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白銀の髪と紅の瞳  作者: 三毛猫
6歳 アルテシア編
13/13

第11話・前編(改訂版)


 指先に神経を集中させる。


 瞼の裏に有る暗闇の中で、それはなんとも不思議な光を持っていた。

 ぼんやりと幽鬼の様にそこにあり、その光は酷く曖昧だ。まるで悪戯に溜息等吐けば突風に煽られた枯れ葉の如く存在を散らしてしまうのではないかと錯覚させられる。

 しかしこの光を持つ存在は、決してそんな柔な物ではない。研ぎ澄まされた指先の感覚が訴えてくるこの硬質な感触の物体は、この安易で仮初の暗闇の中ではなく、正しい光の下で最も綺麗に輝く代物なのだ。

 そしてその淡い光は、神経を集中している自分の指先から、腕を伝わって体と直結している。見えている、と言う訳ではないのだが恐らくそうなのだろう。視覚に頼らず知覚しているというこの感覚を、今は忘れずに、しっかりと自分に刻み込む。


 呼吸を忘れて没頭しているこの作業は、晶石に自分の魔力を保存している作業だ。

 晶石とは、クリスタルクォーツから生成される石の事で、特徴は【保存】。送られた魔力をその身に蓄えようとする性質を持つ。

 天然のクォーツは洞窟の地面や壁に引っ付いていて、まるで植物の様に生えている。そして晶石は天然クォーツの根元に生成され、クォーツの余剰魔力素を保存するという役割を持つ。限界まで蓄えた晶石はクォーツに取り込まれ、また新たな晶石を生み出す。こうしてクリスタルクォーツはゆっくりと大きくなっていくのだ。


 指先の晶石の光がどんどん強くなっていく。魔力が補充されている証拠なのだが、ここからが難しいところなのだ。

 尚も集中。送る魔力は一定にしつつ、晶石の魔力保存容量を超えないように注意する。

 が、


「あっ! はぁ、また失敗だ」


 限界が分からずに魔力を送り続けた晶石は、パキッっと真ん中で折れて真っ二つになる。容量オーバーだ。


「あーもう、晶石の容量限界ってなんでこう全部バラバラなの?」


 そう、晶石の魔力保存限界は晶石の大きさに依存しない。見た目は大きくても容量は少なかったり、小さくても容量は多い等があるので見た目で判別出来ないのだ。だから魔力を注ぎ続けている最中に判断しなくてはならないのだが、この限界の判別も難しいという、なんだか対象年齢のあっていないゲームでもやっている気分だ。

 こうやって晶石に魔力を注ぎ込んだり、逆に吸い込んだり、様々な事に利用する魔術形態が、俺が今、母親に教えられている「晶石魔術」だ。

 その魔術の第一歩がこの作業なのだが、どうも上手くいかない。上手くいった晶石はクリスタルクォーツと同じ色の石になる。晶石はクォーツの纏う冷気の様な魔力素の変換反応を示さないので、クォーツと見分けが付かなくなる事はない。


「母様が作った晶石はこんなに綺麗のに……」


 目の前で綺麗に容量一杯の晶石をいとも簡単に作られたから、それ程難しい物じゃないのかと思っていたけど、蓋を開けてみたらそんな事は無かった。母親の技術が凄かった、という事は分かったが。

 さっきの晶石でもう30個程壊した事になる。かなりの失敗続きだ。8割程で魔力供給をストップしたのは数個有るが、出来れば母親みたいな綺麗な晶石を作ってみたい。


「ふぅ。でも、確かに体の不調は減ったなぁ」


 そう、魔力を消費して体調をコントロールする名目で始まったこの晶石魔術だが、確かに効果はあった。今までの頻発していた偏頭痛や貧血のような症状が少しずつ減っていっている。夜の内に魔力をかなり使っていると朝がスッキリ起きられる事から、低血圧だと思っていた症状は魔力が多いせいだったのだろう。夜の晶石作りは欠かせなくなってしまった。

 しかし成長期なのか、はたまた魔力を使用している事がトレーニングになってしまっているのか、俺の魔力量もほんの少しずつだが増えていっている様に感じる。最初のほうは晶石を3つ程ダメにしてしまえば疲れていたのが、今では5個失敗してもピンピンしている。

 あまりにも以上に感じたら母親に相談した方がいいのかもしれないな。


「さて、今日はこれぐらいにして、もう寝ましょうか」


 結局8割程度で留めた晶石が3つ、ダメにした晶石5つ程で疲れてきた俺は、寝室に移動した。

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