恋
友人が病死しています。それが苦手な方は避けて下さい。
「あの子、功補君に雰囲気似てない?」
中学からの友達が私の肩を揺さぶった。
「奈々子、もう立ち直んなよ。功補君は亡くなったんだよ」
「分かってるよ。そうじゃなくて」
功補君は半年前に病死した。私が好きだった事は周知の事実だ。
まだ立ち直れていない事も。
もう高校1年の2学期だというのに。
「あの子、気になる」
友達が目を丸くした。
「ちょっと待って。急いで連れてくる」
同じクラスだったのに気付かなかった。
そう。
始まりは終わりの合図だと分かっていたから何にも気付かない様にしていたのだ。
「俺、太一っていうけど」
太一君は全然功補君に似てなかったけれど雰囲気と誠実そうな感じは同じだった。
私は笑みを浮かべた。
「よろしく」
太一君は不思議そうな顔をした。
「今まで気付かなかったの」
「うん」
「そか」
少し考えてから。太一君は言った。
「色々あるんだろうけど、これからはよろしく」
太一君が向こうへ行ってから友達が言う。
「功補君の事は忘れなよ」
「どうして」
怯んだ。
「死んだから?」
友達はむにゃむにゃと口を動かしている。
「どうして!!」
クラス中に響くような声で叫んだ瞬間、私は気を失った。
抱きとめてくれたのは太一君の友達らしい。
私は直に目を覚ました。
「あ、ごめん」
「いや。立てる?」
1人で立つと、友達が泣いていた。
「ごめん、、、、取り乱しちゃって」
私が謝ると、友達がかぶりを振った。
「いや、私が変な事言ったからだよ」
そのとき太一君が廊下を駆けてきて私の身体へ飛び込んできた。
ぎゅっと手に何かを掴まさせる。
「これ、持ってて」
『家内安全』と書いた手書きのお守りだった。
「マジ効くから。俺が保証する」
一生懸命に言う。
「俺がこの高校受かったのもこれのお陰なんだ」
涙がぽろりとこぼれた。
この一生懸命さだ。
私はこの人が好きだ。
「太一君」
「うん?」
「ありがとう。もう大丈夫。好きな人が出来たから」
「え」
「だから気付いたんだね」
太一君は顔を真っ赤にした。
友達は涙を引っ込めて万歳をした。
終わりがあるから始まりもある。
そういう事でしょう。