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偏屈な召喚者は異世界でも変わらない  作者: 35
第10章 決戦編
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第2話 1階の試練 虚言の試練

「さて、どういう感じかな」


二一達は魔王城の扉を開き、1階の大広間に入る。


しかし、特に敵もおらず、奥には上にあがる階段が見えている。


「ん? なんだこれは」


さすがの二一にも何もない状況では反応できなかった。


「二一ちゃんっ、ここは何だろうねっ」


歩も首をかしげていた。


しかし、この2人以外には異変が表れていた。


キンッ!


「なんだ、敵襲か?」


二一が気配を感じて、とっさに剣で攻撃を受ける。


「あ、あわわわです」


「耳折れ? 何してんだ」


その二一に攻撃をしてきたのは、クレアロッテだった。


攻撃した自分自身が信じられないとでもいうような表情で、手を抑えていた。


「わ、わかりませんです……、そんなことしたくないのにです」


表情と行動はかみ合っていない。だが、クレアロッテは攻撃を止めることができなかった。


『猫人族、絶対にその男を攻撃してはいけません』


異変を感じていると、二一の耳に小さな声が届いた。


「ご、ごめんなさいです!」


その声がしたと思うと、クレアロッテがまた二一に攻撃する。


「ちっ、これ面倒な奴だ」


『水魔法使い、魔法でやり使いを攻撃してはいけません』


『やり使い、攻撃を回避してはいけません』


『竜人族、竜化してはいけません』


さらに声が聞こえれば、その声と反対の行動を全員がとる。


クレアロッテはまだ正気があるだけましである。ほかの3人は、その攻撃に一切の躊躇がない。


里香の攻撃は和美に直撃し、和美はまったく回避行動をとらない。サリアンも竜化を解いてしまい、普通の少女となる。


「なるほどな。この声を聴くとその反対の行動をとるってわけか」


二一はすぐに察した。天邪鬼な彼にはよくわかることだった。


基本的に人間というのは、何かをしなさいという行動と比べて、何かをするなという命令には逆らいにくいものである。


その心理を利用した罠というわけである。


単純だが、かなりやっかいである。


余計な敵は確かにいないが、きちんと全員を生かして戻ると決めている二一にとっては、ある意味この仲間割れ状態が一番大変である。


『魔法戦士、目の前のシスターを攻撃してはいけません』


その声はついに二一の耳にも届く。


他のメンバーと同じ状態になれば、二一は歩を攻撃してしまうはずであった。


「お前ほっそいよなー。肉付きなさすぎだろ」


「もー、二一ちゃん、気にしてるっていったのに」


「はい終了終了」


しかし二一は歩に武器での攻撃はしなかった。


ただ一応攻撃はしている。そう、攻撃という言葉は相手を殴ったりして傷つけることを指すのだが、言葉で相手を悪く言うことも攻撃という定義に入るのである。


二一は偏屈なので、一般的な攻撃をすることをしなかった。これは要するにスキルとかそういうのは関係なく、二一の性格である。


『魔法剣士、剣でシスターを攻撃してはいけません』


それを察したのか、声は今度は主語をつけて命令が飛んできた。


「……………」


しかし今度は二一は何もしなかった。


剣とは、一般的には刃のついた武器をさすが、蜂やサソリがもっている針のことも剣という。


二一は偏屈なので(2回目)その剣と考えた。もちろん二一はその剣は持っていないので、結果的に何もしないということになった。


『シスター、魔法剣士に状態異常の魔法をかけてはいけません』


こんどは歩に対して声がかかる。


「?」


しかし歩にも効果なし。


これは歩にとって、二一を攻撃するということは前提としてそもそもないので、幻術とかそういう問題ではないのである。これもスキルというよりは、性格……、というよりも信念のようなものなのである。


クレアロッテが完全には正気を失っていないのも、彼女にとって、二一を攻撃するということはまず考えられないことのためではある。歩との違いは単純にその付き合いの長さの違いだろう。あとは直接的に攻撃できるかどうかの違いでもある。


とは言っても、クレアロッテが本気で攻撃すれば、いくら二一でも無傷ではない。きちんと攻撃はしつつも、武器に攻撃している。


二一は性格上、歩とクレアロッテは信念上問題ないのだが、ほかのメンバーは見事に動きを封じられてしまっている。


二一達も相手の動きが読めない上はうかつな立ち回りはできなかった。






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