだし」

 

 

「かまいません。アグニャマラテスという名前を

覚えてもらえないのは残念ですが」

 奥の方から、そんな声がした。

 

 この声。なるほど、そうなんだな。

 俺の予測が的中したことを、今の一声で確信した。

 

 

「それに。私のことを、そんなかわいらしく呼んだ人間は、

未だかつていませんでしたしね」

 ゆっくりと歩いて来る声の主。

 

 光を纏ったような赤い髪。緋色の瞳は優しそうに細められている。

 口元が綻んでるところを見るに、どうやら

 あぐにゃんって呼び方が気に入ったらしい。

 

 身に纏う青紫のドレスはふわりと柔らかそうだ。

 手首の袖の広がりを防ぐためだろうか、

 銀灰色のブレスレッドを両腕にしている。

 

 その一方で、足首まであるスカートの裾の広がりは

 履物が隠れるぐらいになっている。

 

 

「グーテンバンワです、女神さま」

 今やって来た女性、女神あぐにゃんの印象は、

 声を聞いた時と殆どかわらない。

 

 やっぱり神様ってよりは、深窓の令嬢の方がしっくり来る。

 

「うん。やっぱ、神様って感じしないな」

「アクトさんっ、失礼ですっ」

 サラちゃんにたしなめられてしまった。

 

「いえ、かまいませんよ、よく言われてることですから。

さ、こちらへどうぞ」

 促されるまま、俺達はあぐにゃんが来た方へと歩いて行く。

 

 後ろ姿でわかったけど、後ろ髪は尾を引く火の玉のような格好だ。

 オタマジャクシヘアとでも呼ぼうか。

 

 ガコンガコンと言う音は絶えず、また一定のリズムで成り続けている。

 いったい、この音はなんなんだろうか?

 

 

 部屋を二つほど通り過ぎている。だが、まだ奥に行くらしい。

 

「いったいどこまで行くんだ?」

「人の気配がぜんぜんしませんです。なんだか怖いです」

 言われてみればたしかにそうだ。使用人の一人や二人、

 遭遇してもおかしくない。

 

 でも、聞えているのは例の音だけだ。

 

 

「付きましたよ」

 淡々と。そんな印象で、あぐにゃんは俺達を部屋へと招き入れた。

 

 客間のようだけど、入った部屋はどうにも落ち着かない。

 置いてある品々は、インテリアについて見識のない俺が見ても

 高級そうだと思える物ばかり。

 

 でも、あまりに綺麗に並びすぎてて、

 生活感って奴が感じられないのだ。

 

 

「座って待っててくださいね。

疲れのとれる飲み物を持ってきますから」

 テキパキと動く、どう見ても家政婦な女神さま。

 シュールだなぁ。

 

「疲れのとれる飲み物、ねぇ」

 ソファに腰かけつつサラちゃんを見る。

 

 高級家具の感想に偽りなし。

 座ったらそのまま、体がソファに埋まるように沈んだ。

 

「あれじゃあないと思うです」

 サラちゃんも腰を下ろし、その柔らかさに驚いている。

 

 

 

「だといいけどな」

 一抹の不安を抱えて、あぐにゃんが戻って来るのを待った。

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