プロローグ
VRMMORPG、それは究極の体感型ゲームシステムとなった。
従来型のコンシュマー機、パソコンなどでのMMORPG、そういった物もこれには絶対に勝てない。
なぜなら自分がゲームの中に反映されるからだ。自分の行動を自分で経験していく。プレイヤー自身のテクニックも関わるが、
有名なキラーコンテンツとなったのはムラクモの奇跡、これの登場により、多くのゲームメーカーがVRシステムへと対応するソフトを生み出していった。
その中の一つに
【レギオン・フラッグ】軍旗の下に集いし者たち
が存在する。
分類はいわゆるファーストパーソンシューティング、一人称型射撃ゲームである。略称はFPSと言ってしまえばわかる人はわかるだろうか?
銃を持って戦場を駆け巡り、敵を見つければ狙い撃ち、時にはグレネードなどのアイテムを使って相手を吹き飛ばすデスマッチ戦、一定時間拠点を護るフラッグ戦など様々なルールが存在するそれらの究極系といえるだろう。
俺、小松 匠も、そんな究極にリアルなFPSMMOに心惹かれた一人である。
成績は中の下、平凡、うだつの上がらない、只の大学生だが、VRMMO以外では結構FPSをやり込んできた。
だから、この【レギオン・フラッグ】軍旗の下に集いし者たちでも、そこそこ行ける。というかVRシステムの中限定とは言え、実銃を使うことが出来る。それが俺の心を鷲掴みしていた。
俺は早速、VRシステムのためのヘッドギアをつけ、ベッドに横たわり、VRシステムを立ち上げた。
『VRシステム初期起動確認しました。現在、当VRシステムはパーソナルデータの作成、インストールを開始しています。絶対に電源を切らないでください』
VRシステムは五感を全て経験出来るのが売りだ。音、感触、重さ、味覚、そういった感じられる物に関しては現実と同じものとなる。ただし、痛覚に関してだけはショック死、及び不慮の事故を想定して最小限に抑えられている。俺の脳からVRギアを通じて、体格などの情報がシステムデータとして保存されていく。
『パーソナルデータの作成、インストールの終了をします。続いてVRシステム・バージョン2.3をインストールします。データ破損のおそれがありますので、電源を切らないでください』
VRシステム自体のアップデートが始まった。当初、VRシステムは日本やアメリカをメインターゲットにしていたが、中東や中国などでも人気が出て、今では各国語に翻訳されているソフトもあるそうだ。
当然のようにクラッキングやチート行為、海賊版ソフトなどが行われたようだ。その対策のために現行のバージョン2以降ではVRシステムをネットにつなげている状態で下手に内部データをいじるとメーカー特製のカウンターウィルスでVRシステムのデータを焼き、ICチップなどの基盤も使えなくさせている。海賊版に至っては認識すら出来ないようにして、仮に認識できてもセリフの全てが割り厨タヒってこいやwwwなどという、えげつない2ちゃん用語での罵詈雑言の嵐を食らわせるメーカーもあるそうだ。
まあ、通常のプレイヤーには関係ない話ではある。
バージョン2・3では、それ以外にも対応している国の言語を通訳することができるそうだ。
つまり英語圏と日本語で話ができるということだ。便利なものだと思う。
パソコンでの海外対応型の大規模MMORPGでは、やはり言葉の壁が大きく立ちはだかっていた。
英語でのタイピングをスラスラとこなす相手にこちらは日本語を使う。
そして中には漢字だけの連中もいた。
いわゆる中華組などと呼ばれる連中だ。PK、プレイヤーキラー行為が激しいことから穏健派プレイヤーには問題児、過激派プレイヤーにとっては賞金首の連中である。
『アップデートデータ、バージョン2・3のインストールを完了しました。ようこそ、ユーザールームへ』
完全に起動を果たしたVRシステムは最高だ。ゲーム以外でもダウンロードコンテンツなどでアイドルのライブコンサート、高画質の映画などを正にプライベートシアターや会場で見るような特権を与えてくれる。普通のCDですらユーザールームをカスタマイズして設定すればリクライニングシートで快適な空間の中、流れるクラシックの静かな調べを楽しむことができる。
ちなみにユーザーエリアもVRシステムの売りで高級ホテルや長閑な大草原の小さな家などにいるような臨場感を味わうことが出来る。ちなみに今はベッドが1つに机が1つ、少し殺風景な感じとなっている。
そんな空間にいるように感じている俺は左腕についているように見えるタッチパネルに触れた。
設定をゲームにし、レギオンフラッグの起動を命じた。
『【レギオン・フラッグ】軍旗の下に集いし者たち、ゲームデータインストールを開始します』
目の前のバイザーに浮かぶ文字に合わせてバーがどんどんと右へと伸びていき、データのインストール状態を伝えてくる。
『【レギオン・フラッグ】軍旗の下に集いし者たちのセーブデータが存在しません。セーブデータの製作をしますか?Y/N』
当然、Y、つまりYesを押して製作させていった。
心は逸る。未知なる世界、リアリティ溢れる銃撃戦、どこまでやれるのかわからないが、やってみたい。
ゲーマーなら誰もがそう思うだろう。
するとデータの制作が終わり、オープニングが流れ始めた。
勇壮な軍の行進曲と思わしき曲に時折聞こえてくるのは戦車の駆動音と砲撃、そして目の前で駆け抜けていく戦友たちらしいNPCの兵士、それを迎え撃つ機銃、目を上に向ければ
【レギオン・フラッグ】軍旗の下に集いし者たち
そう記されたタイトルがあった。
『ゲーム開始・ゲーム再開・ゲーム終了』
目の前に浮かぶタイトルの下を見れば、そう記されたプレートの掲げられた3つのドアのある殺風景な感じのする建物がある。その扉のそばには完全武装の兵士が警備についていた
当然、選ぶのは『ゲーム開始』だ。
俺は『ゲーム開始』の扉を開き、中へと入っていった。さあ、どんな世界が待っているのか。
今から期待で胸が膨らんでいた・・・・。
というわけで初めて書いてみます、この【レギオン・フラッグ】軍旗に集いし者たち、架空とはいえ様々な戦場を駆け巡ることになる小松くんの運命は如何に?
ちなみにゲームと言ってもリアル系FPSなので当たれば死亡判定がでるガチな戦場。
どうぞ、お楽しみください