十八話
「兵士の次は冒険者か」
囚人はこちらを見て言った。
「めっちゃ強そう」
納須くんから少し冷や汗がでている。そしてかすかにふるえているのも感じた。
まだ怖いのだろうと感じるが俺も少し怖い。まったくどう倒せばいいのか頭が回らない。
囚人は剣を扱ったことがあるのか数回素振りをして感覚をならしていた。
「ゆくぞ!」
声を出した瞬間、囚人は俺達との間にある机のり勢いよく走ってきた。
「あぶねっ!」
囚人が先に切りかかったのは俺だった。すぐに横に飛び回避するが、即座に態勢を変えまた切りかかってきた。
「バラ!」
その攻撃はカルナさんが刀で受け止めてくれて助かった。
「くっ・・強いわね」
力で若干カルナさんが押されていた。カルナさんも結構力に振っているにもかかわらずこの力は食らえばひとたまりもないだろう。
「カルナさん一旦逃げて立て直しましょう」
黄昏村のボスの熊は逃げれたのでおそらくこのボスも逃げれるだろう。
「ダメです先輩。この扉開きません」
なんだとーーーーーーーーーー。
まさかの出口は一つ、それは俺達の入ってきた扉だった。だがそこが開かないとなると逃げることはできない。窓から落ちる手もあるがそれだと生存できるかは不安なので除外、クライミングハンガーがあるが設置する時間がない。
「となると倒すしかないか」
現状考えられる手をすぐにカルナさんに話しそれを実行させることにした。
案は簡単、一人が囮になり攻撃されその隙に味方が攻撃するといういつものような戦い方だった。
また必然的に俺が囮になるがダガーだけでは剣を受け止めるには難しく刀をカルナさんから預かることにした。
囚人からの攻撃を防御しつつ『超観察眼』を使う。
Lv.35
弱点:火
攻撃力:32
防御力:25
素早さ:30
熊戦と違い、レベルと素早さが見えるようになっていた。『超観察眼』のレベルは上げていないのでおそらく自分のレベルにもよっているだろう。
レベルは俺達より低いか・・・だが素早さが少し高いな。
あの素早さには俺にもびっくりした。自分よりも遅いはずなのに技術が高いのか防戦一方になる。
火が弱点なのをうまく利用させたい。
「納須くん!火をあいつに」
中庭で納須くんが炎を口から出していたのを思い出した。
「わかりました」
_____シュゥゥゥーッ
すぐに口から炎を囚人に吹いてくれた。
「くそっ」
熱かったのか一瞬火のほうをみた。その隙に俺は一太刀を与える。
「ちっ」
囚人はすぐに俺から距離を取る。俺は囚人の減ったゲージをみたが20分の1ほど減っていた。
「これならいける」
俺は少し希望を持ち、ここからは囮に集中することにした。だがやはり相手は人間。こちらの作戦も読まれており、俺が防御し銘さんが攻撃するもバックステップやしゃがむ、縦で防ぐなどして避けてくる。そのおかげで先ほどの炎作戦も通用しなくなっていそうだ。
「バラ」
囚人が距離を取るとカルナさんが後ろから声を掛けてきた。
「うおっ」
囚人に注意が向いていたのでびっくりする。
「あいつの盾どうにかできない?」
ときいてきた。たしかにあの盾がなくなれば大分らくになる。
「全員でかかればなんとか」
それをいうとすぐにカルナさんは二人に伝えに行った。
バラの囮の立ち回りはうまく私達に攻撃が来ないようにしていた。
バラが囮になっている間に私は後輩2人にあの盾をどうにかしようと伝えた。
案がまだ浮かんでいないので2人の動きも踏まえ分析する。
どうするか・・二人の動きもそろそろよくなるだろうし・・・
この世界で一番頭を回転させている気がする。
この手しかない・・・
私は閃いた案を二人に伝えた。それを踏まえ銘さんにあることを確認する。
「あなた、銃とか持ってる?」
と聞くと縦に首を振った。やっぱりもっていた。
「あまり使いたくないんですけど」
大丈夫、人を撃たないから
と伝え、作戦を伝える。
「わかりました」
素直に聞いてくれてなんとか助かった。けどこの作戦は賭けに近いのでバラと私のどちらかが傷を負うことになると思う。
覚悟を決めたのか彼女が銃を上に構えた。そして・・・
パァン!
彼女の持っていたハンドガンから大きな音がなった。急な音にバラと囚人がびっくりして彼女のほうを向いた。
「バラぁ」
バラの名前を呼ぶと、バラはすぐに私の作戦を理解してくれた。そして囚人へ走っていく。その際、納須くんが後ろから攻撃し盾で防がせた。私の狙いはそれだった。私はすぐにバラへ走る。
盾で防いだ瞬間、バラがその盾を蹴り飛ばした。見事に盾が飛んでいき、囚人から盾がなくなる。だが囚人は蹴りでできたバラの隙を見逃さなく、すぐに切りかかる。
私はすぐにバラの刀を取ろうと手を伸ばすが届かない。だがこのままだとバラが重傷を負ってしまうので左腕でガードした。もちろん防具などないので私の腕をざっくりと切っていった。
「いっつぅぅ」
とても痛い。腕が飛ばなかったが、手の甲のすぐ後ろからひじあたりまで縦に切り口がありそこから血が出ている。普通ならこんなに血が出たら気を失いそうだが、そんな気は起らず何とか動けることができた。この世界のおかげだろう。
私が斬られた際にバラがものすごい形相をしてボスを蹴った。盾もなく剣も振り終わり防御させることができずもろに蹴りを食らい2mほど飛ばされた。
「カルナさん!」
バラがものすごく心配そうに私に声を掛けてきた。そりゃそうだと少し笑えてくる。
「大丈夫よ。動けないほどじゃない」
少し強がってしまった。バラはすぐに私に回復薬を飲ませた。すぐとみるみるうちに痛みが引いていく。前にバラが飲んだ時の感想をいっていたけどここまですごいとはおもわなかった。
「よし、戻ったわ」
バラは私の回復をみると安心したかのようにほっとしていた。
そして私は刀をもつ。
「あとは私が囮になる」
といって私は囚人に向かって切りかかった。盾がないので剣でガードする。そしてその隙にバラが斬りつける。
そこからは流れ作業だった。私が剣を封じてみんなが攻撃を加える。それが体力が残りミリ程度になるまで続いた。
「とどめだっ!」
とどめの一撃のようにバラが囚人の背中を刺し、体力がなくなる。
ダガーが抜かれバラは少し後退した。そして囚人が背中から倒れた。
「ゔぅ・・・・ここまでか」
断末魔を残し消えようとしていた。
「ふっ・・・・がんばれよ」
といって消えて言った。がんばれ?なんでそんなことを。
そのことについてはバラも違和感を感じた。
がんばれってどういうことだ?
死にそうな場面で囚人が冒険者に頑張れというはずがない。まさかあの囚人がこの世界のキーパーソンだったのではと思う。
だけどもう遅い。消えてしまっている。
ボスからドロップしたのは『牢屋の鍵』だった。みんなも入手したらしい。
・牢屋の鍵
牢屋の鍵を一部屋あけることができる
と書いてある。消耗品の部類で×1と横に書かれていた。
いつか使う日がくるだろうと記憶にとどめておくことにした。
そんなことを思っていると嫌なことが頭によぎってしまう。
人を殺してしまった・・・・・
AIだからといって精神的にこれはくる。いつかは慣れないといけないだろうが
はぁ、先が思いやられるな~
・海斗
レベル42
攻撃力 10
防御力 10
すばやさ 41
魔法攻撃力 8
魔法防御力 8
・スキル
バックステップLv3
窃盗Lv.1
暗闇目視Lv.1
無音歩行Lv.1
超観察眼Lv4
所持金 15950G
・カルナさん
レベル43
攻撃力 25
防御力 12
すばやさ 27
魔法攻撃力 4
魔法防御力 4
・スキル
バックステップLv.1
動体視力アップLv.2
ジャンプ力アップLv2
居合い切り強化Lv.2
炎切りLv.1
気配探知Lv.1
雷切りLv1
所持金 25000G
ポイント
カイト ステータス10 スキル13 カルナ ステータス10 スキル14