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偏屈な召喚者は異世界でも変わらない  作者: 35
第1章 召喚編
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第9話 無知

「は? なんだお前は?」


明らかに年下の二一にそんな失礼なことを言われて、3人のうちの1人が怒り気味になって二一に詰め寄る。


二一は175センチほど身長があり、小柄ではないが、3人とも二一より頭1つ大きく、体格もあって、顔もいかつい。


迫力があって、エリカと歩が少しびくっとなっていた。


「なんでそんなに怒ってるんです? ただの質問ですよ。『そうだ』で終わりじゃないですか」


しかしそんな空気は完全に無視。どちらかというと、二一は疑いを深めた。


所詮17歳の子供の質問。多少無礼な態度できたとしても、本当にそう言う話があるなら、冷静な対応をする。


脅しのような行為をしてくるということは、ただ単に輩の可能性もあるが、やましいことがある可能性が高いと踏んだ。


「うるせぇ。ガキが大人にいちゃもんつけてんじゃねぇ」


「いちゃもんじゃない。正当な質問だ。だって、これで道具を渡していいなら、誰でも道具をもらえるじゃないか。後払いなんだから、きちんと証明しないとこの人が損するじゃないか。先払いなら最悪あなた達が偽者でも構わんが」


「…………」


3人が黙ってしまう。もはやそれが答えである。


「おいあんた」


二一はエリカに声をかける。


「は、はい」


「こいつら3人のカードを確認したほうがいい。それくらいはいいんだろう?」


「そ、そうですね。じゃあすみません、ご確認いたしますのでよろしいですか? 名前を確認した上で、ギルドに話を確認します」


「拒否をさせてもらう」


「どうしてだ? やましいことがないなら見せれるはずだろう」


「俺達は隠密行動がメインだ。名前をさらすわけにはいかんのだ。つべこべ言わずに協力しろ」


「いや、それはおかしいだろう。じゃあどうやってあなた達が道具を買った後に、ここに代金を支払うんだ? 名前が分からなかったら、その後買った人の確認ができないじゃないか。それにあんたらはどう見ても前線で戦う人だろう」


「……」


また黙る。二一でなくても分かる発言の矛盾。それをつかれてはまた黙るしかなかった。


3人とも体も大きく、顔もいかつい。どう考えても隠密には向いているように見えない。


「も、申し訳ありません。ですが、この方の言っていることもごもっともです。確かに事前に連絡がないのはおかしいですね」


エリカは3人に謝りつつも、二一のいうことももっともなので、そういう対応をする。


「ちっ」


そして3人は外に出て行った。


「ご迷惑をおかけしてすいません」


「いいんだよ。二一ちゃんが勝手に気になってやっただけだからっ」


二一はいつもどおり気にしておらず、すっきりした表情を浮かべていた。



「これからタニアに行かれるんですよね。また戻られた時にでも寄ってくださいね」


その後二一が武器を決めて、装備品をつけて店を後にした。


「二一ちゃん似合ってるね」


二一の服装は全体的に濃い青色で、確かに彼に似合っている。いろんな意味で。



若松二一 装備


魔法戦士の帽子、魔法戦士の服、竜の盾


ドゥンケルハイト(剣+闇。自身にもダメージあり)

エレクトリックサブマシンガン(銃+電気。連射機能)

フローズスリング(投擲武器+氷。投擲武器により効果が異なる)


「銃は分かるけど、投擲って使いにくいんじゃないのっ……、って思ったけど、二一ちゃんだもんねっ」


使いにくいといわれれば、使いたくなる。天邪鬼二の性格から考えればそんなにへんなことではない。


「いいじゃないか。他の武器と違って、何がどうなるか自分しか分からないというのが気に入った。だったら、使いこなせるまでの手間くらい我慢するさ」



「おい、さっきはよくも邪魔してくれたな」


少し店から離れた小さな路地を横切ろうとすると、先ほどの3人が現れる。


「俺は邪魔はしてない。ただ単に疑問を聞いただけだ。わからないことを質問して何が悪い」


「まぁいいさ。お前らが邪魔してくれたおかげで、もっといいものが手に入りそうだしな」


そう言って、先頭の1番大きな男が歩を眺める。


「えらく器量のいい娘を連れてるんだな。しかもそのシスター服はアインバックの教会が、上級のシスターだけに渡している高価なものだ」


「そうだったのか?」


「ううん、知らなかったよっ」


「まぁ、でもそうなるか」


二一はなんとなく納得した。歩から、アインバックで象徴としてシスター服を着ることになっていたのだから、いいものをもらうのはなんとなくわかる。


「しかも初心者の冒険者のくせに、ずいぶんいい装備や防具を持っているじゃないか。そいつらをいただくぜ。そっちの女とお前の装備をよこしな!」


3人が下種めいた顔で、武器を構える。


シュバルツヴァルトブロートでは、現在規制がかかっていて、もともと外での人通りが少なく、武器屋を離れたこの狭い路地では、周りに人はいない。


それをわかっていて3人は待ち伏せしていたのである。


「はぁ……、ここでもこんなのがいるのか」


二一はあきれていた。日本でも学校や近所でこうしたものを見ることはよくあり、そのたびに、それをやっている意味が理解できなかった。


二一は自分が正しいと思えば何でもやるが、それが道徳に反していないことが前提である。


仮に泥棒やいじめをすることの正当性が、その人にあったとしても、被害を受ける側にとっては知ったことではないというのが、彼の持論でもある。だから、こういう人間は大嫌いであった。


「なんだ? びびって動けないなら、こっちから行くぞ?」


そういうと、1人の男が斧を取り出して、2人に向かう。


カチャ!


しかし、その動きは構えだけで止まる。二一が銃を構えたからである。


「さっき買ったばかりの武器か? それにその恰好は魔法戦士、だがなりたての奴なら敵じゃねぇ 撃てるものなら撃ってみろ!」


3人の並びは、斧を持っている大柄な男と、魔法使いの様相をしている男、そして、修道士が1人である。


通常能力の高さはある程度年齢に比例するため、若い二一達に対して油断をしていたのである。


「知識が足りてないぞ。魔法戦士になる条件を知らないんだな」


二一は自分がある程度能力が高くないとなれない魔法戦士になっていることから、それを承知で絡んできた3人を実力者であると最初は考えた。だが、斧使いの発言で魔法戦士になる条件を相手が把握しておらず、新人の若い2人であると思っていると判断した。


「これも普段俺が徳を積んでるおかげだな。頭の悪い敵に当たるなんてな」


ガガガガガガっ!


サブマシンガンを撃つと、黄色い球状の球が何発も飛び出す。


「ぐはっ!」


すると大柄な男は、壁に叩き付けられ、倒れこみ、痺れて痙攣した後に白目をむいて気絶した。


「な、何だ? 銃と雷属性だろ?」


「……、あの銃が特殊だ。サブマシンガンだ」


二一は本来あまりよくない組み合わせの2つを選んでいる。


雷属性と銃は共に威力を重視して命中率を下げているものである。


魔法武器を使う場合は、弱点を補いあうのが本来の使い方であり、お互いの長所のみを押す使い方は、リスクが大きくて好まれない。


ただ、例外はある。メイン武器としてではなく、サブの武器として使う場合と、使用者の能力が高い場合の2つである。


二一の場合はこのどちらも該当する。二一は能力がかなり高い上に、魔法武器を魔法戦士の特性として、入れ替えることができる。


だから、同じ武器でもメインでもサブでも使うようなこともできる。


そして、二一は数ある銃から、サブマシンガンを選んだ。


銃はほかの武器と比べると武器の種類が多く、性能がばらけやすい。


サブマシンガンは携帯向きだが、近距離専用で、近距離であれば威力は銃でもトップクラスだが、遠距離になると威力、命中率、射程距離すべてが低いため、あまり人気はない。


だが、二一が求めたのは、持ち歩きやすさの1点。軽さでサブマシンガンを選んだ。


結果的にサブマシンガンは連射性能が高く、魔法の武器として使うため、弾はMPであり、二一はMPが高いため、大量に発射が可能で、命中率の低さを補っていた。


それを目の前で撃ったので、威力はかなりのものであった。



「少しはやるようだな。だが、俺には魔法は通用しないぜ。あいつは斧使いで魔法防御は低いからな。俺は魔法使いだから、あんなのは効かな…………、ぐは!」


魔法使いが話している間に、マシンガンを撃つ。今度は白色の冷気を放った弾が当たり、そのまま倒れる。


「話が長い。さっきのあれを見てんだから、警戒しろよ」


いくら魔法防御が低くても、レベルに差があれば一撃で倒れることはない。


そのはずなのに、倒れたのだから何かあるのだと警戒するのがふつうであり、不用意に攻め込まないか、一気に不意打ちで攻撃するのが正しい。それなのに、だらだら自分の話をしているなど、攻撃されても仕方がないのである。


今度は氷の弾が跳ぶ。今度は命中率が高くても、威力の落ちる氷魔法だが、これも銃の連射性能が補う。


「な、なんなんだ……」


最後の1人はさすがに警戒して、距離をとった。


「お前はどうするんだ? こいつら2人を処理してくれるなら、無視しておくが」


「な、舐めるな! 俺にはこれがあるんだ!」


杖を出して、二一と歩に向けて撃つ。


「よし! この隙に」


「この隙にどうするんだ?」


魔法が効いたと思い、二一と歩の2人から目をそらしたのだが、後頭部にひんやりとした感触を覚えた。


「な、なんで……、混乱の魔法を使ったのに……。それにお前らは2人とも特殊能力もないし、能力も低いのに……、何なんだ!」


「そういうのもいるってことだ。やっとけ」


最後にその修道士が見たのは、笑顔で杖を振る歩だった。二一ではなく、あきらかに回復役に見える歩が攻撃をしてきたことに、驚きの表情を浮かべたまま、歩の攻撃を受けて気絶した。


3人が目を覚ました時には、兵士に囲まれていた。


その時二一と歩の容姿を説明して、襲われたと言って2人を訴えたが、怪しいということでエリカが連絡をギルドにしていて、そこから道具屋荒らしをしていた余罪がゴロゴロ出てきて、3人は拘束されたのであったが、それは二一達の知らない出来事であった。



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