鏡廻
ある深夜。私は夢心地。
吊革のように鞄が揺れる帰り道。
ずっと歩道を歩いていた。
不思議と車一つない。
あるのは私の無機質な足音だけだった。
少し歩くとコンビニがあった。
時間か何かあったのか真っ暗。閉め切っていた。
気まぐれに何かを買うつもりだったのに。
その何か、なんだったかな。
ああも暗いと忘れてもどうでも同じ。
どうでもいいことだ。
瞼を閉じたように暗い歩道を歩いて行く。
車一つないから信号がヤンチャに笑ってる。
くらくらと私も吊革のように帰路を辿る。
その道。
この道の横に煉瓦の建物があった。
光る何かがその窓の内側に。
私の野性を刺激した。
そこに歩道も道路もない。
なのになんとなくそこへ歩いていた。
図書館だった。
ガラス扉が開きっぱなしの。
こんな夜にも。
どこにだってこんな場所はないだろう。
だから好奇心が震えた。
私は中へ入った。
光の筋を辿っていった。
頭の片隅にずっとあった。
もうこんなに遅いのにつまらない寄り道だなんて。
同じ毎日が続くからたまにはこうしてみるものの、息苦しいものだ。
明日になんの期待もしていないのに。怖がってばかりいるのも。
こんな人生に意味などあるのだろうか。
そもそも意味などと難しいことで格好つけるのも人間の傲慢なだけではないか。
なにもかもちっぽけで慎ましく素っ気ない。
本棚の本の隙間。
白く眩しいものがあった。
本の虫というが、今まさにそんな気分だ。
私の瞳は月のように輝いた。
萎びた手を、疲れ果てた手をもうそこにあてる。
題名は
『鏡廻』
私は中身を開いた。




