二話
俺は起きると周りが真っ白な世界に来ていた。見渡すとカルナさんが眠っていった。全く状況がわからなかったので、カルナさんを起こすことにした。
「カルナさん、起きてください」
全校朝会の前みたいに目を擦り合わせて起きた。その表情はとても眠そうだったが、一瞬で切り替わった。
「なによ~、え!?・・・ここどこ?・・・」
カルナさんはすぐに起きて周りを確認したがずっとびっくりした表情だった。
「俺にもわかりません。起きたらここにいてすぐに起こしましたから」
「なにもしてないでしょうね」
カルナさんは俺がなにかしてないか疑っているようだ。もちろんしていない。まずできないからだ。カルナさんはクラスでトップだからである。頭ではなく立場が。ほどんどの人が逆らえない。原因は一度大規模な喧嘩を止めたことが始まりらしいがあまり知らない。
「なにもしてませんよ」
カルナさんは自分の体になにもされてないか確認したがなにもなく、「よかった」といって安心していた。その後ここにくる前のことを整理したりしたが、やはり校長と教頭が怪しいということで型がついた。その後2人で考え事をしているといきなりモニターみたいなものが映し出された。
「ようこそ、バーチャルワールドへ」
「びくった!!」
「わっ!なに!」
まさか音声もでるとは、そんなことを思いながらも説明は進んでいった。
「この世界は名前のとおり仮想世界です。ここですることはただ一つ。魔王を倒すこと」
声は機械のようだがとても日本語に流暢だった。俺はこういう物語は小説や漫画で読んであるのでこんなことがあるのか、と思いつつカルナさんをみた。カルナさんは全く理解できず開いた口がふさがらなかった。
「あなた達の名前は、『中薔薇 海斗』『奈留神 香瑠奈』ですね」
もうすでに俺達の名前は設定されているようだった。逆に変な名前にされたら困るが。
「まずはジョブを選んでもらいます。ジョブは職業です。ジョブによってステータスや覚えられるスキル・魔法が違います。真剣に選んでください」
すると自分の目の前にウィンドウ的なのが出てきた。それをタッチして確認してみると、『勇者』『戦士』『剣士』などたくさんのジョブがあり思いっきりスライドしてみたが3秒ほどかかり一番下までついた。
「多いな」
「多すぎないこれ」
俺達は自分のジョブを探すのに20分ほどかかった。俺の選んだジョブは『盗人』すばやさ重視で道具や武器がほとんど使えるとのこと。カルナさんはかっこよさそうだからと『侍』にした。『侍』は攻撃力とすばやさ重視だが防御力が少し劣るらしい。
・ステータス
『盗人』
攻撃力 5
防御力 7
すばやさ 20
魔法攻撃力 8
魔法防御力 7
『侍』
攻撃力 15
防御力 5
すばやさ 12
魔法攻撃力 4
魔法防御力 4
ジョブを選ぶと俺達の目の前に装備が出てきた。見た目的に弱そうなのでおそらく初期装備だろう。
「着物着るの?」
カルナさんの初期装備は盗人の初期装備の革の服と違い、着物に刀だった。見た目的には初期装備にしてはかっこよく笠もついていた。着てみると革の装備はとても着心地が悪かった。対してカルナさんは祭りでも行くかのような格好になっていて、ちゃんと腰に刀が装備されていた。それをみて俺は腰の剣を抜くとダガーに近い形状をしていた。
(やっぱりスピード重視だな)
と思い、振ってみると思っていたよりもとても軽く使いやすかった。
「ではこの世界の仕組みを説明します。この世界はたくさんの町があります。そしてそれぞれの町のクエストを受けたりして町のレベルを上げていってください。その町のレベルがある程度上がるとボスクエストを受けられますのでそれを終わらせると一つの町がクリアとなります。もちろんその町に家や拠点を作っても構いません。そして町の9割をクリアしたら魔王への挑戦権が得られます」
とても面倒くさい設定だった。町の数を言わないのはおそらくそれほど多いのだろうし、しかもクリアするのがその9割。先が思いやられそうだった。
「一つ大事なことを教えときます。この世界でモンスターやこの世界の人間に殺されたら町のひとつである奴隷のいる町に強制転移させられ奴隷になります。そしてあなた方プレイヤーに殺された場合は命の木の実になり、実質死亡となり現実世界には戻れなくなります」
その説明を受けて俺達は驚愕とした。まさか死ぬとは。まだモンスターに倒されたら死ぬまではいかないからまだよかったものの。カルナさんは少し動揺していた。
「こんなので死にたくない・・・・」
カルナさんがこんなことをいうのは初めてみた。さっきまでかっこいいからだけでジョブを選らんだ時とは明らかに違う。
「プレイヤーに殺されなければいいんですよ。安心してください」
そんなこと言って励ました。が、おそらくプレイヤーキルするやつはでてくるだろう。その時に備えとかなければ。
「プレイヤーはそれぞれ違う町の近くでスタートします。まずはこの扉を抜けた後迷路ですので抜けてください」
すると大きな扉がでてきた。扉を開けると周りが大きな草に囲まれていてそこに道が空いていた。ある程度進むと分かれ道があった。
「分かれ道、右と左どちらに行きます?」
カルナさんは少し考えて右を選択した。少し進むと広い空間にでた。俺達が真ん中ぐらいのとこまで来ると上から5mぐらいの大剣もった巨人がでてきた。
「いきなりこんなやつがでてくるのかよ!勝てるわけが」
俺が弱音を吐いているといきなり持っている大剣を振り下ろしてきた。その攻撃は思ったよりも遅く俺達なら簡単に交わせた。振り下ろした隙に交わし攻撃すると上のゲージが少し減った。そして少し後ろに下がった。
「バラ!大体20分の1ぐらい減ったよ」
カルナさんが俺のことを『バラ』というがあまり話さないので久しぶりに聞いた気がする。
20回か。2人ならいけそうだったので、俺が囮になりその隙にカルナさんが攻撃することにした。カルナさんが攻撃すると、俺は1ダメージに対し、2ダメージだった。それをみた俺は攻撃をカルナさんに任せることにした。
「これで、終わり!」
カルナさんが巨人を切りつけるとHPゲージがなくなった。すると、自分の周りがいきなり光った。
「これがレベルアップか」
さらに、倒した巨人の下にアイテムが落ちてた。
「これは、鉄と、銀よ」
拾ったカルナさんはそう答えたが、拾ったところが消えてなく、俺の分もドロップするようだった。それを腰についているポーチに入れようとするとポーチの中にカードがあるのに気付いたそれをみると自分のステータスだった。
「カルナさん、服の中にカードとかなかった?」
カルナさんのポーチは俺よりも小さくカードがありそうにもなかった。カルナさんは服の中を探るとどうやら胸の辺りにあったらしく取ると俺に見せてきた。
「これが私達のステータスか。このステータスポイントってなに?」
カルナさんが言ったステータスポイントはカードの右のほうに書いてあった。俺達2人とも5ポイントあり、レベルは6レベルになっていた。
「カルナさん、俺達たぶんあの敵倒したから5レベあがったんですよ。おそらくステータスポイントはこのポイントを割り振って自分のステータスをあげるんです。そしてその下にあるスキルポイントは自分のスキルだと思う」
俺はステータスポイントをすべてすばやさに振った。するとカルナさんはジーっとこちらをみてくる。
「ねぇ、どう割り振ればいいのかしら。ゲームはしたことはあるけどこの手のゲームはしてなくて」
ステ振りのことを聞いてきた。俺もある程度RPGなどはしたことがあるが、ゲームによって、一箇所に振る極振りか、バランスよく振ったほうがいいなどさまざまであり、このゲーム世界の情報など全く皆無だった。
俺はこういうゲームはスピード重視なのですばやさを上げたが、『侍』であるカルナさんをどう上げればいいのかわからなかった。『侍』について少しまとめることにした。
「まず、『侍』はステータス的に攻撃力とすばやさ重視。ただし防御力や魔法関係が低いのが欠点である。カルナさんは、得意なほうを伸ばすタイプ?それとも苦手なのを克服していくタイプ?」
「ん~、どちらかというと前者かな。なら私もバラと同じすばやさを上げよう」
そしてカルナさんはすばやさにすべて追加した。次に俺はスキルポイントに目をやった。カードの下に薄くスキル名が書かれていてその横に、レベル、ポイントの順でならんでいた。
俺はバックステップというスキルが気になったので、レベル5のバックステップをスキルポイント2払って習得した。するとスキル名の下に説明が出てきた。
バックステップ
『このスキルは攻撃モーション中どんな態勢でもバックステップで交わすことができます』
とてもよさそうなスキルだった。そのほかに下をみると『強奪』『窃盗』などのスキルもあった。『バックステップ』とても使えそうだったのでカルナさんにも教えることにした。カルナさんはバックステップの下に『動体視力アップ』『居合い切り強化』など自分に得するスキルがたくさんあった。
その後俺達は迷路を進んでいった。だが敵はこれ以上出ず、迷路から脱出することができた。だがその光景はすごいものだった。
「なんで森の中なの」
そうカルナさんが言った途端後ろの迷路の扉がしまり、消えていった。
・海斗
攻撃力 5
防御力 7
すばやさ 25
魔法攻撃力 8
魔法防御力 7
スキル バックステップ
・カルナさん
攻撃力 15
防御力 5
すばやさ 17
魔法攻撃力 4
魔法防御力 4
スキル バックステップ
海斗とカルナさんはあまりはなしたことないので敬語とタメ口がばらばらになったりしています。