三話
森はかなり広いようだった。時間は昼ごろで日の光がギリギリしか入ってこない。さらに周りをみても出口らしきところも見つからなかった。
「どれだけ広いんだ、この森」
俺は少しパニックになってしまった。だが、隣からパニックを解く質問をされた。
「バラって確かゲームとか結構やってそうだけど。これからどうやるかわからないの?」
思ったよりもカルナさんに頼られているようだった。カルナさんは人に頼らないイメージがあるのだが、頼られるからにはちゃんと答えたい。そんな気持ちが俺をパニックから解いてくれた。偶然だろうが。
「ゲームはやっているけどこれはさすがにしたことないよ。それに情報が全然なさ過ぎるよ」
さすがにこんな自分が仮想世界に入るゲームなどしたことがない。それに本でも細かくは書かれていない。
「でもまずはこの森を抜けないとどうしようもないわよ」
俺もこの森を抜けたいと思ったが、少し探索するとそうしなくてもよさそうだった。
「この森、意外と安全かもしれないよ。食料もあるし川に行けば水もある。意外と動物もいるかもしれないし」
「でも変なモンスターとか来ないかしら」
それなら大丈夫だろう。最初のステージでいきなり強いモンスターがごろごろ出てくるはずがない。さらに進むと河川があった。俺達は降りてみるとある穴を発見した。
「なんだろうね。あの穴」
俺達は近づいてみるとある茶色の物体が目に入った。
「「げっ・・・・・」」
目があった。茶色の物体と目があった。その物体が立ち上がると3メートルぐらいだった。
「「くまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
熊にあったら死んだ振りすればいいと聞くがカルナさんも初めてみたのだろう。俺達はうれしさと恐怖、驚きのあまり叫んでしまった。そして熊は俺達を襲ってくる。
「なんか強そうなんだけどぉぉぉぉぉ」
俺達は河川を走りまわった。意外と周り込みなどをしてこなかったのでグルグル回るだけでも逃げることが可能だった。
「よかった。俺達すばやさ重視にしてて」
俺は前と同じように攻撃を繰り出そうとすると、右上から左手が飛んできた。その攻撃はとても重そうで当たったら大ダメージをくらいそうだった。
「バラ少し離れて」
俺は熊から少し離れると後ろからカルナさんが刀で熊を切りつけた。だがHPゲージは全然減っていなかった。
「巨人よりもダメージ食らってないじゃん」
カルナさんは少し涙目になり、距離をとる。そしてターゲットは俺に変わった。
走りまわりながら熊を観察することにした。すると腹が少し柔らかそうだった。
「もしかしたら」
俺はダメージ覚悟で突っ込んだ。次は右手から振り下ろしてきた。それを交わすと続けて左手、それを交わすと微かに隙ができた。その瞬間。
______グサッ すると熊のHPゲージは大幅に減った。
「腹が弱点みたいだ」
だが、カルナさんに危険なことは任せられなかった。一応俺は強い敵に対しては2対1より1対1のほうが得意だ。1対1のほうが攻撃パターンが限られてくるからだ。
そのまま俺は熊のHPを減らしていった。
「あと一撃」
その時俺は足元の石に気付かずにバランスを崩してしまった。
(まずい・・・)
その隙を狙って熊が腕を振り下ろそうとしていた。
「邪魔!」
その時カルナさんが片手で俺を突き飛ばす。その反動を利用して熊の腹に刀を刺した。すると熊のHPがなくなり消滅していった。さらにまたレベルアップした。
「ありが・・・とう」
俺はカルナさんに感謝し、熊からドロップしたアイテムを拾った。するとウィンドウみたいなのがでてきた。
『熊の爪』
熊の爪、頑丈で鋭く武器の素材に使われたりもする。
俺が銀と鉄を拾ったときはこんなのは出なかったぞ。俺はある仮説を立ててみた。
「これ、熊の爪みたいですよ」
そう言い放った。カルナさんが拾うと俺の仮説は当たった。
「あれ、アイテムの説明みたいなのが現れないよ?」
「おそらく、教えてもらったからですよ。名前を。俺が銀と鉄を拾ったときもこのウィンドウはでませんでしたし」
まさかこんな機能があるとは思わなかった。それのおかげでなんとか毒キノコとかを食わずに済みそうだ。
「そういえば」
俺はステータスカードをみると上のほうにアイテムポーチの欄があった。それを開くと手に入れたアイテムが表示された。さらに横には装備の欄があり、それは名前のとおり自分の装備欄だった。
俺はカルナさんにアイテムポーチの欄を開かせてカードを覗いてみた。だが、カードは真っ白だった。
「カルナさんいまどこ開いてます?」
「私はアイテムポーチだけど」
アイテム欄は見えないのか。俺はそのことをカルナさんに伝えた。
「本当だ。真っ白になってる」
そのことにとても感心していた。その後俺達は熊がいた穴で休憩した。
「どうする?まだ昼ぐらいだけど」
この森は抜けたいところだがここよりも安全そうなところはそうそうなさそうだった。
「一応ここで一晩過ごしませんか。試してみたいこともありますし」
その後試してみたいことをカルナさんに告げずにあることをしようとした。
それは、アイテムポーチから出すアイテムの仕様だった。俺は一度草をアイテムポーチに入れた。それを取り出そうとしたら、アイテムポーチの中は真っ暗で何が入っているかわからなかった。だが、それを取り出そうと腕を突っ込みとるとその草をとることができたのだ。そしてそれがどこまで有効なのかカルナさんを実験台にしようと思う。
俺は熊の爪に見える石とどこにでもあるような石を拾った。
『ただの石』
普通の石。投げてもよし。捨ててもよし。
こんなウィンドウがでてきた。
「ただの石か」
わざとカルナさんに聞こえるように言って、カルナさんがこっちをみるとその間に、どこにでもあるような石を見えるように捨てた。そして俺はカルナさんに近づいた。
「これも熊の爪らしいですよ?」
と熊の爪に見える石をカルナさんに渡した。もちろん『ただの石』といったので最初に拾ったときのウィンドウもでない。
「落ちているのもあるんだ!」
俺はカルナさんに『ただの石』を渡した。そしてカルナさんはポーチに入れた。ん?アイテムは簡単にあげれるのか。初歩的なことを検証していなかったが結果オーライ。
気を取り直して、当初の目的の仕様を確かめた。
「カルナさん。さっきの熊の爪をだしてください」
そう、俺が確かめたいのはそこだった。アイテムポーチが取り出せるのは、『名前が基準』なのか『頭に思い浮かべた形が基準』なのか、だった。
もし、カルナさんがそのまま『ただの石』を取ったら『頭に思い浮かべた形が基準』。『熊の爪』を取ったら『名前が基準』になる。そしてカルナさんが取ったのは。
「これ?」
『ただの石』だった。よし、これでアイテムポーチは自分が思う最優先のものがでることがわかった。そしてそのことをカルナさんに報告する。
「そんなことしてたら私にも教えてよ~」
ぷぅー、と頬を膨らまして少し不満ぎみだった。俺はそれをがんばって機嫌を取り戻させた。
「わかったわよ~。次、どうするの?」
アウトドアが趣味じゃない俺はどうすればいいのかあまりわからなかった。
「カルナさんはなにかありません?」
カルナさんは少し悩むと、パッっとひらめいたような表情を取った。
「ならまず寝床を作らない?」
自分ではわかっていても読んでる人にわかるように説明するのが難しいです。