第38話:霊峰の罠! 四天王を超える「魔人軍団」
狂乱の夜を越え、絆を深めた俺たちは、獣人国の最高峰『霊峰ガリア』へと向かっていた。
魔人王ゼノスが魔王降臨の儀式を行っているとされるその場所は、今や数万の魔族の軍勢によって、難攻不落の要塞へと作り変えられていた。
「……ユートス様、前方に異常な熱源反応です。……これは、フェンリル以上の魔力個体が……数百体!?」
レーダーを確認していたエレインの声に、緊張が走る。
「数百体だと? 四天王クラスがそんなにいるわけがない」
「いえ、個々の魔力量は四天王に及びませんが……。……あれは、魔人王の細胞を植え付けられた、人造魔人の精鋭部隊『魔人軍団』ですわ」
カトレイアが険しい表情で窓の外を指差した。
霊峰の麓に現れたのは、漆黒の重鎧をまとい、禍々しい魔剣を手にした数百人の騎士たち。
彼らの一人一人が、一国の近衛騎士団を単独で壊滅させるほどの力を持っている。
「グハハハ! 待っていたぞ、人間! 我が主ゼノス様への手土産に、貴様の首と、その背後にいる女たちを全て、魔獣の苗床にしてくれるわ!!」
軍団長と思われる、二つの頭を持つ巨漢の魔人が咆哮した。
「……苗床? ……俺の嫁たちを、そんな汚い言葉で呼ぶな」
俺はトレーラーのタラップをゆっくりと降りた。
俺の背後には、86人の女性たちが、それぞれの武器を構えて整列している。
「みんな。……昨夜、たっぷり力を注いでやったよな? ……その力、存分に試してこい」
「「「「「「はい、ユートス様!!」」」」」」
86人の美女たちが、黄金のオーラを放ちながら戦場へと飛び出した。
「はぁぁぁっ!!」
アリエルの剣が一閃する。一撃で、鉄壁を誇る魔人の盾を紙のように切り裂き、その胴体を両断した。
「な、何だと!? 一介の女剣士が、我が魔人軍団と渡り合っているだと!?」
当然だ。今の彼女たちは、86人分の魔力を共有し、俺の【聖域の再生】によって、いかなる傷も瞬時に治癒する「不死身の戦乙女」へと進化している。
メイドたちが放つ魔力砲は地形を削り、獣人たちが振るう爪は空間そのものを引き裂く。
「……さて。軍団長さん、あんたの相手は俺だ」
俺は一瞬で、二頭の魔人の目の前へと転移した。
「『古竜雷・八十六連・絶影』」
抜刀の音さえ聞こえなかった。
俺が通り過ぎた後、魔人軍団長の巨体は八十六の破片となり、絶叫を上げる間もなく霧散した。
「バ、馬鹿な……。魔人軍団が……たった数十人の女と、一人の人間に……全滅させられるだと……!?」
生き残った数名の魔人が、恐怖に顔を引きつらせて逃げ出そうとする。
だが、その頭上から、巨大な魔法陣が展開された。
「逃がさないにゃ! ――『影縫いの地獄』!!」
ミャオ率いる猫獣人たちが、影から影へと跳び、逃亡者を確実に仕留めていく。
わずか数分。
最強を誇った魔人軍団は、俺たちの圧倒的な暴力の前に、文字通り塵へと還った。
「……ふぅ。いい準備運動になったな」
俺は剣を鞘に納め、駆け寄ってくる嫁たちの汗を拭ってやった。
「みんな、怪我はないか?」
「ユートス様の加護があるんですもの、かすり傷一つありませんわ」
カトレイアが、血のついたドレスを厭わずに俺に抱きついてくる。
だが、霊峰の頂上からは、さらに巨大で不気味な、太陽を飲み込むほどの闇の波動が溢れ出していた。
「……いよいよ、お出ましか」
魔人王ゼノス。
獣人国編のクライマックスが、今、始まろうとしていた。




