第6話 予定調和
ドルツとトリアの国境内での戦いは激戦を極めた。
空からドルツへの侵攻を行おうとするドラゴン部隊は、エドワードの魔法部隊が撃退する。
もともとラルフはルフトとの戦闘を行う回数が多く、ドラゴンの弱点は理解している。
魔法の中でも風の魔法は空での動きを鈍らせるので、かなり有効で、彼は風魔法使いを多く連れてきていた。
わずかに抜けたドラゴンは、城に残った部隊が迎撃する。
これだけなら、前回の戦闘と同じだが、クレアロッテの参戦が一気に形勢を有利にした。
圧倒的なスピードと人間ではやりようのない跳躍力を利用し、近くの建物や木に飛び移って、ドラゴンを操る人間を直接攻撃した。
この世界において、空で戦えるのは、ドラゴン以外では、竜人族か鳥人族くらいだが、後者2つはマーク森林からほぼ出ない。
よって、ドラゴンは、空をほぼ支配していたのである。
それでも魔法適正の低さで、無敵ではなかったが、間違いなく戦いに有利であることは間違いなかった。
そのため、同じような高さの相手と戦ったことはなかった。なので、近距離の戦闘の対応が全くできず、クレアロッテは連続で攻撃をした。
動きが速すぎてとらえることもできず、仮に叩き落しても、簡単に着地してしまう。
小さくて、おっとりしてはいるが、仮にもタニアの王であるルナルデッタの側近を務めているだけあり、戦闘力はかなりのものである。
そして、里香、歩は敵の侵攻を許さない。
「やっぱり下からも来たか」
加えて地上は二一無双。
ドラゴンだけで攻めてきた前回が陽動であることは二一は読めていて、今回の戦いで近距離に強い味方を、あえて城に残した。
それによって、相手は作戦が成功したと思い、地上からも攻めにかかる。
だが、2,500人くらいなら相手にできる二一には何の問題もない。
ドゥンケルハイトの適正殺しが無双した。
地上で襲ってきた騎士部隊が、本格的な戦闘に突入する前に、射程で勝るドゥンケルハイトの攻撃を浴びせる。
適正殺しは一瞬だけ何か違和感を感じるが直接的にダメージが与えられるわけではないので、何をされたかわからず、そのまま攻め入る。
そして、実際に攻撃しようとすると、彼らが鍛えたはずの武器は素人のような動きになり、隙だらけになる。
それを二一がサブマシンガンで追撃して、行動力を失わせた。
地上の敵は、誰1人死んではいないが、戦闘力は失われていき、むしろ生きているせいで、かえって動きが鈍くなってしまっていた。
しかし、圧倒的に有利と言われるとそういうことでもない。ドラゴンは以前のように1度に攻め込まず、魔法をうまく打たせては逃げる作戦もとっていた。
これはいわゆる魔力切れを狙っているのである。
歩、里香は魔力は高いが、他のメンバーはそろそろ危険なところになっていた。
補給部隊は怪我を負ったメンバーの救護に追われていて、魔力の回復に手助けにいくことはできない。
今は攻め込まれてはいないが、やや時間としては厳しいのであった。
「よし! ここだ!」
このヒットアンドアウェイ作戦を試みつつも、相手の動きを見ていた、ドラゴンに乗る兵の長が攻め時と見た。
「来たな。今だ」
二一はそれも読んでいた。エドワードの兵士にあえて、残りギリギリの魔力を残した状態で、枯渇したように見せかけたのである。
そして、一気に攻め込んできたところで、全員に協力させて、大きな風魔法を起こした。
ほとんどのドラゴンは竜巻のような大きな風に飲み込まれて、落下した。
「よっしゃ。これである程度はいける」
「貴様!」
だが、そのドラゴンの長は何とかそれを回避し、一気に距離を詰めて攻め込んだ。
近距離では魔法は当てづらい。そして直接攻撃はドラゴンのうろこにはきかない。一気に打ち崩そうと、その兵士は二一たちに迫った。
「甘いんだよな」
ザシュッ!
ドラゴンの堅い鱗も、ドゥンケルハイトには勝てなかった。
「悪いな。これは国宝だからさ、そんじょそこらの剣とは違う」
致命的なダメージを受けたドラゴンは、その長を乗せたまま引き返していった。
「はっはっは! これはこれは。お前か、選ばれしものは!」
そこに1人の声が響く。
ひときわ大きなドラゴンに乗った、余裕たっぷりの人間。
「私はルフト王国王、レンス=エピだ。雑兵に用事はない。長はどいつだ?」
響く声と迫力に皆が押される中、二一が返事をした。
「面倒くさいから、さっさとやめてくれないか? あんたらが帰ってくれれば、もうトリアは落とせるだろ」
しかし、相変わらずのひねくれた返事ではあったが。




