“虚構の楽園”
“大復活の日”は夢物語だった。
事実を知った世間は騒いだが、既に時遅く。
地上は悪魔と化した死者達の楽園と化した。
混乱した世界を救うべく魔術師達は大陸の一部を浮上させた。
結果として、生き残りの内の半分近くは空中に浮かぶ大陸で暮らすことになる。
魔術師達が死に物狂いで浮かせ続ける大陸で。
“大復活の日”の前の悪魔堕ちと違い、
後から現れた悪魔堕ち達は日に日に進化していった。
黒い翼を普段は消せるようになり、牙も爪も隠せるようになった。
一番の変化は思考レベルが人間と同じ程度になったことだ。
生き残った人々はそれらの悪魔堕ちと戦う日々を強いられることとなった。
そんな中、黒い翼とは違う、白い翼を出現させる人間も何人か見つかり始める。
明らかな異能を持ち、悪魔堕ちと戦う彼らを人々は“死を守る者”、“墓守”と呼ぶようになった。
◇◆◇
“大復活の日”から5年の月日が経っていた。
「ひっ!? 悪魔堕ちっ!! 誰か、誰か助けてくれっ!!」
町外れの森の中で一人の男が助けを求めていた。
彼は尻を地面につけたまま後ずさっている。
どうやら腰がぬけているようだ。
対する悪魔堕ちは、威圧するように普段は消してある黒い翼を大きく広げている。
顔には特有の歪な笑みが張りついていた。
「ひっ!?」
悪魔堕ちが腕を振り上げ、男がもうだめかと思ったその時。
突然、悪魔堕ちの動きが止まる。
悪魔堕ちの胸部にはツルハシが刺さっていた。
「あなた大丈夫?」
崩れていく悪魔堕ちの後ろから姿を現したのは少女だった。
歳の頃は見たところ、16、17歳に見える。
「あ、あんたは?」
男の問いに少女はニヤリと笑った。
「私? なに、ただの墓荒らしよ」
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