第97話:210人の感謝状! 私たちが貴方を選んだ理由
世界が黄金の静寂に包まれた夜。
空中宮殿『エデン・グランド・キャッスル』の最上階、星空に最も近いテラスに、ユートスは一人立っていた。
先ほどまで行われていた、子供たちの誕生を祝う盛大な宴の喧騒が嘘のように静まり返っている。ユートスは、自らの掌を見つめた。かつて、理不尽な上司に頭を下げ、冷たいデスクで魂を削っていた社畜時代の「節くれ立った手」。しかし今、その手には世界を支える力と、210人の愛する者たちの温もりが宿っている。
「……何、一人でたそがれているのよ。パパになったばかりなのに」
背後から、懐かしい鈴を転がすような声がした。振り返ると、そこには第一の花嫁・エルフのリリアを筆頭に、アリエル、フィオナ、イシュタル、エキドナ……210人全員の花嫁たちが、月光に照らされて美しく微笑んでいた。
「みんな……。いや、少しだけ思い出していたんだ。俺がただの『使い捨ての駒』だった頃のことをな」
ユートスの言葉に、聖騎士アリエルが静かに歩み寄り、その大きな手を両手で包み込んだ。
「……ユートス様。貴方は自分を『無能』だと言っていました。でも、私たちが貴方に惹かれたのは、貴方のステータスが何万倍だったからではありませんわ」
「ええ。……私が追放され、魔力が枯渇して死を待つだけだった時、貴方は見返りも求めず、ただ『隣にいていいよ』と言ってくれた。あの時の、不器用で温かい優しさが、私の乾いた心を救ってくれたの」
リリアが、当時の思い出を慈しむように目を細める。
「ロジックではありません。……210人のデータが導き出した答えは、一つです。貴方が『誰よりも孤独を知っていたからこそ、誰よりも他人を孤独にさせない男だった』こと。それが、私たちが貴方を選んだ真の理由ですわ」
フィオナが眼鏡を直し、誇らしげに告げる。
210人の花嫁たちが、一人ひとりユートスの元へ歩み寄り、一言ずつ「感謝」の言葉を伝えていく。
それは、かつて社畜として名前さえ呼ばれなかったユートスにとって、最も欲しかった「承認」の嵐だった。
「……ありがとう。みんな。……俺、生きてて良かったよ。あの時、絶望して死ななくて……お前たちに出会えて、本当にな」
ユートスの目から、熱い涙が零れ落ちる。
ステータス 2^{210} 倍という神の如き力を持ちながら、彼は今、一人の「愛されたい男」として、210人の愛を真っ直ぐに受け止めていた。
すると、ユートスの胸元の『契約の証』が、かつてないほど激しく明滅した。
210人の純粋な感謝の念が、魔力となってユートスの魂に還元されていく。
『通知:契約人数210名による「真の相互理解」を達成。……固有スキル【無限召喚】が【永劫楽園】へと最終進化したことを報告します』
この瞬間、ユートスの魔力は「消費」という概念を失った。
彼が幸せを感じるだけで、世界中に生命の息吹が自動的に供給され、花嫁たちの美しさは永遠に損なわれることがない「不老不死の領域」へと突入したのだ。
「……さあ、夜はまだ長いわよ、ユートス。……210人分の『ありがとう』、言葉だけじゃ足りないってこと、分かってるわよね?」
元魔界女王エキドナが、妖艶な笑みを浮かべてユートスの首に手を回す。
「ああ。……覚悟はできてる。……俺の人生の全てを懸けて、お前たちを一生、いや永遠に甘やかしてやるさ」
満天の星空の下、210人の女神と一人の王の、愛の言葉が夜風に溶けていった。
【作者からのお願い】
210人の嫁たちからの真心の告白。ユートスが救ったのは、彼女たちの命だけでなく、自分自身の過去でもあったのですね。この感動のシーンに胸を打たれた方は、ぜひ**【ブックマーク】**登録をお願いします!完結まであと3話、一文字も逃さずお読みください!




