第33話:国境の嵐! 魔人王の影
メティスを発って三日。
『ハーレム・ゴー』は、人間圏と獣人圏を隔てる険しい断崖絶壁――『絶望の回廊』へと差し掛かっていた。
本来なら、数ヶ月の登山を要する難所だが、重力相殺機能を備えたこのトレーラーにとって、垂直に近い壁さえもただの道に過ぎない。
「……ユートス様、前方に異常な魔力反応。……これは、生物のものではありません」
レーダーを担当していたルナ(学園編に先駆けて、一時的に協力している天才少女という設定にしましょうか。※後ほど調整します)……失礼、ここはエレインに任せましょう。
「……これは、古代の防衛兵器ですわ。魔王軍がこの回廊を封鎖するために起動させたようです」
前方の空が、どす黒く染まる。
雲を突き抜けて現れたのは、全長100メートルを超える「鋼鉄の浮遊要塞」。
かつての文明が遺した殺戮兵器が、魔王軍の術式によって再起動させられ、俺たちの行く手を阻もうとしていた。
「ふん、鉄屑が。ユートス様、ここは私たち護衛兵隊にお任せください!」
アリエルが、俺から分け与えられた魔力で輝く新装備『聖銀の鎧』を纏い、トレーラーの甲板へ躍り出た。
「アリエル、一人で行かせるかよ! メイド隊、第一種戦闘配置!」
セーラ率いるメイドたちが、モップやトレイを武器に――いや、それらは既にフィオナによって改造された、高出力の魔導レールガンに変形していた。
「……いや、ここは俺がやる。……40人の力を合わせた、新しい技の実験台になってもらおう」
俺はトレーラーの先端、女神の彫像が刻まれた衝角の上に立った。
「みんな、俺に魔力を集中しろ! ――【無限召喚:全契約者リンク・最大出力】!!」
車内の40人の女性たちが、それぞれの自室から俺へと意識を向ける。
「ユートス様、私たちの想い、受け取ってください!!」
ドォォォォォォン!!
俺の背中に、40枚の光の翼が出現した。
それは物理的な翼ではなく、純粋なエネルギーの結晶。
一枚一枚の翼が、リリアやフィオナ、カトレイアたちの個別の属性(風、炎、雷、聖など)を宿している。
「――『古竜雷・四十重奏』!!」
俺が剣を振るうまでもない。
ただ指を指した方向に、40の属性魔法が一本の巨大な光柱となって収束し、放たれた。
ズガァァァァァァァァァァァン!!
古代の浮遊要塞は、その強固な障壁ごと一瞬で蒸発した。
後に残ったのは、青い空と、パラパラと降り注ぐ鉄の火花だけ。
「……凄すぎる。40人でこれなら、100人揃ったら世界が壊れちゃうんじゃない?」
フィオナが呆れたように呟く。
「壊さないさ。……俺が新しい世界を作るんだからな」
浮遊要塞の残骸の中を、黄金のトレーラーが堂々と突き進む。
その様子を、遥か彼方の獣人国ガルダルクの王座で、冷酷な瞳で見つめる者がいた。
「……面白い。ベリアル、メロウ、そしてフェンリルまでもを屠った人間か。……我が魔人軍団、10万の餌食にしてくれよう」
四天王を超える存在、魔人王の側近。
獣人国編の真の敵が、その姿を現そうとしていた。




