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偏屈な召喚者は異世界でも変わらない  作者: 35
第1章 召喚編
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第5話 言われた通りの行動をとるわけがない

王城では、歩と二一を逃がしてしまったことで、少し波乱があったが、もともと2人の能力は低い(実際は高いのだが、彼らの認識ではそうなる)ので、主に強かった3人を中心として、十分士気を高めることには成功した。


フランツがまた引きこもってしまったこと以外は、そこまで問題がなかった。


それでランドルフに悩みの種が増え、訓練は完全に兵士任せとなった。


「若松先輩、心配だな。中野渡先輩も大丈夫かな?」

「くそっ歩。俺が守ってやったのに」

「怖い………、怖い……」


その優秀な3人である、和美、順二、里香は三者三様の態度を見せていた。


そのほかの10人も、なんとなく暮らしに慣れていった。


まだ訓練をしているだけで、実戦はない。つまり、ただ単に良い暮らしをさせてもらっているだけの状態であり、まだまだ緊張感を持てという方が無理があった。


二一がもらった額ほどではないが、13人も全員たくさんのドルツポイントをもらっており、城下町を眺めることも自由だったため、普通に楽しんでいた。




「じゃあ東に行くぞ」


そんな王城での13人とは違い、2人旅になっている二一と歩。


城から北に歩いて行くと、看板があった。


西はランドルフが勧めたヌストルラ。

東はタニア国に隣接するシュバルツヴァルトブロート。

目の前は海が広がり、どちらかに行くしかない。


「どっちに行くの?」


「一応おっさんからは、ヌストルラを勧められている。友好国のトリアも近くて、商業も盛んで情報集めにはうってつけらしい」


「じゃあそっちっ?」


「いや、俺はあえてタニア国のほうに向かうべきだと思う」


「どうしてっ?」


歩の質問ももっともであろう。


すでに道を見ればわかるように、西の方はそれなりに道が整備されていて、見通しもよく、人の動きもみられる。


だが、東は近くは見通しがいいが、遠くは草木が多く生えて薄暗く、人が歩く様子も少ない。


「すでにこのドルツ国の息がかかっているところだと、情報があるはずだ。なのに何もないということは、本当にないか、あるが隠されている可能性がある。なら、多少リスクがあっても、タニア国の方が情報を手に入れやすいはずだ」


「ふーん、まぁいいよっ。二一ちゃんについてくだけだよっ」


「時々は疑ってくれ。別に自信がないわけじゃないが、俺の決定にお前を巻き込みたくない。もし意見があったら一応聞いてやる。俺とお前じゃ、考え方が全く違うから、俺には思いつかないようなことを思いつくかもしれないからな」


「ふふっ、二一ちゃんが頼ってくれるなんて珍しいねっ」


「お前は信用はできるからな。じゃあ行くぞ」


そういって2人は東への道を歩いて行った。




「ねぇ二一ちゃんっ」


「何だ?」


「2人きりでのんびりと歩くなんて久しぶりだねっ」


「のんきだなお前は」


「うん、でも二一ちゃんいつも私に適当に話をしてばかりじゃんっ。こうやって普通に会話できるだけでも嬉しいんだよっ」


「何で俺がそんなにいいんだよ……、ここに来ても王女の待遇でモテモテなのに」


「私にとってのヒーローは二一ちゃんだけだよっ。ずっと言ってるじゃんっ」



さて、いつも通りの二一と、少し浮かれ気分の歩が少し歩いていくと、道が整備されていない地帯に入る。


だが、そこにも人はいるようで、人影が見えた。


「ここで何してるんだろうねっ?」


「さぁ……、ちょっと待て。あれは人じゃないぞ」


近づくと明らかに人ではないのが分かった。それは、人の形をした木であった。


「なんだか不気味だねっ。人みたい……」


「ただの木か? あまり近づくなよ」


「きゃっっ!」


少し遠くから観察していると、歩が驚いた声をあげて、二一に抱きつく。


「おい、どうした。やっぱり敵か。悪意を感じたんだ」


二一が情報通のスキルを使って、それを鑑定する。


『ダークツリーマン』


ドルツ国北部の森にいる木に、魔王の魔力が宿ったもの。

直接的な攻撃力は低いが、特殊魔法が多く、耐久力もあるため、戦うのは避ける事が多い。

集団で群れを作るため、1体出てくるとそのあともエンカウントしやすい。


レベル15平均値


HP 120

MP 50


A  21

D  80

MA 111

MD 89

S  11

L   0


技 毒ガス(毒状態にする) 睡眠ガス(眠らせる) ドレイン(相手の体力を吸い取り、自分の体力にする) 



「なるほど、レベル15か。ちょっと高いな」


「勝てないかなっ?」


「いや、どう考えても余裕だろ。一応俺の『偏屈』をコピーしといてくれ」


「了解だよっ」


特に何もしていないでいると、ダークツリーマンが攻撃を行う。


紫色の粉を飛ばす。おそらくは毒をまいている。


この毒を使って相手の動きを封じ、一気に攻め込むつもりである。


2人とも全くよける様子がなく、ダークツリーマンは貰ったと思い、一気に攻め込こもうとした。


だが、2人が普通にしていて、何も変化がないことに気づき動きを止めた。


次に、白い粉を飛ばし、眠らせようとするが、これも効果なし。


二一の偏屈が発動していた。


二一は厳密にいうと毒状態、眠り状態になっているのだが、効果が逆転しているため、毒を受けても健康になり、眠り状態は目を覚ます効果になる。


歩はそもそも効果を受けないのだが、偏屈の効果も兼ねた方が安全なので、適用しただけである。



「どうやら、こういうタイプの敵は全く問題ないみたいだな」


「なんか変な気分だねっ」


「さて、じゃあこっちから……、しまった。武器を買ってこなかったな……」


二一は自分としては準備の仕切れていない状況に、頭をかいた。


もちろん城を出てから武器屋や道具屋に行く余裕はなかったが、武器の1つくらいは貰っておくことはできた。


やはり二一も多少は冷静ではなかったということか。


「二一ちゃん二一ちゃん、私は杖持ってるよ、それに、使えるかと思ってこれを持ってきたよっ」


歩はシスターの格好をしたときに、杖を貰っていた。そして、どこから出したのか、全面黒色の剣を出して、二一に渡す。


「よさそうな武器だが、どこから持ってきたんだよ」


「お城からここに来るときに、たくさん剣が捨ててあるところがあって、そこから1本持ってきたんだよっ」


「これはじゃあごみか」


「でもなんか強そうじゃないっ? なんとなく良さそうだったから、目についちゃってっ」


元々ごみに捨ててあった上に、真っ黒で炭のようであり、一見すると錆びているようにしか見えない。


「とりあえず無いよりはましか。次の町までのつなぎ程度に使わせてもらおう」


見た目は悪くても、刀身がかけているわけでもないし、1回くらいなら使えそうではあった。


クキャー! 


こんなやり取りをしている間にも、ダークツリーマンは毒と眠りの攻撃を続けていたが効果が無い。

あげくに無視をされて、怒りのあまり攻撃をしてきた。


「えーと、これはどうやって使うのかなっ?」


「とりあえず振ればいいんじゃないか?」


「そうだねっ、じゃあえいっ」


そして杖を振ると、杖の先から白い光が出て、直撃する。


「グギャー!!」 


そのままダークツリーマンは倒れて消滅した。


「え? 1回で終わりっ?」


確かに攻撃力はかなり高いが、自分の攻撃の効果がよくわからないままに当ててしまったので、いまいち実感が無かった。


「その杖見せてくれ。調べる」


そして杖を情報通で確認する。


『クリスタルロッド』


聖職者のみが使える杖。回復魔法はもちろん、攻撃にも使える。杖の先に大きな青いクリスタルがついているのが特徴である。魔法を詠唱しなくても、振るだけで攻撃、回復ができる。

各教会が管理していて、これはアインバック教会のものである。


効果 無詠唱 回復量増加、攻撃力増加



「いい道具貰いすぎだろう。まぁ、象徴扱いだから、いいものを渡すのは当然か」


キシャー!


そうしていると、今度は3体ダークツリーマンが出てくる。


「よし、今度は俺が、やってみる」


「気を付けてねっ」


3体のうち2体は毒ガスと睡眠ガスを放つが当然効果がない。


最後の1体はドレイン攻撃をした。


ドレインは一応攻撃なので。二一に攻撃が通る。


だが、効果は天邪鬼により逆転する。


『与えたダメージの半分が回復する』という効果は、『与えたダメージの2倍のダメージを受ける』に逆転し、ダークツリーマンは、ダメージを受ける。


その様子を見て、ほかの2体は大きく動揺する。


ダークツリーマンがやっかいなのは、個体としては強くないが、毒と眠りの魔法を使う上に、ドレインによるタフさである。


しかも数が多く、ドルツ国ではかなり手を焼いていた。


だが、二一と歩には、このやっかいな3つの魔法がいずれも効果を示さない。


自分たちの得意とする魔法が、まったく効果がないことに、ダークツリーマンはどうにもできなかった。


「さて、じゃあこの剣の効果を一応調べてみるか。変なのだったら困るし」


『ドゥンケルハイト』


闇属性を持つ刀。闇属性の魔法攻撃ができる。攻撃力が非常に高いが、与えたダメージが60%の確率で自分にもダメージになる。

攻撃範囲も広い。直接打撃でも闇属性の効果を持つ。


効果 攻撃力大幅上昇 攻撃範囲大幅上昇 闇属性付与 反動ダメージ 無詠唱


「えらい刀持ってきたな。これは捨てられるな」


内容を見てみると、基本的には優秀だが、反動ダメージの効果がひどすぎた。


せっかくの高い攻撃力がまったく生かされていない。


「でも、二一ちゃんなら使えるねっ」


「そうだな、じゃあ使ってみるか。これも無詠唱がついてるから、振ればいいのか?」


そしてダークツリーマン3体に向けて、剣を振る。


すると、黒い霧が剣の先から飛び出し、ダークツリーマンの周りを覆う。


その攻撃範囲は大きく、辺り一面が暗くなった。


そして、その霧が晴れると、ダークツリーマンは3体とも倒れて消滅した。


「強いな、いい武器じゃん」


そして、反動ダメージは発動した、偏屈の効果で二一はドレインにより受けたわずかなダメージすら回復した。


そのあとも、次々とダークツリーマンが現れたが、魔物特攻のある歩の攻撃と、単純に威力のある二一の攻撃、そして2人とも攻撃はまったくと言っていいほど受けない。


ドレインにより一応ダメージはあるが、二一はもちろん、歩には回復のスキルもある。


2時間ほど戦闘が続いたが、2人は体力満タンの状態でその森にいたダークツリーマンを全滅させてしまった。


「レベルは上がったみたいだな」


レベル10~20のダークツリーマンを多く倒したことで、2人のレベルが上がっていた。


若松二一 17歳 レベル5


HP  900

MP  330

A  A(1261)

D  C(911)

MA B(1091)

MD C(921)

S  B(1081)

L  G(191)


※凝り性の効果により、上昇率は2倍。



職業 ???

特殊能力 言語理解A 武器適正A 魔法適正B 

性格特性 偏屈  情報通 凝り性


装備 ダークカオスソード


中野渡歩 17歳 レベル5


HP 291

MP 530

A  G(2)

D  A(1255)

MA C(901)

MD A(1201)

S  E(402)

L  A(1303)


職業 ???

特殊能力 回復A 祈りA 魔物特攻B 言語理解F 魔法適正A

性格特性 二一信頼感 鈍感 おおらか 

 

装備 クリスタルロッド



「レベルが4上がったんだねっ。ちょっと強くなったみたいっ。装備も欄が出きてるっ」


「でも上昇が少ない気がするな」


二一は少し疑問があった。レベルが10~20の相手を数えられないくらい倒したのだから、もう少しレベルががってもいいと思ったからである。


ちなみに二一は、歩に『凝り性』のスキルを真似させているので、歩もかなり能力の上昇率が高い。


「これも調べればわかるか?」


『レベル』


魔物を倒すなど特定の条件を満たすことにとって、経験値がたまり、一定以上になるとレベルが上がる。

ただし、レベルの高い相手を倒しても、経験値が多いわけではない。

レベルは基本的に1からスタートするが、同じレベル1でも能力に差が大きい。レベル1の時点で能力が高い場合は、同じレベル1を上昇させるのも、経験値が多く必要になる。

また、周りに能力の高い人間がいると、その影響をレベルアップの際に受ける。



『ステータス上昇』


個人によって完全にランダムである。法則性は何もない。



「なるほど、だから俺たちのレベルはあまり上がらなかったのか。というか、情報通のスキルめちゃくちゃ便利だな」


偏屈は非常に便利だが、やはりなんでもわかるこの情報通がダントツで使い勝手がいい。。


「なんか森も明るくなったねっ。これなら楽しく歩けそう」


「ピクニックじゃないぞ」


とは言っても、とりあえずうっとおしい敵がいなくなって、二一も機嫌はよくなっていた。


この世界に召喚されてから、二一はいまいち思い通りの行動がとれていない(二一の個人的感想です。彼は結構好き勝手やってた)こともあって、ストレスがまあまあたまっていて、魔物を倒したことでだいぶ解消できたからである。


ちょっと機嫌のいい二一の横を、歩が横並びで歩いて行った。






「なに? 北の森のダークツリーマンが全滅しているだと?」


ランドルフのもとに、兵士からの報告があった。


ダークツリーマンによる被害は平民だけでなく、冒険者にも影響があり、ランドルフにとって悩みの種の1つであった。


ドルツ国では、バランス良く兵士が育っていたが、魔法使いだけは数が少なく、魔法使いが育ちやすいルフト国への派遣をしていた。


そのため、魔法使いだけは重宝されていた。


ダークツリーマンの魔法効果は、必ずしも魔法使いが相手すれば、有利というわけでもなく、毒や眠りを受ければ意味がない。


だから、せん滅のために多くの魔法使いを送り出せず、被害を受けないようにする警備や、実際に起こってからの対応で手いっぱいだった。


その悩みの種が1つ消えたことはありがたいことではあったが、原因がわからず不安ではあった。


「一体誰が……」


「目撃証言によりますと、そのせん滅を行ったのは、2人だけだったそうです」


「なんと! その2人がいれば強くなるな。目撃証言を調べて、情報を集めよ!」


ランドルフはその強力な冒険者2人を是非自軍に入れようとして、部下に命じた。


彼はこの2人が二一と歩と思わなかった。2人がヌストルラに向かっていると思っていたし、2人の能力を正しくは把握していなかったからである。



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