第8話 VSミドリン
「準備は万全に整えた。だが、それでも今回はかなり慎重に動く必要がある。まずは動きの速いメンバーでかく乱して相手の動きを完全に見る。そこからまた作戦を考える」
「動きの速いメンバーって、ロッテちゃんと和美君くらいかなっ?」
「俺も含めて出る。まずはひたすら完全に防御に徹しろ」
「分かったです」
「先輩、任せてください」
2人とも二一に期待されて気合が入った。
「…………貴様か、二一という男は」
その日の夕方、二一はメンバーを揃えてミドリンと向かい合った。
ミドリンは魔国とアレン国の国境付近から動くことはなかった。まるで二一達が来るのを待っていたように。
「俺がそうだ。あんたが最強の四天王なんだってな」
「四天王……、そのような名前にそこまで意味はない。四天王は私以外は200年前からずっと入れ替わっている。以前の王から使えているのは私だけだ」
「……200年前ってことは、俺たちの前の召喚騒ぎのときにもあんたはいたのか」
「……200年前、私は死に損なった。前の王より先に死ぬことはできなかった。私も後を追うつもりだったが、新しき王が生まれ、私の使命は新たな王を守ることとなった」
「あんたにもけじめがあるんだな」
「王はずっと苦労してきた。前の王の姿を常に望まれ、ほかの魔物にも高い期待を持たれ、心苦しい思いをしてきた。私は王のため、そして魔国のため、これから全力を尽くす」
「俺も全力で戦うだけだ。話は終わりだ。戦う」
アレン国と魔国の戦いが始まった。
「ウォォォォ!」
ミドリンが大きな腕を振り上げて、地面を思い切りたたく。
「おっと」
「わっです」
予定通り、和美とクレアロッテが前線に立ち、うまく回避した。
「威力がでたらめすぎるだろ」
片腕で地面を殴っただけで、地面がえぐれて、地響きが起こった。
そこまで早くないのだが、動きがノーモーションで、軌道が読みにくい。
動き出しを見てからの回避になるので、やはり動きの速い和美とクレアロッテが適していた。
「……どうした。かかってこないのか」
何度かの戦闘の後に、ミドリンが訪ねた。
「まずはあなたの情報が先です」
和美もクレアロッテも、二一の指示通り、回避に徹した。というより、そうせざるを得なかった。
ミドリンが隙だらけで、対応がまた困ることになった。
基本的に戦いというのは、攻撃や防御の動きや準備がある。
単純な防御力が高いことで、受けのモーションを取らないのはまだしも、攻撃もまったく何もしない姿勢から、いきなり強烈なパンチが飛んでくる。
攻撃しようと思えば隙だらけの状態の相手を相手どるというのは、さすがに経験がなく、うかつに攻撃に向かうことはリスクが高すぎて不可能であった。
「だが、大した情報など得られるとは思えないがな」
確かに攻撃はワンパターンでありながら、不規則性が強すぎて、法則性のほの字もない。
しかもこの時点でもまだ右手以外は何もしていない。底が全く見えなかった。
「埒が明かないな。こっちからも動かないとあれ以上は見せてくれないか」
完全に膠着状態。お互いに何も得られるものがなく、ただアレンの大地が破壊されるだけになっていってしまった。
「二一ちゃんっ、どうしよっ」
「あれじゃあ万が一プリンスか耳折れがダメージを受けたらまずいな。仕方ないか、俺も本気で動くか」
二一が立ち上がった。長期戦が不利であることを察した。二一が勝てない可能性のある戦に挑むのはこの世界にきて初めてになったかもしれない。




