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白銀の髪と紅の瞳  作者: 三毛猫
6歳 アルテシア編
11/13

第10話・前編(改訂版)

 間に合わなくて短いです。

 すいません。



 驚いた。まさかあの娘があれほどの魔術を使えるなんて。


 偶然にもあの力が発動したから事前に【ゲイル】を解除してより強力な防御魔術の【ウィンドブレイカー】に切り替えられたけど、あのままゲイルを展開しつづけていたら、きっと守りを突破されてカノンに恥ずかしい姿を晒す事になっていたでしょう。それ程の威力だった。


 あの【フレアシュート】もそう、あの娘は自分で作ったと言っていた。


 確かに、魔術書に載っている魔術より、自作魔術の方が得意な子もいる。独自の感覚で自作魔術を即興で作ってしまう子だってこれまでにはいた。

 しかし、まだ6歳の子供が、全属性の適性を持ち、独自に既存魔術を改良した。しかもその魔術は、エルフの守りを突破する程の高い完成度というおまけつきで。


 異常過ぎる。いや、過剰すぎる。


「カノンが【転落者】と言う事実は、これで疑いようも無くなったわね」


 過去に出会った転落者と、同じ特徴。私が見通せなくなる程の能力。

 でも彼の言っていた事が本当なら、まさかあんなに幼い歳で【試練】がやってくると言うの?

 だとしたら、一刻も早くカノンを育てないといけない。私が教えられる事を惜しみなく、全部。

 時間はもうあまりない。早ければ、次の新月。


 後、約7日。


 私の勘が、警鐘を鳴らしていた。



 ●●●



「あ、そっか。母様ってエルフだったっけ」


 母がクールに去って暫く。

 俺はずっと頭に引っ掛かっていた母の謎にようやく解を見た。


「エルフって長寿だし、色んな事を知っていても経験していてもおかしくない。のか?」


 エルフは見た目は若くても何百年と生きているらしい。確か成長は少し遅い程度だが、老化が極端に遅い種で、故にいつまでも若々しいと本に書いてあった。細胞の寿命が長いのかもしれない。いや、あまり深く考えても意味はないか。


 しかし悩んでいた事が解決したが、なら母は一体何歳……


「ヒッ!」


 急に背筋に悪寒が走った。体が嫌な緊張で硬直する。

 これ以上は何かまずい気がする。何がまずいかは言えないが、とにかくまずい。


 そう言えば、改良した魔術でまだ試していないものがある筈だ。それを試そうそうしよう。


「ん? お。おーいカノン!」


 背後から声がした。この声はロイだろうか。

 足音は二つ。振り返ると、ロイと兄が此方に歩いてきていた。

 ロイは上半身裸。二人が木剣を持っている事から、今まで父と稽古だった様だ。


「珍しいね、カノンが外にいるなんて。ああ、今日は曇りだからか」

「はい。先程まで母と魔術の実践をしてました」

「へぇ。そうだ、僕たちの稽古も今日は終わりだし、カノンの魔術を見てみたいな」

「お、そうだな。前のほら、体が光って体が軽くなる奴も凄かったけど、なんか他の物も見せてくれよ。ほら、炎とかがドカーンってする奴とかさ!」


 身振りで手をオーバーに振り回すロイ。どうやらロイは派手なのを期待している様だ。

 しかし俺の覚えている魔術にロイの期待に応えられるような派手な物は習得していない。


「それ程凄い物はできませんが、ちょうど良かったです。私も今からいくつかの魔術を試そうと思っていたので。では早速」


 そういって、ロイと兄に、手を翳す。


「<晴らせ、濯げ、汝は清められた乙女である>無属性魔術トリガー浄化ピュリファイ発動クリック


 細い光の星が帯となり、二人を中心に螺旋を描く。

 これは、「NEO」でよく見た仲間に治療スキルが発動した時のエフェクトだ。

 俺のイメージだからだろうか。前にやった【魔力療法マナセラピー】とは違い、これは俺のゲーム知識で作った自作魔術だ。エフェクトが一緒なのはそのせいかもしれない。


 しかし効果はしっかりと表れている。

 ところどころにあった二人の土汚れや、汗の汚れが、綺麗に消えているからだ。

 【浄化】は解毒や解呪から、日々の小さな生活汚れまでを綺麗に元の状態に戻す万能魔術として自作した。主婦の方々に教えてあげたい、かゆい所に手が届く魔術だ。何か間違っている気もするが、便利だしよしとする。


「僕の服が、綺麗になってる」

「すっげー、汗とか血の汚れまで消えてるぜ。これもカノンの魔術なのか?」

「はい、【綺麗】に元通りにする魔術です」

「へー、便利なんだな魔術って」

「まぁまだ初心者ですから、こう言った簡単な魔術しか使えないですけど」

「そんな事ないさ。とっても凄いよ。ありがとうカノン」

「えへへ」


 兄に頭を撫でられる。頭を撫でられるのは嫌いじゃない。俺は前世では長男だったからな。あまり頭を撫でられた記憶がない。だからじゃないが、何となく頭を撫でられると落ち着いてしまう。

 こう言うのも、子供の内だけだ。なら少しぐらい子供らしい事を享受するくらい、いいだろう。


「さて、次はどんな魔術を試しましょうか」


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