一〇二号室の末女
私が思うに、三姉妹において他の二人に比べて最も大きな役割を担うのは末女だ。つまり私だ。末女は常に、二人の強力かつ暴力的な姉からの搾取を受けねばならないし、両親の愛を最も多く受ける責任がある。その割に期待はされていないようだけれど、昔から末女にこそ当たりありと言って、私が一番大成する可能性が高かったりもする。お下がりを貰い続けて、たとえふてくされたとしても、最後には折れる柔軟性が必要だし、一足先に受験という名の戦争へ向かう二人の姉を見送る義務まで背負わされている。しかも、大怪我を負いながら敗北した姉を見た後で、自分まで戦争に送られるという、精神的な圧迫にも耐えうる強靭性も求められる。もし姉が嫁いでいったら、両親の世話は全て私がする事になる。もし姉が別れてきたら、受け入れてやらないといけない。
良いだろうか。私はこのように、三姉妹の末女として、様々な試練や役目に押し潰されそうになりながらも、何とか耐えてやってきているのだ。しかるに、今回の姉妹喧嘩の件において、多少私に非があったとしても、情状を酌量されて当然だろう。勝手に私のおやつを食べてしまう長女や、知らない内にお気に入りのボールペンをくすねていく次女に、少々ぐらいの仕返しをする権利が私にはあると思う。
その辺り、よく考えて貰いたい。と、私は思う。