第92話:最後の「分からせ」! 絶望の勇者との再会
帝国の統治も安定し、次世代の命も宿り始めたある日。ユートスはあえて、かつての因縁の地である「旧王都アステリア」の跡地を訪れることにした。
それは復讐のためではない。自分という存在がどれほど遠い場所へ到達したのか、その「終止符」を打つためであった。
ユートスの傍らには、エルフのリリアと、魔導士フィオナが寄り添っている。
「……ここね。ユートス様が、あの薄汚いゴミ共に追放された場所は」
リリアが鼻をつまみ、不快そうに周囲を見渡す。かつての栄華はどこへやら、今の王都は帝国の配給なしでは一日も持たない、慈悲によって生かされている「生ける屍の街」であった。
路地の隅で、泥にまみれたパンを奪い合っていた男たちが、ユートスの放つ圧倒的な「神気」に気づき、動きを止めた。
その中には、かつての国王、そしてボロ布を纏ったアレスがいた。
「……ゆ、ユートス……? き、貴様……わざわざ、我らを笑いに来たのか……!」
元国王が、震える声で叫ぶ。
「……いや。……もう、笑う気にもなれないよ。……俺はただ、今日でこの街の『管理』を終わらせようと思ってな」
ユートスが一歩、地面を踏みしめる。
その瞬間、ステータス 2^{210} 倍の魔力が大地へと浸透し、旧王都のボロボロの建物が、跡形もなく光の粒子となって消滅していった。
「な、何を……!? 我らの家を、我らの誇りを……!!」
「……誇り? そんなものは、もうとっくに無くなってただろ。……ここには、俺の嫁たちが運営する『孤児院』と『公園』を建てる。……過去の遺物は、もう必要ないんだ」
ユートスが指を鳴らすと、更地になった場所に一瞬で、最新の魔導建築と美しい並木道が出現した。
アレスたちは、その美しすぎる景観から「異物」として弾き出され、街の外の草原へと転がされた。
「……アレス。お前には、この街の清掃員としての仕事を与えてやる。……俺の嫁たちが、そして生まれてくる俺の子供たちが、この街を散歩する時に、道が汚れていたら困るからな」
「せ、清掃員……!? 勇者の俺に、掃除をしろというのか……っ!」
「……勇者? そんな職業、もうこの世界には必要ないんだよ。……必要なのは、俺の家族を幸せにするための『平和』だけだ」
ユートスは背を向け、浮遊する宮殿へと戻っていく。
背後では、アレスが絶叫しながら地面を叩いていた。かつての友、かつての主君。彼らは今、ユートスが作った「完璧な世界」の、最も底辺の部品として組み込まれた。
殺しはしない。消しもしない。
ただ、自分が捨てた男が「神」となり、その子供たちが無邪気に遊ぶ庭を、一生磨き続けなければならないという罰。
これこそが、社畜として人生を浪費させられかけたユートスが辿り着いた、究極の「清算」であった。
「……さあ、リリア。フィオナ。……帰ろう。……今夜は、お腹の子のために特製のスープを作ってやるからな」
「「はい、ユートス様!!」」
【作者からのお願い】
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