ブートキャンプ 新人への洗礼・訓練終了
ついに装備することとなったT-hearts。
その過激な戦闘能力を経験していくことは【レギオン・フラッグ】への洗礼であった。ある意味、鋼鉄の棺桶と言えるソレは最強の防具であり、最強の武具でもあった。
動力甲冑というべきT-heartsガーディアンの中に閉じ込められた俺の目の前に次々と情報が入ってきた
《ガーディアン起動プロセス開始、コックピットブロック閉鎖確認、全コンデンサー正常起動確認、スラスターシステム異常なし。スラスター用パウダー残量確認、支援AIデータリンクより情報プリセット。視覚情報を網膜投影開始。全関節機構解除・・・・・システムオールクリア。ガーディアン・コンバットマニューバー・オン》
ガーディアンの音声ガイダンスに合わせて起動していく統合管制システム。ガーディアンは全てのチェックをクリアして、その動きは俺と一体となった。
流石に最初期型という触れ込みのせいか、若干動きはぎこちないし、腕などの反応は鈍い。それでも・・・言うなれば剣道などの武道に関わる防具などをつけている程度の反応と言えるだろうか。とてもライフル弾を弾く装甲とは思えなかった。
「聞こえるか!ガーディアンは日米共同開発の強化防護服が基本となっている。あの伝説の2011年3月11日の東日本大震災。それによって生じた原発のメルトダウンと爆発。それらの事案を教訓にして今後このような事案に対処するため、開発されたものだ。パワーアシストにより重たい瓦礫を手作業で除去することも可能。通路開拓には腕部パイルバンカーなどの工作ユニットを、消火活動や冷却水運搬などにバックパック装備型インパルス消火砲なども装備可能とした上、完全閉鎖型ゆえに放射能の塵を吸い込むことはない。また突発的爆発などでの破片などからの防御力を考えて、7.62mm弾クラスの防御力を与えられている。それらを軍事目的に再調整、兵器としたのがこのガーディアンだ。最初期型は、まだ放射能対策の鉛装甲を内蔵。完全閉鎖型ゆえに呼吸はメインは圧縮酸素ボンベ、残圧が低下すれば緊急用に軍用防護マスク機能を使用する。まあ、ガーディアン以降の機体は対放射能対策は最低限まで抑えられており、そう言った事態ではオプションパーツで対応する。今ではガーディアンと直系の後継機は特殊火災消防隊やレスキューなどが使用する。まあ、ガーディアン自体も高価な機体だしな。最低でもこれを乗りこなせないとT-heartsを使えんぞ。最後にだが・・・基本的に頭部は弱い。これは人間の弱点というべきものでな。大口径の対物狙撃銃でのヘッドショットは防げないし、近距離でハイパワーなマグナム弾を使用する大口径拳銃の弾を喰らえば装甲は防いでも首の骨が折れる。注意しろよ。質問がなければ、これから適正試験を開始する。まずは素直に歩いてもらおうか」
「了解。ガーディアンを起動させます」
教官の言葉に合わせて足を一歩一歩踏み出していった。その度にカシュン、カシュンという駆動音が脚部膝関節部分から聞こえてくる。旧型であるためか、若干の窮屈さは感じるが、それもあまり気にしないにした。ライフル弾も防げる装甲。単純に考えて行けば、そんなものを着たまま、普通に歩けるはずはない。何しろ騎士甲冑が廃れたのはクロスボウやマスケット銃との貫通力と甲冑の防御力の勝負に負けたがためだ。現代のボディアーマーの一つ、プレートキャリアは防弾用装甲板であるセラミックプレートを内部に収めたものを物を身にまとうことで、なんとかライフル弾を防ぐというものだ。それもボディアーマーのケブラー素材との併用でだ。しかもボディアーマーの名のとおりに致命傷を負わされる胴体のみを守る。手足、頭部、そう言った部分は守りきれないと割り切るしかないのが現状のはず。
しかしT-heartsは違う。流石にミサイルや大口径弾は無理でもアサルトライフルや軽機関銃を使いこなす相手の銃弾を弾き、安全に戦いを挑める。それは対人戦闘では最高の事だった
「よし、その目の前のトラックにいる整備兵の方にいけ。武装を追加してくれるはずだ」
目の前にいたのは警備の兵士2人と工具を収めたベルトを装備している整備兵が2人。そして目の前には大型のコンテナを積んだトラックがあった。
「武装の追加を頼む」
サンライズ整備兵というNPCらしい名前の兵士に話しかけると、了解と言われ、コンテナの中にある椅子に座るように促された。素直に椅子に座ると武装を持ってこられ、次々とメンテナンスが進んでいった。先ほどの歩行テストで感じなかった重みが追加された武装の分、重くなっていった。
『注意:T-heartsには固定武装以外にも追加武装を装備することが可能です。任務に応じて武装を変更することにより、高い汎用性能と効率的戦闘が可能となります。なお、装備可能箇所は機体ごとに異なります』
網膜に投影される注意書き、それを見終われば整備完了の声を掛けられ、俺は椅子から立ち上がった。
まずは武装リストをチェックしてみた。
【左腕:FN-P90内蔵型ガンシールド
左腰:ヒートカタナ
右腰:デザートイーグル
背部バックパック:ジャベリンATGM×2】
各武装の能力もチェックしてみることにした。どんな能力かわからない武装なんぞ使いこなせるわけがないからだ。
【P90TR内蔵型ガンシールド
装填数 50発
使用弾薬 5.7mm×23弾
再装填不可能
専用オプションアイデム:レーザーサイト
解説:ベルギーのFN社が開発した個人防衛火器。PDWと呼ばれる分類だが、一般的にはサブマシンガンに分類、または発展型とも解釈されている。5.7mm弾は対ボディアーマーを想定し、ライフル弾と同じ貫通性能を追求したが、冷戦終結により、本来想定されていた戦車兵や後方勤務の兵士の自衛用火器ではなく、むしろ対テロ戦において特殊部隊が使用する銃と言う風になっていったものである。ガンシールドは12.7mm弾を数発防ぐことは可能であり、同時に自衛用に調整されたものである。ちなみにTRモデルはベーシックモデルで装備されているドットサイトを取り外し、ピカティニー・レールを装備したものである。ガンシールドではT-heartsの火器管制システムとの連動によるロックオン調整用にレーザーサイト装備している。なお、内蔵式ゆえに再装填を行うためには時間が掛かり戦闘中の再装填は実質不可能となっている】
【ヒートカタナ 刀剣類
使用回数 制限なし
使用システム 専用バッテリーユニット
解説:T-heartSの運用において問題視されたのは対T-hearts武装の採用である。一般的なライフル弾を防ぐ武装であるがために銃器での対処は12.7mm弾や個人携行型対車両用ロケット弾を使うこととなるが、ただですらスラスターによる高機動戦闘を可能としているT-hearts相手では大量の対物ライフル、及び大口径機関銃の投入、膨大な運用兵員の増員などの運用面に問題が起きることが予想された。そこでT-heartsのパワーアシストを受けた近接格闘戦武装が開発されることとなった。その一例としてヒートカタナは使用時には柄に内蔵された専用バッテリーにて刀身を超高熱にまで加熱させ、斬撃、刺突などの攻撃に際し、分厚い装甲を溶解させ、装甲ごと内部を焼き切るというものである。また対人戦闘ではT-heartsのパワーアシストにより、バッテリーを使用しなくとも、叩き潰せる威力を持つ。なお、理論上、一度にバッテリーユニットの電力を全力消費した場合、戦車の上部装甲のハッチの部分も焼き切れると言われている】
【デザートイーグル ハンドガン
装填数 7+1発
使用弾薬 50AE弾
オプション装備可能
解説:世界初のオートマチックマグナムハンドガン、オートマグはオートジャムといわれるほど、最適な弾薬の不足、ステンレス鋼用の潤滑油不足などの理由で信頼性がなかった。オートマチックハンドガンでマグナム弾は使えないのではと思われていたが、MRIリミテッド社が発案し、イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ社とマグナムリサーチ社が生産したマグナム弾使用可能なハンドガンである、一般的な人気は44マグナム弾モデルが多いとされるが、50AE弾モデルは現行のオートマチックハンドガンでは最強であり、AK47並みのボディアーマー貫通力を有すると言われている。そのため、メタルシルエットと呼ばれる競技射撃、拳銃による狩猟などで使われていることが多くある。なお、銃身上部にはレイルが装備されており、スコープ、ダッドサイト、レーザーサイトなどを装備している】
【ジャベリンATGM 対戦車ミサイル
装填数 装備本数に匹敵
使用弾薬 第三世代型対戦車ミサイル
一般的に歩兵が使用する対車両、対トーチカ等などに使える携帯ミサイル。とはいえ、無反動砲、ロケット砲と比べ、誘導装備が存在するために高価であり、大国などから武装支援を受けている民兵や正規軍でなければ、そうそう使いこなせない高価な武装となっている。第一世代型ミサイルは発射後、ミサイルを有線でコントロールするために射程も制限される上に、ジョイスティックで操縦しなければならないがために、操縦手の腕前も然ることながら、発射地点を潰されたらおしまいだった。しかし、第三世代型はミサイルの誘導装置から赤外線を照射して映像と捉え、追いかける完全の打ちっぱなしとなっている。弱点としてはフレアなどの赤外線熱源欺瞞装備に弱かったりする。しかし発射後、使用者が逃げることができるという利点は兵員の生存率向上に向いているため、多用されやすいものとなっている】
「は?ジャベリン対戦車ミサイルに刀に盾内蔵型マシンガン!?なんつー重武装な・・・つーかパワーアシストしてなければ担いで走るどころか、動けんぞ・・・」
T-heartsの性能に呆れながらも整備兵が手渡していてくれたライトマシンガンを受け取るとスペックが同じように出てきた。
【MG3 LMG
装填数 120弾ベルトリンク式
使用弾薬 7・62mmNATO弾
解説:ナチスドイツ時代に発射速度の速さから、ヒトラーの電動ノコギリというあだ名を与えられたMG42という傑作機関銃が生み出されたが、ドイツの敗北と共に武装は全て連合国軍に接収。しかし第二次世界大戦終了後、ドイツが2つに分割され、西ドイツの再武装が問題化。その際に再軍備用にラインメタル社が再設計し、連合国仕様の7・62mmNATO弾用に生産したのがMG1。一旦接収されていたが西ドイツに返還され、弾薬を7・92mm×57弾、通称8mmマウザー弾仕様を連合国仕様の7・62mmNATO弾に調整、再設計したのがMG2である。しかし当時の冷戦状態ではアメリカと共に戦うのが基本戦略となり、M60機関銃と共通の分離式ベルトリンクシステムが同じく使えるようにして欲しいという要望を受け、共通の分離式ベルトリンクシステムを組み込んだのがMG3である。そのため、同盟国側からの補給がしやすくなっている。なお、基本設計はMG42から変わらっておらず、設計技術の高さがうかがい知れるものである】
「なんつー重武装・・・これで歩兵のライフル弾を防ぐんだろ?ミサイル積んで重武装対戦車歩兵仕様とかありだろうなあ。ある意味怖いが」
歩兵のライフル弾を無視して進撃できる装甲に、突撃火力の高さ。その事実に呆れながらも、受け取ったMG3の初弾を装填すると教官から連絡が入ってきた
「その廃墟に戦車と随伴歩兵による部隊が潜んでいるという情報が入った。敵戦車は2両、歩兵は20名程度と推定。強行偵察部隊と思われる。だが、ジャベリンATGMであれば十分すぎるほどの火力だ。なお、一般歩兵も対T-hearts対策に特殊武装を所持している危険性もある」
その言葉に脅威を感じながらも出撃することにした。
「それじゃあ・・・試してみるか・・・。ブースト!」
音声認識の結果、背中の可変スラスターが起動し、背中を激しく押される感じで加速していった。
ローラーブレードを穿いたまま、銃を両手に持って加速していったという感じだろうか。確かフランスのパリ市内では警察が観光客の手荷物を狙うひったくり対策にローラーブレードとハンドガンを装備したローラーブレードコップという専門部署を作っているそうだが、それの究極の進化系だろうか。
ローラーブレードを履いてロケットエンジンで加速し、移動する化け物。それがこの感触かと思えば、なんとか制御しようとバランスを取っていった。
しばらく市街を探し回ると、こちらへの銃撃が行われてきた。歩兵によるライフルでの一斉射撃だ。
「喰らえ!」
こちらの装甲で跳ね返る敵歩兵の銃撃、そのかわりのお礼と言う風に返すのは軽機関銃での連続した発砲音。
凄まじい轟音が銃口から鳴り響き、敵に向かっての射撃が行われていく。その度に歩兵は夥しい出血と共に倒れ、戦闘不能になっていく。
ppp!
突然、ロックオンアラートが鳴り響いた。見てみると目の前にいる歩兵がRPG-7を担いで、こちらを狙っていた。
「対抗策って、コイツか!」
敵歩兵が構えていたRPG-7の引き金を引く。凄まじいバックブラストが歩兵の後ろに放たれ、周囲に砂煙を立ち上らせていた。発射された弾頭は飛翔翼を展開し、ロケットブースターでまっすぐこちらへと迫ってきた。
「まだだ!」
RPG7は誘導弾ではない。そこでT-heartsの特性の機動性を活かし、弾頭が迫るところで回転を加えながら真横へとスラスターを吹かし、一気に回避していった。そばを通り過ぎていく弾頭。命中しなかったそれははるか後方の壁にぶつかり爆発していった。次の発射のために弾頭を装填しようとする歩兵の姿を見れば機関銃の弾を激しく浴びせていった。周囲の歩兵を殲滅できた頃にはMG3の弾薬は尽きており、重しになると判断すれば投げ捨て、ヒートカタナを抜刀した。
見た目には鎧武者に見えるだろうか。だが、それを気にすることなく、一旦、ブーストを切って歩いて敵を探せば、戦車の姿が見えていた。
既に旧型ながら、発展途上国の間ではまだまだ主力足りうるT-55|主力戦車(MBT)が2両とベトナム戦争当時に活躍したM113APC|装甲兵員輸送車(APC)が存在した。
流石に戦車主砲は旧型とは言えヤバイ。破片は防御できるかもしれないが、直撃弾を喰らえば即死確定だ。
APCにはM2ブローニング重機関銃が車載武装として存在する。12.7mm弾はさすがに防ぎきれるものじゃない。速やかに潰さねばならなかった
「ジャベリン!ロック!発射!!」
支援AIの元、視線を合わせ、ロックオン出来た2両のT-55に向かって発射される背部バックパックのジャベリンATGM。それが戦車へと突き刺さり、爆薬の爆発により、周囲に破片を飛び散らせ、鉄屑へと変わっていった。ミサイルがなくなれば後はカタナだけとある意味割り切り、M113の上部へブーストによるジャンプをした。
「もらったぞ!」
M113は戦場のタクシー、兵員を防弾装甲で守りつつ、素早く運んで素早く展開させる物。そのため、ストライカーやブラッドレーなどの後発に出たものでなければ自衛用武装はやはりM2ブローニング重機関銃、それを車体上部から身を乗り出して撃ちまくるという単純なものだった。それさえカタナで破壊することが出来れば後は内部を切り裂くのみ、機銃を撃とうとしていた車長をカタナで突き刺せば、カタナの出力を上げてM113の上部装甲を無理やり切り取り、中の操縦手に向かってシールド内蔵のP90を遠慮なく撃ち込んで殲滅させていった。
どうやら歩兵は先ほど展開していたメンバーだけのようだ。チュートリアルだからか、本来、戦車の護衛役をすべき歩兵を前面に出して警戒していたという設定だろうか。
「ほう、やるではないか。普通、素質のないやつがT-heartsを使えば戦車砲あたりで吹き飛ばされるのだが。合格だ。さて、今日のところはここで終了と行こうか。詰め込みすぎてもまずいのでな」
教官のその言葉を聞くと、武装が全て解除され、服も軍服でもなく一旦、私服へと戻されていく。
「さすがに疲れただろう。一旦ログアウトするがいい。時間はこれからたっぷりあるんだ。」
『注意:あまりの長時間のログインは健康に影響のある場合がありますので、ゲームは適度なところでセーブし、休憩を取ることをお勧めします』
なんだか、子供の頃に親に言われたことを思い出す警告文だが、あまり長時間するのも問題があるのだろう。半ば強制的にデータのセーブが行われ、そしてログアウトしていく。意識は仮想世界から現実へ、戦場から平和な日常へと戻っていくのであった。
というわけで出してみました。パワードスーツネタ。
鋼鉄の棺桶ということでボトムズ?なんて思う人はいるでしょうが、パワーアシストユニットということで、介護用などを目的に開発を進めている分野だったりします。いわゆるお姫様だっこ、これが介護の現場で以外と必要となるのですが、子供相手じゃないし、恋人との結婚式のワンシーンでもなく、極端な話、壊れやすい荷物を扱うがごとく、丁寧に運ぶために介護現場では必要となる装備だったりします。
また、作品中の解説では3月11日の東日本大震災をテーマにしていますが、ある意味、今こそ欲しい装備だったりします。
対放射能の鉛装甲、その状態で完全な密閉呼吸が可能な装備、なおかつ瓦礫除去を可能とする汎用性とパワーアシスト。日本が今必要とする物の1つではないかと思います。
しかし、日本のシステムもですが、基本的に想定は無視、または軽く考えるが、経験したことは非常に重視するという考えが日本の根本と言えます。
自衛隊の装備は基本的に防衛計画重視、対外目標への攻撃は可能な限りできないようにする。
消防も、警察も、前例が1つできて初めて対処策を学ぶという方法が多いです。
その実例が地下鉄サリン事件及び硫化水素自殺事件です。
今ではインターネットを少し潜れば硫化水素の作り方もわかる時代です。
けど、警察はそんなもの使われたら対処できない。だから今のパトカーには対ガス用防護服が常備されていたりします。
カナリアを持って、自衛隊の迷彩柄の防護服を着て強制捜査した時代の経験がある意味生かされているわけですね