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運命の歯車 それが揃うとき

先日のミッション、初めてながら緊張できる戦いだったが、爆弾使い、擲弾兵の華麗な爆薬さばきを見て驚かされたこともあり、応用技術ということでアンロックされていないクラスを選択できるようにするため、応用技術訓練を受けるために訓練所にやってきた。


「よく来たな!基礎的な訓練を済ませて実戦も経験したようだが、どうやら応用技能が欲しいようだな。これからは応用技術だ。上級者なら出来た方がいいことだからな。楽しんでこい」


訓練所に入り、訓練メニューを選んでみると、相変わらずの教官がいつもどおりのいかつい顔で笑顔を見せていた。


「というわけで、まずはスキルに関して説明しておく。スキルとは様々な行動の判定で使う技能だ。当然、上級であれば成功しやすい。基本的な部分は使い方さえ分かれば、どんな武器でも使いこなせるが、これから取り扱う武器は少々特殊でな。というわけで、これを持ってもらう」


そう言われ、手渡されたのは少し小ぶりなショルダーバック状の物とリモコンだった。


「最初の課題は爆弾技能、いわゆる戦闘工兵技能だな。こいつは梱包爆薬、いわゆるプラスチック爆弾とかC4とか言われる物だな。映画などでも見かけるだろうが、仕掛け爆弾としては基本的なやつだ。粘土のように形を変えることができる上、どこにも設置できる。爆弾としては基本なやつだな。しかも叩いても焼いても爆発せず、電気信管を使った正規の着火方法をしない限り、安全に取り扱える。実にいいものだ。コイツはトラップ設置、車両破壊、その気になれば壁やドアを破壊することもできる。いわゆる時限爆弾とかに仕立てたりするのであれば戦闘工兵技能を鍛えて自作しなければならないが、使うだけなら、すぐにでも使える、まずは指定する場所に行ってもらおうか?場所はそこの車だ。その車に仕掛けてきてもらおう。今回、発火システムは無線リモコン式にしてあるが、任務によっては有線での起爆となるぞ」


フィールドが歪んで変わると、どこかの森林にある敵の前線基地らしい場所だった。そこにはジープと共に警戒中の敵兵がウロウロしていた。


「なるほど・・・・」


敵部隊が警戒している所を見つからないようにジープに爆弾を仕掛けて来いというミッションのようだ。


肩から梱包爆弾をかけて、匍匐前進。ずりずりと服が汚れるのを感じながら少しづつ、ジープの後方の荷台にカバンを入れようとしたが、一旦止まることにした。敵の警戒をしないといけない。


まずはジープの下を覗き込み敵兵の足の位置を確認してみた。かかとが見えている。

ここで荷台に放り込むとその音に反応して見つかるかも知れない。ならばということでジープの真下、そこに梱包爆薬を滑り込ませ、ゆっくりとした動きで敵の警戒を避けつつ、見つからないだろう大木の後ろに隠れた。


「じゃあ、やってみるか」

そして取り出したリモコンの引き金を引いてみせた。ジープの真下の爆薬が激しく爆発し、ジープはその勢いで砕け散り、近くにいた兵士もろとも吹き飛ばされた。


「よくやった。爆弾は無理に設置する必要はない。適切な場所に置けばいい場合もある。ではとりあえず基本的な戦闘工兵訓練は終了だ」


『基本的に手に入るのはC4となります。ただ、正規軍以外のルートだとダイナマイト、黒色火薬などの物も手に入ります。その場合、取り扱い方法はその都度、提示されます。また、値段が安い、入手ルートの隠匿を目的にして入手する場合もダイナマイトがメインとなります。上級クラスになると科学物質から混ぜ合わせることでC4を作り出すことすらできるようになります』


そんな説明を受けると軍曹が再び問いかけてきた。


「さて、一応これで戦闘工兵はアンロックされたが、続いて衛生兵にも挑んでみるか?」


同意するかというアイコンが出たので少し迷ってNoを選んだ。まだまだ時間はあるんだ。そう思うことにした。


「そうか、それは残念だ。だが、訓練所は貴様を待っているぞ」

相変わらず暑苦しいほどの軍曹様だが、頼りになる先生だ。




その頃、アフリカ戦域某所


そこにはむさくるしいヨレヨレの戦闘服に身を包んだ歴戦の勇士たちが集っていた。

「諸君、今年も忌まわしきあの季節がやって来た」

「うむ、全てのリア充どもが蠢き、そのオウラにより非モテリア充の嫉妬の炎は赤く燃え上がっている。今年は核の使用すら提案してきた強者もいる」

「さすがに核はいかん。条約禁止兵器を使えば・・・・・全ての敵に睨まれるぞ」

「大丈夫だ。策はある。既に運営に対して特殊作戦を提案しておいた。運営サイドからの返答次第では血のクリスマスとなるであろう」


そこに集う者たちは皆一様にその言葉に喜びを見出し、中には軽機関銃やらハンドガンやらアサルトライフルを空に向けて派手に撃ちまくり、その銃声を祝砲とした。


「さあ、諸君。武器を手に取れ!戦を始めるぞ」





同じ頃中央アジア方面


「弾幕を絶やすな!これがあれば世界に革命をもたらすことができるのだ!祖国を取り戻し!民族の誇りを勝ち取ろう!」

一台の装甲を強化されたトラックが逃げ回っていた。随伴するのはT‐hearts数十機と乗り捨てる覚悟をしているような鹵獲旧型戦車。戦車砲は追撃部隊を仕留めるため、激しい轟音をあげて後方の敵に砲弾を放つ。その度に砲弾は敵に回避されて地面をえぐり、大きな爆発痕を残していた。


「とにかく止めるぞ。極秘裡にしなければならないとは言え、戦略物資を奪われたんだ!近衛の名誉と誇りを守り抜け!」

トラックを追撃する部隊は同じくT-hearts装備の隊員が30名ほどと機動力重視のミサイル搭載型装甲車。どれもがブリタニアのエンブレムをつけており、T‐heartsに至っては式典用かと見まごうばかりの銀色の輝きを放つ騎士甲冑。ブリタニアを守護する近衛部隊専用カスタム機だった。それがスラスターを更かして迫って来る。ある意味恐怖だった。


「隊長!敵戦車が!突っ込んできます!」

戦車兵は足の遅さを逆に使い、捨て駒となることでトラックの逃走を助けた。誰もがそう思った


「装甲車!ミサイルだ!」

突っ込んでくる戦車に複数発のミサイルが放たれる。真っ直ぐにミサイルが戦車に突き刺さると戦車は玩具のように吹き飛び、辺りに破片を撒き散らせた。


それを合図としたかのように隊長格の腹部に大きな風穴が空いた。文字通り、風穴。内蔵も何も持って行かれた感じで空洞となっていた。近衛用のカスタム機、そんな頑丈なモノを撃ち抜けるモノ。それは戦車砲以外には1つしかなかった。


「目標の狙撃に成功。第二射準備よし。発射する」

トラックのコンテナの上にいる男が片膝をついて狙いをつけていた。狙撃兵、しかし、手にしている銃が異様だった。バランスなんぞ考えないで作られた超長距離狙撃用対戦車ライフル。そのあまりにも長すぎる銃身、30ミリという異常な大口径、現実世界ではまずありえない設計思想。ゲームの中でも異様なそれはとてつもない反動と爆音とを引き換えに主力戦車以外のいかなるものも破壊することが可能というものだった。


「試作4式30ミリ携帯狙撃砲ハルコンネ改、ぶっ壊す覚悟で持ち出したが、こいつは楽しいな」

揺れるコンテナの上部、そこにいた男が構えていた狙撃砲。それが火を吹くたびに歩兵が、装甲車が的確に撃ち抜かれていた。その代わりに襲ってくる肩への反動。T‐heartsを装備していなければ肩は複雑骨折していたことだろう。狙撃仕様の高感度高倍率スコープシステムにより見えない敵がデータとして表れ、そして撃ち抜かれる。装甲車の影に隠れても装甲車ごと撃ち抜かれる。必然と旧型だが装甲車より頑丈な戦車の残骸にブリタニアの生き残りは身を潜めることしかできなかった。


「なんなんだよ・・・こりゃあ。精鋭たるブリタニア近衛部隊からの選抜メンバーが壊滅寸前かよ・・・。この様子じゃあ、もう、物資は手が届かない場所に行っちまったな・・・隊長のデスペナもまだ解除されてないし、残存部隊をまとめるぞ。逃げる。悪いがこれ以上やりあえない」

生き残りも含め、可能な限り応急処置をしたブリタニア軍はトラックの進路方向とは逆に向かって退却を開始。これにより、トリガークエストは発動したのだった。





11月30日ジェディフ社定例会議にて


「えー、まずサーバーメンテナンスは予定通り、12月1日00:00時を開始。終了予定時刻は12月1日05:00時。ただ、今回、問題があります。まず一点、アフリカ戦線を中心にまとまっているリア充撲滅運動家PK集団、通称【しっと団】が行動を開始したいと具申。いわゆる合法PK祭りやらせろというやつですね。まあ、彼らはバレンタインだの、クリスマスだの、夏休みだのに毎回戦闘イベントを組み込むのが好きな集団ですから。対処としては作戦容認。問題は次の案件です。トリガークエスト・Nシリーズをクリアした集団が確認されました。またその集団から独立宣言要請がありました。運営側としては既に前例があるので独立宣言の承認は戦闘によって決めると回答しました。そこでサーバーメンテナンス時間を24時間延長、その間に手続きをとることとします。異議はないでしょうか?」


運営担当の女性が会議室のいる全員に確認を求めると沈黙をもって同意を示された


「では、クリスマス作戦の発動が承認されました。今回の運営サイドはNウェポンの情報でどこまで対処できるかというデータ取りを目的になります。それではサーバーメンテナンス終了を12月2日05:00時と告知します。早速、公式ホームページにメンテナンスの情報を上げてきますね」



運営担当の女性が出て行くと男たちは肩を落とした。

「この間のクラッキングが原因での事のようだ。まあ、隠し武装にはアレが含まれているのは仕方ない。リアリティを出すためにはな」

「とはいえ、個人的にはアレを持ち出されるのはバランスブレイカーではないかと思うのだが」

「心配いりませんよ。そのためのT-heartsです。対NBC対応能力のサンプルデータを持ってきてくれるだけで有難いですよ。実物の方はほぼ完成、現在、水密環境下での行動能力をチェック。追加酸素ボンベを装備してどれだけ動けるのかを海保、海自共同でテストしていますよ」


そう言い合う男たちは次のメンテナンスの後に向けて行われる混乱がどの程度になるのかを予想しながらも、それが本来の仕事であると思い出し、部屋を後にしていった。

はい、えーっとまたまた執筆速度が遅いとか言われますが、生存しています。

さて、今回の小話は対戦車狙撃銃のことです。


戦車は陸戦の王者である。これは自ら移動する装甲と大砲を持つ戦闘兵器ということだからです。そのため、第一次世界大戦後、各国はこぞって対戦車兵器の開発を急ぎました。中でも力を入れたのはライフルの大型化でした。


歩兵の火力を急激に上げることにより、戦車を運用する要員を倒すことで戦車を無力化する。単純明快でどこの国でも思いつきやすいアイディアでしたが1つの問題が生まれました。


それは結局使うのが人間だということです。


戦車の装甲を打ち抜くにはより大口径にして反動を上げてでも初速を稼がねばならない。しかし反動を上げると今度は使う人間にダメージがくる。


結果として対戦車ライフルは長距離狙撃銃としては成功しましたが、対戦車兵器としては欠陥品となったのです。反動で肩を壊す。そういう事例がでましたから。


結果として反動を機械的に抑えつつも最大の威力を発揮できる、歩兵が運用可能なライフルという条件では13ミリ前後まででした。


戦車相手の兵器としては欠陥でも、それぐらいの威力(掠めただけで腕や頭が吹き飛ぶ威力)は対装甲車などで活躍出来る銃として現在はアンチマテリアルライフルの名称で聞いたことあるでしょう。それの原型となったのでした。

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