第36話:獣人国の聖域! 蹂躙される誇りと「野生の呼び声」
黄金の移動要塞『ハーレム・ゴー』は、ついに獣人国ガルダルクの心臓部、聖域『アニマ・ルクス』の境界へと到達した。
だが、窓の外に広がる光景に、車内の空気は一瞬で凍り付いた。
「……嘘、でしょ。私たちの聖なる森が……こんな……っ」
ガルラが窓に張り付き、狼の耳を絶望に震わせている。
かつては生命の輝きに満ちていたはずの巨木の森は、どす黒い紫の霧に包まれ、木々は病んだように身悶え、大地からは腐敗した魔力の異臭が立ち上っていた。
「……ひどいわね。これはただの侵略じゃない。土地そのものの『魂』を汚して、魔界へ作り変えようとしているんだわ」
フィオナが魔導計器を睨みながら、苦々しく吐き捨てる。
計測される汚染度は、並の人間なら数分で正気を失うレベルだ。
だが、俺はこの異様な空間に足を踏み入れた瞬間、逆に全身の血が沸騰するような「昂ぶり」を感じていた。
「……カトレイア、エレイン。周囲の生存者の反応は?」
「……極めて微弱ですわ。ですが、森の中央、聖なる泉の付近に、強力な結界と共に固まっている反応があります。……おそらく、生き残った部族の巫女や娘たちが、最後の抵抗を続けているのでしょう」
「よし。全員、戦闘配置だ。……ガルラ、ミャオ。お前たちは俺の左右につけ。同胞を救いに行くぞ」
俺たちはトレーラーのタラップを降り、森の深部へと足を踏み入れた。
その瞬間、茂みの奥から、瞳を赤く染め、理性を失った「狂戦士」と化した獣人の男たちが、獣のような咆哮を上げて飛び出してきた。
「グルァァァァァッ!! 殺セ……皆殺シダ……!!」
「……どけ。お前たちと遊んでいる暇はないんだ」
俺は腰の『古竜雷』を抜くことすらしない。
契約者55名から供給される圧倒的な魔圧を、ただ「威圧」として解放した。
ドォォォォォォン!!
「ガ、ハッ……!?」
襲いかかろうとした数十人の狂戦士たちが、まるで見えない巨人の足で踏みつけられたかのように、その場に平伏した。
これが、新スキル【軍団の威光】。俺に愛を捧げる55人の美女たちの想いが、物理的な重圧となって敵を圧殺する。
「ユートス様、すごいにゃ! 触れるまでもないにゃん!」
ミャオが感嘆の声を上げながら、俺の背中にぴったりと張り付く。彼女のしなやかな肢体から伝わる熱が、俺の魔力をさらに活性化させる。
やがて俺たちは、森の最深部、巨大な水晶の樹が立つ広場へと辿り着いた。
そこには、数十人の獣人女性たちが、互いに身を寄せ合い、魔族の兵士たちに包囲されていた。
「ひひひっ、この『万獣の巫女』は上物だぞ。魔人王ゼノス様への最高の貢物になる!」
下劣な笑い声を上げる魔族の指揮官が、一人の少女の髪を掴み上げた。
白銀の長い髪、そして頭の上で力なく垂れ下がった猫の耳。
彼女こそが、獣人国の精神的支柱であり、次代の女王と目される巫女、シロネだった。
彼女の衣服は激しい戦闘でボロボロに引き裂かれ、透き通るような白い肌が、魔族の汚れた手によって弄ばれようとしていた。
「……おい。その汚い手を離せと言ってるんだ」
冷徹な俺の声に、魔族たちが一斉に振り返る。
「あぁ? 何だ貴様……人間か? 50人以上も女を連れて、観光にでも来たのか?」
「いいや。……お前たちの葬式に来たんだよ」
俺は一歩、踏み出した。
その瞬間、俺の背後に55人の嫁たちの幻影が立ち上がる。
「リリア、アリエル、カトレイア……。……いくぞ」
俺の合図と共に、要塞から飛び出したメイド隊と兵士たちが、魔族の軍勢へと襲いかかった。
「はぁぁぁっ!! ユートス様の道を塞ぐ者は、この私が許さないわ!!」
アリエルの剣が閃き、魔族の首を次々と跳ね飛ばす。
メイドたちの放つ魔力砲が、聖域を汚す汚物を根こそぎ消し飛ばしていく。
俺は最短距離でシロネの元へ辿り着き、彼女を抱き上げた。
「……もう大丈夫だ。……シロネ、と言ったか? 苦しかったな」
シロネは虚ろな瞳で俺を見上げた。
だが、俺の腕の中から伝わる、50人以上の女性たちの愛が混ざり合った「究極の魔力」に触れた瞬間、彼女の身体が激しくビクンと跳ね上がった。
「あ……あぁ……っ! なに、これ……温かくて、凄まじい命の輝きが……っ!」
巫女として魔力に敏感な彼女にとって、俺の存在は太陽そのものだった。
俺の魔力が彼女の体内の汚染を瞬時に浄化し、代わりに濃厚な「主従の刻印」を魂に刻んでいく。
「……貴方は、伝説の……万獣を統べる『黄金の王』様なのですか……?」
シロネの瞳に、陶酔の光が宿る。
彼女は俺の首筋に顔を埋め、野生の本能のままに、俺の匂いを深く吸い込んだ。
『聖域の巫女シロネ、および生き残りの獣人美女30名との「緊急救済契約」が成立しました』
『契約人数:86名。……魔力出力が「計測不能」に到達しました』
俺の全身から、物理的な光の柱が天を貫いた。
契約人数が100人に近づくにつれ、俺の身体はもはや人間としての枠組みを超え、神に近い存在へと変質し始めていた。
「……さて。お前たちのボス、ゼノスはどこだ?」
俺はシロネを横抱きにしたまま、生き残った魔族の指揮官の喉元を掴み上げた。
「ガ、ガハッ……! お、恐れを知らぬか人間……! ゼノス様は、既に『霊峰』にて魔王降臨の儀式を……!」
「そうか。なら、そこがお前たちの墓場だ」
指先に力を込めるだけで、魔族の身体は塵となって消えた。
振り返れば、救い出された30人以上の獣人美女たちが、跪き、恍惚とした表情で俺を崇めていた。
「ユートス様……。私たちの、真の主様……」
「どうか、私たちを……貴方の思うままに……っ」
獣人ならではのストレートな情愛が、俺のサーバーをパンク寸前まで熱くさせる。
カトレイアやフィオナたちが、苦笑いしながらも誇らしげに俺の元へ歩み寄ってくる。
「……あらあら、ユートス様。また一気に『家族』が増えてしまいましたわね」
カトレイアがシロネの頭を優しく撫で、俺にウィンクを送る。
「……ああ。100人まで、あと少しだ。……行くぞ、みんな! この国の闇を、俺たちの愛で焼き尽くすんだ!!」
「「「「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」
86人の美女たちの咆哮が、聖域の空を貫く。
無能と呼ばれた俺が、多種族を統べる真の王として覚醒する。
第3章、獣人国ガルダルク編。その激動の幕が、最高潮の熱量と共に上がった。




