クリスマス作戦 中編
「いくよ!」
クレアがそう叫ぶと、改造型テクニカルが周囲の銃火を無視するかのように一気に加速する。通常配備されるテクニカルをベースにしながらも足回りとエンジンを強化しまくったらしく、荒野であろうと全くと言っていほど、気にしないで駆け抜けていく状態だった。
「いざ・・・参る!」
マサムネはというと、テクニカルに随伴するかのように、同じく推進力系統を強化しまくった結果、両肩に可動式スラスターも追加されていることもあり、T-heartsの背部強化型スラスターを吹かし、荒れた地形をホバーでも使うかのように進む姿は今でも伝説になっている人気ロボットアニメの黒いホバー型な奴か、T-heartsのイメージ上のベースとなったとも言われている最低野郎を意味する乗り手達の戦い、はたまた地球外生物に侵略された世界の抵抗者のような姿を彷彿とさせていた。
「前方に集団がおるのう。どれ、一撃加えてみるかのう?」
アリサカはスコープなしの三十八式歩兵銃を構えて激しい動きを見せるテクニカルの後部座席から一発、銃弾を放てば、その銃弾は前方に展開している歩兵をスコープ無しで痛打せしめるものとなる。
「じゃあ、遠慮無く始めるか」
ブローニングM2重機関銃ではなく、取り外しての機動戦闘にも使えるようにか、クレアのテクニカルにはM60汎用機関銃が装備されていた。走行と発砲による振動をストックごしに感じながら7.62mm弾を軽快に放っていく。
「させん!」
狙った相手へ着弾する、そんな瞬間、相手の左腕装備のバックラーが機構を作動させ、大型化。銃弾を全て弾いていた。
「ブリタニア・ギリシア所属、シー・リュウ。この盾はいかなる攻撃も防ぎきる!」
ならばと他のメンバーへと銃口を向けるも、いきなり、M60に装備されていたダットサイトが光を失った。
「喰らうがいい。鳳凰幻魔陣!」
背中に鳳凰の羽のようなユニットを装備したT-heartsから強力なEMP攻撃を受けたらしく、いきなりトラックが停まった。
「最悪!対EMPコーティングなんてしてないからエンジン、エンストよ!」
クレアは悲鳴じみた声を上げてカスタムガバメントを片手に車を捨てることにしたらしく、操縦席から逃げ出すと車体を盾に銃撃を開始。こちらも荷台なんぞはいい的と言わんばかりのお立ち台なのでM60と愛用の89式担いで降り、M60をクレアの方に渡した。
「甘いぜ。喰らえ天馬流星弾!」
軽装甲のT-hearts使いは両手にだけカスタムされた機関銃を装備しており、パンチを繰り出す仕草をするたびに音速の銃弾が放たれた。発射音が凄まじく、まるでチェーンソーの如き激しい音である。
「アニメマニアか。名作アニメだからファンなのはいいけどさ。それが邪魔するって事はこちらが悪役?」
皮肉とともに放つ軽快な89式の音、クレアに渡したM60機関銃の重厚な音が周囲に響き、閃光とともに薬莢が飛び散る。その銃弾を防ぐ盾と反撃に放たれる腕部機関銃。せっかくの改良型テクニカルにめり込む銃弾、着弾音が響き、テクニカルが徐々にスクラップへと変わりつつあった。
「アニメ・・・いいのう。若いころはよう見ておった。そういうのになりきるのは遊びじゃ。遊び心あってこそ、ゲームじゃな。じゃが、邪魔するならば撃ちぬくかのう」
弾を一発だけ、別の特殊弾へと装填したアリサカは再び38式歩兵銃を静かに構えると静かに引き金を引き絞る。
放たれた銃弾はEMPを展開している鳳凰の翼にあたったらしく、ジャミングが切れてくれた。
「では、いざ、参る!」
マサムネはその一言を告げると背中の強化型スラスター、両肩に装備した可変式スラスター、その両方を活かし、明らかに見切ったと言わんばかりの機動で敵に向かって突撃していった。
「防いで見せる!」
盾を自慢していた者へは一気に加速して盾にショルダータックルを食らわせると、スラスターの機動を変え、両手で構えたカタナを腹部装甲ごと突き刺し、そのシー・リュウの身体をそのまま盾として機関銃をぶっ放していた奴に肉薄していった。
「斬!」
シー・リュウの身体を使っての即席の盾を作り、天馬の機関銃を受け止めると、その自慢の腕を二本目のカタナを斬りつけ、腕を使えなくさせていた。
天馬の腕からは夥しい出血が起こり、使い物にならなくなったシー・リュウから抜き取れば全身血まみれの甲冑をつけた鬼神マサムネが姿を見せていた。
「投降しろ。今なら命までは取らん」
ゆらりと動くその姿は機械仕掛けの人斬りそのもの。かつての武士とはこういうものかと思わせるような状態だった。無防備な姿に見えるが、カスタムされ尽くしたマサムネのためだけのT-heartsの性能は不意の銃撃程度では回避されるだけ。やるなら超長距離からの狙撃だろうが、それはスコープ無しの肉眼狙撃という神業に等しい技術を持つアリサカがカバー、移動はクレアの改造テクニカル。それを移動陣地代わりに使うというバランスの取れている感じだった。
「まだだ!まだ負けられん!」
鳳凰の方はまだ負けられないという感じでいきなり手榴弾を取り出した。
手榴弾の種類はフラッシュバン。一般的にスタングレネードと称される爆音と閃光を起こす物だった。
鳳凰が投擲しようとしたところをアリサカが関節を撃ちぬいて手榴弾は鳳凰の足元へと落ちた。
すさまじい閃光と爆音で耳がおかしくなりそうだが、マサムネはそれを無視するかのように一刀両断してみせた。いわゆる兜割りという奥義である。
殲滅したと思ったところ、不意にシュルシュルと独特の風切り音がしてきた。
「大型の榴弾砲じゃと!?おのれぃ!先遣部隊じゃったか!着弾点に入らぬように気をつけい!」
着弾と共に飛び散る破片と土、回避しつつ、次々と降りしきる砲弾の着弾点を避けていく。
回避方法は論理的には簡単だ。支援砲撃は一度行った場所に必ず当たることはない。寧ろ榴弾砲などの間接砲撃は一発ごとに修正しないかぎり、着弾点はバラけるものだ。
そして、着弾点は砲門の数が少ないほど、同じ場所に落ちることはない。故に、ラッキーヒットを考えない限り、一度着弾したクレーターへ身を潜ませればいい。
だが、当然、不運もあるわけで・・・・。
「ああ!せっかくの改造テクニカルがー!!」
クレアが一生懸命手がけたテクニカルが榴弾砲の直撃弾を受け、見事に吹き飛ばされてスクラップへとなっていた。
被害はテクニカル一台で済んだが、砲撃は止んだ。撃ち尽くしたか、それとも支援メンバーが目標が死に戻りしたからか、砲撃はとにかく終わった。
「最悪・・・。いくらベースが標準装備のテクニカルだからって改造するのに結構金かかっているのよー。修理判定で報酬ゼロかもー」
「いや、そうとは言えないぜ」
クレアの嘆きに指さして見せた方向には頑丈なハンヴィーが鎮座していた。どうやら敵が使用していたものらしい。
「それとおみやげだ。結構、お値段付きそうだな」
銃弾を弾くバックラー。T-hearts用の大口径アームガン。大破したとはいえ、レアなT-hearts用高出力ジャミング装置という市販品ではありえないハンドメイドアイテムが落ちていた。もちろん、そいつはハンヴィーへと収納してやった。
と、そのハンヴィーには1つの黄金に輝く箱が積まれていた。どうやら、これを護送している最中のようだった・・・・。
「クレア、ハンヴィーは操縦できるか?それと自爆装置とかないか確かめて欲しい」
「OK、おじいちゃんたちは周囲警戒して。自爆装置はないね。というか、このハンヴィーすごいわ。かなりの部分いじっているみたいで、操縦席と助手席からターレットガンシステム操作できるみたい。今はブローニング積んでいるみたいだけど、ヴァルカンとかでも対応できるみたい。装甲はライフル弾では撃ちぬけないし、窓ガラスも数発は防げる贅沢品。さすがはブリタニアのトップランカーの品物ね」
「ふむう。まあ、よいじゃろ。周囲の敵は見当たらん。ここは一旦補給に戻ろうぞ。お宝を奪われるのはシャクじゃからのう」
戦闘自体はまだ続けられるが、残弾は補充しておいた方がいいし、何よりもせっかく奪ったレアアイテムを別の勢力に奪われるのは痛い。
そのためにはドロップアイテムを拠点に持って戻るべきとなる。
空となったマガジンを捨てて新しいマガジンをライフルに装填して乗り込めば助手席にはヘリの操縦桿のようなシステムが付属していた。
「さっき言ったターレットガンシステムのコントローラよ。これを使うと車内からでも屋根の上の銃座を動かせるの。一部のゲーマーはゲーム機用のコントローラーをそのまま持ち込んでいるみたいだけど。そういう改造はまだされてないわね」
全員が乗り込み、マサムネが先行して出発すれば動き出すハンヴィー。試しにターレットガンを操作するとガンカメラで銃口の方を映し出し、銃口の動きに合わせて画面が動いていった。
「コッチは凄いな。デザインはギリシャ・ブリタニアの黄金聖騎士モデルでサジタリウスタイプの1つだな。基本は汎用装甲を使っているからレプリカモデルだが、コイツに装備されている特殊武装は凄いぞ。40ミリ試製高速電磁投射砲、早い話がレールガンだ。もっとも人工筋肉や配電システムがお釈迦になった奴みたいだがな。多分、テスターが暴発か感電かで死に戻りした所を俺たちが襲ったのだろう」
箱に収められていた物を鑑定しているマサムネの評価はT-heartsに関しては知識が高い物らしく、デザインは背中に羽根を生やした、日本のアニメで有名な射手座をモチーフとした黄金の甲冑だった。
そして右の背中の部分に銃身折りたたみ式の電磁投射砲が装備されていた。
「ブリタニアはアニメファンが結構多いらしいからな。噂では目指せ18メートル級機動兵器とか、いやいや素直に8メートル級の警察用機動兵器とか、会話もできる高性能多脚戦車開発とか、色々やっているそうだ。まあ、普通のレギオンでも色んな装備開発しているからな」
少し遠い目しながらマサムネがため息混じりに答えた。
「あれ?レイニーじゃないか?カスタムパーツ取りのためにイベント参加かな?」
そこにいたのは徹甲弾をプレゼントしてくれたレイニーだった。
「アルフォード・・・だっけ?久しぶりー。いやー、他の国の技術が手に入るっって言うからさ。参加しないとガンスミスとしては失格でしょう?他の生産系で戦える連中も来ているよ。けど、今回の目玉はやっぱりマニアック大国ブリタニアでしょうね。結構なお宝、持ってきているみたい」
そういうとゲットしたアイテムリストを見せてくれた。
「今回の私達のチームがゲットしたのは調査兵団の立体機動装置のマジな再現物、どう考えても設計思想がイカれている30ミリ対物火砲に大型銃剣を装備した通称ガンランス、それに戦術機が使うデザインの推進機構システムの概略を小型化したT-hearts用追加スラスターね。ただ、この後、弾薬も補充しないとマズいみたいだし、どうしようか悩んでいる」
悩んでいる感じのレイニーに思わず理由を聞いてみた。
「そろそろ、しっと団とラブコメバタリオンの本格的な決闘が始まりそうなの。今回のイベントの肝はそれだから下手をすると巻き込まれそう。というか、マジでやる時はやるから。前回の夏休みのイベントは航空支援までしてぶち壊してきたし。見返りは大きいけど、リスクが最悪なのがこれからなの。戦闘専属組は補給することで何とか出来そうだけど、生産をかじっている後方組は駄目、多分蹂躙される」
レイニーの言葉にマサムネたちも同意してきた。
「うむ、あの決闘に立ち入れるのは辞めたの方がいい」
「そうじゃのう。恋路を邪魔する物は馬に蹴られろというが、馬どころか戦車が普通に出て来るからのう」
「せっかくのハンヴィーだし、失いたくないのは事実よ。あのターレットガンシステムだけでも一財産だし」
全員の反対を受けて俺は出撃をしないで時が過ぎるのを待った。その間にも榴弾砲の砲撃音、爆撃機からの爆弾投下、そしてクリスマスプレゼント投下は繰り返されており、遠くの主戦場から遠雷の如く鳴り響いていた。




