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プロローグ。日常(いつも)さんがころんだ!? その1

『女神よ。いい加減、わたしの願いを聞き入れてくれてもいいんじゃないのか?』

「いきなりずいぶんな台詞だな」

 俺はいつものように、ゲラ動こと動画共有サイトの

 ゲラゲラ動画にて動画を視聴している。

 

 動画の説明文が一切ないから、フライングのエイプリルフールネタと判断。

 どれ一足お先に見てやろうってことで見始めたのがこの動画。

 

 タイトルはスペシャルアニメ。その開始直後が今の台詞だ。

 

 

『あなたは来る日も来る日も、わたしの願いを拒否し続けている。

簡単な願いだと言うのに』

『何度も言っているはずです。彼女はこの世界に存在していないと』

 

 ああ、この血走った眼をした男の前にいるのか。

 でも、なんか声にオーラがないなこの女神。

 

 女神って言うより、芯が強い女の子って感じだ。

 

 

『何度でも言う。たとえ神の言葉でも、それだけは信じることはできない。

彼女がこの世界に存在していないことを証明できるまで、

ぼくはこの願いをとめはしない。わかっているはずだ』

 

 神様相手に脅迫するとか、とんでもないことやってんなこいつ。

 って、あれ?

 

 今一人称がぼくになったぞ?

 

 

『……わかりました』

 うんざりしてんなぁ。そりゃそっか、何度でもってほどだ。

 相当しつこく言われ続けてるんだろう。

 

 それよりも、早いとこカット切り替えてくんないかなぁ。

 この血走った眼の男見続けてるのきついんだけど。

 

「聞こえますか? この動画を見てるあなた」

「え? なんだ? 今の音響……まるで

ーー頭の中に直接聞こえたみたいな?」

 

「この声が聞こえるのでしたら。協力して、いただけませんか?」

「なんだ、ただのコメ稼ぎかびっくりしたぜ」

 見てて気の毒だしな。はいはいっと、OK協力するぜ。

 

 コメント投稿。

 

「ありがとうございます。それと……」

「それと。なんだ?」

「ごめんなさい」

「え? がっ……?」

 

 なんだ、この。頭の芯を殴られたような、痛みは……。

 

 なんだ? なんか……

 時報みたい、な、お……と……が……。

 

 

 

*****

 

 

 

「ん、んー……」

 小鳥のさえずり。あったかい感覚。なんか重い、布団かこれは?

 

「……ん?」

 違和感にうっすらと目を開ける。

 

「よかったぁ。おきましたです」

 

「おわっ?」

 ガバっと起き上がる俺。声が裏返っちまったよ。

 だって。

 

「きゃっ?」

 

 目の前に女の子の顔があったんだぞっ!

 そら声も裏返るわ!

 

 

「なっなんだなんだ??」

 わけがわからなすぎて、目パチパチしながら

 布団においた手が忙しなく前後してるよ、意味もなく。

 

 女の子、おもっきしのけぞったな。

 

「あ、あのぅ。だいじょうぶ……なんです?」

 女の子も目パチクリしてるぞ?

 

「大丈夫って、なにが?」

 俺はたった今起きた。それより前はPCで動画を見てたから、

 質問の意図が掴めない。

 

「ああ、そうなんです」

「え? なにその『かわいそうに』みたいな言い方?」

 

「まっててくださいです。なにか、食べ物持ってきますですっ」

「あ、ちょっと、おい?」

 言うなり女の子はパタパタと慌ただしく部屋から出て行ってしまった。

 

 

「どういう、ことだ?」

 まったく状況が飲み込めない。

 

 俺はどうして人様のベッドに寝転がってるのか。

 どうして今昼なのか。いや、そんなことより。

 

「ーーここは、いったいどこなんだ?」

 

 わからない。

 あの奇妙な体験の後、俺はいったいどうなったんだ?

 

 ただこの部屋が、シックな木造建築だってことだけはわかる。

 

 

「おまたせしましたです」

 部屋を出た時と違って、今回は慎重な歩調で現れた女の子。

 どうも、なにやら皿を持ってきたらしい。形からするとスープ皿か。

 

 センターテーブルにコトリと皿を置く。

 なんか、不思議な香りだな、これ。

 

 

「あ、ど、どうも……」

「お腹すきすぎて、自分がどうしてお店の前に倒れてたのか

思い出せないですね?」

 

 それは、思い出せないんですよね? って意味ととらえていいのか?

 発音がそうだから、そういう意味にとっておくぞ。

 

「あ、いいですお金は取りませんですから」

「いや、まだなにも言ってないんだけど」

 妙に濃い緑色のスープだな。どんな味なんだろう?

 

 せっかくだから、俺はこの緑のスープを選ぶぜ。

 

「いただきます」

 一口。

 

「ぶへっっ!」

 

「わわっ? どっどうしたですっ?」

「げふ げふ。お、思いもよらない味だった。

まさか苦味があったとは……」

 

「リカミナスタ草、食べるの初めてなんです?」

「りかみ……ナンダッテ?」

 

「リカミナスタ草です。飲んだり食べたりすると元気になるです」

「そ、そうなのか。じゃあ、がんばって飲むとするか」

 

 聞き覚えがまったくない名前の草だ。しかもいわゆる薬草って奴らしい。

 こうしてスープにしてるってことは、この子の言ってることは本当なんだろう。

 

 得体の知れない物だから、正直怖いけど、

 善意でしてくれてるのに、知らない物だから怖くて食えない、

 って言うのは気が咎める。

 

 

 よし……うん。飲もう。

 改めて一口。なんか、体の中からスーっとする感じだな。

 うん、悪くない。

 

 

「ごちそうさま。最初は苦くて飲み切れるかと思ったけど、

なんか 飲めちゃったな」

「よかったです」

 ニコニコ言う女の子。つられてこっちも表情が緩んでしまった。

 

「あの、下いきますです?」

「下?」

「はいです。ここ、二階なので」

 

「そうなのか。じゃあ、降りてってみるか。

ちょっとは状況がわかるかもしれないし」

 ベッドから降りると、足元に靴がおいてあるのが目に入った。

 どうやら靴を履いて動くらしい。動きやすそうな黒の運動靴だ。

 

 靴音はほどよく湿り気を帯びている。

 建物の素材は、それなりにいい物なんじゃないかと思う。

 ド素人の感想だけどな。

 

 

 少し急な階段を、慎重に下りて下についた。ずいぶんと賑やかだ。

 女の子たちが慌ただしく動き回っている。

 

 テーブル席がいくつかあって、客たちがそこで食事をしてるみたいだ。

 どうやらここは飯屋の様子。

 

 店員の女の子たちが着てるのはメイド服だ。

 なにやら刺繍がしてあるけど、動き回ってて

 デザインをチェックできない。

 

 

「どうやら、しっかりと目が覚めたようだね」

 声をかけて来たのは一人の女性。満足げに頷いている。

 

「あ、はい。どうも。おかげさまで。あの、ぶしつけで申し訳ないんですが。

ここは、いったい?」

 緊張と警戒心とで、今までの人生十六年弱、

 いっぺんもしたことのない口調で喋ってしまった。

 

「ここかい? ここは大衆食堂剣塚亭つるぎつかていだよ」

 人懐こい笑みで、女性は教えてくれた。

「そっか。やっぱ飯屋か」

 

 

「おきたんだ。サラがニャんた担いできた時は、

いったいなにごとかと思ったわよ」

 俺に気付いたらしく足を止めて、黄金の瞳の少女がそう言った。

 

 ……ニャんたって、なんだ?

 

 

 ふむ、メイド服の上衣には銀の盾が刺繍されてるのか。

 下の短いエプロンはずいぶん派手だな。

 

 えーっと? 真ん中に鞘、その左に上向きのフォークが一本

 右に上向きのナイフが一本。上側に左向きの箸一膳、

 下側には左向きのスプーンが一本か。

 

 誰が作ったんだろこれ?

 大変そうだな量産するの。

 

 

「ああ、サラってのはあそこのちっちゃい子ね」

 目の前の娘は、茶髪ツインテの女の子を指さした。

 

「マジかよ……」

「ニャんたを運んで来たのはサラよ。嘘偽りなく」

 改めて と言う風に俺にそれを伝えた。

 

 

「いや、うん。それもなんだけど……」

 俺は、二つの意味で驚愕している。

 

 まず一に、サラと呼ばれたあの女の子が、俺を担いできたということ。

 そしてもう一つ。

 

 それは、今目の前にいる黄金の瞳の娘に、

 猫耳が生えていることだ。

 

 ぴこぴこと小さく動いてるから、人耳はあるけど

 きっとコスプレのたぐいではないはず。

 

 ……ヤバイ。

 俺が置かれた状況のヒントがあるかと思ったら、

 

 

 

 ヒントどころか新たな謎が生まれたっ!

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