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白銀の髪と紅の瞳  作者: 三毛猫
6歳 アルテシア編
12/13

第10話・後編(改訂版)


 それは無属性魔術を習い始めた頃だった。


 無属性魔術の【魔力治療】や【浄化】の改良案を考えていると、ふと、部屋のカーテンに目がいった。

 無属性魔術は己のイメージと魔力次第で色々と自由の利く人間族限定の魔術だ。魔方陣等準備に必要な物等は無く、本当にクリスタルと魔力、イメージだけですべてを完結させてしまう魔術。逆に言えばその三点しか使えないから難しい訳だが、前世の記憶があり、適性も魔力量も多く、尚且つこの世界に酷似したゲームをプレイしていた俺には、この魔術はこれ以上ない程に都合がいい。


 「NEO」のアップデートで一度、魔術の改造システムなる物が導入された事がある。

 バグや遅延、必要スペックの引き上げと、色々な問題で直ぐに廃止されたシステムだが、幸い俺の記憶にしっかりそのシステムが残っている。

 そのシステムを頭の中でイメージしながら、無属性魔術を構成している。お蔭でオリジナルの魔術をポンポンと即興で作れる様になった。魔力効率や、魔力に対しての効果などの調整が必要にはなるが、普通の人よりは格段に楽をしていると自覚している。

 加えて、魔術書などに書かれている代表的な魔術を自分好みにも弄れるのも一つの魅力だ。こちらは無属性魔術を創り出すよりも比較的簡単だ。元々の記憶にあるシステムは「魔術の改造システム」だから、こっちが本来の使用目的なんだから当たり前か。


 イメージ出来るなら、どんな魔術でも作れる。それが無属性魔術。

 なら、無属性魔術でアルビノを何とか出来るんじゃないか?


 そう思ったのが数日前の話だ。

 まず初めに、治す方向からやってみた。


 結果は、倒れた。


 詳細に言うと、アルビノの事を病気と俺は言っているが、別段、体の中で病原菌が悪さを働いている訳でもない。かと言って何か外的要因でこうなっている訳でもない。様は体質と同じなんだ。治しようがなかった。

 さらに言うと、創った魔術は今の俺の魔力量の総量をもってしても発動しない不完全魔術だった。故に魔力不足で倒れてしまい、家族や使用人達に心配をかけてしまった。


 その事に反省した俺は、頭の中の魔術改造システムをイメージ改良して、最大魔力量の何%使用するかを作製時に分かるようにしてみた。

 やれば案外出来るもんだ。と一人感心していたのが昨日までの話。


 そして今日は誤魔化す方向で試してみたいと思う。要は対処療法と言うやつだ。


 「治す」じゃなくて、「症状を抑える」魔術にしてみる事に。

 そこでイメージを持ってきたのは、目の前のカーテンだ。


 例えば、不可視のカーテンを全身に纏う感じならどうだろう。

 現実ならカーテンに包まるなんて芋虫みたいな事になってしまうが、魔術なら透明な魔力をカーテン代わりにすれば傍から見ても不自然にはならない。

 頭の悪そうなぱっとした思いつきだが、実現できるならそう悪いものでもなさそうに思える。


 早速、脳内イメージで魔術改造システムを立ち上げる。


 Good morning. Set-up Start.

Please wait,Magic Assemble System lording.

... Complete.

System Checking

... Complate.


System All OK.

MAS Activation.


 脳内でシステムが構築されていく。……毎回このメッセージが表示されるのは面倒だが、これを経由しないと明確なイメージが崩れてしまう為、面倒と思っていてもどうしようもない。

 これもシステムの一部として諦めている。

 そんな事を考えながらシステムのセットアップ完了をしばし待つ。

 時間的には30秒も経たない内に、目的の魔術改造システムの画面が脳内で表示された。


 User Name : Kannon=A=Fitzgerald

 Magic Name : non title


Magic Effect : Error

    ・

    ・

Magic Use Fuel : 0.0/100.0%

    ・

    ・

Magic spell : Error

    ・

    ・

    ・


 さて、じゃあ作っていこうか。


 まず最初の魔術名。

 これは後回しにしておく。俺はタイトルは最後につけるタイプだ。


 次に魔術の効果。

 これは、魔力で編まれたベールで自身を包む感じにしてみよう。


 詠唱は、今は無しにしておこう。


 で、再表示っと。



Magic Effect : On

    ・

    ・

!Error! Magic Use Fuel : 147.6/100.0

    ・

    ・

Magic spell : Off

    ・

    ・

    ・


 魔力不足の表示が出てる。これじゃあかなり魔力を食うみたいだ。なら別の方法を考えるか。


 そもそも、何が魔力を食っているんだろう。

 魔力を透明なベール状に編む事か? いや、これはそれほど難しくない様に思える。掌に小さい物を作り出してみているが、やはりそう難しい事でもないし、使用魔力を大した事は無い。

 だとしたら、なんだろう。体に纏わせる事か? なら纏うんじゃなくて、囲ってみるか。

 イメージはバリアーみたいな感じ。自分を中心に薄い魔力の球体を展開させる様にする。

 再表示。


Magic Effect : On

    ・

    ・

Magic Use Fuel : 57.9/100.0

    ・

    ・

Magic spell : Off

    ・

    ・

    ・


 一気に魔力の負荷が軽くなったな。これなら大丈夫そうだ。


 詠唱も入れて、もう少し負荷を少なくしよう。詠唱の文は即興で考える。


 詠唱も設定して、最終的にこういう感じになった。


User Name : Kannon=A=Fitzgerald

Magic Name : Ultra Violet Protection


Magic Effect : On

Effect Type : Full Protect

Magic Element : Non

Magic Use Fuel : 28.4/100.0

Use Fuel % Second : 0.2/100.0

Magic Time Limit: 5.9 Minute

Magic spell : On

Spell Speed : Double Action

Spell Pass Use Fuel : 42.6/100.0



 6分も持たないが、これ以上の物を作る事は難しそうだ。なにか別の案が出たら、その都度改良していこう。




 ●●●




「さて、そろそろあの転落者の存在は、成長しているのかな?」


 誰も認識できない存在、虚無の中で、男はクイッと赤紫色の水を口に含む。


「ここに「在る」という証明を貰った転落者は、否が応でも歯車に挟まれる。自分と言う歯車と、世界と言う歯車にね」


 男はワイングラスの中身を飲み干し、興味を無くしたように無造作に捨てる。

 パリンッと小気味のいい破砕音を奏でるワイングラスには、男はやはり一瞥もくれない。


「天界から堕天して、転落者の道標の任をこの身に刻まれた天使。我が名をルシファー。光り輝く事を忘れた【エル】を剥奪されし者。気の遠くなるほどこの任を続けたが、さて。今回の存在は運命の女神の悪戯に、最後まで耐えられるかな?」


 男は無造作に腕を前に伸ばす。


「さて、そろそろ行こうか」


 パチンッ!


 鳴らした手を最後に、男の姿は足元から掻き消えた。



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