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第5話: エルフの隠れ里と、契約の儀式

「ここが……リリアの村か」

俺たちの目の前に現れたのは、巨木の幹に家々が作り付けられた、幻想的な隠れ里だった。

陽光が木の葉の隙間から差し込み、キラキラと輝いている。現代の無機質なオフィスビルとは対極にある、生命力に満ちた光景だ。

だが、村の空気は重く沈んでいた。

入り口には急造の柵が作られ、弓を持ったエルフたちが鋭い視線を周囲に走らせている。

「リリア! 無事だったか!」

「村長! この方が助けてくれたんです!」

村の中から、立派な髭を蓄えた年配のエルフが駆け寄ってきた。リリアの父親であり、この村の長官でもあるギルバートだ。

俺はリリアを慎重に地面に下ろした。

「人間よ、娘を救ってくれたこと、心から感謝する。だが……今は客人をもてなす余裕がないのだ」

ギルバートは苦渋に満ちた表情で、村の奥を指差した。

そこには、数人の若者が血を流して倒れていた。

「ゴブリンだけではない。魔王軍の眷属……オークの小隊が、この森に陣を張った。奴らは女を攫い、食料を奪い、森を焼き尽くそうとしている」

「オーク……」

ゴブリンとは比較にならない、Cランク以上の魔物だ。それが小隊を組んでいるとなれば、一介の村で太刀打ちできる相手ではない。

俺はリリアを見た。彼女は悔しそうに拳を握りしめている。

「私にもっと力があれば……。村を守れるだけの、魔法があれば……!」

その時、俺の脳内にルミナの声が響いたような気がした。

『ユートス、チャンスよ。彼女と「契約」なさい』

(契約……? モンスターだけじゃないのか?)

『そうよ。彼女たちの合意があれば、貴方は人間エルフとも契約できる。そうすれば、彼女は貴方の魔力を受けて強化され、貴方も彼女の「弓術」を共有できるわ』

俺は深く息を吸い、リリアの前に立った。

「リリア。君に、戦う力が欲しいか?」

「えっ……?」

「俺の【召喚契約】を受けてほしい。俺の眷属になることで、君は今の数倍、いや数十倍の力を手に入れられる。その代わり、君の人生の一部を俺に預けることになるが……」

リリアは驚いたように目を見開いたが、迷いは一瞬だった。

村の惨状を見つめ、そして俺の目を真っ直ぐに見返した。

「……ユートス。あなたが、信じられる人だってことは、あの戦いで分かったわ。私の命、村を救うために捧げる。……契約して」

「分かった。……じゃあ、始めるぞ」

契約の儀式。それは、互いの魂を繋ぐための深い同調が必要だ。

女神の知識が、具体的なやり方を俺の脳に流し込む。

「……えっと、リリア。ちょっと恥ずかしいんだが、手を握って、目を閉じてくれ」

「は、はい……」

リリアの温かく、少し湿り気を帯びた手が俺の手を包む。

俺は彼女の額に、自分の額をそっと合わせた。

立ち上る魔力の奔流。二人の周囲を、金色の光が渦巻き始める。

「【汝、我が呼び声に応えし魂の友なり。無限の絆を以て、ここに盟約を成さん】――【契約サモン・コントラクト】!」

光が弾けた。

リリアの首筋に、俺の右手の紋章と同じ意匠の「従属印」が浮かび上がる。

それは、彼女が俺のハーレム……第一号のメンバーになった証でもあった。

『リリア・リーフと契約が完了しました』

『共有能力【風の加護・極】【百発百中】を獲得しました』

『ユートスの全ステータスが大幅に上昇します』

俺の体に、風のように軽やかな、それでいて芯の強い力が流れ込んできた。

一方のリリアも、その身に溢れる魔力に驚愕している。

「すごい……力が、勝手に溢れてくる……! これなら、負ける気がしないわ!」

彼女が背負っていた古びた弓が、俺の魔力を吸って白銀色に輝き始めた。

「ユートス、命令を。私の矢は、もう誰にも外さない」

その瞬間、村の監視員から悲鳴に近い声が上がった。

「来たぞ! オークだ! 大勢でこっちに向かってくる!」

村の入り口、森の木々をなぎ倒しながら、筋骨隆々の巨人たちが姿を現した。その数、およそ三十。

「グォォォォォン!」

大地を揺らす咆哮。

だが、俺は一歩も引かなかった。

隣には、絶大な力を得たリリア。足元には、闘志満々のスイ。

「リリア、まずは挨拶代わりだ。一番デカい奴を狙え」

「了解。……風よ、集え!」

リリアが弓を引き絞る。そこには矢などない。

だが、凝縮された風の魔力が、目に見えるほどの鋭い光の矢を形成していた。

「――穿て!」

放たれた一撃は、空気を切り裂く轟音と共に、オークの先頭集団を文字通り「消滅」させた。

「なっ……!?」

ギルバートら村のエルフたちが絶句する。

俺は不敵に笑い、右手を突き出した。

「ここからは俺たちのターンだ。……全員、まとめて相手をしてやる!」

初の人間の仲間を得た俺の、異世界無双が本格的に幕を開けた。

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