第6話:オーク軍団殲滅作戦! 連携する力
「グォォォォォッ!」
「ガァッ! ギガァッ!」
蹂躙されたオークの先陣。しかし、奴らは恐怖よりも食欲と破壊衝動が勝る魔物だ。仲間の死体を踏み越え、三十体近いオークの群れが、地響きを立ててエルフの里へと殺到する。
「来るわ……ユートス!」
リリアが白銀の弓を構え、鋭い視線を敵に向ける。契約によって俺の魔力が流れ込んでいる彼女の肌は、透き通るような輝きを放ち、周囲には目に見えるほどの風の渦が巻いていた。
「ああ、わかってる。スイ、お前たちの出番だ!」
俺は右手の紋章を全開にする。
「【無限召喚】――スライム・スクランブル!」
ボコボコと、里の入り口付近の地面が水色に染まる。召喚されたスライムの数は、今や五十体。これだけの数を維持するのは並の召喚士なら一瞬で魔力枯渇(MP切れ)を起こすだろうが、神から与えられた俺の魔力容量は、まさに底なしだ。
「スイ、一号から十号は『粘着ネット』を展開! 残りは俺の指示に合わせて『合体』の準備だ!」
「きゅうっ!」
最前線のスライムたちが、オークたちの足元に液体状に広がった。
「ギ、ギガ!?」
猛スピードで突っ込んできたオークたちが、強力な粘着力に足を取られ、次々と前のめりに転倒する。そこは、すでにリリアの射程圏内だ。
「風の精霊よ、我が矢に宿りて敵を穿て……『ウィンド・ストーム・アロー』!」
リリアが放ったのは、一本の矢ではない。空中で無数の風の刃へと分裂し、身動きの取れないオークたちを襲う。
「グギャァァァッ!」
断末魔の叫びが響き渡る。一撃で五体のオークが沈んだ。これが契約による強化の力か。リリア自身も自分の力に驚いているようだが、戦場に躊躇は禁物だ。
だが、群れの奥から一段と巨大な咆哮が上がった。
「ブルゥゥゥゥ……ッ!」
木々をなぎ倒し、三メートルを超える巨体が出現した。全身を鋼のような筋肉で覆い、手には巨大な石斧を握っている。
「オーク・ジェネラル……!」
リリアの顔がわずかに強張る。オークの進化個体であり、指揮官クラスの魔物だ。その皮膚は魔法耐性を持ち、並の風魔法では傷一つつけられない。
「リリア、奴は俺が止める。その間に残りの雑魚を掃除してくれ!」
「えっ、でも一人でなんて!」
「一人じゃないさ。……スイ、いくぞ! 『大型合体』!」
俺の指示に従い、散らばっていた四十体のスライムが一箇所に集結する。プルプルとした体が互いに溶け合い、みるみるうちに巨大な塊へと変貌していく。
完成したのは、俺の背丈を遥かに超える「キング・スライム」だ。
「【能力共有】――『ハード・ボディ』&『リバウンド』!」
俺はグレイウルフから得た耐久力と、スライム自身の弾力性を共有スキルで極限まで強化し、キング・スライムへと流し込んだ。
「グォォォッ!」
オーク・ジェネラルが石斧を振り下ろす。まともに食らえば家の一軒も粉砕する一撃。
ドォォォォン!
凄まじい衝撃音が響く。だが、キング・スライムは潰れるどころか、その一撃を柔軟な体で受け止め、ポヨンと波打った。
「ギガッ!?」
石斧が肉体に深くめり込み、逆に抜けなくなる。ジェネラルが焦った表情を見せた瞬間、俺はキング・スライムの背中を蹴って宙へ舞った。
「――隙だらけだぜ」
手には、オークから奪った短剣にリリアの風の魔力を纏わせた「風絶剣」。
「疾走」と「百発百中」のスキルが、俺の動きを最適化する。
シュンッ、という短い音。
俺が着地した時には、オーク・ジェネラルの太い首筋から緑色の鮮血が噴き出していた。
「ガ、ハ……ッ……」
巨体が崩れ落ちる。
『経験値を大量に獲得しました。ユートスのレベルが15に上がりました』
『召喚獣スイが「ビッグ・スライム」へ進化可能になりました』
「はぁ……はぁ……。リリア、終わったぞ!」
俺が振り返ると、リリアも最後のオークを仕留めたところだった。
静まり返った森。里のエルフたちは、呆然と俺たちを見つめている。
たった二人とスライムたちで、魔王軍の小隊を壊滅させたのだ。
「ユートス……あなた、本当に何者なの……?」
リリアが駆け寄り、信じられないものを見るような、それでいて熱を帯びた瞳で俺を見つめる。
俺は苦笑いしながら、右手の紋章を隠すように腕を組んだ。
「ただの、しがない召喚士さ。……それより、怪我はないか?」
「ええ、あなたの魔力が守ってくれていたから……。でも、少し……体が熱いの」
リリアの頬が赤く染まっている。
どうやら、契約による魔力の共有は、戦闘後にある「副作用」をもたらすらしい。
女神ルミナのいたずらな笑顔が、脳裏をよぎった。




